「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

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 番外編第一回はマクロスΔです。本編更新せずこんなことしてすいません。だけど書きたかったんです。許してください!何でもしますから!

 オリ主&オリキャラがビルドファイターズ時空からマクロスΔ時空へトリップする話ですので気に入らない方は自衛をお願いします。


デルタ編
2度目の異世界


 「少々お聞きしたいことがありますのでヤジマの研究施設まで来てもらえませんか?3人で」

 

 「別にいいけど」

 

 確か始まりはこんな感じだった。第七回世界選手権が終了して一月経つか経たないくらいの時に、ニルスからそう言われた俺とヒマリとツムギはヤジマの研究所にやってきていた。いやはや第七回世界選手権の後始末は大変だったよ。まさかレイジのやつが異世界人だったなんてなあ。しかもプラフスキー粒子の大本がそのアリスタとかいう宝石で、マシタ会長がその原石を持っていたって話。レイジが言うにはアリスタは世界を越える力を持つくらい凄い宝石らしい。まあ、今目の前にある馬鹿でかい宝石を見ても実感わかねえや。

 

 でもレイジのやつが目の前で消えたのも見たし、何食わぬ顔で戻ってきたのをこの1か月で何回か見た。つまり、マジの話らしい。まあそれを知ってるのは俺たちとセイぐらいなんだけど。で、俺と同じヤジマのファイター…研究者に転向したらしいニルスはプラフスキー粒子の謎を解明したくて躍起になってるわけで。準決勝の話、つまり歌でプラフスキー粒子越しに想いを届けたことに関して詳しく聞きたいとかなんとか。

 

 「というわけで詳しい話を聞きたいのですが…」

 

 「いや、そう言われても、なあ?出来ちまったからとしか」

 

 「…アルトに乗っかっただけだもん」

 

 「アルトくんに分からなかったら私はお手上げー」

 

 「……そうですか」

 

 「バカを見る目をやめろ」

 

 「いえ、そういうわけではなく。飲み物を取ってきますのでくつろいでいてください」

 

 ニルスのこれも駄目かみたいな顔での言い草に思わず口答えが出た俺を気にすることなく彼は部屋を出ていってしまった。大きなアリスタの原石が放つ不思議な光が部屋を照らしている。俺たちはうーんと考えてそれぞれ一つの丸い宝石を取り出す。レイジからもらったアリスタだ。ビー玉のようなそれは今な光も何もせずただの暗い色の石にしか見えない。ニルスとバトルできるかもーって思って持ってきたバルキリーたちが泣いちゃうぜ。なんだかんだあいつとバトルやってなかったしいい機会だと思ったんだけどなあ。

 

 「今でも信じられないねー。レイジ君が異世界の国の王子様だったなんて」

 

 「…アイラ、玉の輿」

 

 「アイラさんまさかあっちに移住するなんてな。まあよくこっちに戻ってくるみたいだけど」

 

 そんな感じで雑談をしているとほのかに手に持ってるアリスタが輝いているのに気づいた。それはヒマリとツムギのものも同じようで、二人も困惑の表情でアリスタを見つめている。と同時に俺たちの後ろにある巨大アリスタも光を増していることに気づく。なんだ?よくわかんないけど、やばい

 

 「おい、いったん部屋でよう。なんか嫌な感じがする」

 

 「うん。何なんだろ」

 

 「…まぶしい」

 

 強い光に弱いツムギの手を取って荷物を背負ってドアの方へ足を進めようとした瞬間、バァッ!と巨大アリスタから緑色の粒子、おそらく何の加工も施されていない純正のプラフスキー粒子が噴き出して俺たちの周りを覆ってしまった。突然の事で動きを止めてしまったがとっさに二人を抱き寄せて庇う態勢に入る。なんだなんだなんだなんだ!?

 

 「アルトくんっ?!」

 

 「…アルト、これ」

 

 「わっかんねえよ!とにかく離れないようにくっつけ!くっそニルス!入ってくんなよ!お前まで巻き込まれるぞ!」

 

 ホワイトアウトしかけた視界の隅でニルスがドアを開けようとしているのが見えた俺は視界が完全に真っ白に染まる前にそう叫んだ。感覚だけで二人と硬く抱き留めた俺の視界がホワイトアウトし、意識までも曖昧になっていく。離してなるものかと腕に力をこめる、上下の感覚すらも曖昧になり、ふつっと地面が消える。

 

 

 

 

 

 どさっっと音を立てて転がった俺たち。地面の感覚がある。コンクリートだ。だけどなんで?何が起こった?疑問しか湧き上がらない。戻ってきた視界に映るのは海とコンテナ。耳に聞こえるのは爆発音と悲鳴、きょろきょろとあたりを見回す二人が無事らしいことを確認してほっと息をついた。状況は全く分からないが二人に何もなくてよかった。

 

 「ここ、どこ?」

 

 「…研究所じゃ、ない?」

 

 「っ!危ねえっ!!!」

 

 咄嗟だった。驚く暇もないほどに立て続けに起きる意味不明に逆に冷静になった俺の視線の先にはありえないものがあった。バルキリーだ。プラモデルじゃない、実寸大かつ本物の動く可変戦闘機。それがガンポッドを四方八方に撃ちまくって暴れまわっていた。その銃口が俺たちの方に向いたのを見てしまった瞬間俺は二人を突き飛ばしていた。運よく二人はコンテナの影に入ることができたが俺は逃げ遅れた。吐き出された弾丸が俺の近くに着弾する。衝撃で俺は吹っ飛び思いっきりコンテナに打ち付けられた。

 

 「アルトくんっ!?やだっ!?アルトくん!!」

 

 「アルトっ!?しっかりして!大丈夫っ!?」

 

 「ぐうっ…大丈夫だっ!いいから動くなよ…っつぅ…」

 

 運悪く、もしくは運がよかったのかもしれないが擦り傷と打撲で終わったようだ。ズキズキと痛む全身に鞭打って這うように二人がいるコンテナの影に入った。二人の悲鳴に何とか言葉を返して笑って見せる。ほっとした顔をした二人と今起こってるありえないことについて話し合う。なんで、ないはずのものが存在しているんだ?あのバルキリー、VF-171 ナイトメアプラスはまだ俺が作ってない機体だ。設計図どころかデザインすら俺の頭の中にしかない。俺がいた世界では、という注釈が付くけど。そもそも、今どこにいるんだ?世界自体が違うとしか思えない。だって、原因はどう考えてもアリスタだ。レイジのように世界を移動したのかもしれない。

 

 「あれって、バルキリー、だよね?」

 

 「ああ。俺がまだ作ってない、な」

 

 「…もしかして、ここがレイジの世界っていうアリアン?」

 

 「レイジたちの世界は俺たちより科学は進んでないって言ってた。それに、バルキリーがある時点で…」

 

 「…アルト、自分が何言ってるか分かってる?」

 

 「マクロスの世界に来ちゃった…ってこと?アリスタのせいで!?」

 

 「そうじゃなかったらあれが説明つかないだろ。やばいっ!逃げるぞ!」

 

 ガンポッドが発射される轟音の中、大声で話しているとガンポッドの弾が無くなったらしいVF-171が脚部を開けてマイクロミサイルをのぞかせ始めた。今まではコンテナが壁になってくれたけどミサイルなんか打ち込まれたらひとたまりもない!強引に二人の手を引いてVF-171に背を向けて駆けだす。思えばなんでVF-171は暴れてるんだ?仮にこの世界がマクロスの世界だとしてあの機体は軍の正式機のはずだ。見境もなく暴れる軍人なんかいてたまるか。

 

 

 飛翔音、爆発の轟音。耳がいかれそうになる。全力で走りながら周りを見渡すと他にもリガード、グラージなどの兵器が暴れまわっていた。建物はもはやがれきとなり原型をとどめているものは存在していないだろう。走る、走る。途中で人とすれ違ったが彼らもパニック状態で逃げ回るばかり、極めつけには…

 

 「■■■■■■■っ!?■■■■■■!■■■■■■!」

 

 「はっ…はっ…何言ってるんだろう…っ!?」

 

 「ハァ、分かんねえ。ハァ、ヒマリ、ツムギ大丈夫か?」

 

 「…フゥ…ハァ…」

 

 言葉がわからない。英語とかフランス語とかイタリア語とかそうじゃなくて、言語の根源から違う言葉だ。周りにいる人の口から出る言葉が理解できない俺たちは彼らの逃げる方向に合わせることにした。走りっぱなしで息が苦しいし、打ち付けた全身が痛い。二人も限界が近いようで特に小柄なツムギは体力もそう多くない。もう言葉を話すのすら難しいほどに消耗している。大きなコンテナを曲がる…やばいっ!リガードが目の前に!

 

 「……あぁっ…!」

 

 「…ひぃ、うっ…!」

 

 「くっそおおお!」

 

 動くものはみな敵と思っているのかリガードは完全に俺たちをロックオンし銃口を向ける。逃げる時間すらないし、ヒマリとツムギは完全に恐怖で固まってしまった。唯一動ける俺が二人を押し倒して覆いかぶさる。撃たれたら痛みも感じる間もなく蒸発してしまうだろう。俺の薄い体なぞ盾にもならない。でも、少しでも恐怖が紛らわせられるなら、行動しない理由はない。ぎゅっと目を閉じる二人をきつく抱きしめて俺も覚悟を決める。どうか、二人が生き残れますように…!

 

 

 轟音と同時に俺の意識が消え…ない?大きな影が俺たちを覆い、聞こえるのは何かが弾かれる音と軽快な音楽。目を開けて見上げるとそこには白と緑色をした巨人がバリアで俺たちに降り注ぐ弾丸を受け止めているところだった。一目見てわかった。あの巨人の名はVF-31「ジークフリード」そしてその機体が来たということは

 

 『■■■■■■■ ■■ Walküre ■■■■■♪』

 

 単語だけ拾えた。Walküre、つまりは戦術音楽ユニット「ワルキューレ」、マクロスΔに登場する歌姫たちの名前。弾が止んだ一瞬の隙をついて両手にナイフを持ったVF-31がリガードの足を切り裂きダルマにして完全に動きを止めてしまう。なんて、鮮やかな手際。俺がガンプラバトルで操縦するバルキリーとは雲泥の差と言える。あれが、本当の可変戦闘機の動き…!緊急事態なのを忘れて見入ってしまった。そして体を起こして二人を開放する。上半身を持ち上げて座った二人が無事なのを確認して本日何度目かわからない安堵の息を吐いた。

 

 軽快な音楽が鳴り響く。どこからか響く高らかな歌声、壊れかけの建物にプロジェクションマッピングされたワルキューレのロゴ、そして投影されているのはやはり見覚えのある人物たち。ブーメランのような形をしたデバイスがあたりを飛び回っている。バトロイドのVF-31は俺たちの方をちらりと見るとすぐさまガウォークに変形して空へ舞い上がる。そうだ、まだここは戦場のど真ん中なんだ。逃げないと。

 

 「二人とも、まだ走れるか?」

 

 「うん、大丈夫。アルトくんこそ、怪我…」

 

 「…私たちより、アルトが心配。だって…」

 

 「俺はいいから!逃げれるなら逃げるぞ!後は何とかなるって!」

 

 俺の空元気を察したのはわからないが二人もこくんと頷いてまた走り出そうとする。リガードの背面が開いてゼントラーディの男性が現れた。腰につけた拳銃を抜き放ち何事か喚いている。俺たちからしたらあの拳銃ですら大砲と同義だ。彼は狙いを変えたわけではないのか、俺たちに向かって銃口を向ける。既に走り出した俺たちに向かって連続で発射される銃弾、幸い狙いがぞんざいなのか当たらないで済んでいるが…!

 

 「あっ!」

 

 「ツムギ!」

 

 「ツムギちゃん!」

 

 疲労の限界がきたのかツムギが足をもつれさせて転んでしまった。足が止まった俺たちに向かって拳銃が火を噴く。すんでのところでブーメランのような端末「シグナス」がピンポイントバリアを展開して俺たちを守ってくれた。歌声が近くまで来ている。そう思った瞬間、すたっと俺たちの隣に誰かが着地した。限界が来つつある体に言うことを聞かせてそっちを見ると歌いながらシグナスを操作している女性、赤い髪に垂れ気味な青い瞳をした女性が心配そうに俺たちを見ていた。彼女は…カナメ・バッカニア。ワルキューレのリーダーでマネージャー。ゼントラーディの男性は彼女の歌が聞こえた瞬間に動きを止めて、力を抜いた。

 

 やっぱり、ヴァールなのか?そうだとしたらこの世界が俺のいたガンダムビルドファイターズの世界ではなくマクロスΔの世界にアリスタの力で移動したということが確定的になる。完全に動けなくなった俺たちを守るためなのか彼女は動くことなく歌いながらシグナスを操作し続ける。降り注ぐ弾丸の雨から俺たちを守る彼女。歌の歌詞はわからないけどリズムは同一、擦り切れるほど聞いた「恋!ハレイション THE WAR」の音楽。次第に爆発音や銃の射撃音も聞こえなくなり聞こえるのは彼女たちの歌だけになる。

 

 そうして、戦闘音が完全に静かになった時、音楽と歌が止んだ。俺たちの近くにいた彼女…カナメさんの近くに衝撃を全く感じさせないほど静かに降り立った黒のVF-31…コックピットを開けたその中から出てきたのは長身の男性だ。ヘルメットで顔がわからないけど俺の知識が間違っていないのなら彼がカナメさんのバディであるメッサー・イーレフェルトのはず。もう完全に何が何だか分からない俺たちが身を寄せ合っているとカナメさんが腰を折って俺たちと目を合わせてくれた。

 

 「■■■■?■■■■■■■■■■■■?」

 

 やはり、言葉がわからない。通じてないのが向こうも分かったらしく困った顔をしている。とりあえず言葉は伝わらずともジェスチャーは伝わるだろうという考えのもとぺこりと頭を下げた。そうすると彼女も言わんとすることは分かったらしく笑ってくれた。そうすると彼女は爪につけているデバイスで空間に画面を投影して何やら話している。そうしていると他のデルタ小隊のVF-31に加えて残りのワルキューレのメンバーも俺たちのもとに集まってきた。被害者は他にも山ほどいるはずだ。新統合軍に任せるのならばすでに撤収するはず。俺たちを囲む必要はない。もしかして、俺たち犯罪者扱い?

 

 いや確かに突然現れて(不法フォールド&不法入星)逃げ回った(混乱の誘発)りしたけど…言い訳できないじゃん。不可抗力だとしても。真っ青になった俺を見てまた心配そうな顔になったカナメさん、何も反応しないメッサーさん。同じく心配そうなグラマラスなボディにピンクのツインテールなマキナ・中島、興味深そうな目で俺たちを見る緑色のショートヘアで小柄なレイナ・プラウラー、我関せずな紫と白が入り混じった不思議な色の長い髪をした美雲・ギンヌメール。この4人しかいないってことはまだ主人公であるハヤテ・インメルマンとヒロインであるフレイア・ヴィオンは加入してない、のかな?いやそんなことはどうでもいいか。牢獄とかに入れられないといいなあ。

 

 とりあえず、3人で頷きあって両手をあげたら、全力で首と手をぶんぶんと否定された。バトロイドでもそれやるって器用ですねチャックさん…。犯罪者扱いが違うなら何だろう、と思っているとワルキューレ用らしいVTOL機が降り立った。ドアが自動で開く。ああ、帰還ポイントがここだったのね。お邪魔してすいませんでした。助けてくれてありがとうございます。そう思ってると体が浮いた。何事!?と首を動かすとメッサーさんが俺を軽々と持ち上げたところだった。ヒマリはマキナさんが、ツムギはカナメさんがそれぞれ持ち上げている。そして頭の上に疑問符を浮かべた俺たちをぽいっと軽い感じでVTOL機に入れるとメッサーさんは出ていきワルキューレは乗り込んできた。

 

 体につけっぱなしだった荷物を外され、予備のシートらしき椅子にポンと座らされた俺たち。抵抗する力は残ってないのでされるがままである。不安そうなヒマリをマキナさんがぎゅっと抱きしめてからシートベルトを装着、ツムギはカナメさんに頭を撫でられて困惑気味だが同じくシートベルトを着けられた。俺もぽかんとしながら見様見真似でシートベルトを着ける。困惑している俺と美雲さんの目が会った。彼女は俺に微笑みかけると片手でワルキューレのハンドサインを作ってくれた。ファン根性よりも今は困惑が勝る。

 

 ワルキューレもシートに座ってベルトをつけると自動操縦らしいVTOL機が飛び立った。窓の外でVF-31も離陸しているのが見える。そこで、緊張の糸が切れてしまったのかどっと疲労ともう少しで死ぬところだったという恐怖が同時に襲ってきた。過呼吸一歩手前の呼吸を無理やり抑え込んでいると唐突に目の前が暗くなる。意識が持っていかれる。起きた時、ヤジマの研究所に戻ってるといいなあ、とだけ思って俺の意識は消えた。




はい、1話完結じゃなくて続きます。作者頑張ります。

 一応予定としてはマクロスΔ編を書いた後本編こぼれ話やビルドファイターズトライ突入前の話、余裕があったらトライの話もこっちで書きたいと思います。よろしくお願いします。s

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