「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集 作:カフェイン中毒
「…この子、どうしよう」
「ブニャ~~~?」
「よく見ると、ちょっとかわいいね。ドラ猫っていうのが形になった感じ?」
「ホントにアザラシなんだな」
ツムギが捕獲したお魚咥えたウミネコを俺たち3人が囲ってああだこうだと話し合う。あまり凶暴なタチではないらしくおっかなびっくりヒマリが撫でるのを気持ちよさそうに受け入れている。ゴロゴロと喉を鳴らしているウミネコにほっこりしていると、唐突にウミネコが咥えていた魚を放り投げて口でキャッチ、ごくんと丸呑みした。おお、そこら辺はアザラシなんだな。
「お魚~~~~!!!」
「…マキナさんのだったの?」
「ヴニャン」
「…もうとっちゃダメ。わかった?」
「ニャ゛ン」
「ホントに分かってるのかね~」
ツムギの問いかけに律儀に返事をしてくれるウミネコ、分かってないなコイツ。繰り返す感じが伝わってくるわ。そのままツムギが海へ返すとすぐさま戻ってきたウミネコがツムギの手に何かを置いた。それは3枚のキレイな貝殻で、見る角度で虹色が反射するオパールのような輝きをしている不思議なものだった。そのままウミネコは潜ってどっかに行ってしまった、食事への代金のつもりだろうか。
「…もらっちゃった」
「よかったな、ツムギ」
「きれいだね~~!猫の恩返しだ!」
「ハヤテ、さっきからくしゃみばっかりだけど…大丈夫なん?鼻も真っ赤になっとる」
「猫アレルギーなんだよっくしゃん!あー、もう最悪」
「何を騒いでいる」
「あ、メッサーくん、よかった!どう?ご飯一緒に食べない?」
「いえ、自分は済ませてきましたので」
くしゃみをしているハヤテさんをその長い長身で見下ろしているのはメッサーさん、パンと顔の前で手を合わせて笑顔で食事の誘いをするカナメさんをすげなくかわして寮に帰っていこうとする。あ!あっぶね!これ渡さねーと!
「すいません、メッサーさん。ちょっといいですか?」
「…何だ」
「あの、よかったらこれ受け取ってください。その、いろいろお世話になったので」
「………任務だ。気にしなくていい…受け取っておく」
俺が差し出したのは一枚のスケッチ。昨日、スケッチブックと鉛筆を借りてせこせことデルタ小隊の訓練の時のカタパルトデッキの片隅を借りて描いたデルタ2のジークフリートだ。あのホットミルクはとてもありがたかったので今できるお礼を考えた結果こうなったわけで。出来としてはまあ悪くないと思う。それを見たメッサーさんはいつもと同じ言葉を返しはしたが受け取ってはくれた。そのまま彼は裸喰娘娘の2階に消えていった。
「「「「「新入りを祝ってかんぱーい!!」」」」
「よく来たフレフレにハヤハヤ!さあ食べて飲んで楽しむがよいぞ~~!」
「くらげ、おいしい」
「お、おう…」
「アルト君とヒマリちゃんとツムギちゃんもたくさん食べてね。何が食べたい?」
「あ、すいませんわざわざ…」
何というか、宴会という言葉がしっくりくる。デルタ小隊とワルキューレのほぼ全員が集まっているという銀河のファンたちからしたらかなりヤバい状況ではあるのだけど。というか裸喰娘娘の料理美味しいな。クラゲチャーハンが一番好きかもしれない。塩っけがちょうどいい。もぐもぐとご飯を食べているとハヤテさんに一通り絡んだマキナさんがこっちにやってきた。
「ねーえアルアル~」
「なんでしょう?」
「この前の動画の続き、見せてほしいな~って。すぐ切り上げちゃったでしょ?」
「ああ、はい。どうぞ」
そんなこんなで食事会は途中からみんなして俺のスマホを覗き込む状態に変わってしまった。画面小さくて済まねえ…と思ってると「じゃじゃーん!こんなこともあろうかと接続端子を作っておきました!これを、こう!」とマキナさんがケーブルを俺のスマホにぶっ刺すと大画面&大音量でツムギVSチョマーさんの動画がホログラフで流れだした。最初に唸ったのはアラドさんだ。
「ほお、坊主、乗ってるのお前か?」
「こっちです」
「…アルトが作った、私のヅダ」
「へえ、動きがいいな。このビームを撃つゴーストみてーなのとでかいデストロイド、下手な戦艦よりも弾幕が濃い。それをよくもまああそこまでデストロイドで避けるもんだ。近接武器で撃墜までしてる、評価にするならかなり高いぞ」
「なんだ…これ。戦争…か?」
「アルアルの故郷の遊びなんだって。模型を動かして戦うらしいの」
「これが玩具だあ!?マジで言ってんのか!?」
「ほ、ほわ~~~で、でかるちゃ~~~」
ツムギの戦いにそれぞれコメントを残してくれるみんな。ツムギもヒマリも「…ここ、チョマーさん先読みが完璧すぎて当たるところだった」「あ~ひやりとしたよね」みたいな感じでしみじみと振り返っている。そうなんだよなー、チョマーさんジェスタキャノンで来ると思ったからデストロイガンダムが出てくるなんて夢にも思わなかったんだよ。で、スキュラと疑似マクロスキャノンのつばぜり合いが始まり、ヅダがビームの中を突き進もうとした瞬間プツン、と画面が切れた。
「あ、電池切れた」
どっ、と手に汗握ってたワルキューレとデルタ小隊の面々、ついでに見ていた周りのお客さんが一斉にずっこけた。大事に大事に使ってたけど流石にな。エリシオンに戻ったらポータブル充電器につながなきゃ。でもそれも限界だよな。がったんと音を立ててマキナさんが立ち上がる。
「も~~~~いいとこだったのに~~~!アルアル!充電器ってどういうの!?電圧とか調べて作るから!」
「いいんですか?どうお願いしたもんか迷ってたんですけど」
「勿論!大事なものでしょ?ちゃんとお願いして!レイレイ、ごはん!」
「はい、マキナ」
そう言ってマキナさんはレイナさんに手を差し出す。するとレイナさんは取り皿に山盛りの料理を盛ってマキナさんに手渡す。やけ食いをし始めたマキナさんを見て周りもいつも通りに戻ったようだ。チャックさんが追加の料理を運んでくる。カナメさんが俺たちでも食べられそうなものを取り分けてくれた。お礼を言った俺たちは、料理をありがたく頂くのだった。クラゲまんうめえ!
「ハヤテ候補生!どこにいるのですか!?」
「あれ?ミラージュさんだ!こんにちはっ!」
「…こんにちは、です。怒ってる?大丈夫?」
「ミラージュさん、お疲れ様です。ハヤテさんがどうかしたんですか?」
昨日、アラドさんに送られてエリシオンに帰った俺たち、午前中は開いているらしいレッスンルームを借りてワルキューレのライブ曲を練習していたんだけど、午後はワルキューレが使うという話なので楽器と場所を変えているのである。場所はエリシオンにいくつかある外に出るための扉近くの展望デッキ的な場所。いい海風が吹くんだよね。実はアイテールのカタパルトデッキを間借りしようとしたんだけどヒマリの鼻歌でデカルチャーが起きたのでガチ演奏したら仕事にならないんじゃないかという勝手な憶測を元にカナメさんとアラドさんに許可とってここを借りてるわけです。あと楽器は星の風土に合わせて作ってあるので塩水につけるとかでもしない限り大丈夫なんだって。ビバ異星技術。外でする演奏も嫌いじゃないよ。
で、そこに怒りをあらわにしながらやってきたのがミラージュさん、どうやらハヤテさんを探しているらしい。そういえば飛行の実技以外はサボってるんだっけ、それで初日からバックレるもんだからそりゃあ、怒りもひとしおだよね。今のミラージュさんハヤテさん嫌いみたいだし。
「いえ、ハヤテ候補生が座学に現れないものですから…どこで道草を食ってるのかと」
「ハヤテさん授業に来なかったんですか?勉強しないと飛べないと思うんだけど…ね、ツムギちゃん」
「…ん、楽器と一緒。ひたすら弾いても分かんない。音符とか記号とか勉強して、ちゃんと弾けるようになる」
「その通り!ツムギちゃんえらい!」
「まったく、こんな子供が当たり前のように努力を重ねているというのにやつときたら…!」
「ま、まあまあミラージュさん。他にどこか心当たりありませんか?ほら、アイテールのデルタ小隊の機体があるところとか」
ヒートアップするミラージュさんがズダン!という物凄い音を立てて足を踏み鳴らした。鍛えられた肉体とゼントラーディの血が生み出すパワーによって生み出された大きな音は、優秀な聴覚をもつヒマリと意外と普段はビビりなツムギをビクゥゥ!!と震え上がらせるには十分だったらしい。こっそり俺の後ろに隠れた二人をみたミラージュさんがあたふたしてる。
「す、すいません大きな音をだして!ハヤテ候補生を見かけたら一報をお願いします!では!」
そう言ってカツカツと音を立てて肩を怒らせたミラージュさんは去っていく。ありゃかなり怒ってるなあ…それはともかくとして…
「一報って、どうすればいいんだ?」
「「わかんない」」
内線の使い方も知らない俺たちは全員でそう首をひねるのであった。ま、まあそれはともかくとして。
「ヒマリのサックスなんて何時ぶりだ?軽音部入ってからはやってないよな」
「家ではずっと吹いてたよ?お母さんの楽器だし」
「…ヒマリ、いろんな楽器できる、いいな」
「えっへへ~頑張ったんだよ!」
そう、今ヒマリが持ってるのはサックスだ。いわゆるアルトサックスというやつ、何を隠そうヒマリのご両親はジャズ系の音楽家なのだ。お父さんがベーシスト、お母さんがサックス奏者、ちなみに祖母がピアニスト、祖父がギターである。その英才教育をぎゅぎゅっと詰め込んでおまけに歌の才能をマックスまでトッピングしたのが何を隠そうヒマリである。そんで俺が持ってるのがベース、5絃のベースである。ツムギは変わらずシンセサイザー。今日はピアノの気分、そう今からやるのはジャズセッションだ。実はこれ、アドリブの練習になるんだよね。あと楽しい、これ重要
「じゃあやろっか~!いくよ~!」
そういうヒマリの合図でセッションが始まる。貸し出してもらった鞄サイズのフォールドアンプからベースの重低音が鳴り響く、ヒマリのサックスの音とツムギのメロディーがエリシオンに反響してラグナの空に響いた。
「いや~、いいな。楽しいわ」
「ね~~~!やっぱりジャズも私は好き!」
「…さっきのヒマリのソロ、私大好き」
「やった~!ツムギちゃんぎゅうう~~!」
「…ぎゅう」
適当なタイミングでセッションを切り上げた俺ら。楽器を立て掛けて地べたに座り込む、眩しい太陽が照らしているが、風があるせいかあまり暑く感じない。ヒマリがツムギに熱烈なハグをしながら暫く雑談に花を咲かせてると扉が開く、ミラージュさんかなと思ったらめんどくさそうな顔をしたハヤテさんだった。
「あ、ハヤテさん。ミラージュさんが探してましたよ?座学にこいって」
「知ってるよ、めんどくさいから逃げてきた。飛行実技には出てるんだからいいだろ」
「…そうなの?それで、ワルキューレを守れる?」
「デルタ小隊の任務は戦闘じゃない、それだけだよ。お前らと一緒」
「どうしてここに来たんです?」
ツムギの率直な言葉にぶっきらぼうに返してくるハヤテさんにあ、これは空気が悪くなると思った俺がハヤテさんにそう尋ねる。彼も態度が悪かったかもみたいなことは思ってるようで俺の話に素直に乗るように口を開いた。
「…いい感じの音が、聞こえてきたんだ。そしたら、お前らがいた。なあ、聞かせてくれよ。お前らの音楽」
そのハヤテさんの言葉。昨日いいですよって言ったし俺は構わない。団子みたいにわちゃってたヒマリとツムギもオッケーらしくそれぞれ楽器に手をかける。んー、ドラムがいないとなかなか厳しいんだけどこいつで行くか。あ、ミラージュさんが怒りに来たら俺たちの分怒られてくださいねハヤテさん。
無音の間の後に演奏が始まる。ジャンルはいわゆるフリージャズ、イメージするのは機動戦士ガンダム・サンダーボルトでイオ・フレミングが機体の中にテープを持ち込んでまで聞いていたジャズだ。激しいドラムはないけれど、俺のベースとツムギのシンセのトランペット音、そしてヒマリのアルトサックスがマッチした音楽になっている。
「…いーい感じだ。よっと!」
おお、と思わず感心してしまった。俺たちのアドリブの応酬の中にある根本のリズムを掴んだらしく、タップダンスのような感じの創作ダンスをハヤテさんが躍りだしたのだ。なるほど、まだ早いけどこれがインメルマンダンス、かな?心底楽しそうに音楽に乗るハヤテさんのステップが過熱する。悪くない、どころか確かにこれはいい感じ。もっとアドリブぶち込んでやれ!リズムだけは崩さずな!
気づけば結構な時間、その状態が続いていた。汗を流すハヤテさんは心底楽しそうで、その楽しさが俺たちにも波及してる感じ。ふう、と一息ついて演奏をやめる。ハヤテさんが、手を飛行機に見立てて太陽にかざしていた、そして扉の前にはいつの間にいたのかミラージュさんの姿。あっやべ!彼女は俺たちのセッションを聞いていたらしくハッと我に返った感じでズンズンとこちらにやってくる。
「ハヤテ候補生!」
「あっやっべ…お前ら、ありがと!いい曲だったぜ!んじゃな!」
「待ちなさい!ハヤテ候補生!」
そのまま別の扉に逃げ込むハヤテさんをポカンと見送った俺たち。そしてそれを追いかけるミラージュさんを見てさらにポカンとするのであった。
本編がいよいよ大詰めというときに番外編を更新する作品があるらしい。そして番外編でヒロインの情報が出る作品もあるらしい。この作品の事やな!
本編はしばらくお待ちくださーい。多分1週間かそこら?かな。そして話が進まねえ!次はフレイヤとの絡みが書きたいのでもっと進まないと思うの。
ではまた次回でお会いしましょう!