「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

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ワルキューレ・レッスン

 ハヤテさんはどうやら捕まったらしく、俺たちが再びジャズの演奏を楽しんでいるところへドアを開けて引きずられて登場した。どうやらこの場所を経由しないと通れない場所に逃げ込んだらしいがミラージュさんは一枚上手だったようで、先回りを食らってあえなく御用とのこと。俺たちの状況に目を丸くしていたがそのまま講義室へ行くのかドアを開けてご退場なされた

 

 「ひゅー!」

 

 「いいなこのリズム!」

 

 「デカルチャー!」

 

 現在俺たちの居場所は変わってないが、整備士とかデルタ小隊じゃない別の小隊、つまりVF-31「カイロス」を使用している部隊とか内勤の人が集まってプチ演奏会みたいな感じになってる。売店でお菓子やらジュースやら買ってきてかぶりつきで見る始末。大丈夫なのかケイオス、こんな感じで

 

 まあそれはさておきカイロスとジークフリートとの違いは翼とフォールドクォーツではなくフォールドカーボンを使用していることと、ワルキューレと同調して機体性能が飛躍的に上がるフォールドウェーブシステムが搭載されているか否か。つまり基本的に同じ機体、というかジークフリートの大本がこっちみたいな感じか。

 

 まあ音楽は聴かれるためにあるので俺たちは演奏すること自体に全く拒否感はないんだけど、ここで一発アドリブ、合図出して二人が頷いたので三拍おいて転調、ヒマリのサックスが奏でるのはジャズアレンジバージョンの「恋!ハレイション THE WAR」知らない曲より知ってる曲の方がテンション上がるよね~っていうだけだけど、これが大受け、ケイオスの中にもワルキューレのファンはたくさんいるんだな。当たり前か。

 

 「おいおい、何やってんだこれは…」

 

 「あ、アーネスト艦長…」

 

 「聞いたこともない音楽が聞こえると報告を受けて来てみれば、仕事もせずに何をやっている!さっさと持ち場に戻れ!」

 

 まさかやってきたのはアーネスト艦長、やっぱ仕事をサボってやってきたのかみんな。演奏をやめてこれ怒られるやつだーと思って全員で首をすくめて怒声に備える。すると聞こえてきたのはお叱りの言葉ではなく優しい言葉だった。

 

 「すまないな、迷惑をかけた。今後は演奏する場所もきちんと用意せんといかんな!ハッハッハ!」

 

 「…怒らないの?」

 

 「何を言う、きちんとお前たちは許可を取って演奏していただろう!ならば俺が怒る権利はない!だが仕事が手につかないのは問題だな…かといって練習も必要だろう。となれば場所の変更だな…」

 

 「えー艦長横暴~!」

 

 「休憩時間ぐらいいいじゃないっすか~!」

 

 「ええい黙れ!とっくに休憩時間は終わっとるわ!さっさと仕事に戻らんか!」

 

 ぶーぶーと俺たちの演奏を聞いていた人たちからのブーイングを一喝したアーネスト艦長、こんな態度をとっても大丈夫だなんてケイオスってでかいわりにかなりアットホームな会社なのか?それとも平時だから緩いだけ?蜘蛛の子を散らすようにドアから出ていく社員の人たちや作業員の人たち、アーネスト艦長も出ていくと思ったらドカッと俺たちの目の前で胡坐で座った。

 

 「アーネストさんはいいの?行かなくて?」

 

 「俺は今から休憩なんだ。折角だし一曲聞かせてくれ。なぁに、これからも練習できる場所は確保するようにする」

 

 「俺たちはいいですけど、社員さんになんか言われません?」

 

 「気にすることはない。あいつらはきちんと切り替える、ケイオスの社員だからな」

 

 大丈夫かな…と思いつつも俺たちは演奏を再開する。ほお…と言いつつ聴く体制に入ったアーネスト艦長のために俺たちは出来る限りいい演奏を届けるために集中するのだった。

 

 

 

 「アーネストさん、音楽大好きだったんだね~!」

 

 「…3曲アンコール、実はきっと自分が聞きたかっただけ?」

 

 「さーな。でも気に入ってもらえたんだろ。嬉しいじゃん、それ」

 

 あの後、アーネスト艦長の3回アンコールに答えた俺たち、名残惜しいがと休憩を終えて去っていったアーネスト艦長を追うように楽器を片付けて背負い、アイテールの中、ワルキューレが使っているレッスンルームに行くことにした。楽器の片づけである。ついたレッスンルームの扉の前、練習中に邪魔しちゃ悪いので音楽とか声が聞こえていないのを確認したうえで静かにそっと開ける。

 

 「あら?アルト君たちじゃない。もう練習はいいのかしら?」

 

 「はい、すいません楽器持って行ったりして」

 

 「気にしなくていいよ~~!誰も使わなかったんだからアルアルたちが使ってくれて嬉しいくらいだよ!」

 

 「あと、噂になってた。艦内ネットワークで。私も聞きたかった」

 

 迎えてくれたのはいつも優しいカナメさん、俺たちが礼をして頭を下げるとフォローしてくれたのがマキナさん、レイナさん。美雲さんはミステリアスな微笑み顔でこっちを無言で見ている。そして最後の一人。

 

 「ごりごり~~…」

 

 「大丈夫ですか?フレイアさん?」

 

 「はっ!だ、大丈夫なんよ!元気元気!ヒマリちゃんにもツムギちゃんにも負けてられないかんね!」

 

 木製の床にぶっ倒れてたフレイアさんがヒマリの問いかけにバッ!と体を起こして答える。初日のレッスンはかなりきついものだったのだろうか。それともダメ出しが多くて凹んでいるのだろうか。高い身体能力をもつウィンダミア人がここまでなるなんて…かなりしごかれていると見える。

 

 「ちょうどよかったわ!今からアイテールのカタパルトデッキまで行って別のトレーニングをするのだけどアルト君たちもどうかしら?多分、ライブでやってもらうことになると思うの」

 

 「俺たちも、ですか?」

 

 「…私たちにもできること?」

 

 「何するんだろう…見当もつかないや。アルト君なんだと思う?」

 

 「………スカイダイビングか?」

 

 Δのアニメでそういえばワルキューレの登場シーンってだいたい空挺部隊みたいにスカイダイビングして登場してたなあと思ったのでそれを口に出す。風に乗れば飛べるというフレイアさんの言葉通り風に乗ってみようぜという話だろうか。バンジージャンプくらいの感じだったらいいんだけど。

 

 「あはは!違う違う!それはもっと先の話よ!ふふっ…行ってみてのお楽しみね」

 

 俺の発言の何が面白かったのか口に手を当てて笑うカナメさんについて行くことになった俺たちは楽器の手入れを手早く終わらせてワルキューレの面々にくっついていく。やっぱりレイナさんはツムギの事を気に入ったのだろうか?ぽむぽむと頭を軽く叩きながら色々話している。ヒマリはフレイアさんと歌についてあーだこーだと話している。お互いに未知の曲ばっかりだからこんど歌ってみよう!みたいな話。んで俺はカナメさんに捕まってここでの生活はどうだの問題はないかとヒアリングされている。明日服を買いに行きましょうか、と言われたのでありがたく受けることにする。私服がないのはきついよ。ケイオスの制服かっこいいんだけど、普段着にしようとは思えないし。

 

 そんな感じでやってきましたアイテールのカタパルトデッキ、何時もならデルタ小隊が使っているらしい場所ではあるが、合同訓練の時にも使うとのこと、んで俺たちの目の前にあるのは…シグナスだ。あのブーメラン型の無人誘導防御端末、ピンポイントバリアを張ったり掴まって飛んだりというなかなかに多機能かつ便利なものだな。あとホログラフ投影したりしてワルキューレのライブに欠かせないものだ。ジークフリートにミサイルの代わりとして搭載されるものでもある。つまり、超大事。

 

 「はい!シグナスの操作訓練を開始します!じゃあ初めての人もいるからマキナ、説明」

 

 「はぁ~い!シグシグちゃんは、ワルキューレがライブ中に操作する誘導端末だよ!ピンポイントバリアでお客さんを守ったり、演出のホログラフをはったりとにかく色々できるの!ジクフリちゃんに乗ってるシグナスは一機当たり16機!最低でも3機は同時操作できるようにならないとダメだよ~~!このフォルムが、きゃわわっ☆」 

 

 「基本的に自動で動いている…けど鎮圧ライブで私たちを守ってくれる盾、自分で動かせないといざという時、ドカン」

 

 「ほ、ほえ~~~うまくできるんかね…」

 

 「出来るようになってもらいます!アルト君たちも、ワクチンライブでも使うものだから一応、ね?まずは1機から!」

 

 「はい、アルアルとヒマヒマとムギムギのマルチデバイスね~~。日本語対応してあるから、人差し指と中指につけてVサインして~?」

 

 言われるがままにワルキューレが使っているものと同型らしい付け爪型のデバイスを手に付けてVサイン、すると爪の先に小型のホログラフが出てついでに音楽も流れ始めた。ほんとに日本語対応になってる…!この世界に来て日本語の文字を久しぶりに見た。シグナスの取り扱い説明の動画が流れる。

 

 ふむふむ、外装はフォールドカーボンを作る際に出るフォールドプラスチックというもので、最高速は時速500㎞…はぁっ!?そんな速度出るの!?いやゴーストと比べると遅いのは当たり前だけど…ああ、そっかピンポイントバリアを張ったりして守るのが仕事だからある程度の速度が出ないと間に合わないのか、納得。んで肝心の操作方法は…脳波コントロールとマニュアル制御…マニュアル制御のこれって…!

 

 「ねえアルトくん、これって」

 

 「…ガンプラバトルとほとんど変わらない…?どころか簡単になってる」

 

 「だよな。コンソールはないけど指の動きと掌の動きで動かせるのか…もしかしたら、ガンプラバトルの操作が応用できるかもしれん」

 

 「ん~~?アルアルどうしたの?分からないところあった?」

 

 「いえ、大丈夫です。全部見終わりました」

 

 「おっけ~~!それじゃ、シグシグちゃん、起動!はい、取り敢えず1機ずつね!動かしてみてね~~!」

 

 そうしてマキナさんの操作で俺たちの前にシグナスが1機づつふよふよと浮いてやってくる。チュートリアルの操作に従って目の前のシグナスとデバイスを接続、左、右、上、下、と動かしてみるがレスポンスがかなりいい、作りこまれたガンプラを操作するときと変わらないか若干上回るくらい。フレイアさんがむむむと両手を出しても動かせない感じでカナメさんがこうしてみてとアドバイスをしてるのを横目に俺たち全員はスッとシグナスを動かすことに成功した。

 

 「あれ?凄いねアルアルたち!そんなパッとできるなんて!」

 

 「いや、実はこれガンプラバトルとほとんど操作が変わらないんですよ。というか武装選択の操作が必要ない分簡単かもしれないです」

 

 「むむっ!そうなの!?アルアル、ちょっとシグシグ増やしてもいい?」

 

 「いいですよ。5機くらい増やしてください」

 

 ついでに言うとバルキリー操作の時の変形、手足を使うアンバック、さらには姿勢制御のための細かなブースターの制御の操作もなくなったという感じだ。ぶっちゃけ言うと物足りないくらい操作が簡単、現在俺はガンプラバトルで頑張れば10機を同時操作できる。ちなみに俺の同時操作の師匠であるカイザーさんは40機超、あの人ヤバすぎる。なんだけどこの操作具合なら多分もっともっと増やせる。コンソールがないのがちょっとあれかな…

 

 マキナさんが引っ張ってきた連結状態の5機のシグナス、俺の操作で接続されて浮き上がり、連結が解除されて別々に動き出す。うん、全然余裕、何だったら指の操作もいらないや。ファンネルを操作するときみたいな思考操作で腕をだらんとしたまま、シグナスが三角だったり星だったりいろんな形を作る。久しぶりにガンプラバトルしてる気分~~!あ、ツムギも5機もらってるや。ヒマリもか、そうだよな~割と簡単だよなこれ。

 

 「あ~~~難しいんよ~~~!!」

 

 「フレイアさん!こうです、こう!」

 

 「おっ?動いた!動いたんよ!ありがとヒマリちゃん~~~!」

 

 難しい~~と頭を抱えたフレイアさんに急いで近づいたヒマリが手を取ってここを、こうとやってみせるとフレイアさんのシグナスが動く。そのまま手を動かしてコツを伝授したヒマリにフレイアさんがありがとうとお礼を言っていた。ルンがピカピカしてるけど、それはウィンダミアの人として大丈夫なのだろうか。

 

 あっ、ツムギ、ちょっと手伝ってくんね?とアイコンタクト。俺のシグナスとツムギのシグナスが同時に動く、俺たちの周りをくるくる回ったり図形を描いてみせたり、やっぱ手足の操作がなくて動かすだけでかなり単純だから割と余裕だなこれ。どう、こんな感じ?数足りねえなこれ、もっと行けるんじゃね?

 

 「もう10機くらい足せません?」

 

 「…私はあと5機」

 

 「それレイレイの最高記録超えるんだけどほんとうにだいじょうぶ?」

 

 「私の最高記録の15機が、超えられるかな…?」

 

 「アルト君たち、どう~~?ってナニコレ!?」

 

 「カナカナ~~アルアル達シグシグの操作滅茶苦茶上手だよどうしよう~~~!」

 

 「私たちよりも、うまいかも」

 

 俺が16機、ツムギが11機を操るのをいったん席を外していたらしく確認に来たカナメさんが俺たちの周りでビュンビュン飛び回るシグナスを見てびっくりしてる。なんかちょっと楽しくなってきたぞこれ。もう20機くらいくれません?俺がもっと足せません?と尋ねたら変なものを見る目で見られてちょっと傷ついたのは内緒だ。

 




 次回に続く~~!

 暫く番外編強化週間ということでこっちを更新します。本編は鋭意執筆中です。

 あと掲示板も作らないとダメですね。皆さん欲しいっていってるので。あー、やること多いけど楽しい。

 また次回お会いしましょう!

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