「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

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SMS・エンカウント

 「ストライクフリーダム」

 

 「…ムウ・ラ・フラガ」

 

 「ガンダム!」

 

 「ヒマリそれさっき言った」

 

 「だってガってきたらつい~~…まだかな~」

 

 シミュレーターの中に閉じ込められて30分、これシミュレーター動かせるんじゃねと思ったけどレイナさんが本当にプロテクトかけたのかデフォルメレイナさんがバツマーク付いた看板をもって画面の中に映って以降反応しなくなったので今できることをしております。具体的にはガンダムしりとり、16周目でガンダムを2回言ったヒマリの負けが確定したんだけどそろそろ開かねーかな。ご丁寧に空調付いてるから熱いとかないんだけど暇なんよ。

 

 そんなことしてると俺の端末が震えた。確認してみるとアラドさんだ。渡りに船の救いの電話が来てくれたと嬉々として電話に出る。

 

 『あ~~~、お、繋がったな。今どこだ?』

 

 「ハヤテさんとフレイアさんとレイナさんによってシミュレーターに隠されてロックかけられました。助けてください」

 

 『何してるんだあいつらは…わかった。すぐに行くからそのまま待ってろ』

 

 そしてぶつっと電話が切れる。それから5分後、シミュレーターが開いた。あーなんか災難だったなあ、と思いつつ俺の上に乗ってるツムギ、ヒマリの順で外に出ていく、そんで俺もシミュレーターの中から這い出る。するといるのはアラドさんだけだ。もしかしてスカル小隊は俺が別人だってわかって帰ってったのかな?申し訳ないことしたなあ…俺は悪くないはずなんだけど、罪悪感が募るよ。

 

 「あの~~…閉じ込められた時にちょっと調べたんですけど…SMSのスカル小隊が来たんですよね?多分、俺目当てで。別人なんですけど」

 

 「向こうさんはそうは思ってないみたいでな。オズマの野郎、とにかく会わせろだのなんだの…フロンティアと本社の方から間一髪通信がなかったらおっぱじまるところだったぞ」

 

 「お知り合いなんですか?」

 

 「新統合軍にいたときに合同訓練でやり合った仲だ。なあ、マジでお前こっちの早乙女アルトと関わりがないんだよな?」

 

 「ありませんけど!?何ですか確かに証明しようがないですけど!遺伝子検査とかできるもんならやって証明したいくらいです!」

 

 「それなんだけどな…今さっきオズマの野郎が持ってきた英雄サマの遺伝子マップ、お前とほぼほぼ一致したんだよ。ほとんど同一人物だって結果だ、どう思う」

 

 「…………えっ?」

 

 思考が止まった。確かに俺は早乙女アルトと同じ顔をしている。けど、それは転生した時向こうにいた時に神様がこの体を作ったからだ。向こうの世界の両親は早乙女アルトの両親とは全く別の姿をしている、名前だって違う。だから俺はそのまま特に気にせず今に至る。俺が拾われたわけでもない、母さんの母子手帳も、俺が産まれた時の写真も臍の緒も保管してあった。遺伝子検査なんて大それたことはしてないけど証拠としては十分だと思う。でもあまりの衝撃でふらついてしまう。おっと、とアラドさんが受け止めてくれた。

 

 「その様子だと本当に知らないみたいだな…とにかく、どうする?会うか?SMSの連中に」

 

 「ちょっと…考えさせてください」

 

 「だろうな、向こうにもそう伝えよう。自室へ行って待ってろ、そっちの二人も、いいな?」

 

 「……はい」

 

 「アルトくん…」

 

 「…アルト、大丈夫?」

 

 二人の言葉に返事を返す余裕もない。なんだか、こっちへ来てからぐらぐらと揺さぶられることが多い気がする。とりあえず、どうするか考えないと。

 

 エリシオンの休憩室で、どうするか考える。二人は一人にしてほしいとお願いしたのでハヤテさんとフレイアさんの所に行っている。バサッとベッドの上で寝転びながら考えを巡らせた。まず、この世界の早乙女アルトは現在も見つかっていない。実際にはこの年代において帰ってきてるという話もあるのだがよくわからない。いないのは事実らしいのでそこはもうどうでもいい。問題なのは俺の身体だ。遺伝子が一致しただあ?冗談きついよ。フォールドなんて時空を超える技術がある世界だ。フォールドの影響で若返っただとかクローンの可能性だと考えられたらやばいぞ。

 

 特にだ、フロンティアに出てきたギャラクシー船団はかなりの科学技術を有している。当然そんな船団を敵に回していたフロンティアもそこら辺の技術があることを重々承知しているはずだ。あれ、詰んでね?これどんだけ否定しても記憶がない本人or本人のクローン扱いされるルートが見える…やべえよどうすんだよ!というか多分ケイオスも本人の可能性を視野に入れるぞ!?

 

 頼むから本人が今すぐどっかにデフォールドしてくんねーかな。どうやって別人でござるって言おう、仮にそれが通ってもじゃあクローンだな!ってなったらSMS激おこになるのが確定じゃん。いもしない黒幕探させるのはかわいそうだし素直に別世界人なんですよ、って言おうかな?うーん、うーん…

 

 ベッドから起き上がって腕を組んでると俄かに部屋の前が騒がしくなる。いや困ります、とにかく会わせなさい!シェリルさん落ち着いて…?シェリルさんっ!?ナニコレどういうこと!?という間に空気圧のドアがプシュッと開いた。ドアの先にいるのは滅茶苦茶困った顔をしてるカナメさんとストロベリーブロンドの美女と緑の髪の美人さん。なんかめっちゃ見覚えあるねんけど…?俺を見た瞬間、二人はやっと見つけたという感じで。

 

 「アルトっ!」

 

 「アルト君っ!」

 

 「ひ、ひとちがいです」

 

 声めっちゃ震えた、どうしようかっこわりぃ。見覚えは間違いなくあるんだけどそれは前世の話であって、今世では完全に初めて見る二人に俺は混乱するのだった。後ろであっちゃ~~~という感じに頭を抱えているアラドさんが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 「…とりあえず、勝手に出歩くなって俺は言ったと思うんだけど?」

 

 「ご、ごめんねミシェル君!シェリルさんがお花を摘みに行ったときに抜けようとしてたから追いかけたんだけど…」

 

 「しょうがないじゃない。アルトがいるかもしれないのよ?たとえ撃ち殺されても探したくなるわ。休憩室にいるって聞いて探してみたけど、ビンゴね」

 

 「だから連れてくのは反対だって言ったんだよ…」

 

 現在俺の目の前で行われてるコント、あのあとすぐに入ってきたアラドさんとカナメさんが俺の目の前に立って壁になってくれたんだけど、それでメッサーさんに連れてこられた見覚えのある眼鏡の人が二人にたいして静かに訥々と説教をかましている。この世界じゃ生き残ったんだね、よかった。だけど心の準備ができない中で突然のエンカウントだ。あと、この二人が来てるならケイオス側も下手な真似できないよね、強制的に排除とかして二人がそれをカミングアウトでもしたらやべーもん。そりゃ言葉でやめてくださいくらいしか言えんわ。全く責められん。

 

 「とりあえず、場所を移しますか。いいな、坊主」

 

 「わかりました。会いたくないでどうにかならないのがよく分かったので」

 

 とりあえずの別人アピールのために皮肉を込めた言い方をしてみたんだけど向こうさんノーダメージだ。俺が立った瞬間思わずといった感じでこっちに駆け寄ろうとした二人をメッサーさんが静止してくれる。メッサーさんと行動を共にする様になって、彼の表情とかがわかるようになったから言えるんだけど、多分メッサーさん怒ってるよこれ。どうしたもんかな~~。もうね、力抜けるよ。と脱力した俺をいつの間にか抱え上げたメッサーさんに空輸された俺はこう思うのだった。どうにでもな~~れ。きっと今俺は目が死んでるだろう。

 

 俵抱きにされて、目が死んでる俺を見るカナメさんは、とても痛ましいものを見る目だった。なんか、今考えてることよりも本能で行動したほうがいい気がする。

 

 

 

 「とりあえず、人違いってどういう痛っ!?ちょっとミシェル!何するのよ!」

 

 「まず謝罪からでしょ。こっちはかなり無理言ってるんだから。オズマ隊長」

 

 「ああ、この度はこちらの突然の来訪及び連絡不備、そして強引な行動をとったことを深くお詫びさせていただきたい。また、丁寧な対応に感謝する」

 

 「そうね、それに関しては私に非があるわ…ごめんなさい。焦ってたの。何か賠償が必要ならするわ、お金でもこっちで歌ってくれっていう話でも無条件で受けるわ」

 

 「ごめんなさいっ!探し続けてようやく見つかったと思ったら、止まれなくてっ!必要なら私からも、シェリルさんと同じようにしてください!」

 

 「申し訳ありませんでした」

 

 移ったのは応接室、かな?改めて、場にいるのは…銀河の妖精、シェリル・ノーム、超時空シンデレラ、ランカ・リーそしてSMSスカル小隊の隊長、オズマ・リー、狙撃手のミハエル・ブランの4人だ。座った途端にいろいろと言葉が出てきたらしいシェリルさんの頭を軽くはたいたミシェルさん、すげえ勇気あるな。長い付き合いだから?俺そんなことできない。それでオズマさんがまず謝罪の言葉を述べて他の3人も謝った。で、口を開いたのはアラドさんだ。

 

 「謝罪を受け取らせてもらう。連絡不備については先日発生した次元断層のせいで9時間前に来るはずだった通信が遅れたらしい。それに関してはどちらにも非はないでしょう。だがなオズマ!こんなVIPを連れてくるならもっと護衛増やしてこい!」

 

 「しょうがないだろうアラド。お忍びなんだ、武装解除できない理由は分かってもらえただろ?」

 

 形式ばった謝罪を終えると突然砕けた口調になる隊長二人組、同じ新統合軍出身とはいえこんなにも仲良しなのか?あとカナメさんがめっちゃそわそわしてる。主にランカさんの方を見て。なんだろう?そう思っているとアラドさんが再び口を開いた。

 

 「本題に入りましょうか。あなた方の目的は、現在ケイオス支部で保護しているこいつが、8年前MIA判定されたスカル小隊所属の早乙女アルトかどうかを確認しに来た、ということでよろしいか?」

 

 「そうだ、目の前にしているとどうも小さくなった本人にしか見えないんだがな…違うとは思えない。アラド、どういうことなんだ?」

 

 「それに関してはこちらで既に確認している。フォールド事故での転移ではあったが、本人の聞き取りと年齢、状況証拠もろもろを含めて別人だという結論だ」

 

 「そんな…あの…アルト君、なんだよね!?覚えてる?私、ランカだよ!ランカ・リー!」

 

 「あら、私の前にいるのはただのそっくりさんということかしら?確かに…ちょっと小さいけどね」

 

 ますます言いだしづらいんだけど…だけど言わなきゃダメなんだよな…こっちに呼びかけるランカさんと挑戦的にこっちを見るシェリルさん。そうだよね~ここまでそっくりで名前も一緒でDNAまで一致してたらほぼほぼ本人だもんね~~~…よしっ!いうぞ!

 

 「えっと、その…俺はあなた方が探してる人じゃないです。見ての通り、翻訳機がないとこっちの言葉も分かりませんし、あなた方とも会ったことはないです。あの、アラドさん」

 

 「ああ、わかった。全部言わんでいい。まず、こっちが本人じゃないと断定した証拠から上げさせてもらう、とりあえずメッサー、資料映像を」

 

 そうして映し出されたのは俺たちが保護されたあの戦場の映像、おそらく監視カメラの映像だが、俺たちが紫色のデフォールドの光ではなく緑色の粒子、プラフスキー粒子が唐突に空間にあふれ出して、その中から俺たちが落ちてくる映像が映っていた。そこでカナメさんから当時の状況説明、それと俺たちが保護された後の話と聞き取り調査の結果、アリスタという物質の現在特定できてることが説明される。話が進むにつれてランカさんの髪がしょぼくれていった。感情と連動してるのは分かってたんだけど…大変いたたまれない。俺としては目を逸らすしかないのだ。それで、全部の説明を終えた後、ミシェルさんが眼鏡の下の瞳を鋭くした。

 

 「なるほど、異世界にアリスタ…オズマ隊長、姫のやつ…もしかしたらこの世界にいないのかもしれませんね」

 

 「…かもな。だが手掛かりにはなりそうだ。なあ、坊主…本当に違うんだな?」

 

 フロンティアの事件から8年たってるからか年を重ねて渋さを増したオズマさんがそう尋ねてくる。かなりこちらに気を使って言葉を選んでくれてるようだ。多分、本当にかなりの時間を捜索に費やしてやっと見つけた希望だったのかもしれない。だけど、俺は彼じゃない。彼は彼で、俺は俺だ。この人たちの求める早乙女アルトじゃない。だから、違うと答えなければならない。

 

 「ごめんなさい…やっぱりあなた方には会ったことはありません。あなた方の期待には、沿えないです。ごめんなさい」

 

 「…そう…か。いや、君が謝る必要は全くないんだ。きっと怖い思いをしただろう、俺達こそ…すまなかった」

 

 「オズマ、すまないがこれ以上こいつに精神的な負担をかけるわけにはいかない。ここで退席させるが、いいな?」

 

 「ああ、分かっている。ランカもシェリルも納得してくれ。ミハエル、いいな」

 

 「…うん」

 

 「…ええ」

 

 「了解」

 

 「アルト君、立てるかしら?…部屋まで行きましょう。ヒマリちゃんもツムギちゃんも待ってるわ」

 

 「…はい」

 

 そう言って俺はカナメさんに促されて席を立った。深く頭を下げて、席を立つ。カナメさんと一緒に部屋を出る前に見た、ランカさんとシェリルさんの顔はとても見てられるようなものじゃなかった。こっちの早乙女アルトがどっかで聞いてるならさっさと戻って来いってケツを蹴り上げてやるのに。




 はい、そんなわけでギャグにはならなかったSMSエンカウント編です。そりゃあね、無理だよね。そっくりな別人物とか詐欺だよ詐欺!

 で、現在どうしようかなってなってるのがSMS共闘ルートにするかウィンダミア宣戦布告ぐらいまで出して戦争が始まったらあぶねえからってフロンティアに戻らせるかです。

 共闘ルートにしたらどう考えてもウィンダミアがボッコボコにされて風の歌を歌っているハインツ陛下が壁に叩きつけられるくらいの歌パワーを発揮しそうなんですよねフロンティアの二人って。仮にSMSの二人がデルタ小隊入りしたらゴースト全部ミシェルさんが狙撃しちゃいそう。

 まあ適当に決めます。本編ほど頭を悩ませて書いてるわけではないのでサクサクかける息抜きみたいなイメージ。

 そんなわけで次回もよろしくお願いします

一応確認 どっちがいい?

  • SMS共闘ルート
  • フロンティア組帰還ルート

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