「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

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トライ編
母校に帰ると懐かしい気持ちになる


 「おお~~!かわんなーい!」

 

 「…懐かしい。通ってた時のまま」

 

 「変わんねーな、間違えて下駄箱行きそうだわ。来客用の窓口どっちだったっけ」

 

 どうも、サオトメ・アルト20才、職業は自営業兼プラモビルダー、最近幼馴染二人のアタックに陥落しかけてる気がする転生者です。どうぞよろしゅう。ちゃうねん、もう二人の気持ちには気づいてるし俺も責任を取るべきだと思うとるんやが二人いるねん、どっちか選ばんといかんと思っとったら二人して纏めてもらってください言われて宇宙猫になったんです。それでええんか、世間は許さない気がするんやが。なお外堀は全部埋めてある模様。いつの間にオッケー出してんですかマイファーザーマイマザー。二人の両親もいいよーって軽くない?なので責任とれるようになったら改めて背負わせてくれってお願いした。尻に敷かれそうな気がする。

 

 出すところに出したら殺されそうなあとは俺が墓穴を掘るのを待つばかりの現在の状況はともかくとして、今俺と幼馴染のヒマリとツムギは3人そろって6年間通った聖鳳学園にやってきてます。目的は7年前俺と初めてガンプラバトルをしたナイスガイ、ラルさんに呼び出されたからです。何でも、ガンプラバトル部の練習に付き合ってやってほしいという話なわけで。

 

 なんでも詳しく聞くと現在聖鳳学園には総合的に模型を扱う模型部とガンプラバトルを主軸に活動をするバトル部の二つのプラモ系の部活があって、大多数は模型部に所属しておりバトル部は風前の灯火なのだそうだ。まあ模型部に入る人たちの大多数の理由が3代目メイジン・カワグチが部長を務めていたからというものなのでしょうがないっちゃしょうがない。人気だもんあの人。今インドにいるらしいけど帰ったら飲みに行かないかって誘われてるし、ストレスもあるんじゃないかな?お酒弱いのに。

 

 んで打って変わってバトル部の方、人気がない。なんでかって言ったら模型部が強いから。バトルが強いんじゃなくて人数が多いほうが人をたくさん引っ張れるってだけの話。あとバトル部の目的、模型部はバトルはあくまでサブで模型を作る方を主眼に置いているらしいがバトル部は「全国大会優勝」が最終目標なのでバトル漬けになるのが分かってるし大会にも出る。要は意識高いって勘違いされてるわけだ。悲しいことに。

 

 でもなー、悪いんだけど俺たちじゃあ役に立てない気がするんだけど。バトル部が出場を目指す大会はガンプラバトル世界選手権だ。レギュレーションでガンプラと決まっているわけで俺たちがやっている無差別級じゃないんだよね。ラルさんにもそれは確認とったんだけどそれでもいいから来てくれってお願いされたので来ました。

 

 うーん、俺だけじゃダメやったんやろうか。自営業で基本空いてる(忙しくないとは言ってない)俺はともかく人気歌手のヒマリや締め切りに追われる作家のツムギまで呼び出してるし、ええんかお前らラルさん優先して仕事ほっぽり出して。え?ラルさんにお世話になったから当然?そりゃごもっとも。二人が無理してないならそれでいいけどさ。

 

 「あら?まあまあまあ!アルト君にヒマリさん、ツムギさんまで!どうしたの?学校まで来て!」

 

 「あ!マナ先生!お久しぶりでーす」

 

 「…マナ先生、こんにちは」

 

 「あ、どうも先生。ちょっとバトル部の方に呼ばれまして。お元気そうで何よりです」

 

 来客用の玄関で受付を済ませた俺たちが校舎の中に入るとちょうど横切ろうとした職員室の中から俺たちが高校3年生の時にお世話になった担任の先生が出てきた。彼女はパタパタと俺たちの方へやってきて嬉しそうに挨拶してくれた。ご年配の先生ではあるがかなりお世話になったので懐かしい気持ちになる。ツムギとかめちゃめちゃ懐いてたからな、優しい良い先生だよ。

 

 「まあ、バトル部に?模型部の方じゃないのね。じゃあ、部室棟に行くのね?ふふ、有名人が戻ってきちゃったわ~、囲まれないように気を付けてね」

 

 「…マナ先生、会えてうれしい。大丈夫、囲まれたらヒマリ置いて逃げる」

 

 「ひどいツムギちゃん!」

 

 「確かに一番有名人だしな、チャフみたいなもんか」

 

 「アルトくんまで!」

 

 「…冗談、ちゃんと付き合う」

 

 「ふふ、相変わらず仲良しね~。後輩に優しくしてあげるのよ?バトルになったら3人とも容赦ないんだもの、みんな泣いちゃうわ。じゃあ、会えてうれしかったわ。元気で頑張ってね」

 

 そう言ってマナ先生はぽんぽんぽんと俺たちの頭を軽く撫でて階段を上って去っていった。なっつかしーな、褒められるたびにこれしてきたんだよねマナ先生。子ども扱いされてる感じがして苦手な人が多かったみたいだけど。ノスタルジーな気分になったわ。さあそんなわけで部活棟に行きますか!

 

 「でもまだ集合時間には早いよ?」

 

 「あー、確かにな。じゃあさ、模型部にお邪魔してみるか?タツヤさんが残したのってあっちだし」

 

 「…いいかも。模型部の作品気になるし、バトル部だけ構っちゃっても可哀想だし」

 

 「後輩たちと触れ合うのも悪くないでしょ」

 

 そんなこんなで行く場所を決定した俺たちはそそくさ~、と移動して部活棟に向かう。途中すれ違う後輩たちが「えっ!?うそっ!?」「ヒマリさん…!?」「あの、サインくださいっ!」ってやってきたりしたけどそこらへんは全て慣れてるヒマリが対応した。え?俺?俺に来るのは野郎ばっかだったから対応楽だよ。マクロスめっちゃ好きッス!っていうのがほとんど、歌手活動やってるヒマリとツムギの方が大変そう。来てるの秘密ね?っていう約束でサインしたけどどこまで守ってくれるやら。

 

 ほいでやってきました模型部の部室。広いね~でかいね~、多分部員の増員に伴って運動部用の部室があてがわれたのかな?かなり大きい部屋だ。小窓から中をのぞくと作業机の上でプラモデルを弄ってる子や机に座ってだべっている子、満足げな顔で組み上げたプラモを前に頷いている子など様々、で多分奥にいるおかっぱというかキノコっぽい頭をした細いメガネの子が部長かな?よしよし、行くぞ二人とも!突撃隣のプラモデル!

 

 「お邪魔しまーす」

 

 「失礼しま~す!」

 

 「…お邪魔します」

 

 「へっ!?どなたで…す…?」

 

 時が止まるとはまさにこのこと。ライブやら異世界での何やらで無駄に度胸が付いた俺たちはこの程度なら全く気にすることない。引き戸を開けて中に闖入してきた俺たちを見た後輩たちが動きを止める。あ、どうもお久しぶりですと顧問のタケ先生に挨拶してみていいですかと許可を取る。快諾してくれたタケ先生、ありがとう。で、3人分かれて見回る。ヒマリはいつも通り、ツムギはお仕事モードオンで人見知り対策、んでおろっ?これは…

 

 「VF-9か。カットラスを選ぶとはなかなか分かってるな。けどエンジンの接合が甘い、ちょっと接着剤がはみ出ちゃってるぞ。こういう場合はこうしてだな…ほい、こんな感じで調整してみ?」

 

 「は、はい…ありがとうございます…?」

 

 「「「「「えええええええええええええ!?」」」」」

 

 「あはは~ドッキリ大成功~~」

 

 「ドッキリって言えるのかこれ?」

 

 「…いえーい、OB訪問だよ~」

 

 途中で見つけたバルキリーを組み立てている男の子に軽いアドバイスをしてみたあと、ようやく現実に気づいたらしい部員の子たちが驚いて大声を上げた。ちなみにタケ先生はめっちゃ爆笑してる。ちょっと面白かったなこれ、またどっかでやろうかね。ざわざわとしてる生徒たちをパンパンと手を叩いたタケ先生が収めにかかる。

 

 「おら、静かに!よし、知ってると思うが我が校の卒業生のサオトメ・アルトとスズカゼ・ヒマリ、イロハ・ツムギだ。今日はバトル部の方に用事があるそうなんだが時間があるので模型部にも顔を出してくれたってことで、失礼な態度とるなよ特に男子!」

 

 「えー!タケ先生ひっでー!」

 

 「はい黙れ!つってもあんまり時間ないらしいしな。そうだな~よし!作品を評価してもらいたいやつは作品持って見て欲しい人の所へ並べ!」

 

 タケ先生相変わらず生徒と距離が近くて仲がいいな~まあタツヤさんもよく聖鳳学園には帰ってきているみたいだしよくあることなのかも。俺たちが訪問するのは初めてだけど。うーむ、どんくらいで評価したらいいんだ?最初に聞いてみるか?

 

 「タケ先生どんな感じで評価あげたらいいですか?辛口にします?」

 

 「あーそうだな、じゃあバトルに出すならスズカゼに、レースに出すならイロハ、総合的に判断するならサオトメに並べ!あと容赦なしで頼む。ユウキのやつにも同じこと言ってるからこいつらも慣れてるだろうよ」

 

 「えー、私は二人と違って趣味だよ~?ファイター目線になっちゃいますけど」

 

 「…私といい勝負できるのにそれはないよヒマリ」

 

 「でも結局本気のツムギちゃんには勝てないんだもの」

 

 というタケ先生の言葉にぶーたれるヒマリをよそにさっそくと言わんばかりに俺たちの前に自分たちの作品をもって並ぶ生徒たち、というか俺の列ながっ!?まあいいけどな。えーと最初の君は…ジムスナイパーか。改造箇所は無さげだけど塗装が上手いな。ディテールもかなり慎重に入れてある、いいんじゃない?関節改造するだけでグッとポージングの幅が広がるよ。バトルで活躍させたいならスラスターを改造して頂戴、以上

 

 「はい、次~ん?君が部長かな?」

 

 「は、はい!ミヤガ・ダイキです!お願いします!」

 

 「AEUイナクトとアグリッサだな。ふむ、かなり素組みに近いけど抑えるべきところは抑えているな、悪くない。おっと、どっかで壊したかこれ?」

 

 「分かるんですか!?その、ガンプラバトルで少し」

 

 「へえ、バトルはしないもんだと思ってたけどな。そういうやつはバトル部に行くだろうから。んじゃあ指摘点だけど、修復箇所が雑、バリ残ってるし接合部が甘い、動かすかどうかは知らんけど合体して動かした瞬間空中分解するぞー、ここと、ここだな。パテでふさいで鑢で削れ。んでポリキャップ変えて接着剤で付けろ。以上」

 

 「…空中分解?」

 

 「ワードだけで寄ってくるようになったか…」

 

 「ありがとうございました。あの、サオトメ先輩…バトル部に何の用なんですか?」

 

 「あー、なんだ気になるのか?ラルさん、知ってるだろ?バトル部のコーチしてるらしくてな、呼ばれたから来たんだ」

 

 「先輩たちを呼び出すなんて相当恐れ多い…」

 

 「俺たちを何だと思ってんだよ。あの人にはかなりお世話になったからな、恩返しだよ。ほかになにかあるか?」 

 

 「あの…じゃあ一つだけ。バトル部にコウサカ・ユウマという中等部の後輩がいます。元は模型部に所属していましたけど、数日前にバトル部に行きました。模型部でのユウマは本当にやりたいことを押し込めて無理やりプラモに向き合ってるように見えていました。俺はあいつに悩みを聞けませんでしたけど、出来れば気にかけてあげて欲しいんです。勝手なお願いかと思いますが、お願いします」

 

 「コウサカ…ね。オッケー分かった。後輩想いなんだな」

 

 「いえ、責任です。失礼しました」

 

 そう言ってミヤガ君は列を離れた。コウサカっつーと覚えがあるのはチナの弟だな。1回セイと一緒にプラモを教えたことがあるんだけどそれっきりだ。なんせそれからセイも俺もクソ忙しかったからな、俺は映画が大詰めだったしテレビ放送する予定の7のスケジュールを抑えたりOVAのプラスとかゼロの指揮も同時にやってて自由な時間がなかったんだよね。セイのやつはもう既に外国に留学してた。どういうわけかレイジも一緒に写真に写ってた。それでいいのか王子様。

 

 あれこれとやっていると時間が来てしまったのでタケ先生に断って退室する。いやー後輩たちは可愛いね、ガンプラを続けるなら頑張ってほしいかな。良かったな男子ども、二人から投げキッスもらえて。ヒマリもツムギも悪ノリだけど受けてるからいいのか?分からん。ライブで投げキッスは確かによくやるけどな、参考は美雲さんです。あとマキナさんレイナさん監修、付き合わされたカナメさんも面倒見がよかったなー、今何やってるんだろう。

 

 

 「やっとだねー、バトル部!トロフィーどうなってるんだろう」

 

 「…あれ、見つかってるかな?」

 

 「見つかってたとしてもそんじょそこらのやつじゃ使えやしないだろ。俺とセイの合作だぜ?」

 

 そんな感じの話をしながらバトル部の部室、小窓から中を見るとどうやらラルさんしかいないらしい。じゃあ遠慮しなくていいやと引き戸を開けて中に入る、ラルさんが俺達に気づいて立ち上がった。

 

 「やっほーラルさん、久しぶり」

 

 「おお、アルト君たち今日は無理を言ってすまないな。どうしてもお願いしたいことがあったのだ」

 

 「…お願いしたいこと?」

 

 「そうだ。詳しくは部員が戻ってきてから話そう。飲み物を買いに行ってるだけだからすぐに戻ってくるはずだ」

 

 「いいよ~~。ラルさん変わんないね~~!今度バトルしよ!久しぶりにラルさんに相手して欲しい!」

 

 「もちろんだとも!このラル!受けた勝負からはけして逃げん!」

 

 中に入ってラルさんと挨拶する俺達、ラルさん変わんねーな。永遠の35才って言ってるけどマジ?七年前と年変わってないじゃん。ラルさん、どうやって聖鳳学園からコーチングの依頼を受けたんだろ、そう考えてるとドアの前がにわかに騒がしくなり、引き戸が開いた。一番前にいるのは女の子か、目をぱちくりしたその子はガラリと扉を閉じる。

 

 「どうしたんだよフミナ先輩」

 

 「うん、ごめんねセカイ君。部室の中にいたらおかしい人の幻覚が見えてつい」

 

 「はあ~~?」

 

 そこでもう一回扉が開く、今度は眼鏡をかけた男の子だ。そして、また目をぱちくり、扉閉鎖。むこうからお前もかよ!という声が聞こえる。ヒマリとツムギはもう完全に腹を抱えて笑っている。何だこのコントは、ちょっと俺も噴き出しそう。ラルさんも後ろ向いて口抑えてるし。そして、また扉が開く、今度は赤い髪の男の子だ、どことなくレイジに似てるな。別人だけどさ

 

 「誰なんだ?あんたたち」

 

 「ただのOBだよ。古巣が気になって遊びに来たんだ」

 

 「へーそうなのか!先輩!よろしくお願いします!」

 

 「おう、よろしく」

 

 やっと挨拶できるわ、後ろ二人は相変わらず固まってるっぽいけど。もうダメ~~というヒマリの笑い声だけが場を支配していた。俺も噴き出しそう、助けて




 はい、トライ編です。
 暫くトライ編やってプロット書き上げてからデルタの方を詰めていきたいですね。長編にしがちなのが私の悪いところ。

 では次回、改めて自己紹介をということでお願いします。もう有名人だからね、こんな反応されるのもしょうがないよね。

一応確認 どっちがいい?

  • SMS共闘ルート
  • フロンティア組帰還ルート

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