「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

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先輩は後輩にいいところを見せたくなるもの

 「あの…えっと…サオトメ・アルトさん、ですよね?そっちはスズカゼ・ヒマリさんで、貴方がイロハ・ツムギさん」

 

 「おお、知ってるの?バトル部だっていうからヒマリならともかく俺やツムギも知ってるなんてな、よろしくなー」

 

 「…よろしくね。ラルさんに呼ばれただけだからあんまり気負わないで」

 

 「よっろしく~!ん!?君…もしかしてチナちゃんの弟のユウマくんじゃない!?うっわ~~!おっきくなったね~~!!!」

 

 「え?なに?有名人なの?うわっフミナ先輩!?」

 

 よろしくお願いします先輩!という感じだったレイジっぽい男子を短いポニテの女子が捕まえてあれこれ説明している、へー、俺やツムギならともかくヒマリを知らない子がいるんだな。まあそれが普通なんだよな~、興味を持たないものだってあるだろうし。いかにもレイジっぽいまっすぐ一直線な目をしている。見てて気持ちがいいな~。

 

 「そうね、セカイ君は知らないよね。この人たちは、色々ありすぎて紹介しきれないけどとっても凄い人達なの!ほらあの人!スズカゼさんなら見たことあるんじゃない!?」

 

 「お!ああ~!姉ちゃんがCDジャケット見せてくれました!ってことは芸能人!?」

 

 「そうそう、でイロハさんがガンプラバトルレース殿堂入りのレースクイーン!ガンプラ界隈で一番速いファイターなの!それで」

 

 「サオトメ・アルトさん、ガンプラバトル無差別級の初代チャンピオンにして3連覇ののち殿堂入り、現在最強のビルダーである3代目メイジン・カワグチと並んでもう一人のメイジンと呼ばれるビルダーだ。そのくらいはガンプラに携わるなら調べておけ…お久しぶりです、スズカゼさん」

 

 「一言余計だっつーの!って無差別級?普通のガンプラバトルとどう違うんだ?」

 

 「初心者のセカイ君が知らないのも無理はない。5年前に新設されたレギュレーションだからな。ガンプラに限らずありとあらゆるプラモデル、戦艦、飛行機、戦車、果てはオリジナルのロボット!プラスチックでできているならば制限はない!何でもありのレギュレーションなのだ」

 

 「残念ながらガンプラバトルには人気の面で遠く及ばないんだけどな~」

 

 あっはっは~と肩をすくめる俺。ほんとだよマジで、多少マシになったけどガンプラの方が人気が根強いんだなこれが。フルスクラッチの敷居の高さと大分盛り上がってきたとはいえ他作品のプラモキットの不足によって簡単、すぐできるガンプラレギュレーションの方がお手軽なんだよ。そのうち同じくらい人気になるまで盛り上げてやるからなこの野郎。今年はタツヤさんに勝ってやる。

 

 「…あの」

 

 「ああ、久しぶり。ユウマ君だろ?ガンプラ、続けてるんだな。機体見せてもらったけどよく練られたいい機体だった。コンテスト優勝おめでとさん。」

 

 「…はい!」

 

 やっぱり、コウサカときてユウマってのは俺が思い描いていた彼だったようだ。確か今年のアーティスティック・ガンプラ・コンテストで優勝したんだよとチナから聞いていたもんだから、てっきりバトルは辞めてビルダー方面に転向したんだと思ったんだけどバトルをする気になったのはいいことだ。一緒に教えたセイも喜ぶだろう

 

 「それで、なんでそんな凄い3人がこんなところにいるんです?」

 

 残り二人の必死の説明を聞いてうんうん頷いた赤毛の男子は単刀直入にそう言った。おお、確かに疑問に思うのもその通りだけど、この空気でよく言いだせたな。なるほど、初心者なんだな…で3人しか部員がいないと…割とマジでギリギリじゃんバトル部。

 

 「うむ!この3人を呼んだのは他でもない!君たちのためだ!」

 

 「私たち、ですか?」

 

 「そうだ!現在、学生のガンプラバトルは個人戦ではなくチーム戦、チームワークがなければ話にならない…で自覚はあると思うがどうかな?二人とも?」

 

 「うっ」

 

 「…はい」

 

 「…仲悪いの?」

 

 「ち、違うんですイロハ先輩!ユウ君もセカイ君も決して仲が悪いわけじゃなくてその~…」

 

 「もうそれ仲悪いって言ってるようなものだよ?え~っと」

 

 「あ、はい!ホシノ・フミナです!こっちがカミキ・セカイ君!よろしくお願いします!」

 

 「ってことは俺たちは3人にチーム戦を叩き込んでやればいいってこと?ラルさん?」

 

 「うむ!そういうことだ!なにせ、チーム戦において君たちの右に出るものはいまい!」

 

 そこまで言い切られるものでもない気がするけど、まあこの3人で組んで負けることなんて数えるほどしかないのは事実だ。そりゃあ相手側がなりふり構わずカイザーさん、タツヤさん、ジュリアンさんとかで来たときにはそりゃあ負けたけども。あれは反則だと思うの。確かにチーム戦なら得意な方かな?

 

 「オッケー、分かった。ラルさんの頼みだし、俺たちが君たちのチームを鍛えようじゃないか!さっそくで悪いが君たちの実力を見せてくれ!」

 

 

 

 

 そんな感じで部室のGPベースを起動した俺達、当然なんだけど俺やツムギ、ヒマリが本気で潰しにかかったら勝てないのは自明の理なので手加減仕様でございます。まず俺、VF-25Fでパック装備なし、続いてツムギ、青のVF-25S同じくパック装備無し、ヒマリは緑のVF-25Gでドラグノフ・アンチ・マテリアル・スナイパーライフル以外の装備を外している。ついでにMS戦を想定して俺たちは変形無しのバトロイド固定というガッチガチのサンドバック仕様である。ルールはCルール、ガンプラの破損がないヤジマ製のGPベースに新しく追加された3つの仕様のうち一つだ。

 

 「それじゃあ、どっからでもかかっておいで」

 

 「どこからでもいらっしゃ~い!」

 

 「…かもんかもん」

 

 バトルスタートという電子音の合図、ヒマリはふわりと浮かぶと後方に移ってスナイパーライフルを構える。前衛はツムギ、遊撃俺、後衛ヒマリという感じだ。ガンポッドを構えながら待ってると、おおきたきた…ってマジか!ガンプラをセットしたのが立体映像の中に入ってからだから相手のガンプラを見てなかったから、今日一番驚いた。運命を感じちまうな。

 

 「ねえ、アルトくんあのガンプラ!」

 

 「…見つけられちゃったね、アルト」

 

 「ビルドバーニングガンダム…!君が見つけたのか!」

 

 「先輩!お手合わせよろしくお願いします!」

 

 「私もいます!セカイ君!サオトメ先輩に突っ込んで!ユウ君はイロハ先輩を狙撃!」

 

 「了解ぃ!」

 

 「はい!」

 

 「なるほど、君が司令塔なんだな?じゃ、こうしようか。ツムギ頼んだ」

 

 「…おっけー、君は私ね」

 

 「なっ!はええ!?」

 

ビルドバーニングガンダム…セイが第11回世界大会で使用したスターバーニングガンダムを当時の全力で改修したらどうなるのかという悪ノリで作ったガンプラだ。誰乗せる?レイジ!じゃあ素手だな!というあんまりにもあんまりな仕様で武器はバルカン含め一切ないし防御兵装もない。コンセプト自体はほぼ悪ノリの産物だけど使われてる技術はガチガチのガチだ。そこらのファイターじゃまともに動かせないし機体に振り回される始末。だからレイジ以外にちゃんと使えるやつが現れるだろうと願ってセイと協力してドムの皮を被せてトロフィーの中に隠しておいたのだ。

 

 俺とセイが本気を出しただけあって、機体はセイ特製のムーバブルフレームとRGシステムの発展型を搭載して外部は俺特製の特殊装甲を採用しプラフスキー粒子との親和性を高めてある。ついでにもいっちょ俺製の高性能バーニアを有しており、速い、固い、近接特化という尖りに尖らせた機体だ。一番頑丈なのがマニピュレーターで、なんとビルドナックルの直撃を受けてもビクともしないのである。どんだけ殴っても大丈夫なのだ!やりようによってはビーム殴っても大丈夫だよ?

 

 変形させようぜ!って俺が暴走したんだけどRGシステム系のフレームと変形機構の相性が悪かったので不採用となりました畜生!しょうがないので当時の最新技術を自重無しでぶち込みまくったけどな!

 

 そんなゴリゴリの近接機に突っ込むのはツムギである。VF-25を再現したのは7年前ではあるが当然それ以降改修しないわけないので現行のトップと同等の性能は有している。当然殴りに来るビルドバーニングガンダム、ツムギは威力が乗り切る前のポイントを見極めてマニピュレーターにマニピュレーターをぶつけて防御する。止められたことに焦ったカミキ君がいったんバックで戻る。ここまで一瞬、俺の前に残るのはホシノさんのパワードジムの改造機と思われるジムだ。カミキ君はツムギを警戒してか遊撃と同じラインにいる。

 

 「さて、ここからどうする?」

 

 「カミキ君、援護するから突っ込んで!」

 

 「はい!」

 

 「よし、それならヒマリ!いっちょ頼んだ」

 

 「はいは~い!じゃあアルトくん、右に1ね!ツムギちゃんガンポッドバン!」

 

 ヒマリの言葉通り俺は右に一歩、ツムギはガンポッドを構える。そこで動いた多少の隙間を縫ってヒマリのスナイパーライフルの射撃が突き刺さった。俺の右脇を通った狙撃は一歩を踏み出したビルドバーニングガンダムの足元を穿ってこかし、ツムギのVF-25Sの左側頭部をギリギリかすめて飛んだ狙撃はジムの右肩の大型ライフルを撃ち抜いた。

 

 「あんな僅かな隙間から…!?」

 

 「やばい!撃ってきますよ!」

 

 「ユウ君!援護して!」

 

 ツムギと俺のガンポッドが火を噴いた。狙いは近づかせないようにする弾幕形成。ここで足を止めた俺とツムギ、絶好の狙撃チャンスを逃すユウマ君ではないだろうと予想してはいたが当たっていた。俺とツムギに飛ぶビームでの狙撃、だが予想できたことだ。同時に今俺が立ってる位置はヒマリが狙撃しやすいポイントなんだよな!

 

 「うそっ!?ユウ君!離脱して!場所がバレた!」

 

 「ビームを斬った!?」

 

 俺とツムギは同時にガンポッドを上に投げ捨てて、ナイフを抜く、正確にVF-25の胴体を撃ち抜くコースのビームに笑みをこぼしてピンポイントバリアナイフでビームを切り裂く、ツムギも同様の方法でビームを防御する。落ちて来たガンポッドをシールドをマウントしてる手でキャッチしてそのまま片手で乱射する。回避コースを誘導するためにあえて狙いを甘めにした。

 

 「みーつけた!チェック!」

 

 「よし、ツムギぶっ放せ!」

 

 「…了解!」

 

 送られてきたデータの地点に向かってツムギがミサイルをぶっ放す。ユウマ君が潜む位置を焦土にするミサイルたちにたまらずユウマ君のライトニングガンダムがブーストを吹かして飛び出す。はいこれでチェック。

 

 「ユウマ!誘われてる!防げ!」

 

 「…言われなくても!」

 

 「もう遅いよ!」

 

 「しまっ!?」

 

 スナイパーライフルの3連射、一撃でシールドを跳ね上げ、残り2撃でコックピットと頭を撃ち抜いた。さて、残り二人。あとはどうする?飛び出してきたのはカミキ君、ビルドバーニングガンダムのクリアパーツが光ってプラフスキー粒子を放出する、へえ!ちゃんと使えてるじゃないか!合格だ!

 

 「ユウマ!クソッ!先輩!本気で殴ります!次元覇王流!疾風突きぃ!」

 

 「それがガンプラバトルだ!突進技は後方注意だぞっ!そしてホシノさん!注意散漫!」

 

 「えっ!?きゃあああ!?」

 

 「…これで、おわり!」

 

 「後ろをとられたっ!?」

 

 俺は風を纏った右拳を突き出してこちらに迫るビルドバーニングガンダムをあえて無視し、ユウマ君が落とされたことに驚いていたホシノさんに向かって脚部ミサイルとレーザー機銃、ガンポッドをぶっ放して仕留める。だが当然俺は隙だらけになるがそこは俺のパートナーが埋めてくれる。突進技のモーションと俺の動きを見て狙いを見抜いたツムギが技に入る前に熱核バーストタービンを全開にして真後ろに回り込んだのだ。そしてガンポッドで背中を狙い撃ちにする。

 

 そして体勢を完全に崩して技が中断された、纏っていた風も霧散するビルドバーニングガンダムに向かって、ヒマリの狙撃が奔る。2発、3発と何とか固めたガードの上から耐えるビルドバーニングガンダム、さすがは俺とセイの合作。だが俺もタダ見てるわけではない。ナイフを構えて接近戦に入る。

 

 「次元覇王流!聖拳突き!」

 

 「このタイミングで技を繰り出すたぁ見どころありすぎだぞカミキ君!」

 

 一番硬いマニピュレーターで狙撃を耐え続けたカミキ君、その状態で技の予備動作も済ませていたらしく、滅茶苦茶に威力のありそうな拳を繰り出してきた。だけどガンプラバトルの経験値が違う、確かにまともに食らったらオシャカになるパンチだけどな、モビルファイターとかと対処は一緒だ。躱すか、相殺するか。俺の場合はこうだ!

 

 「弾いたっ!?」

 

 「個人としての強さは及第点だぜトライファイターズ!チームワークはまだまだだけどな!」

 

 左手のナイフを逆手に持ち替えてビルドバーニングガンダムの右拳に真横からぶっ刺した。衝撃で技の着弾位置がぶれる、俺はその状態のまま、右拳のピンポイントバリアパンチをコックピットに叩きつける。流石のビルドバーニングガンダムもコックピットをやられてはひとたまりもない、撃破判定が出て俺たちの勝利でバトルは終了した。いや、正直想像以上だ。

 

 「ラルさん…こいつら化けますよ。ちゃんと連携取れれば強くなれます」

 

 「そうだね~!ユウマ君、かなり隠れるの上手かったから私たちじゃなかったら3人纏めて撃たれて終わりだったかも」

 

 「…ホシノ、かなり指示が的確、ちゃんと従えてればいい線行ってた。自信もってよし」

 

 「なるほど!君たちほどのファイターが言うなら真実なのだろう!このラルの見立てが正しいと証明してくれたこと、感謝するぞ!」

 

 張り切って挑んだのにほとんど何もできずに負けてしまったことに落ち込むトライファイターズ、だけど俺たちからしたら割と驚いた。ユウマ君の狙撃の正確さ、ホシノさんの判断力、そしてカミキ君の突破力…うまくかみ合えば強さは倍増どころか累乗するだろう。ビルドバーニングガンダム…彼なら託してもいいかもしれない。見極めるにはまだ早いが面白くなってきたな、これだからガンプラバトルは辞められないんだ。

 

 

 

 




 一応ポジション解説しときます。3人が本気で戦う場合どういった感じでチームで動くか

 アルト君
 VF-25FアーマードパックにゴーストQF-4000を3機従えての遊撃、反則的な軌道を描くゴーストで相手を分断して連携を封じる。止まった場合ミサイルが飛んでくる。止まらなくてもミサイルが飛んでくる。

 ヒマリちゃん

 VF-25GスナイパーパックにRVF-25のレドーム増設、狙撃兼レーダーの役割。前線でゴリゴリやるのは向いていない。狙撃は割と正確、第七回でのサポートの役割から発展した支援専門。視野が広い人間レーダー。

 ツムギちゃん

 VF-25Sトルネードパックにパラディンパックのブレイズランスを装備。前衛ではあるが攻撃は避けるの専門なためパラディンパックではなくトルネードパックになった。あとミサイル、実はミサイルキチに片足突っ込んでる。アホみたいなスピードでミサイルよりも早く突っ込んできて槍でぶっ刺してくる。これは卑怯。


 というわけでいかがでしたでしょうか?次回以降はちょっと間が開きます。
 デルタ編も書かねーとなあ…もうプロットだけ公開でいい?ダメ?

 では次回、感想くれると執筆が加速するのでよろしくお願いします。

一応確認 どっちがいい?

  • SMS共闘ルート
  • フロンティア組帰還ルート

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