「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

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フレイアwithハヤテ welcome to ガンプラワールド 中編

 「なあ、アルト。バルキリーもいいんだけどさ、こっちはダメなのか?」

 

 ガンプラバトルで俺が使う機体を選んでいたハヤテさんが指さしたのはガンダムの方の棚。それもそうかも。バルキリーが動くのも見せてあげたいけど本物を見慣れているハヤテさんからしたらこっちの方が新鮮で見てみたいと思うのかな?それならば

 

 「全然いいですよ。最近ガンプラの方も苦手克服したので」

 

 「おっ、いー感じ。んじゃあ、これは?」

 

 「いいですけど、なんでこれを?」

 

 「んー…直観、だな。多分一番いー感じなのがこれだと思う。な、フレイア」

 

 「はいな!なんとなーく、それが一番強そうやったんよ!」

 

 お目が高い、と言わざるを得ない。彼らが指し示したモビルスーツ、俺の趣味で可変機しかないガンプラの中での最高傑作。バルキリーのフルスクラッチだけではいずれ頭打ちになるかもと帰ってきて半年でそう思い、作成した機体だ。その名もガンダムハルート最終決戦仕様。キットで作ったほかのやつとフルスクラッチのこいつを勘で見極めたのは流石は感性全振りの男と飛べば飛べる女。じゃあ、決まりだな、とケースからハルートを出してMA形態から変形させる。ゴーストの扱いを経てビット系の操作が大得意になった俺だ。タツヤさん相手にこれでどこまで行けるか。

 

 「じゃ、やりましょうかタツヤさん。軽く、お願いしますよ」

 

 「久しぶりなんだ、アルト君。悪いが加減が効きそうにない。既に私は燃えている!」

 

 「急にキャラ変わったな…」

 

 「ほぉえ~~。ユウキさんのガンプラ?凄いかっこいい~」

 

 GPベースにガンプラをセットする。正直ハルートで勝てる気がしないんだけど。だってタツヤさんもうメイジン状態に入っちゃったもん。髪かき上げて瞳めっちゃ鋭くしてさ。しかも機体…現在の愛機であるアメイジングストライクフリーダム、滅茶苦茶にヤバイ完成度だ。どこまで食い下がれるかな。だけどねメイジン、俺にも見栄をはりたい時があるんです。今まで使わないようにしてましたけど、解禁しますよ?ゴーストじゃないけど…戦場仕込みの操縦を見せてあげます!俺は立体映像に包まれ、コンソールを力強く握るのだった。

 

 

 

 

 

 「だあああああ負けたあああああ!!!」

 

 「いや、ほとんど引き分けだぞアルト君。なぜ今まで隠していたんだ?その操縦を」

 

 「すげーな…いや、引き込まれたわ。フレイア?」

 

 「すっごい!すっごいんよー!わーってしてぐーってなって!もうゴリゴリ~~~!!!」

 

 「わわ、フレイアさんありがとうございます。いや、実はこれ向こうで教わった操縦なんです。いい加減、本気を隠して操縦するのも失礼ですから…相手を壊す操縦ってどうも主義に反する感じでしたけど、これも俺なんだって最近思うようになったんです。タツヤさんを呼んだのも俺の全部を見せたかったからで」

 

 結局、負けてしまった。真っ二つに胴が泣き別れになりシザービットとGNキャノン、両腕をすべて失った俺のハルートに対してアメイジングストライクフリーダムは片腕、片足脱落、ブレイブドラグーン全喪失という感じだ。確かに状態だけ見れば引き分けに近いかもしれないが負けは負けである。俺は向こうでメッサーさんに人を殺したくないのならばと徹底的に戦闘力を奪う操縦を身につけさせられた。俺の事情を汲んでくれたメッサーさんの指導でそれを身に着けた俺ではあるが、ガンプラバトルからすれば舐めプに近い技術だから今まで使わずにいた。

 

 「全部使わない方が失礼ですからね。踏ん切りがつかなかっただけで、ところでフレイアさん」

 

 「はいな?」

 

 「いい加減恥ずかしいんで降ろしてください」

 

 さっきからフレイアさんに高い高いの状態で振り回されてた俺、かっこ付かない。ウィンダミア人は身体能力が高いからねーあはは~。そう思っているとハヤテさんがワクワクした感じでボソボソ言ってる。

 

 「確かにこれは面白そうだな…なあ、俺もこれできるか?」

 

 そう言った瞬間タツヤさんの瞳がキラーンと光る。これはあれだ、入っちゃったな布教モードに。フレイアさんが俺を下ろしてくれる。じゃあキットを組み立ててみるのはどうかな?というけど違うんですよメイジン、この人本職パイロットなんですから、こっちの方がいいと思います。

 

 「ハヤテさん、VF-1EX使います?要は、風に乗りたくなったんでしょ?」

 

 「おっ、分かってるな~アルト!あれ見せられたらさ、いー感じの風が吹きそうだと思うだろ?」

 

 「いきなり操縦かい?こういったらなんだがバルキリーは難易度が高いだろう?慣れるための機体を組んでからでも悪くはないと思うけどね」

 

 「あ、タツヤさんに言うの忘れてた。ハヤテさん、本職パイロットですよ。向こうで実際にバルキリー飛ばしてます。こんなの。イメージが大事なガンプラバトルで本物を知ってるんだから平気ですよ」

 

 「本当か!?パイロット…凄いんですね、ハヤテさん」

 

 こんなの、の所で端末に保存してあるジークフリードとパイロットスーツ姿のハヤテさんの写真を見せるとタツヤさんは目を見開いてハヤテさんを褒めている。まあ、ガンプラバトルをやってるやつは絶対に一度は本物のMSに乗れたらなという夢を抱くものだから、形は違えど本物を動かす立場にある人と会ったら尊敬の念が湧き出てくるものだ。実際に俺がそうだし、戦争を経験したハヤテさんの操縦は素晴らしいものだから。インメルマンダンス、久しぶりに見たいな

 

 「よせよ、俺は自由に飛びたいだけだ。そこにこいつの歌があったら最高にいー感じだけどな」

 

 「ハヤテ…にひひっ。いつでも歌ってあげるんよ!何なら今からでも!」

 

 「嬉しー提案だけどよ、今はこっちだぜ?フレイアもやってみたらどうだ?」

 

 「んーん、私はいいんよ。ハヤテが飛ぶところを見れたらそれでいい」

 

 「そっか。んじゃあ見ててくれよ。飛べば飛べる、だろ?」

 

 「はいな!」

 

 「アルト君、ブラックコーヒーはあるかい?」

 

 「どうぞ。式はいつですかね~」

 

 イチャイチャのやり取りを見て口の中が甘くなったらしいタツヤさんに淹れておいたコーヒーを渡す。二人でぐいーっと飲んだブラックコーヒーがカフェオレに感じた。流石は全銀河規模で公開告白した男、この程度のイチャつきはジャブだというのだろうか。そうこうしているうちにハヤテさんはVF-1EXをGPベースにセットした。俺が操作してGPベースのモードをバトルからフリーに入れ替える。下は海で入道雲と青い空に飛び出したバルキリー、すぐさま風を掴んでふわりと浮く。

 

 「おっ?お~~~!すげえな、スロットルだとかペダルだとかはねえのに自分の好きに動かせる!AIの補助もない分、こっちの方が自由かもしれねえ!」

 

 「流石は本物…!何も説明していないのに乗りこなしている。操縦に癖のあるファイターをあんな自在に!」

 

 「流石は感覚派筆頭です!やりますねハヤテさん」

 

 飛行機雲の軌跡を残して広い空を駆けるバルキリー、VF-1EXとはいえハヤテさんの操縦技術は本物だ、デルタ小隊で培ったエアショーの技術は遺憾なく発揮されている。鮮やかかつ繊細で時に大胆、俺が最後に見た時よりも鋭く巧みでそれでいて楽しそうだった。戦争ではなくただ空を飛ぶという行為をようやく成し遂げられたハヤテさんはずっとずっと成長しているんだろう。

 

 「一度だけの恋なら 君の中で遊ぼう 我がままなキスをしよう」

 

 ハヤテさんがあまりに楽しそうに飛ぶからか、それを物凄く嬉しそうに見ていたフレイアさんの口から思わずと言った感じで歌が紡がれた。翻訳機の進化かどう聞いても日本語で歌われる、一度だけの恋なら。それを聞いたハヤテさんがにんまりと笑う。言葉にするなら何時もの口癖のいー感じ、というやつだ。もうすぐサビというところまできてノってきたハヤテさんが海面すれすれまで高度を落とす。

 

 「一度だけの恋なら 君の中で遊ぼう 光より早くキスをしよう 待っててね」

 

 ファイターガウォークで海面に足をつけてスケートのように移動する。そのままバク中でバトロイドに変形して海面に着地する。しぶきを上げる水を切り裂いて正しくダンスのような動きをするVF-1EX、すっげえ。リズム感覚というか乗り方に息がぴったり合いすぎている。やばいなこれ、俺の方が引き込まれそう。

 

 「忘れかけた体も ただ聞こえる心も 夢の中のシガラミなんて飛び越えて!」

 

 空中で小刻みに足を入れ替えつつタップダンスのように動くバルキリー、ダンサーとしても素晴らしいがそれをプラモデルでやっているハヤテさんが一番ヤバい。俺もできるかできないかで言ったらできるがあんなアドリブで流れるようにやるのはちょっときついかもしれない。それだけ難しい。

 

 「ほら 攫って 迫って このまま」

 

 最後のサビが終わるぐらいで飛び跳ねたVF-1EXはエビぞりのウミネコのような動き、いつかのウミネコターンで回転しつつファイターへ変形し飛び去った。いひひとにんまり笑ういたずらっ子のようなフレイアさんとグッとグッドサインを立てるハヤテさん。俺とタツヤさんは突如繰り広げられたプロのパフォーマンスに全力の拍手を送るのだった。結局歌ってるけどこれ休みになってるの?

 

 「「いー感じ!」っておいフレイア」

 

 「ハヤテがこうなったらそう言うって知っとるもんね!どう?楽しかった?」

 

 「ああ、データの空っていうが全然悪くねえ。鳥の気分っていうのはこういうのかもな」

 

 「ほんにね。ハヤテがライブと同じくらいノれるなんて、侮りがたいね~、ガンプラバトル、でかるちゃ~!」

 

 「その…でかるちゃ~っていうのは何の事なんだい?」

 

 「向こうの言葉で「信じられない!」とか「ヤバすぎ!」っていう意味があるゼントラーディの言葉です。簡単に言えば驚きと感動を現す最上級の言葉と考えていいですよ」

 

 「それは…なんだか嬉しいね。他の世界の人たちに自分たちの世界のものが認められるなんて」

 

 ニッコニコのフレイアさんの言葉を解説した俺、デカルチャー、実際言葉にするのは難しいのだが意味にするならこうだろう。それを理解したタツヤさんは穏やかに笑っている。楽しいガンプラバトルを普及すること目指しているタツヤさんは噛み締めるようにそう口にした。文化はどこだろうと通じるんですよ、異世界だろうが、異星の人だろうが。ここにいる二人がそれの実証者ですよ、タツヤさん。

 

 

 

 「戦術音楽ユニットワルキューレとデルタ小隊…凄い話だ。歌で病気をどうこうできるなんて」

 

 「でも、フォールドレセプターっていうのがないとヴァールは鎮められないんよ。平和になっても、やっぱりどこかでおこっちゃうもので…」

 

 「鎮圧ライブに行くたびひやひやするぜ、こいつ躊躇なく飛んで跳ねてヴァール発症者に接触するもんだからよ。美雲の真似もほどほどにしろよな」

 

 「やってて思いましたけど生身で戦場に行くって大分キテますよね。一歩間違ったらミサイルが飛んでくるんですけど」

 

 「…よく無事だったね、3人とも」

 

 「いやー、無事というか何というか…」

 

 「お前がアイテールの甲板から吹き飛ばされた時はホントもうダメかと思っちまった。あとマキナを庇って狙撃を受けた時だな」

 

 「あれは、その…あはは~…」

 

 「あははじゃねえ、血の気が引いたんだぞ、全員」

 

 休憩室に場を移しての思い出話、ハヤテさんの小言に乗っかった俺に返ってきたカウンターにたははと笑うしかない。だってしょうがないじゃん!前者はミサイルの爆発からワルキューレとヒマリにツムギを守るためにシグナス総動員したら俺の防御が間に合わなかったせいだし、結局そのあとフレイアさん飛び降りてたじゃんか!後者は狙撃に気づいたタイミングが俺の方が早くてレイナさんを庇うマキナさんの前に気づいたら勝手に出てしまったのだ。結果的に肩を弾丸が通っていっただけで済んだから問題ないよ!きちんと生きてるから!

 

 あー、でもやった後しこたま怒られたんだよね~。ヒマリにツムギは泣いちゃうし、カナメさんから始まりアラドさんを経てついには美雲さんにまで説教くらったこともあったっけ。何というか体が勝手に動いちゃったんだよ。俺だって自分が大事じゃないわけじゃないんだけど…それよりも上に大事なものがあるわけではい。エゴです自己満足です何が悪い!結果的に無事だから大丈夫でしょう!?確かに一時期ベッドとお友達だったけど!

 

 「本当に、よく帰ってきたなアルト君…!」

 

 「ちょっとタツヤさん!?そんな噛み締めるように言わないでください!腕や足が吹っ飛んだわけじゃないんですから!」

 

 「いやそれが普通の反応だぞアルト」

 

 「アルトって変なところで自分を大事にしないんよね。いっつも誰かを庇って危ない目にあっとるんよ。ほんにちゃんと帰れてよかったね~」

 

 あれ?よくよく考えたらそうかもしれない。いかんな、帰ってきて一年たつけど価値観が戦場から帰ってきてないかも?確かに知り合いが事件に巻き込まれて一時期すんげえ怪我してたってことやんな、行方不明のおまけつきで。でも鎮圧ライブ行くと砂まみれ泥まみれ切り傷擦過傷打撲なんて日常茶飯事だったし、女性でアイドルなワルキューレやヒマリにツムギはともかく俺本体は結構おざなりだったのは否定できないし気にもしてなかったや。

 

 でもさっきの話なんて序の口ですよタツヤさん。まだいろいろありますけど一番ヤバかったのはアレですね、ワルキューレとデルタ小隊と分断されてリルドラケン6機とドラケンⅢ2機をゴースト4機でどうにかしなきゃいけなかったときですね。

 

 ハヤテさん覚えてます?え?あの時でお前から目を離すとヤバいって学んだ?またまた大袈裟な。確かにビームの至近弾で結構な火傷をもらいましたけどあの時はアドレナリンドバドバ&レセプター全開で痛みとかわかんなかったですよ。ワルキューレの歌も届かなかったから自分で歌わないとまずかったですしね。超必死だったんですよタツヤさ…ぐええええ苦しいです!?

 

 ちゃんと生きてますから!向こうの医療おかげで傷一つ残ってないです!あちょっ!ハヤテさんフレイアさん助け…え?当然の反応?その時の私たちの気持ちを味わうといいんよ?それに関しては申し訳ないと思っているんですけどタツヤさんの全力はまずいです潰れます!この人インドア派なくせにムキムキなんですよぐええええええ!?




 中編デース。やっぱりハヤテさんはインメルマンダンスしてこそですね、フレイアさんとのバディで彼女の歌の風に乗る姿が一番かっこいいし一番強くなれると思うのです。

 次回で終わり、といきたいですね。もしかしたらもう1話くらい増えるかも。これ終わったらトライ編の続きを書くんだ…!正直もうパンクしかけててやばいかもあっはっは~~。

 ではまた次でお会いしましょう

一応確認 どっちがいい?

  • SMS共闘ルート
  • フロンティア組帰還ルート

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