「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集   作:カフェイン中毒

3 / 31
相談事と今後の話

 ふと、目が覚めた。どうやらあの後考え込むうちに寝てしまったようだ。宇宙船の中だからか時間感覚がわからないし壁に掛けてあるデジタル時計も読むことができない。枕元にはヒマリとツムギの分の通訳機も用意されていた。ありがたく使わせてもらうとしよう。

 

 「うう、ん…」

 

 「うう~~おかあさ~~ん、まだ眠いよ~~」

 

 「誰も起こしてないんだけどな。おはよう、二人とも」

 

 「…おはよ、アルト…アルトっ!?怪我!怪我大丈夫!?」

 

 「怪我?け~が~…あっ!そうだよアルトくん大丈夫なの!?」

 

 「ああ、大丈夫だ。きちんと治療してくれたみたいだしな。それで、今の状況を説明するぞ」

 

 俺が体を起こした衣擦れの音に反応して睡眠が浅くなっていたらしい二人の目が覚めたようだ。俺を見て一発で目が覚めた二人がそれはもう抱き着かんとせんばかりの勢いで心配してくれるので大丈夫と言葉を返してやると二人は一気に力が抜けたようでへにゃへにゃとベッドの上に沈んだ。よかったよ~~なんていうヒマリと頷くツムギを見て俺もちょっとだけ気分が晴れた。

 

 二人が落ち着いたのを確認してとりあえずあったことを話す。ケイオスの事、カナメさんたちワルキューレのこと、俺たちが今置かれてる現状について、俺が大体の事を説明してアラドさんと話し合ったこと。そして勝手にいろいろ喋ったことを謝って、通訳機を渡した。

 

 「とりあえず、こんなところだ。多分、アリスタが戻ってくるまではここにいられると思う。帰れるかどうかは…正直分からない。ごめんな」

 

 「ううん、アルト君が謝ることじゃないよ。何度も庇ってくれて、ありがとね」

 

 「…ありがと。でも、もうやらないで。お願い。アルトが死んじゃったら、私…」

 

 「わかんねえ、できるなら約束したいけど、もしまたああいうことがあったら同じことをすると思う。だから、悪い。約束できない。とりあえず、カナメさんたちにどうするか聞かれると思うから、決めよう」

 

 「…うん」

 

 「わかったよ」

 

 俺の強い言葉に説得できないことを悟った二人が話題の切り替えに乗ってくれた。二人が俺のベッドの上にやってきて膝を突き合わせてっていうと若干狭いけどとりあえずの方針の話し合いをする

 

 「さっき聞いた話だと、俺たちにはカナメさんたちがヴァールシンドロームっつー病気に対抗するための抗体みたいなもの、フォールドレセプターを備えてるって話だ」

 

 「突然人が狂暴化しちゃうっていう病気だよね?私たちを助けてくれた人たちはそれを止める為に歌ってる?ってこと?」

 

 「らしい。詳しい話はちんぷんかんぷんだけど、レセプター所持者の歌がヴァールを鎮めるって解釈で合ってると思う。で、ヒマリとツムギ、お前らはそのレセプターが常時活性状態になってる珍しい状態らしい。健康上の問題は今のところないっていうけどな」

 

 「…アルトだけ仲間外れ。じゃあ、私たちは…実験動物?」

 

 「そんなことはないとは思うが…仮にそうだとしてもアリスタが戻るまでは逃げられない。いや、正確にはこの船が星につくまでは、か。それに金も、稼ぐ手段も何もかも真っ白だ。八方塞がりたぁこのことだな」

 

 「アルトくんは、どうすればいいと思う?」

 

 「俺は、そうだな…実はケイオスで働く、雑用しねーかって誘われた。多分全員含めてだと思う。渡りに船っていうわけじゃないし都合がよすぎるけど、悪くない話じゃないか?」

 

 「…でも私たち、アルバイトすらしたことない」

 

 「どうしよう、アルトくん…うっ、うぁぁ…」

 

 「…ひぐっ…アルト…帰りたいよ…」

 

 「俺もだよ。大丈夫だ、何とかなる、してみせる。とりあえず今は吐き出しとけ、すっきりしたらまた話そう」

 

 「うんっ…」

 

 「…ん…」

 

 いろいろあって落ち着いてもやはり限界だったらしい二人の瞳からポロポロと涙がこぼれる。ぐしぐしと二人の頭をなでてやると二人してぎゅっと抱き着いてきた。震える体を俺も抱きしめ返してやって軽くたたいてあやしてやる。とりあえず、俺のやることは徹頭徹尾決まってる。何としても元の世界に戻ることだ。最悪、この二人だけでも戻すことができれば…!いや、俺も、元の世界に戻りたい。やり残したことは山ほどあるし、親友とだってまた話したい、タツヤさんとやりたいこともあるし、カイザーさんともまだやれてないことがあるんだから。

 

 暫く震える二人の顔を見ないように慰めていると、静かにドアが開いた。ドアの先にいるのは、カナメさんとアラドさん、そしてソフトモヒカンの長身の男性…メッサーさんだ。メッサーさんは表情一つ変わらないがカナメさんとアラドさんは俺たちの状態をみて流石にまずったという顔を見せた。俺が耳に通訳機をつけてペコリと頭を下げる。

 

 「あー…すまん。今大丈夫か?」

 

 「すいません。大丈夫です。二人はまだ無理そうなので俺が話します。あと、まだどうするかは決めてないです、ごめんなさい」

 

 「いやいやいや、そんな早くに結論出さなくても大丈夫だよ!?えーっと…あなた達の処遇が決まったのでお知らせにきた、んだけど…」

 

 バツの悪そうな顔をしたアラドさんと言葉が段々と尻すぼみになっていくカナメさん。非常に気まずいんだけどヒマリとツムギの心情を考えるなら全く責められないのも事実。俺は、元はいい年した大人だ。小学生中学生やってると周りと体に引っ張られて子供に戻るけど今この状況で必要なのは冷静な判断、子供じゃいられない。二人を安心させてやる必要があるんだから、俺は泣かなくていい。前だけ向いていれば、それでいい。

 

 「はい、すいませんお手数おかけして。どうしたらいいですか?」

 

 「とりあえず、この部屋の中なら自由にしてもらって構わない。もし外に出たいときは、俺かこいつに頼め。メッサー、ん」

 

 「メッサー・イーレフェルトだ」

 

 「そんだけかよ…」

 

 「えーっと、メッサー君は私のバディ、相棒なの。怖いかもしれないけどいい人だから安心してね?あとで他のデルタ小隊とワルキューレのメンバーも来るって言ってたから…」

 

 そういうとカナメさんはメッサーさんの方を見る。変わらずの仏頂面、名前だけの自己紹介で何というか、高い壁を感じる。アニメでの彼もそうだったけどこっちでもいっしょなのだろうか…?それに、暇なのだろうか?監視カメラでも付けてほっておくのが筋だと思うのだけど…

 

 「アルトくん、これどうやってつけるの?」

 

 「…こう?」

 

 どうやら人が来たことで気持ちを切り替えることができたらしい二人が訪ねてくるのでその耳に通訳機をつけてやる。そうして深呼吸して息を整えたヒマリと完全に人見知りが出て俺の後ろにびゃっと隠れてしまったツムギがそれぞれ挨拶をする。

 

 「その、御見苦しいところを見せてしまってごめんなさい。スズカゼ・ヒマリです。助けてくれてありがとうございます」

 

 「…イロハ・ツムギ、です。ありがとう、ございました。」

 

 「気にするな、任務だ」

 

 「メッサー、お前…」

 

 「あっと、えとえと…お腹、空かない?そろそろ食事の時間だし食堂に案内するわ」

 

 メッサーさんの余りにそっけない言葉に大きくため息をついたアラドさん、カナメさんはさっきまで泣いていた二人がもう一度泣いてしまわないか心配してわたわた慌ててくれる。かわいい、これはファンが増えるのが頷ける。ヒマリもツムギもそんな姿を見てちょっと警戒を解いたらしい。少しだけ体の力が抜けた。そうして、確かに俺は腹ペコだってことを思い出した。とりあえず荷物、は置いておいていいか。アリスタだけ忘れないように二人に言ってベッドから立ち上がった。メッサーさんでっかいな…ツムギとの身長差やばいよ。だってツムギ135㎝しかないもん。出会った時から全く伸びてないもん。ヒマリは147㎝、俺は150㎝、まだ成長期来てねーんだよな。みんなでかいわ。

 

 「…マキナが心配かも」

 

 「きゃわわってか?…ありうるかもな」 

 

 それぞれ立ち上がった俺たちを上から下まで眺めて、カナメさんがそう漏らした。うん?うん…?確かにヒマリとツムギは可愛いけど、マキナさんが心配?彼女メカにしか興味ないんじゃない?あとメッサーさん、お願いだから何か言ってほしい。それか表情筋を仕事させてほしい。ツムギがじろっと目線をやられて飛び上がらんばかりにびくついて俺の後ろに隠れたから。その鋭い瞳は…何となくカイザーさんを思わせて俺は嫌いじゃないけど。嫌悪感とかそういうのじゃなくてただ視線をくれただけっぽいし。

 

 ツムギがいつも通り首をふるふる振って髪で顔を隠す。やっぱりこの状態が落ち着くらしい、寝てるときは口に行かないようにピン使ってるのにな。カナメさんは何となく何か言いたげ。もったいないとか思ってるのかな?

 

 「じゃ、行くぞ…クラゲのスルメいるか?」

 

 「アルトくん、クラゲってスルメになるの??」

 

 「…わからん」

 

 まずスルメってイカじゃねえのという突っ込みはさておき、クラゲらしいスルメを新しくかじりだしたアラドさんがドアを開け、俺たちは初めて部屋の外に出ることになるのだった。

 

 

 

 「ここが食堂よ。メッサーくん、どこ行くの?」

 

 「俺はもう食事は済ませているので、フライトログの整理をしてきます。それでは」

 

 「そうなんだ。また今度食べようね」

 

 「あいつは全く…ごめんなさいねカナメさん。お前らも、悪いやつじゃないんだ。普通に接してやってくれ」

 

 食堂についた途端、メッサーさんは仕事は終わったとばかりに踵を返してどこかへ行ってしまった。アニメでもそうだけど、本当に一緒に食事したりしないんだ…それを少し寂しそうに見送るカナメさんと全くと言わんばかりに頭をガリガリかいたアラドさんが食堂に入っていく。俺たちも入っていくが、入った瞬間視線が一気にきた。多分、俺たちみたいなのが捕虜待遇じゃない状態でこんなことしてるのは相当珍しいんだ。ツムギは完全にビビっちゃったし、社交性が高いヒマリですらも俺の服の袖をつまんで後ろに隠れている。アラドさんがため息ついて手をひらひらと振ると視線が一気に散った。すげえ、カリスマだ。

 

 「あっカナカナ!それにアラド隊長も!んっ!?起きたんだ!よかった~~~!」

 

 「リーダー、隊長。お疲れ」

 

 「マキナ、レイナ!貴方たちもお昼?」

 

 「ジクフリちゃんの整備がひと段落したからね~~☆」

 

 「クラゲ、食べたい。ペコペコ」

 

 「ラグナじゃねえから生クラゲはねえぞ」

 

 「ん、分かってる。君」

 

 挨拶をしてたレイナさんが突然、俺に声をかけてきた。彼女はかつかつと足音を立てて俺たちの方にやってきた。マキナさんもだ。びゃっと後ろに隠れたツムギはともかくとしてヒマリまで俺を盾にするのをやめていただけないでしょうか?

 

 「私、レイナ・プラウラー。よろしく」

 

 「マキナ・中島だよ~大きな怪我無くてよかったね!わからないことがあったら何でも聞いてね~」

 

 「サオトメ・アルトです。助けてくれてありがとうございました。よろしくお願いします」

 

 「スズカゼ・ヒマリです。ありがとうございました。」

 

 「…イロハ・ツムギ、よろしく、お願いします」

 

 「どうしたの~レイレイ?」

 

 「シンパシーを感じた、ズキズキ」

 

 「ふふっレイレイなりのきゃわわ☆、だね!」

 

 俺の後ろから挨拶だけして隠れたツムギに何か感じ取ったらしいレイナさんがそう呟く。よくわからないが似た者同士、なのか?いや方向性がわからん。何を感じ取ったんだろうか。マキナさんが良かったね~と言ってレイナさんを引っ張っていって席に座った。アラドさんが取ってくるから待ってろと言って俺たちも座らされる。非常に申し訳なかったがここでうろちょろしても邪魔なだけだろうからおとなしくしておこう。

 

 「そういえば、貴方たち何歳なのかしら?」

 

 「俺とヒマリが12でツムギが13です」

 

 「そうだったの。しっかりしてるからもっと上だと思ってたわ」

 

 「そういえば~、さっき聞いたばっかりだけどアルアルの世界って模型を動かして戦わせるんだよね?例えばどんなの?」

 

 「アルアル…いえ、はいあの…口では説明しづらいのでこれを」

 

 唐突につけられたあだ名に俺が面食らいながら携帯に保存してるバトルの動画を選んで流す。流したのはチョマーさんVSツムギの動画。ヅダがビームの弾幕を躱しながら目にもとまらぬ速度で加速しながらドラグーンを落としてる所だ。それを見た瞬間マキナさんとレイナさんの顔つきが変わる、完全にメカニックとハッカーのプロとしての顔つきだ。画面が小さいのにもかかわらずそれを食い入るように見ている。

 

 「あっそれチョマーさんとのやつ」

 

 「…チョマーさん、強かった。楽しかった」

 

 「これ、本当に模型?」

 

 「模型ですよ、今は部屋に置いてきてますけど持ってきてますから」

 

 「ねえ、あとで見せてもらっても、いい?」

 

 「私もみたいかも~☆思ってたよりすごかった!」

 

 「…うれしい」

 

 ストレートに褒められたのが嬉しかったのかツムギがはにかんだ。ビルダー、ファイターとして機体をよく見せてほしいというのは最上級の誉め言葉に近い。そんなことを知らない人たちから出た言葉は、全くのアウェイであってもやはりうれしいものなのだ。




番外編ばっかり更新してすまない…!書きやすいんだ!

 でも話が進まないね。申し訳ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。