「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集 作:カフェイン中毒
というわけでCD担いでえっちらおっちら歩くこと10分ほど、商店街から少し外れたところにあるスタジオにやってきました。レコーディングスタジオやダンススタジオなどが一纏めにされた複合ビルで、俺もたまにお世話になっている。ちなみにヒマリの紹介、ご両親がレコーディングに使っているのだそうだ。
「こんちゃーっす。二人を迎えに来ました」
「ん?アルト君か。いらっしゃい。後ろの二人は?」
「外国に行ってた時にお世話になった人です。二人に会わせたくて連れてきました」
「はいよ、じゃあ2階ね。もう終わってると思うからご自由に~」
許可が出たのでフレイアさんとハヤテさんを連れて二階に上がる。ブースを確認すると、いた。どうやらレコーディングついでに生放送をしてたようでスタッフさんの前であれこれ話している姿が見える。まだこっちには気づいてないようなので二人に待つようにお願いしてみる。
お二人とも疑問符を浮かべながら止まってくれたので俺はにやつきながら携帯で動画サイトを開く。そのまま二人の生放送を視聴し始めるのだった。
『はいはい~、ツムギちゃん今日はどうだった?』
『…ヒマリに抱き着かれたままレコーディングしてた』
・キマシ?
・アルト君がいなくても仲良しで素晴らしいですな
・それはもはやバイノーラル録音だったのでは?
・マイク一本いらないやん
「ほへ~ワルキューレTVみたいなことをヒマリたちもやっとるんね」
「んでこれどうするんだよアルト。待つか?」
「ん~~~、アルト、私も入ったら迷惑かね?」
「それマジで言ってます?お休みでしょう?」
「ど~してもお客さんにヒマリとツムギと一緒に歌ってる所を聞いてほしいんよ!もう一回できるかもって、思ってなかったから」
フレイアさんが顔の前で両手を合わせてお願い!と頼み込んでくる。そう言われると確かに弱いのは俺なわけで、ぶっちゃけ超久しぶりにフレイアさんの歌を聞きたいのは事実。けど将来作るであろうΔのアニメのためにここで出すのは…いいやそんなこと。言い訳は後でどんだけでも湧いてくるだろうし、やっちゃえ。ワルキューレの言葉通り、命がけで楽しんじゃえばいいんだ。
「ハヤテさんは?」
「いいに決まってるだろ。こっちの世界で顔出すななんて言われてないしな。ああでもフレイア、ルンだけ気を付けろよ」
「それは無理でしょう。もう髪飾りで誤魔化しますよ。プラフスキー粒子パワーです」
「お前図太くなったな…」
「おかげさまで」
「なんか私がやらかすって言うてるん?二人とも?」
「「うん」」
「ひどいんよー!」
ドストレートな俺とハヤテさんの言葉を受けたフレイアさんがぷんすこしてるのをハヤテさんに丸投げした俺が放送を続ける二人に見える位置までコツコツと歩いていくブースの窓の所のスタッフさんに適当に挨拶する。彼らも俺の事はよーくご存じなのでなんも言わない。そして、二人が俺に気づくと表情がパァァと輝いた。眩しい。
・かわいい。スパチャしないと
・今月分のお布施が上限に行った
・誰か来たのかな?
コメントをマイクが読み上げていくのが聞こえる。うーんいい笑顔してるなあ。あとフレイアさんがワクワクが止まらなくなってる。ルンの光が漏れてる漏れてる、ハヤテさんよろしく。目線で伝えるとハヤテさんはフレイアさんの帽子の中に乱暴に手を突っ込んでルンをぎゅっと握りしめる。フレイアさんはあまりのことにフリーズ、これでよし。
「アルトくん!来てくれたんだ!もしかして出てくれるのっ!?」
「…アルト、自分からこっちに来るなんて珍しい。生放送なんて私たちが引っ張っていかないと来ないのに。うれしい、ありがと」
・アルト君来た!マクロスの話聞ける!?
・アルトくん来年の新大会でるってマジ!?
・この表情の変化よ。恋する乙女は無敵ですな
声は二人に届かないのでフリフリと手を振ってにやにやしてると二人ともあっという顔をした。俺のこの表情を二人はよーく知っている。なんせ俺が何かを企んでいるときにやる悪ーい顔だからだ。でも、二人は思いつかないらしく頭をひねっている。そんなわけでネタ晴らし、フレイアさんハヤテさんかもーん!
俺の手招きで取っ組み合いをしていた二人が中断してブース前にやってくる。そしてその姿を二人が目にした瞬間、驚きで二人して口元に手を当てながら目を見開いた。あらー、いい表情。ドッキリのし甲斐がありますなあ。今日来るっていうのは伝えてあったけどいつ来るかは伝えてなかったので驚いただろう。
二人の瞳にうっすらと涙の膜ができ、それが決壊寸前となってようやく二人の時間が動き出した。ガタッと椅子を倒して立ち上がって全速力で二人して扉を開けてフレイアさんに抱き着いた。
・アルトくん何したんやことと次第によっては…
・よっては?
・きちんと慰めろ!
・二人があんな顔するの初めて見た。ツムギちゃんは顔見えないけど
「フレイアさん!お久しぶりです!ずっとずっと会いたかったですよ~~~!」
「…フレイア!会いたかった!電話じゃちょっと、寂しかった」
「二人とも!久しぶりなんよ~~~!直接会えてぶっちゃごりごり~~!」
むぎゅぎゅっと団子の塊のようになる3人ハヤテさんは俺にはなんもねーのかよ、という顔をしてたんで両手を広げてにじり寄ったら逆に捕獲された。現役パイロットの身体能力には勝てるはずもなく、俺はいつかのメッサーさんにやってもらったように俵担ぎをされる羽目になったのであった。
「ハヤテさんも!お久しぶりです!」
「…ハヤテ、久しぶり。フレイアと仲良くやってる?」
「ああ、いー感じにな。にしてもお前ら、いいのか?これ」
「「???」」
・何があったか説明キボンヌ
・おいスタッフ!nice boatじゃねーよ!
・こっちじゃ声が届かないから
「「ああーーーっ!」」
「やっちゃった!ごめんなさいフレイアさん!1時間くらいしたら終わりますから!」
「…折角会えたけど、お仕事するから」
「いや?フレイアさんにも出てもらおうぜ。一緒に歌いたいってさ」
「うん!二人と久しぶりに歌いたいんよ!」
「そういうことなら!」
「…よろこんで!」
そんな感じで俺とハヤテさんを残して3人はブースの中に戻っていった。突然のことにスタッフさんがあわあわしているが大丈夫ですっていうとアルトくんの知り合いだしそうだなと返された。変な信頼のされ方だぁ…フレイアさんが何を歌うかは分からないけどとりあえずワルキューレの曲のカラオケデータをスタッフさんに渡しておく、というか俺がこっちの操作を変わってもらうことにした。
「ごめんなさい!実は久しぶりに会うお友達をアルトくんが連れて来てくれたの!」
「…電話以外で会うのが久しぶりだったから、つい。ごめんなさい。それで、この人が」
「はいな!フレイア・ヴィオン16才!大好物はリンゴ!よろしくお願いするんよ~~!」
・美少女の友達は美少女なんやなって
・まじか、自分ガチ恋いいっすか?
・まて、左手薬指…!
・ファッ!?
「ざーんねん!フレイアお姉ちゃんは売約済みなのだ!画面の向こうでアルトくんと一緒にこっち見てるよ!」
「…しかもちょっとやそっとじゃ離れない。貴方たちに入り込む隙間はない。ラブラブ、フォーエバー」
「ななななにいうとるんねツムギ!は、恥ずかしいんよ…」
「…レイナさんを真似してみた。多分こんな感じのこという」
「「ああ~~~」」
レイナさんへのイメージが俺とハヤテさんを含めて完全に一致した瞬間であった。レイナさんだったらこんな感じ…っていうかもっとストレートに結構毒舌聞かせてくれると思うよ。うん。
「じゃあ時間が押してるので行っちゃいますか!せーのっ!」
「「今日も1曲歌ってみようのコーナー!」」
・待ってました!
・あれ?でもお友達放っておいて歌ってええんか?
・今日は別に歌無しでもいいから
・お友達の事を聞かせておくれ!
そう言うコメント欄だが、ここで特大のサプライズである。マイクをとったヒマリがそのままほいっとフレイアさんに渡したのである。驚愕したのはスタッフたち、そして画面の前の視聴者の方々。ハヤテさんはどこ吹く風だし俺に至ってはワルキューレのパフォーマンス力を知っているのでデカルチャー叩きつけて欲しいというだけである。
・二人と合唱ですか!?
・あ~いいっすね~!
・怒涛の展開過ぎてちょっと訳が分からないよ
・というか様になりすぎてないか?マイクを握る立ち姿が。プロみてーじゃん
プロみてーじゃなくてプロそのものなんだよなあ。ん?ヒマリ何やってってあ!ワルキューレのハンドサインか!二人が行うのはレイナさんとマキナさんと同じもの、フレイアさんも自分のハンドサインで返した。よっし!盛り上がってきたあ!スタッフさんこのまま行きますよ!多分選曲はあれだろうし!
「じゃあフレイアさん!合図お願いします!アルトくん!タイミングずらしちゃだめだよ!」
「…アルト、責任重大。フレイアさんに恥かかせちゃだめ」
・どんだけフレイアちゃんの事大好きなんだよwww
・アルトくんが画面の前で苦笑いしてるのが見える見える
・というかさっきのやりとりなんなん?
・めっちゃ気になるんやけどさっきの無言のやり取り!教えてーなー!
それに関してはあと何年後か分からんがΔのアニメ作るときになるとわかるから待っててくれー。つーかヒマリもツムギも大興奮だな。そんなに歌えるのがうれしいのか。いや嬉しいんだろうけどさ。おっと集中集中、フレイアさんが大きく息を吸い込むのが見える。ハヤテさんがソファ背もたれにもたれかかりながら手を飛行機に見立てている。風が吹くことが分かっているかのように。
「準備はいいんかね!?」
軽快なピアノサウンドが鳴り渡った。
「二人と久しぶりに歌えて楽しかったんよーーー!」
「はい!フレイアさんと一緒にまた歌えて夢みたいでした!」
「…ほんとに、楽しかった。まだまだ歌い足りない」
「私もなんよー!アルト、なんかいい方法ないんかね!?」
あの後、ルンがピカッと光ったらをヒマリとツムギのコーラスで見事に歌い上げたフレイアさんだった。それはそれはもうルンはピッカピカであったがそれ以上に歌唱力がヤバすぎる。会ってない1年間でめちゃくちゃに巧くなっていた。多分フォールドレセプターは全開だったのだろう。
コメント欄もやばいとかうますぎとかマジでアイドルか何か?みたいな反応だった。あとヒマリ担当のプロデューサーさんが生放送終了後妖怪名刺だけでもと化していたが残念ながらそっちでももう売約済みですと言ってごまかした。プロデューサーさんは非常に残念そうだったけど申し訳ない、彼女向こうの世界で必要な人なんです。
「んー、じゃあ俺のアトリエの方に帰りましょうか。地下に防音室あるんで思いっきり歌いましょうよ」
「おおー!流石はアルト、よう準備しとるんね!」
「ところでハヤテさん、ちょっと手伝ってもらっていいです?」
「いいけど、何すんだ?」
「GPベースを地下に運ぶのを手伝ってほしいんです。そうすれば、歌に乗って飛べます」
「いいこと考えるじゃねえかアルト。もちろん手伝わせてもらうぜ」
ハヤテさんにも楽しんでほしくてそう提案してみたが、彼にとってはそれはそれは魅力的な話だったらしい。呵々大笑した彼は俺を担ぎ上げて通ってきた道を爆走していく。あーっ!と残された女性陣が慌てる声が聞こえた。ハヤテさんは早く来いよと言って足を緩める。むむっ!という顔をしたフレイアさんがツムギとヒマリを軽々と抱えあげて追いついてきた。流石はウィンダミア人ってやばっ!?帽子がとれるとれる!
そんな感じで1週間、フレイアさんとハヤテさんは地球を堪能し、山ほどのお土産と俺製のガンプラとバルキリーのプラモをもって自分たちの世界へ帰っていった。別れるときは、寂しくなっちゃったけど、またいつか来れるだろう。道は繋がっているのだから。
ハイ、ちょっと短いですがフレイアとハヤテのお休み旅行はこれで終了です!
次回はデルタ本編かトライ編を更新したいですね。現在仕事が繁忙期に入ってなかなか時間とれないので月単位で時間開いちゃうかも。その前に一区切りつけて良かったです!
それではまた次回会いましょう!感想評価どしどしください!作者が泣いて喜びます!
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