「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集 作:カフェイン中毒
裸喰娘娘、チャックさんが経営する娘々の名前をパク…もといリスペクトしたオリジナリティ溢れるラグナのお食事処である。娘々の名前をそのまま扱ってることもあって初見の旅行者は系列店なのかと勘違いされること多数、らしい。ほぼギャグであるでるた小劇場の情報なのでどこまで信用していいやら。まあそんなことはともかくとして裸喰娘娘はケイオスの社員がみんなして集まる名店なのは間違いないだろう。
「いいのかな、勝手に出てきちゃって」
「…私たち、保護されてるのに」
「いいっていいって!さっきアラド隊長に許可とっといたよ!さ、ついたぜ!ここがデルタ小隊の男子寮兼レストランの裸喰娘娘だ!」
「なんか、すいません。連れてきてもらって…」
「気にすることはありません。仲良くなるには食事を共にするのが一番といいます、遠慮なんて必要ないですよ」
あの後特段汚れていなかった俺たちはチャックさんたちがパイロットスーツからケイオスの制服に着替えるのをカタパルトで待っていた。ヒマリがご機嫌なのか鼻歌が出ていて近くで聞いていたゼントラーディの整備士が「デカルチャー…」と動きを止めて他の整備士にスパナで叩かれてしまったので平謝りしていたんだけど、そういえば星間大戦以前の地球の音楽ってマクロス世界じゃ失われているものなんだったか。じゃあ失われなかった俺たちの世界の音楽は彼らの
そんなわけでやってきました裸喰娘娘、なんと船がそのまま店になっている水上店なのだ、まあラグナの基本的かつ伝統的な住居の形式らしいんだけど。名物料理はクラゲ料理、生の丸吞みがいいらしいのでいつか挑戦してみた…やべえレイジみたいな考えになってる。普通なら思いつかないぞこれ…!毒されてるなあ。
「ここに座っててくれよな!まだ開店時間より早いからサクサクッと済ませてじゃましないように帰っちまおう!今日は俺のおごりだ!メニューはお任せだけどな!」
「すいませんチャック少尉、私まで」
「気にすることないない!それじゃ待っててくれよな~」
そう言って酒らしいボトルが並ぶカウンターを抜けてその恰幅のいい体を器用に動かしチャックさんは厨房に消えていった。俺たちはミラージュさんにいろいろ尋ねられたんだけどそれはアラドさんにも尋ねられたことだからここでは割愛しよう。ジーナスの名をどうとも思わない人との会話は彼女にとって久しぶりだったらしくかなり柔らかい印象を持った。主人公であるハヤテに見せたツンツンとした面じゃなくて優しいお姉さんの印象だ。
「おっまたせ~~~!裸喰娘娘名物、クラゲチャーハンとクラゲラーメン、クラゲまんお待ち!」
「こっれは…!」
「美味しそう…!だけど」
「…量が多い、半分も食べられない」
「あっりゃ、しまった何時ものパイロット連中と同じ量作っちまった。すまん!残してもいいから、な?というか残ったら俺が食う!」
「アルトくん」
「ああ…!」
「…頑張る、べし」
どかん、という効果音が付きそうな勢いで着地したのは滅茶苦茶美味しそうな大盛りのラーメンとチャーハン&大きな饅頭のセット。俺はともかくヒマリやツムギは一般女子のため軍人みたいな訓練してるパイロットと同量は食べられない、特にツムギは容量が大きくない。けどチャックさんの好意を無碍にするわけには…!俺たちは覚悟を決めてレンゲを手に取るのだった。
「すいませんミラージュさん…」
「いえ、しいて言うなら無茶をする場面ではなかったと…」
「そうそう、無理して食べてもいいことないよ~?」
「でも、申し訳なくって…」
「…美味しかったです」
俺、完食。ヒマリ、チャーハン完食、ラーメンは手付かず、ツムギ、ラーメン半分で撃沈。残りはチャックさんとミラージュさんのお腹の中に消えた。動けなくなった俺たちを介抱してくれた二人に必死こいて謝るとミラージュさんがチャックさんにやりすぎですと怒ってチャックさんが謝ってしまった。というかあの量を食べてまだ他の物余裕綽々で食べれる余裕があるのか…ミラージュさんって女性なのに。もしかしてこれがゼントラーディの血か…?
結局ゆっくりゆっくりエリシオンに帰るハメになってしまった。もちろん付き合ってくれたお二人には全力で謝った。快く許してくれた二人は人間がとてもできてると思う。ツムギがヒレについて尋ねても嫌な顔一つせずに解説してくれたくらいだし。
「おかえりなさい。裸喰娘娘、いい店だったでしょ?私もよくお世話になるんだけど~…大丈夫?」
「イ、いえ、お気になさらず。すぐ元通りになります」
「アルトくん一番頑張ったもんね~」
「…完全復活、しゃきーん」
早々にリタイアした二人はともかく俺は食べ切ったのでなかなかキッツい、もうちょっと時間たてばだいぶ楽になると思う。部屋で休んでいるとカナメさんがやってきた。彼女が若干顔が青い俺を心配してくれるがとりあえず大丈夫だと返事を返すことにした。デルタ小隊は午前が訓練で午後がデスクワークらしい。俺たちのできることはないため部屋に戻ってきたのだ。なお俺以外の二人は復活してる。俺だけグロッキー、くすん。
「ふふっ、元気そうでよかったわ。じゃあ、午後は私たちについてきてもらいましょうか。ワルキューレのレッスンは午後なの」
「ワルキューレ…俺たちが役立つんですか?レッスンに?」
「あら、観客がいるっていうのは重要なのよ。特に私たちの場合はね」
「そうなんですか?」
「…戦場で歌う訓練、凄そう」
「見てのお楽しみ、よ。それじゃあいきましょっか」
そう言われた俺たちはカナメさんについてアイテールの中を歩いていく。思ったんだけどやっぱマクロス級ってでかない?普通の建物みたいな安定感なんだけど、これでも横持ちされて空中で浮いてるのに。それはともかくとしてワルキューレのレッスンが行われてる場所は専用の音楽室らしい。
カナメさんの案内でついた部屋は確かに大きい部屋でザ、金属むき出し!っていうマクロスの中にしては珍しくダンスレッスン用の鏡が壁にあり、木製らしい床など俺たちの世界にもあるダンス用スタジオとそんなに変わらないものだった。部屋の隅にある楽器や、スピーカーも相まって何となく親しみがわいてくる。既に部屋の中にはワルキューレのメンバーがスタンバイしていた。カナメさんも練習に使う服で迎えに来たしそのままやるんだろうか?
「はいはーい、じゃあレッスン始めるわよ!まずは発声練習から!観客に見られると思って!」
そんな感じでカナメさんの号令でレッスンが始まってしまった。もうすでに発声練習ですら感嘆の声が出る。びりびりと耳に来るのだ、声量の大きさが尋常じゃない、それもそうか。ともすればフォールドサウンドブースターが故障するかもしれないんだ、その時にでも彼女らは歌わなければならない、ブーストがかからない己の声だけで。声量があるのは当たり前か。
「すっごい…すごいよ、アルトくん」
「ああ、レッスン中なのに気迫がびりびり来る。比べたら失礼かもだけど、バトルの中にいるみたいだ」
「…うん、背中がひりつくこの感じ、間違いない」
特に音楽に慣れ親しんできたヒマリにはプロ中のプロであるワルキューレの存在は大きな衝撃として刻まれたらしい。デビューしたてとはいえヒマリもツムギもプロの端くれ、ヒマリと歌うとき限定というソロ活動NG宣言を出したツムギも彼女らのレッスン風景には思うところがあるのかもしれない。
ダンスレッスンも、キレのある動きと一糸乱れぬフォーメーション、圧倒されるパフォーマンスだ。吞まれていく、ワルキューレの世界観に。
「じゃあ休憩前最後!通しで一回歌いましょっか!」
「やっとね。待ちくたびれたわ」
「クモクモ、歌うの大好きだもんねー」
「観客を引き込んじゃえ」
そして、カナメさんがフォールドスピーカーらしいリモコンを操作して、曲が始まる。ギターの音で一発で分かる「いけないボーダーライン」だ。ここでメインボーカルになるのはあの後結局話すことも会うこともなかった謎の美女の美雲さん。歌いだしたメインボーカルにびりっときた。これが、本物…!フォールド波かどうかは分からないけど美雲さんの声に乗って発せられる不可視の力が俺たちを叩いているような気さえする。
隣のヒマリをちらりと見ると、笑っていた。瞳の真剣具合はまさにファイター。音楽という彼女の世界に罅を入れたワルキューレの存在がヒマリに火をつけたのかもしれない、俺の話だけでマクロスの曲を完全に再現してみせたその才能を、今の一つの音楽全てに注いでいる。こうなったヒマリは、俺たちの話は耳に入らないし集中を途切れさせることはないだろう。音の一つもこぼすまいと耳をそばだてていた。そしてそれは俺とツムギも同じく。こうなった彼女がどうなるかを俺たちはよく知っているから。
そしてダンスと歌が終わる。雰囲気が変わり談笑を始めたワルキューレを見てヒマリの雰囲気が元に戻る。その視線の先にはあまり使われてないらしい楽器類、ギター、ベース、シンセサイザー。ドラムはまあ、いないからな俺たちの場合。そして、口を開いたヒマリの言葉は決まっている。
「アルトくん、ツムギちゃん、いけそう?」
「ああ、ばっちり行けると思う」
「…もちコース」
「じゃあ帰ったらお部屋で相談だね~」
今のは端的に言えば耳コピできた?って聞いてきたんだ。音楽をやるにあたってヒマリとヒマリのご両親に徹底的にしごかれた俺とツムギはとりあえず初めて聞いた曲を耳コピするという癖がついてしまった。で、できたら3人で弾いてみるっていうのが一種の流れ。今回は鼻歌で打ち合わせることになりそうだけど、視線の先にある楽器類を使わせてくれなんて頼むわけにもいかないし。
休憩しているらしいワルキューレの中で俺たちがこそこそ話してるのを見たらしいカナメさんが不思議そうな顔をして近づいてきた。
「あ、ごめんね放っておいちゃって。どうだったかな?」
「いえいえそんな!凄かったです!これで本番じゃないっていうのが不思議なくらい!」
「…凄い曲だった。あの人、とんでもない」
「ああ、まだ会ってなかったわね。彼女は美雲・ギンヌメール。ワルキューレのエースボーカルなの、凄いのは当然ね」
「それで、あのなんで俺たちをレッスンに?」
「観客がいると気が引き締まるもの、重要よ。それとさっきは何の話してたのかしら?」
「ああ、今の曲弾けるかなっていう話をしてたんですよ。話したと思いますけど俺たち軽音部なので」
「そういうこと。じゃあアレ、使ってみる?売れてなかった時期に楽器持ったらどうかっていう案が出たんだけど結局採用されなかったの。手慰みに使う人はいるから使ってもらっても大丈夫よ」
「いいんですかっ!?」
ずい、とカナメさんの提案に瞳をきらめかせて迫るヒマリ、あまりの勢いにちょっと後ずさるカナメさん。声が聞こえたのか美雲さん、マキナさん、レイナさんが話すのをやめてこっちを見てる。それで若干赤くなって縮こまったヒマリをクスクスと笑って頭を撫でて勿論!と言ったカナメさんが俺たちの手を引いて楽器のところまで連れてってくれた。
「好きに弾いていいわよ~。アンプが必要だったらこのボタンね!」
「ありがとうございますっ!アルトくん!ヒマリちゃん!やろっ!!」
「あーはいはい、やるから近いぞヒマリ~。ツムギ、ぱす」
「…むぎゅう」
そんな感じでテンションが振り切れたヒマリがやる気マックスなのでやってみることにする。取り敢えずチューニングしちゃうか、とギターを手に取って弾いてみるけど、なんか俺たちの世界のとズレてる?「チューニングはしてあるはずだけど」というカナメさんが言う通り間違ってはいないんだと思うけど…弄っていいか聞いたらいいそうなので俺の世界のと同じような感じでチューニングして音を出してみる。うん、いけそう。ベースを弄るヒマリや出る音を確認してるシンセサイザーのツムギ。作業量が多いツムギが一番苦戦してるけどヒマリが手伝って使う音だけを確認したっぽい。うん、いけるかもなこれ。
「そんでだけどヒマリ、サビ途中のこのフレーズなんだけどこれでいい?あとそこから11秒後のここもこう?」
「うん、それであってるけど、こうしたほうがかっこいいかも。私がこうするから、これでこう!」
「…じゃあ、ここ、でこう!それでこうする?」
「採用!アルトくんラスサビこういう風にできる?」
「出来るけど、じゃあその前ヒマリこれしてくんね?」
「わかったよ~~~」
「なんで通じてるのかしら?全く分からないわ」
「3人だけ別の世界、以心伝心、私とマキナ」
「レイレイ~~~~!!!」
「ふふっ、お手並み拝見ね」
大体コピーは出来るんだけどヒマリに聞いた方が確実なので絶対にあってるという確信が持てる場所以外をヒマリに弾いてみせて尋ねる。んでその結果こっちのほうがよくね?ってなったら変えるしそのままのがよければそうするし、基本ここ、そこ、アレ、これ、それで大体伝わるので幼馴染とパートナーというくくりは大変便利だと思う。ボンボン、と適当なフレーズをスラップして指の確認をするヒマリとそれと同じフレーズをタッピングでする俺、速弾きしてみるツムギ、うん。できたな!
「すいません、お待たせしました。いいですか?」
「ええ、いいわよ!じゃあ繋ぐわね!」
カナメさんがアンプに楽器をつなげてくれたので、確認を取った俺たちが一拍おいて演奏を始めた。
お待たせしました。皆さん私の愚痴に温かい言葉を返していただきありがとうございました。これからもっと精進していきますので温かく見守ってくださると幸いです。
そんな感じで皆さん忘れてるであろう軽音部設定がここで生きてきました(まったくの偶然
アルトたちがこの世界でどのような役割になるのかは今しばらくお待ちください。ただ、パイロットというわけではないです。ですが、彼が得意なガンプラバトルを活かせる仕事につかせてあげたいなとは思ってます。具体的には内緒!何も考えてないともいう!
本編も同時更新していますのでよかったらご覧ください。では、また次の更新で