「さて、問題です!呪詛師はこの町のどこにいるでしょうか!?」
「唐突に話振るノリは悟譲りだよな、お前」
町に出てしばらくして。
重苦しい空気に耐えかねてか、創が底抜けに明るい声を張り上げる。
希望ヶ峰学園からそこそこ離れた住宅街。産業のかけらもないような、それこそスーパーとコンビニが近場にあるだけの、文字通り、ただ住宅が固まっただけの街。
その中を闊歩する創は、五条悟がそうするように、明るい声で混沌渦巻く世界を謳う。
「千秋。教えた通りに残穢は見てたろ?大雑把でいいから、答えてみろ」
「……あそこ、かな?ちょっと、自信はないけど」
千秋の指す先に沿うように、皆が視線を向ける。雑多に並ぶ住宅の中に、やけに古く、劣化の激しい屋根が見られる。
パンダもまた、そちらの家を見つめており、呪術のことがなんら分からない二人も、あの場所に呪詛師と呼ばれる人間が居ることを悟った。
「42点。自信を持って言えたら、あと5点はやったかな」
「むぅ…。採点厳しいよ。お絵描きゲームの三倍は厳しいと思う」
「どこの家かって特定しなかったのもマイナスだな。こんだけ雑な残穢なら、満点欲しかったら、どの家のどの部屋にどの位置でいるかまで答えなきゃな」
「創くんのいじわる」
「七海さんは俺の十倍は厳しい」
もし七海建人が千秋の採点をしたならば、確実に一桁の点数になっていた。言外にそう言われると、千秋はふくれっ面で「どっちもいじわる」と文句を垂れる。
「まぁ、悪いことするにはちょうどよさそうな物件ではあるな。
殺人鬼の『ジェノサイダー翔』があそこで何人か殺してるって噂だし」
「そういう殺人鬼も呪いなの?」
「いんや、アレはフッツーに殺人鬼なだけだな。五条先生が絡まれたって言ってるし、間違い無いだろ」
返り討ちにしたらしいけど、と付け足し、ため息をつく。
暫く歩いて行くのち、微かな腐臭が、鼻腔をくすぐった。特に臭いに敏感な動物たちはより強くそれを感じるのか、田中の服の中で激しく暴れ回る。
「感じるか…!流石は我が暗黒破壊神四天王だ…。遊戯者よ、貴様の感知は見事だったと俺様は褒めておこう」
「…創くんも、このくらい素直に褒めてくれたらいいのに」
「帰りにアキバ寄ってやるから、それで勘弁してくれ」
「わーい」
そんなやり取りを交わしながら、歩くこと数分。やけに劣化の進んだ建造物を前に、扉に貼り付けられた『テナント募集』の看板に顔を顰める。
「ンなとこ誰も来ねーだろ。
後ろ暗い連中の溜まり場だろうな、確実に。
しかも雑とは言え、隠蔽の術式までかかってやがるとは、ホントに知ったばかりのモグリの犯行だな」
「…日向さんはなんというか、イケナイことに詳しいですね」
「師匠二人に叩き込まれたんだよ。パンダ」
「あいよっ!!」
創に指示され、パンダが扉を拳で破壊する。
田中とソニアが目をパチクリと丸くする傍らで、千秋はすっかり慣れたのか、そのまま壊れた扉を踏み越えた。
ここまで大きな音が鳴ったのに、誰一人として騒ぎ立てない。そのことに違和感を感じながらも、進んでいく五人。
と。ここで先導していたパンダが歩みを止めた。
「お姫さん方、失礼!」
「きゃっ…!?」
「ぬぉっ!?」
パンダがソニアと田中を抱え、その場を飛び退く。すると、そこへ腐食した大型犬らしき影が、その顎門を開いて飛びかかった。
同時に狙われた千秋もまた、咄嗟に下がり、その姿を視認する。
「なっ、この骸…、日の本にのみ出ずる神殺しの獣ではないかッ!?」
「ニホンオオカミな。神殺しは北欧神話のフェンリルからか?」
「……嘘。田中さんがやっとの思いで繁殖に成功した絶滅種ではありませんか…?こんな、なんて酷い…」
唸り声を上げる死骸を前に、口元を押さえて涙を溜めるソニア。一方で、動物に注いだ愛情さえも踏み躙られた田中の形相が、鬼の如く鋭くなる。
創はそれを抑えるように、手で田中を制し、千秋に告げた。
「千秋、こういうタイプの相手は初めてだろうが、行けるか?」
「……うん、大丈夫。……すぅー…。よしっ」
千秋は深く息を吸い込むと、床を蹴って二匹のニホンオオカミへと向かう。
二匹が千秋を迎え撃つべく飛び上がり、その顎門から腐臭を撒き散らしながら、千秋の柔肌へと向かって行く。
その牙が腕に突き刺さる前に、千秋は素早く飛び上がり、二匹の骨が露出した脇腹に蹴りを入れ、壁へと激突させた。
その際、ぐちゃり、と音が鳴り、壁一面に塗りたくるように、肉片が広がる。
半身を失って尚、動こうとする死骸に黙祷し、千秋は奥へと向かう。
「…七海さん、あんな身のこなしできましたっけ?」
「呪力の影響と術式、あとは俺らが仕込んだヤツだ。蹴りが主体なのは、俺の影響」
「俺と千秋への依頼じゃなくて、ホントは千秋への依頼だったんじゃねーの?」
「お前は保険だよ。千秋には経験が足りないからな」
希望ヶ峰学園は、千秋のように呪術師になったばかりの四級が単身放り込まれて生きて帰れるほど、生ぬるい場所ではない。
少なくとも準一級クラスの実力を持たねば、まず死ぬ。それも原型が残っていたらマシなレベルという、呪術師界隈でも他に類を見ない魔窟である。
その闇を暴いて叩く以上、千秋にもそれ相応の実力が求められる。それ故に、特級三人がかりで扱かれているのだ。
…七海建人に「彼女が死んだら承知しませんよ」と詰め寄られたのもあるが。
「千秋。蹴り技を主体にするのはいいが、さっきのは普通に顎掴んだ方が早かったぞ」
「噛まれたらどうしようって思って…」
「切り落とされるよりかマシだと思っとけ。家入さんか俺が治してやっから」
「切り…っ!?」
千秋へのアドバイスの途中で飛び出た物騒な単語に、ソニアが口に手を当てる。
パンダは彼女らを抱えたまま、口を開いた。
「呪術師の世界じゃ珍しくもねーよ。お嬢さん方抱いてるオレのこの手も、実は五回くらい取れてるしな」
「だーから、お前呪骸だろうが。修繕にそこまで手間暇かからんだろ」
「その、さっきから言ってる『じゅがい』とは…?」
ソニアの問いに、創は「ソイツの肉つねってみろ」と促す。
恐る恐る、優しく肉を摘む。本来感じる肉の感触はカケラもなく、代わりに、綿を摘んだような感触が指に伝わった。
「ぬいぐるみなんだよ、コイツ。ただし、俺らと変わんない魂入りのな。
普通のはただプログラム通りに動く呪いの人形なんだが、コイツに関してはパンダに転生したノリのいいヤツって思ってくれりゃあいい」
突然変異呪骸。夜蛾正道が創り出した自我を持つ呪いの人形。最高傑作とも呼べる存在がパンダというわけである。
パンダはその紹介に満足したのか、胸を張り、ふふん、と鼻を鳴らした。
「擬人化したら確実にキ○ヌ・リーブス並みのイケメンだぞ」
「パンダの説明に無駄な時間割いちまったな。千秋、先導よろしく」
「分かった」
「……あれ?スルー?」
「お前みたいなツッコミどころの塊にいちいちツッコむの面倒くさいんだよ」
そんなやりとりを交わしながら、彼らは呪力を感じる階段の向こうへと進んでいった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「あーらら。相手、相当強いね」
創らが目指す部屋の一角にて。呪力を悟らせないように隠したつぎはぎの男が、ニマニマと軽薄な笑みを浮かべ、告げる。
その声音には愉悦が混じっており、これから来る来訪者を楽しみにしているように見えた。
「準二級と四級のコンビ程度ならなんとかなると思ったけど、実力は違うのかも」
「なんでもいい、真人さん。
ニホンオオカミの仇はとるさ」
その側には、動物の死骸を操り、それを愛でる女性が椅子に腰掛け、佇む。
数えるのも馬鹿らしくなる死骸から放たれる腐臭に、つぎはぎの男は笑みを崩さず、鼻を摘んだ。
「臭っ。もうちょっと臭いに気を遣った方がいいんじゃない?」
「そうか?この子たちの匂いなんだから、愛おしいものだと思うが」
女性の顔には嫌悪はカケラもなく、ただ愛しいものを目にした、恍惚とした笑みだけが浮かんでいる。
狂気を孕んだソレを目にして、つぎはぎの男は笑みに隠れた目の奥に、軽蔑を込めた。
(…ま、いい当て馬ではあるよね。バカだけどさ)
♦︎♦︎♦︎♦︎
骸を踏み越え、階段を登る。呪術師になってからというものの、ダメになった靴や衣類は数え切れない。
肉片が付着した感触が伝わる靴に顔を顰め、創はたどり着いた扉の先を見やった。
「この先、嫌な感じがする」
「千秋、正解。これ終わって三級に上がったら、欲しがってた筐体買ってやるよ」
「アレ、プレミア付いてて結構するけど」
「……大丈夫。特級になったら価値観バグるレベルでお金入ってくるから…」
給料の六割がカットされているとはいえ、ゲームの筐体一つなら買える。
特級呪術師は、対応する呪いが軒並み土地神やら怪異やら祟り神やらと、なにかと規模が大きい相手ばかりである。呪術師の給料は、こなす依頼の危険度に比例する歩合給。必然的に、対応する相手が規格外ばかりの特級ともなれば、金は数値化するのもバカらしくなるほどに支払われる。
…再三言うが、創はその任務のために、その給料が六割カットされている。この事実だけで、どれだけ希望ヶ峰学園が予備学科から金を搾取しているかがわかるだろう。
「田中、動物たちは服の中にしまっとけよ」
「…癪だが、我が眷属らも斯様な目に遭わせるわけにはいかぬ。今は貴様の指示を聞いてやろうではないか」
創は気持ちを切り替え、手のひらの上でハムスターを遊ばせていた田中に告げる。流石に数多くの骸を目の当たりにして危険性に気付いたのか、田中はマフラーの中へとハムスターを入れた。
瞬間。パンダの拳が扉に炸裂する。蝶番ごと派手に吹き飛ぶ扉に巻き込まれ、腐肉が撒き散らされ、待ち伏せされていたことが窺える。
扉の直線上の死骸が全滅すれど、所狭しと並ぶ死骸が殺到する。
「わっ…!?」
千秋はソレに面食らったものの、咄嗟に呪力を放つことで無理矢理に弾き飛ばした。
パンダは特に慌てることもなく、腕を振るうだけで、鎧袖一触に幾つもの死骸を壁に叩きつける。
「いたた…」
「千秋、想定できることにあんま動じるな。呪いの視点と、現実の視点。どちらの視点も同時に見てこその呪術師だぞ」
かなりの勢いで呪力を放った反動により、壁に叩きつけられた千秋を起こし、部屋へと踏み入る創。
あたりを見渡すも、呪詛師の影は見当たらない。しかし、呪力を隠すのは下手で、潜んでいる場所は完全に見えていた。
「おいおい、机の下とか何の工夫もない隠れ方してんじゃねーよ。
あまりに滑稽すぎて笑えてくるわ」
歯を見せて、不敵な笑みを浮かべる創。
その姿を横目に、千秋は呆れたようにパンダに耳打ちした。
「……創くん、こういう時、五条先生とか夏油先生そっくりだよね」
「五歳の時からあの二人の悪影響ガッツリ受けてるからな」
史上類を見ないレベルの悪童らに育てられて、まともに育つわけがない。反面教師にした部分も多々あるが、それによって構成されたのは多少の真面目さだけで、一つタガが外れると完全に悪童と化す。
机の中を覗き込み、余裕たっぷりに振る舞う創にイラついたのか、その奥に潜んでいた呪詛師が指を鳴らした。
「そうか。じゃあ、笑ったまま死ね」
両脇に控えたクローゼットや収納から、コンパクトに折り畳まれていたのだろう、明らかに変な折れ方をしている手足で駆け、死骸らが創に迫る。
創はそれを流し目で睨め付け、手を合わせた。
「『千変万化:無下限術式』」
無限を展開することで、その顎門を防ぐ。腐食し、腐り落ちた目玉が飛び出る顔面を躊躇なく掴み、そのまま壁に叩きつけた。
「……うげ。やっぱ無限越しでも気色悪い。
その上、下手な結界張って机の下に籠城とか、お前本当にモグリすぎるだろ」
帳などが一例としてあげられるように、結界を張ること自体は、実はそこまで難しいわけではない。領域展開が呪術の到達点とされているのは、余計なオプションがこれでもかと引っ付いているせいであり、結界の展開だけならば、術師になりたての三歳児でもその気になれば出来る。
とはいえ、呪力を扱えない人間にとっては、まさに超えられない壁。呪術師をよく知らぬ人間にとっては、絶対の城と言えるだろう。
実際は、呪術師にとって障子紙程度の強度があればいいところなのだが。
創は呪力を込めて結界を破壊し、女性の顔面を掴んで引っ張り出した。
「は、はなっ、離せっ…!!動物たちの仇め!穢れた手を離せと言ってる!!」
「俺からも何か言ってやりたいが…俺以上に腹に据え兼ねてる奴が待ってるからな。俺がやるのは、お前を罰する場を整えるくらいだ。ほーら、よっ!!」
創は女性を乱雑に投げ捨て、机の上に腰掛ける。その顔に浮かぶ笑みは、少したりとも崩れていなかった。
「生憎、お前を罰するのは俺じゃない。お前の後ろにいる、七海千秋とパンダだよ」
「ふ、ふざっ、ふざけているのか、お前…!私を罰するだと!?私の何を罰するというんだ!?私はただ、動物と人を救って…」
「…はぁ。もう俺からは何も言わねーよ」
心底面倒そうにため息を吐き、真っ直ぐに千秋を見やる。
この女は、呪術規定を違反しただけでない。動物とその飼い主の思い出すら、自らのエゴでぐちゃぐちゃに踏み荒らし、挙句それをさも正しいことのように主張する。
呪術師をしていれば、このような人間に出くわすことなどしょっちゅうだ。
創も最初こそは正論で立ち向かっていたが、意味がないと悟ってからは流れ作業のように処理している。千秋にも「話を聞かない類の人間」の対処を覚えてもらわなくては、希望ヶ峰学園での仕事はまずこなせない。
創は机に座ったまま、千秋に告げた。
「千秋。腹は立つだろうが、問答はするなよ。俺らが何言っても、コイツは聞かない。正論を垂れ流すだけで解決するなら、呪術師なんざ要らないからな」
「………」
「溜飲が下がらないことなんて、呪術師やってりゃしょっちゅうだ。
言いたくはないが、お前よりもっ…とキレてるヤツが、すぐ後ろにいるぞ」
千秋はふと、背後を見やる。
そこに立っていたのは、髪を整え天へと突き出し、かつてないほどに険しい表情を浮かべる田中が居た。
「田中がこれだけ我慢してるんだ。まずは、あいつが思う存分、溜め込んでるモン吐き出せる場を整えてやれ」
「………わかった」
投げ飛ばされた痛みに動けないのか、へたり込んだままの女性。
千秋はそれに歩み寄ると、息を整え、意識を臍のあたりに集中させる。はらわたが煮えくり返る、腹が立つ。さまざまな表現があるように、腹から呪力を流す感覚。その応用の上で、体の中にある型に呪力を流し込むような感覚で、術式を発動させる。
「『入力呪法』」
入力呪法。コンマ五秒の間に、必要な動きのプロセスを構築し、術式に出力することで、その動きの完全再現をする術式。
早い話、『ゲームのコマンドの完全再現』である。生粋のゲーマーたる千秋との相性は、抜群に良い。
部屋中から隠れていた死骸らが飛び出し、女性を守るように飛び出す。
千秋は恐るべきことに、コンマ二秒で死骸を弾く動きを構築し、術式に出力した。
「再現式…、薙ぎ払いっ!」
再現するのは、無双ゲームの通常攻撃。呪力を放出することで、広範囲を薙ぎ払う呪力の嵐を巻き起こす。術式を応用すれば、放った呪力のコントロールすらできる。これが五条と夏油が導き出した、千秋の強みだった。
呪力の奔流に巻き込まれ、千秋に近かった死骸がまとめて吹き飛ぶも、続け様に死骸の中から湧き出た虫…恐らくは死骸…が、千秋へと迫った。
「おっ…と!」
しかし、それは飛び込むような前転回避によって、あっさりと回避された。
続け様に襲いくる死骸に蹴りをお見舞いし、女性の位置を確認する。
逃げの算段があったのか、窓に足をかけているのが見えた。千秋は死骸を退けながら、田中たちを守るパンダに叫ぶ。
「パンダくん、屠坐魔!」
「あいよ」
パンダが背負っていた袋から、真希に無断でパクってきた屠坐魔を取り出し、千秋に投げ渡す。
逆手にそれを受け取った千秋は、流れるような動きでそれを投げ、窓枠にかけた女性の手を窓枠ごと貫く。
「がぁっ!?…んのっ、ガキがぁ!!」
女性の叫びと共に、死骸が防壁となって女性を覆い隠そうとする。
パンダや創にも死骸が殺到し、女性の余裕が完全に無くなっていることがうかがえる。
そんな中で、千秋は冷静に呪力を込めた足で高く、遠く飛び上がり、鎌のように足を振りかぶった。
「再現式…飛びっ、蹴り!!」
女性が手から屠坐魔を引き抜いたと同時に、その顔に蹴りが放たれる。
華奢ではあるが、呪力で底上げされた上に、術式によっても強化されたその一撃が、女性の意識を奪うのには十分だった。
足が頭から越しに地面につくと共に、死骸がぴたりと動きを止め、その場で力尽きる。
千秋が足を退けると、気絶した女性の頭部には、くっきりと彼女の靴跡が残っていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「あらら、負けちゃったね」
つぎはぎの男は、ビルの屋上から覗き込み、薄く笑みを浮かべる。
本来であれば、日向創の魂を見極めたかったのだが、その真価を見る前に、千秋が対処してしまった。
あれほど分かりにくいものが、人類史上存在しただろうか。
どこまでも無個性。故に、どこまでも変わり続ける。正に千変万化。日向創の術式は、日向創を象徴するコトダマでもある。
頭では理解するが、心では理解できないという、使い古された表現が正しいのだろう。
つぎはぎの男…人から生まれた呪霊、真人はその感覚に一層歪んだ笑みを浮かべて、ビルから飛び降りた。
「さぁ、日向創。俺と遊ぼうか」
呪力の隠蔽をやめ、空を駆ける。
真人は一直線に、日向創へと向かって行った。
入力呪法…簡潔にいえば、作中でも言った通り、「ゲームのコマンドの再現」。コンマ五秒に細部に渡るまで動きを脳内で構築して、術式に入力する必要があるため、常人ではまず使えない。超高校級のゲーマーという才能ありきの術式となっている。投射呪法とは違い、加速することも他者に隙を作ることもできない。単純にゲームの主人公っぽいことができるだけの術式。
「投射呪法でいいのでは」とコメントがきたので、解説をもう少し付け足しました。
ウラ話…千秋の術式について老害どもが大層喚いたが、特級三人がかりの肉体言語で押し黙った。暫くは流動食しか食べられなかったらしい。特に創のキレっぷりは、五条悟が「ひぇっ」と声を漏らし、夏油傑がドン引きするレベルだったとか。
そんなことを1ミリも知らない千秋は、今日も元気にクソゲーに耽る。