日向創は特級呪術師   作:鳩胸な鴨

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踏み入る覚悟はあるか。

今回、舞台も登場キャラもほぼ呪術廻戦だよ。次回から希望ヶ峰学園に本格的に舞台が移るよ。


七海千秋、呪術高専入学

中学三年生…三級呪術師たる伏黒恵は、いつものように、ビクビクと怯える不良たちが織りなすお辞儀のアーチを潜り抜け、校門へと歩いていた。

姉である伏黒津美紀が呪いによって昏睡状態に陥って、早一年。未だに解呪の目処が立たないことに苛つきながら歩いていると。

猫のようなデザインのパーカーを着た少女を引き連れた創が、自身に手を振っているのが見えた。

 

「恵ー!迎えにきたぞー!」

「……日向先輩。恥ずかしいんで、あんま大声で名前呼ばないでください」

 

日向創と伏黒恵の関係は、そこそこに長い。

五歳から望んで呪いに飛び込み、活動していた創。一方で、様々な策謀に巻き込まれ、呪いの世界に飛び込まざるを得なくなった伏黒。経緯は真逆とは言え、五条悟に関わることになった時期を考えれば、歳の近い二人を巡り会わせないという選択肢を、五条悟がとるわけがなかった。

五条の打算があったとは言え、気の知れた仲である伏黒の素気ない態度に、創は苦笑を浮かべる。

 

「なんだよ、学校終わりに任務なんてハードスケジュールだから、俺が迎えに来てやったのに」

「アンタが来たら、五条先生の『俺の成長のために斡旋してる』って建前が崩れる」

 

伏黒は言って、創の背後に控える高専所持の送迎車に乗り込もうとする。

創は怪訝そうな表情を浮かべ、首を傾げた。

 

「五条先生に聞いてないか?今日の仕事は、俺の一級呪霊案件のサポート。

隣の県まで行くから、腹ごしらえも兼ねていろいろ買ってきたんだぞ?ほら、コレとか新発売のチョコなんだけどよ、結構美味いって評判でさ」

「………は???」

 

手にぶら下げたビニール袋から、菓子パンやファミリーパックのチョコを取り出して見せる創に、伏黒は唖然と口を開ける。

今、なんと言った?一級呪霊案件?漸く三級になったばかりの自分に「死ね」と言いたいのか、この人は。

そんなことを思っていると、ゲームに熱中していた少女が顔を上げ、創に問いかけた。

 

「日向くん。前々から言ってる『一級』とか、『特級』って、呪いの世界におけるレベルでいいのかな?」

「ま、そんな感じだな。

運転してくれる伊地知さんは国語得意だし、俺より分かりやすく説明してくれるぞ」

「待ってください。なんで一般人がアンタに同行してんですか?」

 

ここから、創が長期任務として派遣されている希望ヶ峰学園までは、相当な距離がある。

この眠たげな瞳の少女からは、呪力を微かに感じるが、纏う雰囲気は呪力の使い方を知らない非術師のソレだ。

加えて、一級などの線引きを曖昧どころか、まったく理解していない。

それらが導き出す答えは、少女が呪いになんら関わりのない人間であるということ。

伏黒が訝しげな視線を少女に送ると、少女はゲーム機を持ったまま頭を下げた。

 

「初めまして、七海千秋でーす…。

えっと…、超高校級のゲーマー…兼、呪術高専一年生になりたてでーす…。ゲームはオールジャンルいけまーす…」

「……説明してもらいますよ、日向先輩?」

「もちろんだよ。もとより説明する気で連れてきたからな」

 

伏黒が半目で睨め付けるのを歯牙にも掛けず、創は口を開いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「希望ヶ峰学園を裏切るってのは、『呪術師側について貰う』ってことだ。

で、お前は俺の推薦で、呪術高専にも入学して貰うことになる」

 

遡ること先日。徒歩で呪術高専東京校の学長室へと向かう最中。

権力と暴力の無駄遣いを、まさか自分がする羽目になるとは。先日、上層部を半殺しにして通した無理に、少しばかりの罪悪感を抱えつつ、創は「裏切り」について話す。

内容は至極単純で、「希望ヶ峰学園内に蔓延る闇を呪う手伝いをするために、呪術高専にも籍を置いてもらう」というだけのことであった。

 

「…『裏切り』なんかじゃないじゃん」

「希望ヶ峰学園にとっては『裏切り』だろ」

「……ばか。日向くんのテキストはいちいちややこしいよ」

 

ぷすぅ、と頬を膨らませ、そっぽを向きながらも、ゲームをする手を止めない千秋。

言い回しがややこしいのは、呪術師の生態のようなものだ。大目に見てほしい、と心の中で許しを乞うていると。

千秋はふと、小首を傾げた。

 

「そもそも、呪いなんて見えないのに、呪術高専に入っていいの?」

「呪術ってのは、超高校級よりも希少な才能を掘り起こして漸く使えるんだが…。千秋の場合、その点はクリアしてるんだよ。俺が保証する。

お前は見えないんじゃなくて、防衛本能的に『見ようとしてない』だけだ。

呪いのことはもう知覚してるだろ?なら、『見よう』と思って、上を見てみろ」

 

創の言うとおり、ゲームをポーズ画面にして目を閉じ、目に意識を向ける。

そして目を開き、上を見上げる。

 

「おめでとう。猿から人へ進化した気分はどうだい?」

 

エイのような呪霊に腰掛けた青年が、優しい声色でなんとも癪に触る言葉を告げる。しっかりと呪霊を視認している千秋は、困惑に顔を染め、創の裾を掴んだ。

 

「何、あの人…?」

「俺とお前の担任…の一人だな」

「え?」

 

上空十数メートルから飛び降り、華麗に着地して見せるボンタンの青年。彼が指を鳴らすと、呪霊は即座に掻き消え、残穢すら残らなかった。

 

「やあやあやあやあ、長旅ご苦労様。

毎度のように聞くけど、エリート動物ばかりの動物園の居心地はどうだった、創?」

「千秋の前じゃ取り繕って下さいって言ったろ…」

 

今日も絶好調なこの男、夏油傑の不遜な態度に、創の背に隠れる千秋。

創は「人の好き嫌いは激しいけど、根はいい人だよ」と、なんとか警戒を解こうとする。

 

「この人は俺らの担任、非術師が世界で一番大嫌いな夏油傑先生。呪霊を取り込んで使役する『呪霊操術』を使いこなす、『呪術界最強』の一人だ。

俺が差し違える覚悟で食らいついても、歯牙にも掛けねーほど強い。あと体術最強」

「いつも言ってるけど、悟に勝てるくらいになってから挑んできなよ。創、弱いんだから」

「いっつも揃って同じような煽りしやがって!!次は絶対に勝ってやっからな!!!」

 

うがーっ!と、叫びを上げる創を、今度は千秋が抑える。

日向創と最強二人の決闘は、一週間に一度、三時間にわたって行われる。殺さなければ何でもあり、という縛りを課し、領域展開や極ノ番など、盛大な大喧嘩をかれこれ十年も続けている。

戦績は…相手側に五条悟と夏油傑の両名がいる時点で、察してほしい。

創の圧倒的な強さに触れてきて、負ける姿が想像できない千秋は、パチクリと目を丸くして夏油の姿をまじまじと見る。

と。その時だった。夏油が二つの箱を持ち上げ、笑みを浮かべたのは。

 

「その前に、猿どもの菌が染み付いて大変だろう?ここで消毒していくといい」

「千秋。ゲーム機はちょっと遠くにやっておくな」

 

言われるがままに目、鼻、口を閉じる。瞬間。液体が体を包み込む感触が襲う。

暫くしてそれが収まると、千秋は目元を拭い、目を開ける。

視界に映るのは、液体を吸った石畳。びしょびしょに濡れた髪や服が肌に張り付き、気分が悪い。

ゲーム機は創が防護していたため、なんとか無事だった。

 

「……エタノールくさい」

「この人、非術師が嫌いすぎて、帰ってくる度にコレやるん……だぁおおうっ!?」

 

今現在、彼女が着ている服は、胸元を開けた黒のパーカーに、白のカッターシャツ。

エタノールによって濡れたことによって、ぴっちり張り付いたそれらは、服としての意味を無くし、その柔肌を天下に晒す。

惚れた女の下着は、刺激が強過ぎる。まずい。このままでは性癖が自身の理性を破壊してしまう。

危機を感じた創は、指に呪力を込めて、目潰しした。

 

「ぐぉおおっ!!!!」

「ひ、日向くん!?どうしたの!?リズム天国のアザラシみたいだよ!?」

 

いきなり自らの目を潰し、リズムゲームのアザラシのように床を転げ回る創に、慌てて駆け寄る千秋。

反転術式で傷を治した創は、よろよろと立ち上がりながら苦しい笑みを浮かべた。

 

「だ、大丈夫…!!目の中に呪霊が居たから祓っただけだ…!!」

「流石にそれは嘘だってわかるよ!?」

「…ああ、ごめん。配慮が足りなかったよ」

 

夏油は千秋の姿を見て、軽い口調で謝罪を述べる。この状況を作り出した張本人なのに、なんら罪悪感を感じてなさそうなあたり、性格の悪さが滲み出ていた。

千秋もまた、ふと、自身の胸元に目をやり、自らの下着が天下に晒されていることに気づいてしまった。

 

「えっと、濡れて下着が見えてるだけだよ?なのに、なんで目を逸らすの…かな?」

「下着が見えてるのは『だけ』とは言いません!!」

 

美々子、菜々子。この子に貞操観念を教えてくれ。俺だと魔が差してやらかしそう。

顔を真っ赤にして目を逸らす創に、千秋が小首を傾げていると。

ふっ、と空間が歪んだような感触がした。

 

「やーっ!創、お疲れサマンサー!

これで第一段階クリアーだね…って、ラッキースケベ楽しんでる途中だった?

ごめんごめん!黙ってるから、続けて?」

 

そう。我らが五条悟が飛んできたのである。

あいも変わらず癪に触る物言いに、創は血管がちぎれんばかりに青筋を浮かべ、関節技を決めた。

 

「あだだだだだだっ!?ギブギブっ、ギブアーップ!?!?」

「でっ、このクソがっ…、最強の片割れ…っでぇ…!!担任の…っ、五条悟だ…っ!!」

「…最強には見えないけど」

「そりゃあ無下限を打ち消されてるからね。呪術に関してはピカイチだけど、体術では私たちが仕込んだ創には劣るよ」

 

創の折檻に苦しむ五条を横目に、千秋は未だにベタつく服の感触に、顔を歪める。

 

「むぅ…。気持ち悪い…」

「校舎に入れば更衣室と、キミ用の着替えがあるよ。制服のカスタマイズは勝手に申請しといた。きっと気に入るよ」

「…そういうのって、本人がやるんじゃ?」

「そういう…っ!人ら…、なんだよ…っ!!」

「はみ出る!!なんかいけないものがはみ出ちゃうから!!」

 

容赦なくキ○肉バスターをかける創に、呆れた視線を向ける夏油。

あまりに混沌とした空間に、千秋がオロオロと困惑していると。

年末によく見る顔…によく似た中年男性が、向こう側から全力で駆けてきて、夏油にドロップキックをかました。

 

「傑ゥゥゥゥゥウウウッ!!!!」

「あ、やっばぶぅっ!?」

「貴様は出迎えでは控えていろと再三にわたって言っていただろうがァァァァァアアアアアアッッッ!!!!!」

 

派手に吹き飛び、立ち並ぶ寺院の中の一つに突き刺さる夏油。

一方で創は、関節を決められて動けなくなった五条を投げ捨て、中年男性に頭を下げた。

 

「お疲れ様です、夜蛾学長」

 

男性…呪術高専東京校学長『夜蛾正道』に、創は深々と頭を下げた。

 

「うむ。良くやってくれた、創。

……そして君が、超高校級のゲーマーだという新入生か」

「あ、はい。七海千秋で…」

「いや、君のことは卒業生…七海建人からよく聞いている。ついてきなさい」

 

言って、夜蛾は踵を返す。

千秋は少し遅れて、その後をついていった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「改めて、東京校学長の夜蛾正道、一級術師だ。七海千秋くん。輝かしい道を歩んでいた君を、私たちの勝手な都合に巻き込んでしまってすまない」

 

呪術高専の制服に着替えた後。

座敷越しに千秋と向き合う夜蛾は、深々と頭を下げる。

千秋はと言うとそれどころではなく、夜蛾が手元で編んでいるぬいぐるみや、周囲に飾られたぬいぐるみに気が行っていた。

 

(おじさんがキモ可愛いを作ってる…)

「しかし、私たちの勝手をまかり通さねば未来はないというのが、希望ヶ峰学園の現状だ」

 

まるで出来の悪いゲームの終盤みたいなセリフだな、と思いつつ、千秋は思わず反論を口にした。

 

「…ちょっと、オーバーだと思うよ。

確かに、私が本科に通ってる時、楽しい時でもちょっと嫌な感じはしたけど…」

「君も今の状態で帰れば、その危険性が分かるだろう。それ程までに、希望ヶ峰学園は呪術的に『危険な』場所だ」

 

今の状態…と言うと、呪いを知覚している状態のことだろうか。愛着ある学舎に魑魅魍魎が跋扈する光景を想像するも、千秋の脳ではゲームに出てくるような敵キャラしか想像できない。

しかし、それよりも数十倍は醜悪な見た目をしている呪霊が、虎視眈々と獲物を狙っていると思うと、背筋がゾッとした。

 

「その理由は、加茂の…んんっ。希望ヶ峰学園の創設者『神座出流』にあるのだが…、それは置いておこう」

「鴨のネギって言おうとした?」

「いや全然違う。…あまり深く突っ込まないでくれ。いずれ分かる」

 

違うかぁ、と肩を落としつつ、千秋は夜蛾の言葉通り、考えることをやめにする。

知識がない自分が彼の真意を図るなんて、エアプでゲームを語るような愚考だろう。そんな自覚があるからこそ、『神座出流』と『かもの』という二つの名称を結びつけて記憶するだけにとどめる。

 

「このままでは、希望ヶ峰学園を中心に『呪いの世界』が完成してしまう。

君には、それを阻止するために動く創の手伝いをして欲しい」

 

その言葉に即座に答えようとするも。

それを遮るように、夜蛾が「だがぁ!!」と声を張り上げた。

 

「君は曲がりなりにも『呪術師の世界』に足を踏み入れた!!望む望まざるにかかわらず呪術高専東京校の門を叩いた以上、君には私…夜蛾正道が設けた『入学試験』を受けてもらおう!!!」

「……聞いてないよ、日向くん…」

「創には俺から『黙っておけ』と釘を刺しておいた!!彼も五歳の頃に受け、見事合格した程にシンプルな試験だ!!」

 

五歳の子供でもクリア出来るのなら安心…かも知れない。

千秋はそんな思考で無駄な緊張をほぐし、気を引き締めた。

 

「七海千秋。『お前』は何をしにきた?」

「………えっと、呪術高専に入りに?」

「入ってどうするかを聞いている」

 

呪術師全員、テキストがわかりづら過ぎるのはどうにかしてほしい。

そんな軽口を叩くことが出来ないほどに、目の前の夜蛾の纏うプレッシャーは凄まじい。クラスメイト…『超高校級の王女』、ソニア・ネヴァーマインドの纏う気品とはまた違った、有無を言わせぬ威圧。

千秋は慎重に言葉を選び、口を開いた。

 

「日向くんのお手伝いをしに」

「それは『創に言われただけの流された意志』だろ。『お前』は何がしたい?」

「…日向くんに助けられたから、日向くんの助けになりたい。だから、お手伝いがしたいのは、本当…だよ?」

 

創の手伝いはしたい。彼に二度も助けられ、強く頼られたのだから、自分には彼を支える義務がある。

それではダメなのだろうか。そんなことを思っていると、夜蛾は深いため息を吐いた。

 

「一発合格した創が選んだヤツだ。

少しは期待していたんだが…。期待はずれもいいところだァッ!!!」

「ッ…」

 

その怒号に、千秋は思わず目を塞ぎ、体を庇うように縮こまる。

薄らと目を開けて彼を見やると、周りに立つ人形が一人でに動き出していた。アレも呪いの類なのだろうか。

 

「創に助けられたから、創を助けたい。お前がやろうとしているのはそう言うことだな。

七海千秋!!それが貴様の答えなら、現時点では『不合格』だッ!!!」

「…そ、そんなこと、言われても……」

 

不合格の烙印を押された千秋が言葉を紡ごうとした、まさにその時。

ぬいぐるみの一体が千秋の懐に入り、その腹に拳を放つ。千秋は咄嗟にリュックでガードしたが、勢いは殺せずに、そのまま吹き飛ばされた。

 

「うぁっ!?」

「偽った答えを口にしたのだから当然だ。

…ただ、先程言った通り、不合格は現時点での評価だ。試験はまだ続くぞ。

極限状態でのお前の本音を、これから引き出す」

 

リュックの中に入ってるゲーム機が、幾つかやられた感触があった。揃って、最近買ったばかりの新ハードだったのに、と思いつつ、千秋はぬいぐるみの攻撃を避けるべく駆け出す。

しかし、女と健康をドブに投げ捨てたゲーマーである千秋の脚は、ストレッチもなしではロクに機能せず。もつれて転んだ隙を突かれ、その拳が腹に突き刺さった。

 

「っゔぁあっ!?」

「お前が先ほど言った動機は、『日向創に救われたから、日向創を助けたい』だったな。

それは言い方を変えれば、『日向創が原因でここに居る』ということだ」

 

柱に叩きつけられ、肺の空気が抜け出る。

それでも、千秋の耳には、しっかりと夜蛾の言葉が響いていた。

 

「お前は『日向創が原因で呪術師となり』、『日向創が原因で誰かを呪い』、『日向創が原因で母校すらも裏切る』!そして、呪いに相対し、死に瀕した時、お前は思う。『私が死んだのは日向創のせいだ』と!!お前が言ってるのはそう言うことだ!!」

「それは、違う…よ゛…っ!!」

 

それは違う。それだけは絶対に違う。

殴られ続ける中で、千秋は声を絶え絶えにして叫ぶ。しかし、彼女の言い分は、夜蛾によって否定された。

 

「いいや、違わない!!お前はそうやって、創を逃げ道にしている!!!

今ここにいるのは流されただけで、呪術師になりたくないというなら結構!!今すぐそう言って帰られた方がまだマシだ!!!!」

「それは、違う…よ…!

私の、意志で…、ここに居る…の…!だから、がえっ…、ら゛、ないっ…!!」

「なら答えて見せろ!!貴様は何のために呪術師になる!?何のために、死と隣り合わせの世界に足を踏み入れる!?」

 

思い出すのは、クラスメイトたちと共にプロジェクターに映して遊んだ、大人数用対戦ゲームのこと。

あの日以来、彼らとの距離は縮まった。あんな楽しいゲームは、初めてだった。

次に思い出すのは、最近になって出来た習慣。昼休みに創と中庭で合流し、人目のつかない場所でギャラオメガのハイスコアを競う。

そんな、自分が自分であるための憩いの場として佇む希望ヶ峰学園。

その学校を取り巻くのが、友達ではなく呪霊になってしまったら。自分を取り巻く友人が、全員物言わぬ死骸になってしまったら。

恐怖と義憤が突き動かすままに、千秋は口を開いた。

 

「……呪いなんかに、私の『母校』を奪われたくない…。呪いなんかに、私の友達を、一人も殺されたくない…!呪いなんかに、みんなと出会った思い出を穢されたくない…!!呪いなんかに、私の『居場所』を壊されたくないっ!!

私はっ!『私の居場所を守るため』に!!呪術師になりたい!!!!」

 

その叫びに、ぬいぐるみの攻撃が止む。

再び静謐が包む空間に、夜蛾の拍手が響いた。

 

「合格だ。おめでとう」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…で、制服が結構血で汚れたから、今日は汚れてもいい私服で任務なんだよ」

「………日向くんのばーか」

「いや、本当にごめんって…」

 

お陰で財布すっからかん、と乾いた笑みを浮かべる創。

壊れたゲームは『超高校級のメカニック』である左右田和一すら「オーバーホールしないと無理だろ。オレに頼るまでもなく分かるくらいブッ壊れてんだから買い換えろよ…」と匙を投げたらしい。

結局、壊れたものは全て、泣く泣くゴミに出すことになった。入学試験があることを黙っていた創は、無言かつ真顔で号泣する千秋に全力で土下座し、三ヶ月分の手取り給料を費やしてゲームを購入することで、ようやく機嫌を直してもらった…というのがオチだった。

 

男というのは、惚れた女には弱いらしい。この人すっかり骨抜きにされてるな、と思いつつ、伏黒は呆れたため息を吐いた。

 

「乙骨先輩みたく、呪わないでくださいよ」

「え?なんで乙骨の名前が出るんだ?」




創くん、つくづくベタ惚れしてんなぁ。
神座出流…。その正体は一体何パンなんだ…?(すっとぼけ)

日向創の呪術高専制服…規定のものに白のパーカーをくっつけた感じ。ざっくりいうと虎杖の赤部分を白に変えたバージョン。下は夏油リスペクトボンタンで、胸ポケットには五条お下がりのグラサンと家入硝子お下がりの万年筆、夜蛾とパンダからの誕プレだったパンダストラップが引っかかってる。ザ・ファンシー不良スタイル。

七海千秋の呪術高専制服…一言で言うと釘崎のパーカーバージョン。ネコのパーカーを愛着していると聞いた創の計らいだった。胸元は窮屈なので開けている。
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