セラマニア難民少女兵団   作:朝比奈たいら

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第六話『リベリオン共同戦線(中編その2)』

セラマニア:……さて、戦闘後皆に警戒させつつもリシャールに話します。

「エルム派に知り合いが居るリベリオン隊員に心当たりはありませんか」と。

リシャール:「内通者か、もしくは向こうと血縁関係がある者の話かね? それならば心当たりはあるが……」

セラマニア:「あるんですか。その者の名前は?」

リシャール:「君も知っている人物だよ」

セラマニアAI:「私もですか。誰でしょうね、教えてください」

リシャール:「ラスティナ・コフィナン、先程真っ先に叫び、君に事情を打ち明けた彼女だ」

セラマニア:「やっぱり知っていたし、聞いていたんじゃないですか。盗聴器でもつけてるんですか?」

リシャール:「いや。そんなものは無いよ。私は君の事なら何でも知っているつもりだが」

セラマニアAI:「…………気味が悪いですね。それで、どうしてラスティナさんをこちら側に引き込んだんですか?」

リシャール:「私のリベリオン隊は、帝国の正規軍よりも精鋭だからな。彼女の存在が助けにはなるだろうと思ったまでさ」

セラマニア:「へぇ、そうなんですか。しかし彼女はどう見てもあなたに好意を抱いているようには見えませんけど。

リベリオン隊は愛人とか、妾候補だけを集めた部隊じゃなかったのですか」

リシャール:「ああ。それは建前上そうなっているだけだ。

実際、私の愛人の殆どは戦闘技術だけで選ばれている。

もちろん、中には心の底から愛した者も居るがね。

セラマニア:「あなたは『愛』とやらをいくつも持っているのですね」

リシャール:「君だってそうだろ? 君は愛を知ってしまったのだよ」

セラマニア:……やばいです、この人セラマニア隊の関係(意味深)も知ってる。

本当に盗聴器とかカメラを警戒した方が良さそうです。

「それはそれとして! ラスティナさんの正体を知っているのなら、襲撃してきたエルム派の詳細も知っているんじゃないですか?

 あれらはエルム直属の兵とか貴族階級の者なのでしょう?」

リシャール:「まぁ……その通りだな」

セラマニア:「敵が次に打って来る手は分からないのですか」

リシャール:「分からんよ。だが、今のままではまずい事だけは確かだろうな」

セラマニアAI:「……ふむ。ではこちらからも手を打たねばなりませんね」

リシャール:「何か策があるのか?」

セラマニア:「それは本来あなたが考える事です。とりあえずラスティナさんを伴って各民家の民間人の顔を全て調べます。

現在二名確保、十名裏切り者を処刑、数名をリベリオン隊が射殺しましたが、まだ何かあると思った方が良いです。

ラスティナさんが裏切る可能性も考慮しています。

最悪の場合はあなたの愛人が死ぬ事も覚悟しておいて下さい」

リシャール:「…………」

セラマニア:「いつもあなたがやってきた事ですよ」

リシャール:「すまん。そうだな。僕も覚悟を決めるべきだ」

セラマニア:この人がリベリオン隊にどの程度入れ込んでいるかは微妙に分からないとこありますからね。

どうであろうと、ラスティナさんはエルム派ではなく「保守派だ! 殺せ!」と言ったので、

もしかしたら知り合いを手にかけて辛いのではなく、むしろ保守派に恨みがあるのかもしれません。

貴族的な関係というのは面倒ですね。

さて、次は何が起こりますか?

 

AI:戦闘終了後は夜になり、各勢力の兵が休息を取ります。

セラマニア:交代で休息を取ります。

休息中はボディーアーマーを脱いで体力を温存しますが、必ず隊員が待機する部屋の中で休憩し、連合兵には顔を隠しつつ休憩中は絶対に会いません。

AI:では休みました。そして朝になり、朝食の時間です。

セラマニア達にも食事が与えられますが、連合兵は携帯食料のみです。

ちなみに連合軍の兵士達の会話を聞くと連合兵は「飯はまずい」「こんなもん食えるか」等愚痴っています。

セラマニア:正直ここで余計な煽りとか威圧とかして帝国とか神聖同盟の評判落とした方がいい気もしますが……

解放者連合の兵はどうも訓練されてない傭兵だか民兵みたいなので、下手に刺激して変な事されると困ります。

食事は平等にしたいのですが、そもそも私達に与えられた食事は宿のものですか?

AI:宿や食堂の食事の場合、連合兵の食事よりも豪華でしょうね。

セラマニア:毒を警戒しつつ、連合兵に宿の食事を振る舞うようリシャールに提案します。

「食事数回分の値段で士気低下を防げるなら安いものですよ」

リシャール:「そうか、お前達がそれでいいというのならば構わないだろう」

セラマニア:許可を得たのでリシャールが宿に代金を支払い、連合兵に食事を作ってもらいます。

連合兵の反応はどうです?

AI:連合兵がセラマニア隊長に敬礼をして挨拶しています。

「ありがとうございます!」

セラマニア:「礼ならリシャール殿に」

リシャール:「では、我々も食事を取るとしよう。今日は豪勢に肉料理だぞ」

連合兵:「おおっ!?」

セラマニア:朝から肉食うんですかこの人達。

あ、ちょっと待って下さい、先に家畜やらネズミやらにこの料理を食べさせて異常が無いか確認します。

セラマニア隊とリベリオン隊には先に腕にスープや肉を少量垂らして、かぶれや痛みが無いかも見ます。

リシャールとウリクセイ枢機卿にも少し待ってもらい、慎重に毒を探った後に食事にします。

これで毒が無い事は確認出来ましたよね。

AI:はい、問題ありません。

セラマニア:では食事にしますが、部隊を半分ずつ分けて食べ、半分は食事中の襲撃を警戒します。

まぁ連合兵は皆で食べてるでしょうが、私達は警戒を怠らないです。

食事中、アクシデントはあります?

AI:特にありません。

セラマニア:では食事を終え、会談が始まると思います。

配置は前回と同じですが、昨日ラスティナ・コフィナンと村人達の顔を見て異常が無かった事を確認しているはずですけど。

AI:はい、全員異常無しでした。

セラマニア:ヘカテリーナをラスティナと組ませ、宿の中の警備に回します。

ただし、重要人物達には近づけず窓の近くにも立たせないように。

ラスティナが敵と通じていた場合、宿の中で暗殺したり外へ合図する可能性がありますから。

そして私とバルバロッサは会談に立ち会いますが、今日はどんな感じです?

AI:今日の会談は、和平条約の調印のみですね。

セラマニアAI:内容は?

AI:基本は和平条約の締結。但し、お互いに不可侵条約の締結を求めます。

セラマニアAI:不可侵とは?

AI:「お互いの国境付近への立ち入りを禁止する」というものです。

セラマニアAI:それだと和平ではなく停戦ですよね。戦争継続の為の口実になりませんか?

AI:はい、なのでこちらからは「和平の為に国境付近に部隊を駐留させる」という事を提案します。

セラマニアAI:なるほど。……これは駄目でしょう。

AI:えーと、一応提案してみましたが、あっさり拒否されました。

セラマニア:んん? これはリシャールの案ですか、それともウリクセイ枢機卿の案ですか?

AI:「平和維持部隊を派遣する」というのはウリクセイ枢機卿の提案です。

ちなみにリシャールさんは、「自分はそんな馬鹿げた案は出さない」と言っております。

セラマニア:割と強く反対してるんですねリシャールは。

神聖同盟側は何としても国境なり解放者連合側に自分の兵を置きたいのですが、

リシャールは妥協する余地があるという事ですか。

……ちょっと待って、この「馬鹿げた案は出さない」というのは連合に聞こえるように発言したのですか、それとも小声か事後かで枢機卿に言ったのです?

AI:はい、聞こえないように言っていますよ。

セラマニア:ああ、じゃあ見せかけのプロレスではなく本当にリシャールは妥協して会談を成功させたいのですね。

でも枢機卿……そもそもリシャールが神聖同盟の穏健派らしいですから、彼もそうなのでしょう。

その穏健派ですら兵を相手側に置きたがっている。

神聖同盟強硬派の言い分を知るのが怖くなってきました。

AI:会談は決裂しました。

セラマニア:えっ、オジマン代表の様子は?

AI:オジマン代表は「我々は平和を望んでいる! だが貴様らのやり方では実現できない!」と言います。

セラマニア:本当に険悪じゃないですか、枢機卿側は本当に和平を結ぶ気があるんですか?

AI:オジマン代表の言葉を受け、枢機卿は「我々にも平和を望む心があるのだ! だから武力行使はしない! しかしだな……」とリシャールを指さします。

「今回神聖同盟は帝国の支援を受けている。私はルキニア帝国がこの件に関わる事については反対なのだ。オジマン代表は帝国に好意的だというが、私は違う」

リシャール:「ほう、枢機卿殿は帝国がお嫌いですか」

枢機卿:「私の言う平和とは、血が流れない物だ。それは戦争ではない。暴力によってしか解決出来ない物事もあり、それを否定する事は出来ない。だが肯定もしない。

私は、いや、私達は、ただ対話による平和を求めているだけだ。それが不可能なのであれば、武力を行使するしかない。

そして今、我々の意思は無視されようとしている。

貴方には解らないだろう。これは宗教論争ではなく、国家間の問題なのだ。この場での話し合いで解決出来るものではない」

セラマニア:ちょっと雲行きが怪しくなってきた、特にリシャール周り。

ちなみに、リシャールがルキニア先代皇帝の血筋である事は枢機卿は知っているのですか?

AI:知ってます。リシャールはルキニア帝国の皇族だと。

セラマニアAI:うわぁ……

枢機卿:「リシャール・ド・ビアン大佐。あなたは帝国貴族の出自でありながら、何故そのように無礼な態度をとるのか。私はあなたの態度に不快感を覚えている」

リシャール:「ふむ。私が帝国貴族だからですかな?」

枢機卿:「そうだ。私は神に仕える者として、そのような振る舞いを認めるわけにはいかない。立場を弁えよ。リシャール・ド・ビアン」

リシャール:「なるほど。では、私も言わせていただきましょうか。枢機卿殿」

枢機卿:「何だね? 言ってみたまえ」

リシャール:「貴様こそ何を言っているのだ? 確かに私は帝国出身ではあるが、平和という意味でなら現在の神聖同盟はほど遠く、

帝国という巨大な勢力によって支配されつつあるだけにすぎない。

更に言えば、現在のあなた方の祖国は帝国の圧力で自由意志での内戦すら出来ない状況にある。

このような現状において、平和などというものが存在するのかね?

否、存在しない。

平和とは力によってのみ得られるものだ。

枢機卿:「……」

リシャール:「故に、帝国保守派であるエルム派が今回主導して起こした襲撃により会談は失敗に終わるだろう。そして、それは帝国にとっての利益となる。しかし私がそれを阻止すべく動いているのはひとえに、我が愛する民の為なのだ! それこそが真の平和への道!」

枢機卿:「……なるほど。君の言い分は理解した。だが、その主張は認められない。この会議は神聖同盟の未来を決める重要なものなのだ。帝国貴族である君個人の感情を優先することは出来ない」

セラマニア:……ふむ、そういえば私の任務は『和解の仲介役』でしたね。

ではちょっと動きましょう。

「ここに居る全員が、帝国の保守派から敵視され、敵対している事は共通している……」と、ぼそりと呟きます。

護衛の分際で発言権は無いですけど、思わず言ってしまった、というのを装って全員の妥協点を探します。

AI:そのセリフを聞いた会談場の面々は一斉にあなたを見つめました。

リシャール:「……ほう?」

ウリクセイ枢機卿:「君は確か……マリア・エクステル少佐と言ったか?……何だね、何か意見でも有るのか?」

セラマニア:「はい、いいえ。護衛にあるまじき失言をお許しください」と言う。

後はリシャール、上手く枢機卿とオジマン代表を説き伏せて下さいよ……

政治の状況をまだ判明してない事が多すぎますが、ここで反帝国保守派に纏まればここに居る陣営は戦争せずに済むんですから……

AI:リシャールは「うむ、よろしい」と言って微笑みました。

リシャール:「君の意見はもっともだ。確かに私は帝国に与する者である。だが、私がこの国の内戦に関わる理由はそれだけではないのだ」

ウリクセイ枢機卿:「……どういう事かな?」

リシャール:「私は帝国保守派の事を好かない。私はこの国の民を愛おしく思う。帝国の傀儡ではなく、真の平和な国を創る事こそ私の使命であると思っている。

だからこそ、今我々が和平協定を結び、手を取り合えば、いずれ帝国と対等の力を持った時、我々は帝国に対して大きな影響力を持てるだろう」

ウリクセイ枢機卿:「ふむ……君の言い分も解った。ではその証拠を見せて貰おうか」

リシャール:「もちろんだ。

まず、私は反保守派の帝国貴族として行動して来たつもりだ。

私は帝国の傀儡にならない。

そして、私には帝国に対抗できるだけの力がある。これを見て欲しい」

AI:リシャールは一枚の写真を差し出します。

写真に写っていたのは、どこかの施設でした。

リシャールは更に説明します。

これは帝国が所有する地下資源採掘施設のようです。

ウリクセイ枢機卿「この施設は……?」

リシャール:「これは帝国の地下資源採掘場の一つだ。

この採掘場の管理者は帝国の一企業だが、その子会社は私が経営するアーシャ・ラピスラズリと密接な関係にある」

セラマニア:ダミー企業を隠れ蓑にした、リシャール支配下の採掘場ですか。

資源と言いますけど、何の資源が取れるんでしょう。

リシャール:「ここで採掘出来る資源とはすなわち『エネルギー資源』だ。例えば『電力』や『石油』などのな」

セラマニア:石油。それに発電所も関係している。

リシャール:「それだけではないぞ。ここの施設で生成される鉱物の中には『レアメタル』もある」

セラマニア:全部特盛で持ってるじゃないですか。

やたら金払いが良いと思ったらオイルマネーにレアメタルとは……

ウリクセイ枢機卿「なるほど。それで我が神聖同盟に莫大な支援があるわけか……」

リシャール:「そういうことだ。だが、その採掘場には問題がある」

ウリクセイ枢機卿「問題?」

リシャール:「それは、エルムを始めとした保守派が採掘場を欲しがっている事だ」

ウリクセイ枢機卿「我々と敵対する保守派が、この採掘場を手に入れるかもしれぬと」

リシャール:「ああ。だから我々の利害は一致しているのだ。私の要求は、貴殿等の協力により採掘場の利権を完全に確保し、保守派から守ることなのだよ」

セラマニア:思ったよりシンプルな話でした。

人的資源が足りないのはリシャールも同じで、企業とか土地とか資源とかを守りたいという話ですね。

その為に我が国の兵を集めようと……これ、もしかしてリシャールって帝国では不利な立場に居るんじゃないでしょうか。

帝国に対抗出来るだけの力がある、という根拠は資源採掘場の話であって、軍事力はあまりないのでは?

リシャール:「もちろん、相応の対価は払うつもりだ。具体的には、貴国の優秀な軍人を派遣していただければと考えている」

ウリクセイ枢機卿「なに!? どういうことだ!」

リシャール:「つまり、我が指揮下の戦力として戦っていただく代わりに、この資源を貴国にも提供しようということだよ。さぁ! いかがかな!」

セラマニア:和平どころではなく、石油とレアメタルでぶん殴って両方とも傘下に収めようとしてますよこの人。

これ我が国の内戦どころか『来るべき帝国の内戦へ向けての会談』になってるんですが、枢機卿とオジマン代表はどう出ます?

ウリクセイ枢機卿:「ふむ。それはなかなか魅力的な提案ですな」

リシャール:「おや? ずいぶん簡単に信じるのだね?」

ウリクセイ枢機卿:「いえ、そのようなことはありませんよ? ただ、少し驚いただけです」

リシャール:「そうか、まあよい。それでは枢機卿は承諾してくれたと思ってよいのですかな」

ウリクセイ枢機卿:「えぇ、もちろんですとも。我が神聖同盟も反帝国保守派と共に戦うことを約束いたしましょう」

リシャール:「おお! ありがとうございます! ところで、オジマン代表はいかがでしょうか?」

オジマン:「そうですね。私共も協力させていただきたいと思います。しかし、その前に確認したいことがありまして……」

リシャール:「ほう? なんでしょう?」

オジマン:「先ほど、資源の提供という話がありましたな?我々にどのようなメリットがあるのかをお聞きしてもよろしいですかな?」

リシャール:「ふむ。確かにおっしゃられる通りだ。失礼した。まず、石油についてだが――」

セラマニア:これもう神聖同盟と解放者連合の穏健派が両方ともリシャールの支配下に入ったという事ですよね。

想像していた平和的な和平とは全然違うのですが、帝国に一方的に滅ぼされたり自国で内戦するよりマシ……なんでしょうか。

どちらにせよ会談は纏まりそうなので、再度の襲撃を警戒します。

AI:「敵襲!」

セラマニア:やっぱり来ましたね、状況を確認します。

リシャール:「どうやら、話し合いを邪魔する気のようだな……仕方ない。皆、戦闘準備だ」

セラマニア:いやあなた戦わないでしょう、早くどっか隠れて下さい。

私の師匠なら戦闘能力はあるはずですけど、今この状況で死なれたら帝国植民地ルートなので。

ラピスに「敵の規模と装備を報告」と無線機に叫びます。

ラピス:「敵の数は50人。武器はアサルトライフルに剣など。武装は統一されていません」

セラマニア:「剣? 銃剣ではなく、前に見た中世の剣ですか?」

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