オラリオの喧嘩屋 作:アイズに膝枕されたい侍
「じゃあ僕は今日帰らないからね」
「あ、はい分かりました」
「事故るんじゃねえぞー」
「君は僕の親か……」
朝方の時間。
ツインテボインが何やら
「それじゃあ、行ってくるね」
「あいあいさー」
「行ってらっしゃい神様」
そう言って見送る俺たち。
そんなこんなで一日が始まった。
「カグラさん!どうですか!?」
「距離のとり方に捻りが無い。そんな素直な間合いの取り方だとすぐに囲まれてフクロだぞ」
「うぅ……」
ダンジョン内にて兎の特訓。
基本的にはモンスターと兎を戦わせてそれを傍から見る俺が評価するという形でやっている。
酒場の一件後の特訓でやっていくと兎が潰れそうだったからな。少し優しめにした。
その特訓の内容は兎の名誉のために言わないでおこう。ただ、血と汗と涙とゲロを巻き散らかしていたとだけは教えておく。
「はい、じゃあ次な」
「え?……ほあぁぁぁぁああ!」
俺の言葉に示し合わされたかのようにゴブリンの群れが兎を襲いだした。
さて、がんばれがんばれ。
◆◇◆◇◆
「よく集まってくれた皆の者!俺が『神の宴』主催者、ガネーシャである!毎度、多数の出席者にガネーシャ超感激!さて、今年の
象の被り物を被ったガタイのいい1人の男神、ガネーシャがそんな挨拶をする中、
「美味い!ベル君達へのお土産としてお持ち帰りしよう!」
会場にてバカ食いするロリ神が1人。ヘスティアだ。
そんなヘスティアの周りではほかの神々が何やらヒソヒソと話している。
「ロリ巨乳来てんじゃん」
「生きてたんだな」
「てか、露天でバイトしてたぞ」
「客に頭撫でられてたの俺見た」
「さすがロリ神www」
小声で話してるというより、ギリギリヘスティアに聞こえる声で話す周り。
それを聴きながらもヘスティアはそこまで気にしないように意識しつつ口から息を吐いた。
そんな時、
「何やってるのよあんた……」
「むぐぐ!?」
ヘスティアに話しかけた1人の女神。右目に黒い眼帯、赤い髪を後ろでひとつにまとめた美しい女神だ。
「久しぶりヘスティア。ていうか食べすぎよ」
「ヘファイストス!」
そう言って小走りで、ヘファイストスと呼んだ女神へと近寄るヘスティア。
「やっぱり来てたんだね!来て正解だったよ!」
「何よ。言っとくけどもうお金は貸さないからね」
「失敬な!僕が神友にそんなことをするやつだと思ってるのかい!?」
「え?貴方、
どうやら昔なじみの親しい関係にあるようだ。
ヘファイストスも久しぶりに見る友人に顔を綻ばせていた。
「ふふ、相変わらず仲がいいのね」
そんな声とともに現れた1人の女神。
ヘスティアとヘファイストスを囲む神達が一斉に避けその女神に道を譲った。
そこに立っていたのは、
「美の神、フレイヤ…!」
誰が放ったかそんな言葉。
そう、そこに立っていたのはオラリオ最大規模のファミリアを持つフレイヤファミリアの主神フレイヤだった。
その姿を見たヘスティアは思わず後ずさりしてしまう。
「あら、お邪魔だったかしら?ヘスティア」
「う……僕、君のこと苦手なんだよね」
「あら…私はあなたのそういうところ、好きよ?」
そう言い微笑むフレイヤ。
その時、
「おーい!ファーイたーん!フレイヤー!どチビー!」
そんな大声で接近してくる女神がまた1人。
酒場にいた糸目の女神。ロキファミリア主神、ロキだ。
「ロキ、何しに来たんだよ君は……」
「なんや、理由がなきゃ来ちゃダメなんか?そっちの方が無粋っちゅうもんやろ。ほんま空気読めてへんわーこのどチビ」
そんな言葉を聞き凄い……形容しがたい顔になるヘスティア。
ヘファイストスからも、あなたすごい顔よなんてことを言われていた。
「久しぶりねロキ。あなたのファミリアの名声、よく聞くわよ?よくやってるみたいじゃない」
「大成功してるファイたんにそう言われるとわなぁー。でもまあ、今の子達はうちの自慢なんや」
ヘファイストスの言葉に少しばかり照れを見せるロキ。
指先で頬かきながらそんなことを言った。
「そう言えばなんやけど…」
「…?どうかしたの?」
ロキの歯切れの悪い切り出し方を訝しむヘファイストス。
「喧嘩屋の話、聞いたか?」
その言葉で3人の女神、そして4人の女神をチラチラと見ていた周りの神達が一斉に反応を示した。
「……噂程度には耳にしていたわ。生きていた、って言うことはね」
「……」
ヘファイストスが言葉を返し、フレイヤは微笑を浮かべ何も言葉を発さない。
そしてヘスティアと言うと、
「……っ」
大量の冷や汗をかいていた。
「ちなみに言うてまうとな?うち、もう本人に会うてんねん」
「「「っ!」」」
驚く3人。そんな3人を他所にロキは言葉を続けた。
「うちのベートがひょんなことからボコボコにされてまうてな。あれは間違いなく本物やで」
「凶狼が……」
「……それは確かに本物とみていいわね」
そんな会話を繰り広げる中ヘスティアは1人汗を流しながら視線をさ迷わせていた。
まずい、このままだと……そんなことを思っていた時だった。
「そういや昨日ギルドに喧嘩屋がいたみたいな話聞いたな」
「は?まじ?」
「おう、なんか男の冒険者とちょっとした騒ぎがあったらしいぞ」
周りの神々達もそんな話をし始めていた。
何をしてるんだい!カグラくん!そんな思いを心の中に募らせながらもどうかこれ以上話が大きくならないように祈ろうと━━
「そういや聞いた話なんだけどあの喧嘩屋がどっかのファミリアに所属したみたいだぞ」
「「「「「え?」」」」」
「っ!?」
そんな言葉に反応する周り。ヘスティアはさらにぶわっと汗が吹きでる錯覚を感じた。
「あ、それ俺も知ってる。確か……おい、ヘスティア」
「ひゃい!な、なんですか?」
「聞いた話だとお前のファミリアに入ったって……」
「「「「「え?」」」」」
その言葉にさらに固まるヘスティア。
これはまずい。この流れは本当にまずい。
「いやいやまさか。だってヘスティアだぜ?」
「確かにな。ないない」
「あ、あははー……」
周りの神たちからの言われようには言い返したくなるがこの流れに乗っかれ。そう思い、ヘスティアは苦笑いを浮かべるが、
「てか、どチビんとこの白髪の駆け出し、カグラの連れやなかったか?」
ピシッ!
ロキのそんな言葉にヘスティアの体が固まった。
「「「「「え?」」」」」
又もや困惑の声を出す周り。この流れは何度目か。
「え?じゃああの噂って…」
「マジでロリ神のとこに…?」
「ど、どんな手を使ったんだよ」
「ヘスティア、あなた……」
固まるヘスティアを他所にざわめきたつ周りにヘスティアに目を向けるヘファイストス。
これは助からないな、そう思ったヘスティア。次の瞬間。
「ヘスティアァ!」
「説明しろ!」
「お前お前お前ェ!」
「わわわ……」
寄ってたかられるヘスティア。それから小一時間その囲いから抜け出すことは出来なかった。
「つ、疲れた…」
「お疲れさま」
やっと解放されたヘスティア。その顔は今にも死にそうなものだった。
「フレイヤとロキは?」
「もう帰ったわよ。ロキはあんたに嫌がらせできたってことで満足してたし、フレイヤも確かめたいことは分かったからって」
「……ふーん」
ヘファイストスの言葉に素っ気なく返した。
「で?あんたはどうするの?このまま残るなら久しぶりに飲みに行く?」
その質問に気まずそうな顔をするヘスティア。
しばらくしてその重たい口を開けた。
「う、うん。えーと、ヘファイストスに少し…頼みたいことが…あるんだけど……」
その声は段々と小さくなっていき最後の方はほぼ聞こえないレベルの小声。
それを聞いたヘファイストス、彼女の目がヘスティアを睨みつけていた。
「この期に及んで頼み事ですって…?」
そう言う彼女の目は鬼を彷彿とさせるような雰囲気を醸し出していた。
ヘスティアは心の中で、ベル君、カグラ君、僕に力を貸してくれ…なんてことを切に願った。
ヘファイストスみたいな女の人ええよね!