オラリオの喧嘩屋 作:アイズに膝枕されたい侍
「はぁ……」
とある執務室にそんなため息がこぼれた。
それの発生源は椅子に座る1人の女神、ヘファイストス。
彼女は目の前にうずくまる形で地に伏しているとある女神を見ていた。
「あのねぇ、いつまでそうやってるつもりなの?私も忙しいのよ」
「………」
ヘファイストスがそう言うがそれでもなおも押し黙る女神。
「……あのねぇ、ヘスティア」
うずくまる女神、いや、土下座するヘスティア。そんな彼女に語りかけるヘファイストスは呆れたような声音で口を開いた。
「何度も言うけど、
そうは言うが姿勢は崩さないヘスティア。
ガネーシャの宴から一日、そんな時間が経っているその間、ヘスティアはこの姿勢を崩すことは無い。
「そもそもその格好はなんなのよ…」
「土下座」
「え?」
「
それを聞いて思わずここにはいない男神に悪態を吐くヘファイストス。
そんな思いを押し込めつつため息をひとつ。
「教えてちょうだいヘスティア。何があなたをそうさせるの?」
「あの子の力になりたいんだ…!今あの子は変わろうとしてる。険しい道を進もうとしてる。だから欲しい!そんな道を切り開くための武器が!ボクはあの子に助けられてばかりで神らしいことは1つも出来ていない…!何もしてやれないのは、嫌なんだよ…!」
その言葉を聞き、数瞬考えるヘファイストス。
そして、数度頷き、
「……分かったわ。作ってあげる、あなたの子にね」
それを聞いたヘスティアは思わずといったように顔を上げた。
「あなた、私が頷かない限り梃子でも動かないでしょう?」
「うん!ありがとうヘファイストス!」
「ちゃんと対価は払うのよ?何百年後かかっても」
「分かってるさ!ボクだってやる時はやるんだ!」
「はいはい」
そんな形で話がまとまり、ヘファイストスが腰を上げ早速と言ったようにベルのための武器を打とうとしたその時だった。
「「ん?」」
何やらドタドタと音が聞こえてくる。
それは扉から。誰かが廊下を走っているのだろうか。
そう思った時、
「主神様!」
そんな言葉と共に中に入ってくる1つの影。
褐色肌に黒い髪を一つにまとめた長身のヘファイストスファミリアに所属する女性。その大きな女性特有の2つの果実をサラシで抑えただけのそんな彼女はズンズンと中へと入ってきた。
「つ、椿?どうかしたの?」
椿と呼ばれたその女性。
"椿・コルブランド"。ヘファイストスファミリアの団長を務める
「こちらにヘスティア様がいると聞いて……っ!」
部屋を見渡す椿。
そして、その視界にヘスティアを収めるとおもむろに彼女はヘスティアの前へ向かい両手を地面につき目を見た。
「ヘスティア様!」
「え?は、はい!」
「そちらのファミリアにあの喧嘩屋が所属しているというのはホントでしょうか!?」
「え……そ、そうだね」
椿の言葉に正直に言うか迷ったヘスティアだったが今更隠すことでもないだろうという判断で正直にそう言った。
すると、椿は頭を下げ、
「でしたら、手前にその喧嘩屋の武器、打たせて貰えないでしょうか!」
「え?」
「……はぁ、椿、あなたあの時の約束のこと?」
「それもあるが、手前がどうしても打ちたいだけです!」
そんな言葉を聞き呆れるヘファイストス。
ヘスティアはと言うと困惑の顔を浮かべるだけだった。
「もちろん代金は必要ないです!」
「え?」
「は?ちょっと、椿!それは……」
「お願い、します」
そう言って頭を下げ続ける椿を見ていたヘファイストス。
少しの間躊躇いを見せていたがまたもやため息をつき、
「…ヘスティアがいいと言うならいいわよ」
「え?ぼ、ボクかい?えーと……」
頬を指先でかきながら悩むヘスティア。
しかし、次の瞬間には力強く頷いた。
「うん!それならカグラ君の武器お願いするよ!」
「っ!ありがとうございます!では、手前は早速作業に入らさせてもらいます!」
そう言って勢いよく立ち上がり走り去っていく椿。
「……ヘファイストスも苦労してるんだね」
「はぁ…」
女神2人のそんな会話が室内に静かに響いた。
◆◇◆◇◆
椿・コルブランドと喧嘩屋の出会いは偶然だった。
初めは店前で空腹に倒れる喧嘩屋を椿が拾い上げて中へと招いたところからだった。
親切心と言うよりも店前で倒れられていたら客が入らなくなる。そんな思いから助けていた訳だが、この時の椿の喧嘩屋に対する印象は最悪だった。
噂程度のものしか耳にしていなかったがところ構わず暴れ回る危険人物。自分の暴力という快楽のため他人に迷惑をかける、そんな男だと思っていた。
そして、丸一日寝ていた喧嘩屋。
起きてからというものファミリア内の食料を食べ尽くさんばかりの勢いで腹へと詰め込んでいく。
遠慮というものを知らないのか。そう思う椿だったが自分の勝てる相手じゃないとは理解していたから特に何かを言うことは無かった。
そんなある時だった。
喧嘩屋が鍛冶作業のための部屋へと入った。
それはさすがに注意した。出て行けとも叫んだ。しかし、喧嘩屋は聞く耳持たずで中を少し物色する。
そんな中で手に取った1つの刀。刀身をよく見る喧嘩屋。持ち手を何度か握り、そして一言。
『良い刀だな』
その刀は椿が打っていたものだった。
まだ
そんな時の武器を"良い"と評した喧嘩屋。こんな刀以上にいい武具は店に並んでる。しかし、それを見ても喧嘩屋はなまくらだなと言っていたのにも関わらずだ。
その時の椿は自身の才能が伸び悩んでいた時だった。
故に悪態もついた。そんなもののどこがいいと。
じゃあ、と喧嘩屋。ヘファイストスの作った武器をこれで切ってやるよとそう言った。
無理だとそう思った。
ヘファイストス、椿の立ち会いの元試し斬りという形で用意した場。
目の前の台座に置かれたひとつの剣。ヘファイストスの打った武器。見るだけで最高の品だと言えるそんなレベルの1品。
しかし、それも喧嘩屋は鉄の塊だなと一言漏らした。
激高するヘファイストスだったが、しかし、結果は一刀両断。
その太刀筋は鮮やかなものだったと椿は見惚れた。
『これでいいんだよ武器ってのは。他の武器は壊れないことばかり考えてる硬いだけの鉄だ。でもこの刀は違え。壊れやすいが鋭さがある。これこそ武器だ。武器を壊すなんて使い手が悪ぃ証拠だ。おい、サラシ女。おめえ良い鍛冶師になるよ』
そんな言葉に面食らった椿。
それからは椿は喧嘩屋の認識を少し改めた。そして、もっとこの男のことを知ろうとよくつるむようになった。
そうしたら分かる新しい喧嘩屋という人物。
強さを誇示したいための喧嘩や、自分の欲のための喧嘩はしない。いつだって喧嘩をするのは誰かのため。口は悪いが思いやりのある行動。
素直になれない、でも真っ直ぐな男なんだと理解することが出来た。
『手前が、手前自身が納得出来る程の腕になった時、手前の打った武器を持って欲しい』
そう言うと喧嘩屋は目を見開き驚いた顔をしていた。
でも、プッと思わず笑いがこぼれる顔を見て椿は喧嘩屋も人間なんだなと感じた。
『俺が使う武器ってなったら生半可なもんじゃ納得しねえぞ』
『分かっている!』
『……楽しみにしてるわ』
「待っていろカグラ…!最高の武器をお前に…!」
そう言って笑う
次回から主人公ちゃんと出ます。……多分。
椿ええよなぁ。
ヘファイストスと椿の並びとか目の保養過ぎて目が爆発する。