オラリオの喧嘩屋   作:アイズに膝枕されたい侍

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今回はチョロっとあの女神が登場するよ!


喧嘩屋の日常

翌日の朝、じゃが丸を頬張りながら大通りを俺は歩いていた。

昨日はダンジョンから帰り、ギルドに換金ついでにそこのロビーで寝かせてもらった。

俺の正体は多くの人には秘密にしてるがギルドの長は俺のことを知ってる。そうじゃなきゃ冒険者でもない俺の換金なんてしてくれんし、それに雨風凌げる場所も提供してくれるし。

 

そんなわけで懐も温まり一晩寝て疲れが取れた体を動かしながら悠々と歩いていた。

周りを見れば冒険者だらけ。朝からダンジョンに向かうのだろうか。元気があるのはいいことだ。

軽装や重装、大剣、刀、弓……etc。各々が持つ個性が見えて意外とこういう観察は面白い。

 

そういえば昨日の兎は無事に戻れたのか。いかにも駆け出しというような風貌だったし、また襲われてお陀仏…なんてことになってなかったらいいが。

そんなことを考えてる時だった。

 

「あ…」

 

すぐ近くからそんな声が聞こえてきた。

 

「あん?」

「え、あ、ど、どうも」

 

声のした方を向くとそこに居たのは、

 

「……兎」

「え?」

「お前昨日の兎だろ」

「う、兎?僕ですか?」

 

赤目に白い髪。弱々しい童顔。改めて見るとまさに兎を彷彿させるような見た目をしている。

 

「なんか用か?」

「え、あ、昨日はありがとうご━━」

「あーいい、いい、そういうのは。言っただろ。通りがかっただけだって」

「そ、それでも助けられましたし」

 

この兎、見た目に反して意外と頑固だな。

 

「わーったよ。礼の言葉くらい受け取っとく。ほらこれでいいだろ」

「え、いやあの…お礼として何か……あ、そうです!今日の夜時間あります!?」

「あ?」

 

まさかの申し出。自分で言うのもなんだが、俺の見た目は怪しさ満点の目つきの悪いヤバいやつだろ。

なんでこんな突っかかってくる。

 

「いや、だからそーいうのは━━」

「お願いします!」

「……」

 

ついには頭を下げられてしまった。

思わず無言になる。

まさかここまで強引なやつだったとは。

 

「…はぁ、わーったよ。夜だな?」

「っ!ありがとうございます!」

「へいへい。ほらさっさと行け」

「は、はい!ではまた後で会いましょう!」

 

そう言って兎は嬉々とした表情で走っていってしまった。

今どきの冒険者にしては珍しい礼儀のあるやつだなとは思うが、いかんせん、

 

「……押しが強いの苦手なんだよな」

 

そんな呟きは街の喧騒に飲まれて消えた。

 

◆◇◆◇◆

 

あれからブラブラと街を歩いていた俺はいつものように歓楽街へ来ていた。

別にそういう目的でここに足を運んでいるわけじゃない。ただ、ほぼ日課と言っていいほどにとある理由でここに来ているのだ。

それは、

 

「てことでよ、駆け出しのくせに一丁前に強引でよ」

「ふふ、"カブラ"さんは押しに弱いですからね」

「あ?おめえがそんなこと言える道理はねえだろうが」

「あう……」

 

目の前に座る金色の髪に獣の耳が生えた狐人(ルナール)の女。

"サンジョウノ・春姫"。歓楽街にて娼婦として働いてるらしいが生娘の中の生娘で未だにちゃんと客を取れたことがないらしい。

なんか色々苦労した人生を歩んできたみたいだが詳細は聞いてない。不躾だしな。

そんなわけでいつも暇な時は俺はこうしてこの狐娘と話をしに来ていた。

 

「てことは今日の夜に?」

「みたいだわ。多分飯に誘われんじゃね?」

「ご飯ですか。それは良いことですね」

 

そう言いにっこりと笑う狐娘。

 

「何がいいことか。こっちも事情があってコソコソ生きてんのによ。目立ちたくねんだよな」

「……カブラさんは悪い人なのですか?」

「あー、悪いんじゃね?」

「ふふ、そうですか」

「……何笑ってんだよ」

 

今の話の流れで笑う要素なんてなかっただろ。

普通ちょっと警戒するとこだろなんてことを思う。

 

「なんでもないです。カブラさんがもし本当に悪い人でも私の中では良い人ですから」

「……あっそ」

 

そんなことを言われて俺は指で自分の頬をかいた。

まっすぐそんなこと言われると少しばかりこそばゆいな。

そんな時、

 

『春姫ーいるかいー?』

「「!?」」

 

扉越しに聞こえてくる女の声。

俺は慌てて窓から飛び出し、壁を蹴り屋根へと登った。

 

「あぶねーな、ほんと」

 

見つかっても別にいいが、そうするとあの狐娘に迷惑かけるだろうしな。それにまた俺が生きてるとか明るみになったらまたこの首に懸賞かけられそうだし。

 

そんなこんなで数分、屋根の上から空を眺めていた時の事だった。

 

「……ん?」

 

視線を感じる。近くにはいない。

感じるのは、

 

「バベル…」

 

空高くそびえ立つ巨大な塔。その頂上付近から感じる視線。

まあ、あの女神にはいつかは見つかりそうだとは覚悟していたが。逆に今まで良く見つからなかったな。

あの女神が目をつけていた冒険者と知らずに関わってたとか?となるとあの兎か?有り得なくもない。それ経由で見つかったか。

まあいい、とりあえずこの気色の悪い視線はどうにかしておこう。

そうして俺はバベルの頂上、そこにいるであろう女神に目を向けた。

 

「………ふぅ」

 

程なくして感じていた視線が消えた。どうやら目を逸らしたようだ。

昔はしつこいくらいに勧誘されてたからな。

今より荒れてたし、思わず我慢できなくなってビンタしたっけ?懐かしい思い出だ。あの時の驚いた顔と言ったら思い出しただけで笑える。

 

「あ、あのカブラさーん。もう大丈夫ですよー」

 

考え事をしていたら下から小声のそんな声が聞こえた。

さて、お呼びか。行きますか。

 

「よっこいしょ…っと」

 

◆◇◆◇◆

 

まさかほんとに彼が生きていたとは。

胸中、そんな思いが駆け巡る1人の美しい女神。

美の女神と言われ、数多の男、神も人も全ての異性を虜にするような美貌を持つその女神は先程視界に入れていた一人の男のことで頭がいっぱいになっていた。

 

あの日、その男を自身のファミリアへと勧誘しようと自ら彼の元へ赴いたこの女神。

有無を言わせずその誘いは断られた。

それからほぼもう躍起になっていた。連日のように彼の元に赴いては勧誘勧誘の日々。

魅了(チャーム)の力を使ったこともあった。しかし、それでも一向に自身になびかないその男に……もう、意地だろう。勧誘という建前を使い振り向かせてみせると少なからず思っていた。

 

そしてある日のこと、彼から張り手の答えが返ってきた。

 

━━しつこい

 

その一言ともに自身を見る目は酷く冷たいものだった。

初めての経験だった。普通ならここで、神である私に何を!なんて怒るのが普通だろう。

だが、この美の女神は違った。

 

「……また、また会えるのね"カグラ"。早く、早くまたその冷たい目で私を……うふふ」

 

あの日をきっかけにこの女神の変な扉は開かれてしまったのだ。

俯くその女神、"フレイヤ"の顔は酷く蕩けていた。




フレイヤがアブノーマル化したけど……まあいいよね。
一応言っておくと主人公はカブラという偽名を使って今生きています。

今主人公のステイタス考えてるけどバランスが難しい。

感想、評価お待ちしてます。よろしくお願いします。

ちなみに今回の話は2500ちょいの文字数です。
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