オラリオの喧嘩屋   作:アイズに膝枕されたい侍

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戦闘回って言ったけどそこまでいかなかった。


喧嘩屋、キレた!!

「なるほど、つまりお前はベル兎って訳だ」

「いやですから!兎は付けなくていいんですよ!」

 

店に入った俺たち。早速料理を食べ始めそこから数十分が経った頃には俺と兎はだいぶ打解けることができていた。

 

「そこのねーちゃん、ベル兎に酒持ってきてくれや」

「あ、はい!」

「いや、僕飲みませんよ!?」

 

俺の言葉に反応する銀髪をポニテにまとめたねーちゃん。

しかし、兎はそう言ってねーちゃんを止めてしまった。

 

「なんだ?俺の酒が飲めないってか?」

「え、いや、あの、その……」

 

しどろもどろになる兎。

ちょいと悪ノリがすぎたか。

 

「嘘だ。こいつにじゃなくて俺にくれ」

「わ、分かりました!」

 

そう言って厨房に消えていくねーちゃん。

兎はジト目でこっちを見ていた。

 

「……なんだよ?」

「いいえ、なんでもないです」

 

いや、ちょいむくれてるやん。

 

「そんな怒んなや。ただの冗談だろ」

「分かってますよ」

 

そう言って口に料理を運ぶ兎。

まあいいや、それより今俺にはなかなかに危ない状況に立たされている。

それは、

 

「……」

 

ずっとこっちを見てくる生真面目エルフがいるというね。

すごい眼力。変に意識すると勘のいいあいつなら気づく可能性もあるから自然にいつも通りにしているが……厳しいな。

てかあいつここで働いてたのかよ。似合わねえ。

 

「カブラさん、どうかしました?」

「あん?……いや、なんでもねえよ」

「?そうですか」

 

まあとりあえずは不審な動きでもしてなきゃあっちからのコンタクトはなさそうだし、普段通りに行こう。

そう思いつつ、どうぞとそんな一言共に置かれたジョッキを口元に運んだ。

……それにしてもさっきから変な視線を感じるな。

 

「そういえばカブラさんってどこのファミリアに所属しているんですか?」

「……唐突だな」

「あ、いえ、気になっただけなので…」

 

ファミリアか。生まれてこの方どこにも入ったことはないんだけどな。

 

「…秘密だな」

「えー、どうしてですか」

「秘密だからだ」

 

強い口調でそう言うと渋々と言った形で引き下がった兎。

弱々しい見た目のくせに積極的だなほんと。

 

それにしてもファミリアか。俺もどこかに入るべきか。

……まあ、そこはおいおい考えるとしよう。おいおいと。

 

そんなことを考えていると、店内に小粋な声が響いた。

 

「ご予約のお客様、ご来店にゃ!」

 

団体の予約客か。この時間に来るってことは打ち上げかなにかか?

そんなことを思いつつその予約客たちの方へ視線を向け……次の瞬間に俺は視線を前に戻していた。

 

なんでこんな日に限って、そんな思いが込み上げてくる。

件の予約客はロキファミリア。

最悪のタイミングだ。

 

「よーし、今日は宴や!遠慮せえへんで飲め飲め!」

 

うるせえ糸目ペッタン。

こうなったらささっと飲んで食って出るしかないか。

そう思い食べるスピードをあげようと、

 

「すみません」

「あ?……っ」

「間違いでしたらすみません。聞きますが、どこかでお会いしたことありませんか?」

 

声をかけてきた人。いや、エルフ。

凛とした声でそんな問いをなげかけてきたのはあの生真面目エルフだった。

 

「……いや、初めましてだな」

「……」

 

俺の言葉を聞くも黙ってこちらを見つめてくる。

感じる視線、その視線が一瞬外れた気がした。視線の移り先はカウンターに立てかけた刀か。

そうして生真面目エルフは頭を下げてきた。

 

「……そう、ですか。すみません人違いのようでした」

「ええよ。そういうことはよくあんだろ」

「………失礼します」

 

そう呟いたそいつは厨房の方へと姿を消して行った。最後までこちらに目を向けて。

危なかったな。昔は持ってなかった刀を見て人違いと勘違いしてもらえたんだろうが、食い方とか飲み方とか座り方とか、そんな細かい部分でバレかけたか。あいつ昔からそういうとこやばかったからな。

 

「あ、カブラさんこの料理美味しいですよ」

「ん?おお、じゃあ皿に取り分けて寄越してくんね」

「わかりました」

 

そう言って料理を取り皿に移してくれる兎。

そうやって自分でも意外と楽しみながら料理を口にしている時だった。

 

「そうだ!おいアイズ!あの話みんなにしてやれよ!」

 

騒がしい店内でもはっきりと響き渡ったその声。

ロキファミリアのメンツの1人、狼人(ウェアウルフ)の男の声だった。

 

「あの話?」

「あれだって! 帰る途中で何匹か逃したミノタウロス、奇跡みてぇに5階層まで逃げてったやついたろ?そのときによォ、アホみたいに叫んで逃げてるいかにも駆け出しって感じのひょろくせぇガキを見たんだよ!」

 

その声を合図に隣に座る兎の動きが固まった。

周りの客や他のロキファミリアも興味を持ったのか店内に嫌な静けさが生まれた。

 

「ミノタウロスって17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出していったやつのこと?」

 

この声はアマゾネスのペッタンコの方か。

 

「それそれ! どんどん上層に上がっていきやがってよぉ。そンで5階層に行ってみたらそのガキがめちゃくちゃ怯えながら逃げててよ!」

 

それを聞き隣を見ると手を強く握り俯く姿の兎がいた。

あの時のことか、と思い出す。

 

「それでアイズがミノタウロスを追いかけてったけどよ…あのガキの逃げてる時の顔といったら……思い出しただけで笑えてくるぜ。ほんと自分でなんも出来ねぇ雑魚ならダンジョンに潜んなって話だ」

 

腹を抱えて笑う犬っころ。

周りの面々も笑ってるは笑ってるが、それは数人で苦笑いのような愛想笑いのようなものだった。

他のものは無表情。また始まったか、なんて言う雰囲気が流れていた。

 

「しっかしああいうヤツ見ると胸糞悪くなっちまうよなぁ。ああいうのがいるから俺達の品位が下がるってもんだ。勘弁して欲しいぜ」

 

どの口が言う。そんな言葉が込上がるが我慢だ。ここで騒ぎを起こすのは良くない。身バレもそうだが店に迷惑もかけられまい。

そんな時、凛とした声が響いた。

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろベート」

 

王サマエルフの声だ。

あいつは常識人だからな。たまらずと言ったように声を発していた。

 

「ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。それを棚に上げてその冒険者を酒の肴にしようなどと恥を知れ」

「おーおー流石エルフ様。誇り高いこって。でもよ、そんな救えねえヤツを擁護してなんになるってだ?それはてめぇの失敗をてめぇで誤魔化すための、ただの自己満足だろ?」

 

……いや、ダメだ。抑えよう。このままだと良くない。

兎も我慢してる。俺が我慢しなくてどうする。そう思いながらも俺は深呼吸をし息を整える。

 

「これ、やめえ。ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ」

 

この声はドワーフの髭モジャか。全くもってそうだ。さっきから落ち着くために飲んでる酒に味がしない。不味い。

 

「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を」

「……あの状況じゃ、仕方なかったと思います」

「なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。…じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」

「ベート、君酔ってるね?」

 

ちびっこの声が聞こえた。その声音は少し怒りを含んでいた。

 

「……私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」

 

ざまぁ。アイズの言葉に飲んでる酒に味が少し戻ってきた。

 

「無様だな」

「黙れババアッ。…じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」

「……っ」

「そんなはずねえよなぁ。自分より弱くて軟弱な雑魚野郎に、他ならいお前がそれを認めねえ。雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

その言葉に隣の兎は立ち上がろうと━━

 

「待て待て」

「っ!」

 

首の根っこを掴み力づくで座らせる。

 

「今日はお前の礼で俺はここに来た。そいつを置いてどこに行こうとしてやがんだ?」

「っ……」

「……なあ、兎。俺たちの関係ってなんだ?」

「え?」

 

そう聞くと兎は暗い顔で、それでも俺の質問に律儀に思案していた。

 

「恩人……とかですか?」

「そうか。でも今日は一緒に飯食った。仲良くもなった。違うか?」

「え?……はい、そうですね」

「ならもうダチだな?」

「え?」

 

うし、決めた。もう隠れることはしない。

やっちまおう。

 

「ちょっと待っとけよ兎。こっからはこっちのターンだ」

 

そう言って俺は酒瓶と座っていたイスを手に立ち上がった。




次回こそは、次回こそ戦闘回。

感想欄で聞かれていたのでここで言ってしまうと主人公の強さの秘密は親です。
詳しくは話が進んでいくと知れるよ!

てなわけで感想、評価、お待ちしてます。
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