オラリオの喧嘩屋   作:アイズに膝枕されたい侍

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戦闘描写って長くなりがち。


絶対に敵対してはいけない人類

背中に兎と生真面目エルフ、あともう1人、誰かの視線を感じながら俺は今なおゲラ笑いしているくそ犬の方へ向かっていた。

そんな中俺が近づいてくるのに気づいたロキファミリアのくそ犬を覗いた面々。その中でも特に王サマエルフは目を見開いて驚いた顔をしていた。

そして、

 

「よォ、あんちゃん」

「あん?」

 

持っていたイスを一旦置き、その手でくそ犬の肩をポンポンと叩きながら声をかける。

その声に振り向くくそ犬。顔が赤い。相当に酔っている様子だった。

 

「おもしれー話してるみてーで?」

「ああ?……は!あんたも一緒に聞くか?」

 

鼻で笑うくそ犬。下卑た笑いでそう聞いてくる。が、

 

「聞かねえよタコ。胸糞悪ぃんだよクソが」

 

その言葉と共に顔面に酒瓶を横薙ぎにぶち当てた。

 

「っ!」

 

瓶の割れる音、そこから吹き出てくそ犬の体にかかる酒の音。そんな音が辺りに鳴り響いた。

 

「「「「!?」」」」

 

他のロキファミリアの面々も驚いた顔をしている。

もうやっちまった。後戻りはできない。ならもう、はっちゃけよう。

 

「……ぷっ!テメェ…っ!」

 

顔にかかった酒を手で乱暴に拭いたくそ犬は憎々しい顔でこちらを睨みつけてくるが、その顔面に割れた瓶の断面をねじ込んだ。

 

「ぬおっ…!?」

 

かろうじて腕でガードしたようだがそのまま押し切り、店の壁まで吹っ飛ばす。

 

「グッ……」

 

背中が壁にぶつかり苦悶の声をこぼすくそ犬。

そのまま休ませる訳なく、椅子を手に取りそのまま脳天に叩きつけた。

 

「ガッ…!」

 

衝撃で弾け飛んだ椅子の破片を足で蹴り押しそのまま開いた口にぶち込み、

 

「もがッ!?」

 

驚く様を他所に低い態勢から拳を顎へ。アッパーが直撃したくそ犬はそのまま天井まで打ち上がった。

 

「……っ。ゴホッ……て、テメェは…!」

 

激しく動いたせいだろう。いつの間にかフードがめくれていた。

俺の顔を見たくそ犬の顔が驚きの表情を浮かべ、それを見た俺は思わず口角が上がった。

 

「久しぶりだなクソ犬。昔みたいにゲロ吐かせまくってやるよ」

 

その言葉を吐き出してから数秒、くそ犬が吐き出す断続的な呼吸だけが店内に聞こえる程の静けさが生まれた。

 

「生きてやがったか……喧嘩屋!」

「俺が死ぬわけねぇだろ!バァーカ!」

 

吠える犬の顔面に向かって蹴りを放つ。がそれに合わせて腕でガードしたくそ犬はカウンターの要領で蹴りを返してきた。

しかし、

 

「なっ…!」

「……昔に比べたらスピードはあるが重さが足りてねえな?」

 

それを横から手を差し込み足首をつかみ止め、そのまま体を捻りその反動で足を持つ手を振りかぶる。

投擲のような姿勢のまま腕を振り、くそ犬の顔面を地面に叩きつけた。

 

「カハッ…!」

「おら、ダメ押しだ」

 

バウンドした頭を足裏で踏みつけようとしたが、くそ犬は地面に着けた両手を軸に体を回転、攻撃を避けつつ蹴りを顎へと向けてきた。

 

「フンッ!」

 

しかし、それを避けず頭突きで相殺。

 

「なっ…!」

 

驚くくそ犬の伸びきった足をつかみ、そのままもう1回地面へと叩きつけた。

 

「グッ…フ…!」

 

手からすっぽ抜けたくそ犬の体は数度バウンドし店の壁に激突。

荒い呼吸で座り込むそいつの目はこちらを睨んでいた。

 

「おうおう、強くなったじゃんクソ犬。俺チビりそうだわ」

「嫌味言ってんじゃねえよ…!」

 

そんな会話を繰り広げる俺たちの周りはザワザワとしていた。

 

「喧嘩屋?いま、喧嘩屋って言ったか?」

「言ってた。俺も聞いた」

「なあ、喧嘩屋って何?」

「え?でも死んだって…」

「バカ、あんな奴が簡単にくたばるわけねえ。どっかで隠れて生きてたんだ」

「喧嘩屋?聞いたことねぇな」

「バカ、あいつと目を合わすな」

 

そんな小声での会話が微かに耳に入ってきた。

ロキファミリアの面々は何も言葉を発さない。各々が驚愕の目を向けてきている。

そんなに驚くことか?とは思うが、まあ5年も姿を見せてなかったんだ。気持ちはわからなくもない。

そんな時、

 

「あんた、ほんとに喧嘩屋かい?」

「あん?」

 

声をかけてきたのは豊穣の女主人の店主、"ミア・グランド"。

少し戸惑いの表情を浮かべながらも落ち着いた口調で言葉を続けた。

 

「ここは料理を食べる場所なんだ。頼むからものは壊さないでくれないかい?」

 

その言葉に俺やロキファミリア以外の面々はそんな店主の態度に驚いていたようだった。

その言葉にを目を閉じ数度頷く。

 

「……確かにな。ここは飯を食う場所、喧嘩の場所じゃない。昔の俺なら関係ないと言っていたとこだが……俺も大人になった。楽しく飯を食ってるやつの邪魔すんのは忍びねぇ。……てなわけだクソ犬」

「あ?……っ!?」

 

座り込むくそ犬の土手っ腹。気を抜ききっていたところにすかさず足を滑り込ませた。

 

「続きは外だ。楽しく遊ぼうや」

 

その言葉と一緒にめり込ませた足を思いっきり振りかぶった。

直後弾け飛ぶくそ犬がもたれていた壁。その穴からくそ犬は外に弾き飛ばされた。

 

外から悲鳴が聞こえてきた。通行人に当たってなきゃいいが。

こう考えるのも俺が優しくなった証拠だな。

 

「さてと……復帰戦だ。ド派手に行くか」

 

その言葉をつぶやくと同時に俺も外へ飛び出した。

直後目に入る立ち上がろうとしているくそ犬。

 

「寝ててもいいんだぜ?起き上がる度にボコす」

「誰が…!」

「喋ってる暇はねえぞ」

 

そう言いつつ顔面に飛び蹴りを見舞う。

建物に背を預けていたくそ犬はそのまま後頭部から建物を破壊し吹き飛んで行った。

 

「食ったもん全部吐かせる。吐くもん無くなっても吐かせてやるよクソ犬が」

 

◆◇◆◇◆

 

たった今目の前で起こったことが信じられなかった。

白髪の少年はたまらずに先程まで談笑しながら同じ料理を食べていた男が飛び出ていった穴から外に出ていた。

 

強い強いとは思っていた。

でも、

 

「……強、すぎる」

 

ロキファミリア所属、ベート・ローガ。凶狼(ヴァナルガンド)の異名を持つ1級冒険者。

ギルドの専属アドバイザーからの話でしか知らない少年だが、それでもオラリオで見ても上から数えた方が早いレベルの強さを持っていると理解はしていた。

でもこの有様は、

 

「こいつは……ちょいと不味いな」

 

そんなことを思っているといつの間にか横に来ていた糸目の赤髪の女性。

 

「うん、どうにかして彼を止めないと…」

「最悪、死んでしまうぞ」

 

金髪の小柄な男と、小柄な髭が生えた男が女性の言葉に続いて口を開いた。

 

 

 

 

 

「ガッ…ハ」

「んなもんか!Lv5の冒険者ってのはァッ!」

 

 

 

 

 

今なおボコられる狼人。

Lv5と恩恵無し。しかし、立場は真反対の戦闘になっていた。

 

「てか、アイツだってLv5よ!?にしては一方的すぎない!?」

 

アマゾネスの1人が声を上げた。胸の大きい方だ。

その問いに答えたのは緑髪のエルフ。

 

「トラウマか…」

「せやな。昔はカグラに死ぬほどゲロ吐かされまくってたもんな」

「ああ。ベート自身は気づいて無いだろうがそれがトラウマになって強く出れていない。動きが阻害されてる」

「それってやっぱり不味くない?」

 

もう一方のアマゾネスが心配の声を上げた。

それに頷く金髪の小柄な男。

 

「うん、不味い」

 

しかし、そう言うが誰一人として動こうとしない。いや、動けない。

はっきり言うと喧嘩屋の喧嘩に割って入るのは飛来する核爆弾を生身で受止めに行くようなものだ。

さらにいえばここにはご飯を食べに来ていたロキファミリア。得物など持ってきている訳もなく……冷や汗を流すこと以外で来ていなかった。

そんな時、

 

「君、あの時の子……だよね?」

「え?」

 

少年にかかる1つの声。

その声の主は綺麗なロングの金髪をなびかせた儚げな少女。

アイズ・ヴァレンシュタインだ。

 

「確かカグラのツレやったな?自分?」

「は、はい」

「アイズ?あの時の子って?」

「うん、ミノタウロスに襲われていた子」

 

それを聞いたロキファミリアの面々は総じて頭を抑えた。

 

「マジかいな。カグラの特大地雷踏んでもうたか…」

「本格的にどうにかしないと…」

「昔から知り合いバカにされると頭に血上ってたもんね…」

「……もうあのバカの自業自得でいいんじゃない?」

 

その言葉に賛同しかける他面々。

その次の瞬間、彼らの目の間に飛来する2つの影。地面に墜落したそれは大きな地響きを響かせ土埃を巻き上げた。

 

「けほっ、けほっ」

「なんやなんや?」

「……」

 

各々が反応を示す中、その土煙は晴れていく。そしてそこに居たのは、

 

「よォ、分かるかクソ犬」

「グッ…ガフッ…」

 

狼人の背中に乗る喧嘩屋だった。




長くなりそうだから一旦区切った。
こんな暴れっぷりでも昔に比べればマシというね。
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