「ユナ〜!愛してるよ!」
「僕もリナのこと愛してるよ」
砂糖が吐き出せそうなくらい甘い声を囁き合う二人の女子。
リナは長い銀髪に空を連想させる青い瞳でその大きな胸を押しつけながらユナに抱きついている。二人は今にもキスしてしまいそうなくらいの距離でお互いを見つめ合っている。
「皆が見ている前でいけないよ」
ユナは銀髪の女子の唇に人差し指を当ててキスを阻止すると同時に今も爆速で流れるコメント欄を見つめた。
「ごめん、ついね…」
リナはユナからそっと離れるとリスナーたちへ向けて笑顔を向けると同時に自己紹介を始める。
「リスナーの皆んなこんばんは!初めましての方は初めまして!私はリナ!ユナの恋人だよ!」
ユナはリナの頭に手を置き優しく撫でると自己紹介をした。
「僕はユナ。今日も配信を見てくれてありがとう。初めましての人はゆっくりしていってね」
ユナは営業スマイルをするとスパチャが数万円ほど投げられる。
これがテンプレであった。
「さて今日するゲームはーー」
ーーー
僕こと
何せ生理やらスキンケアだの全くもって未知の世界にいきなり放り込まれたのだ。正直言って不安でしかなかった。
その不安を増加させたのは僕の人間関係の希薄さだ。何せ今まで何故か友達というものが一人も出来なかった。
勿論僕から遊びに誘ったり、声をかけたり、挨拶をしてみたりとしてみたが全てマイナスに繋がったようで遊びに誘った男子は何故か僕をチラチラ見るだけになってしまったり、声をかけた男子は何故か告白してきたり。
挨拶をした男子は何故か僕を女子だと勘違いしていて襲おうとしてきたりと散々だった。
そして今の僕はかなりの美少女になってしまった。茶髪の癖っ毛で低身長な上に大きな胸。正直に言うと僕の好みだった。
元々男だった頃から身長が150なかったから視点はそこまで変わらないのだが、少し縮んだのは僕にとってはマイナスな点だ。
TSして初めて行った学校では多くの人に声をかけられたり、見られたりと精神的な疲労が凄かった。
少しは友達が出来ると思ったのだが、寄ってくる殆どが僕の体目当てで中学での友達は出来そうにもなかった。
一応女の子とは話が出来てはいるものの、友達とまではいけそうにないのである。
とある日。ふと目に止まったVtuber募集に軽い気持ちで送ったら合格していた。
何故受かったのか分からないが機会があるのだし挑戦してみることにした。
それからはあれよあれよと言う間にデビューが決まりデビュー配信をしたのだが、最初は見に来てくれていた人たちも少しずつ離れていってしまい、僕の配信は低迷していた。
そんな期間が3ヶ月ほど続いたところでマネージャーさんからメールが届いたのだ。
『リナさんと百合営業してみませんか?』と。
最初は悩んだものの、僕の配信はそこまで人気もないし正直辞めようかと思っていた時だったし、どうせそんな人気出ないだろうと思っていたのだ。
そしてデイスコーズでリナさんと初めて話をした。
「ユナです」
「リナだよー!」
リナは底抜けに明るい声でリスナーたちからは「この子の声を聞くとやる気が出る」や「元気になれる」などとコメントをしていて、うちのVtuberの中でもトップ3に入るほどの人気者だ。
それが何故僕なんかと百合営業することに拒否しないのか不思議だった。
「でねでね!あの子がーー」
「うん」
会話、というよりかはリナのマシンガントークに耳を傾けながら僕は適度に相槌を打っていた。
やはり配信者ということもあり喋りが上手い。それに対して僕はまだ彼女のように口が回らない。
まるで格の違いを見せつけられているような気がした。
「ねぇ、ユナさん!」
「はい。なんでしょう」
「オフコラボしよっか!」
「はい?」
「オフコラボしよ!」
「え、嫌ですけど…」
「なんで!?」
「なんでって言われましても…ビジネスなんですから別に会わなくてもいいでしょう」
「えー!せっかくそう言うことするんだから仲良いことに越したことないよ!」
確かに仲はいいことの方がいいのは分かるけど別にそこまでして会う必要はないだろう。
仲良くなればきっと相手の嫌な部分、もしくは噛み合わない部分が見えてしまうから。
「事務所で会う可能性だってあるんですからそんな気にしなくてもいいじゃないですか」
「えー…分かったよ…」
渋々引いてくれたみたいなので取り敢えずよしとしよう。それにしてもそんな僕に会いたいのだろうか。
よく分からないな。
その後も僕とリナさんのチャンネルは伸び続けた。
ーーー
チャンネル登録者が50万を突破したことで事務所から3Dモデルで生放送して欲しいとの通達が来た。それもリナさんと絡んでの生放送。
僕としてはあまり喜ばないところではあるが、リナさんは大いに喜んでいるらしい。
憂鬱なままその日を迎えスタジオにてリアルリナさんと初対面した。
「わー!ユナー!」
僕が口を開くよりも早くリナさんは僕に抱きつき顔をスリスリしてきた。
「あ、あの…」
「ちっちゃくて可愛いー!」
リナさんは綺麗な黒髪のショートカットに人形みたいに綺麗な顔で大きな黒目に中々の胸をしている。モデルと言われても違和感はない。
「
マネージャーさんからそう言われた時僕は死刑宣告のように聞こえた。
リナさんの本名の名前は瑠奈さんと言うらしい。
「それじゃあちょっと話ししようね」
「は、はい…」
僕は瑠奈さんに連れられて控室へとやってきた。綺麗な女性と二人っきりというのは精神上よくない。
「優ちゃん。私ずっと会いたかったんだよ?」
そう言って瑠奈さんは僕に壁ドンしてきた。僕と瑠奈さんの身長差はそこまでないものの、おそらくだが瑠奈さんは160ちょっとあるはずだ。
「えっ、と…その…」
僕は何故か直視出来ず目を逸らしてしまう。
「ちゃんと私を見て」
優しい手つきで僕の顎を掴んで目と目を強引に合わせた。
「あっ…あっ…」
「私優ちゃんのこと営業とか関係なく好きだよ」
ゆっくりと僕に顔を近づけて瑠奈さんは少し前に出るだけでキスできてしまうほどの距離で口を開く。
「優は私のこと嫌い?」
「…嫌いじゃ…ないです…」
「ならもう営業じゃなくていいよね?」
「…そ、それは…」
「ね?」
「は、はい…」
一体これから僕はどうなるのだろうか。それは目の前の人だけが知っているのかもしれない。
続きいる…?