百合営業の筈でした   作:サンゴ珊瑚

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第3話

朝。目が覚めてボヤけている視界がクリアになる。

目の前には瑠奈さんがいる。スヤスヤと寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。

僕はゆっくりとベッドから抜け出してベランダに出て外を眺める。

「ちょっと寒いかな…」

シャツ1枚しか着ていないので少し肌寒い。外を歩く人に向かって手を振ってみる。

「おはようございます〜!」

手を振って挨拶をしてみたが、通行人は小さく頷きそのまま去ってしまった。いきなり声をかけられても迷惑かな…。でも反応はしてくれたんだよね…。うーん…どうして僕には友達が出来ないんだろうか。

容姿?それとも距離の取り方?言葉遣い?態度?分からないなぁ…。

 

「そうだ、写真撮ろ」

僕は一度部屋に戻りスマホを手に取って再びベランダに出ると写真を撮った。

「中々いい一枚じゃないかな」

撮れた写真を満足気に見た後僕はベランダから部屋へと戻りベッドへと潜り込んだ。

これこそ休日の特権。二度寝!この時が一番幸せを感じるよ…。

 

 

ーーー

「というわけでレイさんとコラボしてください」

「というわけじゃないですよ!なんで僕がこの企業のトップとコラボを!?」

現在。マネージャーさんから電話がかかってきて飛び起きてリビングで通話をしている。瑠奈さんは真横に控えてます。はい。

凄い形相なんだけど。これ瑠奈さんに刺されたりしないよね?

ちなみにヒイラギレイは僕の所属する企業でもVtuberの中でもトップを走る超人気のVtuberでチャンネル登録者は150万人。いつも放送は一万人以上が視聴しているほどの大人気Vtuber。それが何故僕とコラボする流れになったんだ…?いや本当になんで。

 

「先日レイさんの方からメールが届いたのですが、内容を要約すると優さんとコラボ出来なかったら引退する、と」

「いや本当にどういうこと!?」

「オフでないとコラボとして認めないとも言ってます」

「せ、せめて何度か普通のコラボをしてからでも遅くはないんじゃ…」

「いえ、コラボは断固としてオフがいいとレイさんが言ってます」

「………嘘でしょ」

もしこれを受けなかったらレイさんは本当に引退してしまうのか?だとすれば事務所的にもトップで走っているレイさんをみすみす逃したいとも思わないはずだし、説得というか考えを改めてくれないかという話はしているはずだ。でもきっとダメだったんだろうなぁ…。

レイさん意外と決めたことは曲げないタイプっぽいし…。

これは受ける以外の選択肢なさげだなぁ…。

隣にいる瑠奈さんがどう言うのか分からないけど受けるだけ受けてみよう。こんな機会中々ないからね。

 

「分かりました。そのお話受けます」

「えっ!?受けるの!?優ちゃん!?」

隣にいる瑠奈さん超動揺してるんだけど。そんなに嫌なのかな?

「本当ですか!?ありがとうございます!レイさんにはこちらからお伝えしておきますので予定のない日を後で送ってください。細かい調整はこちらでしますので!では!」

凄い嬉しそうだった。断る理由もないし、トップVtuberであるレイさんからコラボして欲しいなんて言われたら嬉しいに決まってる。

枠はどちらでやるか分からないけど、僕を知ってもらえるいい機会だ。

僕を知ると言うことは必然的に瑠奈さんことリナさんも知ってもらえるし、悪いことなんてないのだ。

 

「優ちゃん」

スマホの操作を終えて瑠奈さんに僕の方から改めて説明しようと思ったのだが、その前にどうやら話があるみたいだ。

 

「な、何…?」

無言の圧力を感じて僕は後退するが、瑠奈さんがじわりじわりと詰めてきて端まで追い詰められてしまう。

「私もついて行っていい?」

「ほえ?」

「放送の邪魔はしないし、ついて行くのはいいよね?」

「恐らくは…」

「なら決まりだね。ふふふ」

ニコニコしているんだけど何故か圧力のようなものを感じる…。

大丈夫…だよね?

 

 

 

ーーー

「皆んなー!コンレイ!皆んなのアイドルヒイラギレイだよ!」

 

コメント

《こんレイー!》

《きちゃぁぁぁぁぁぁ!!!》

《ふぅー!》

 

画面に映し出される青髪の少女ヒイラギレイが左右に激しく動きながら笑っている。

 

「今日は皆んなに改めて告知しなきゃならないことがあるよ!」

 

コメント

《なんだろ》

《決まってるよなぁ》

《ユナ様だよな》

 

「そうそう!私も大好きなユナちゃん!そのオフコラボの日程が決まったんだよ!」

画面にはヒイラギレイの横に一枚の画像が映し出される。

そこにはヒイラギレイとユナの立ち絵が仲良く映っており、祝!オフコラボとドデカイフォントで書かれている。

 

「○月×日の15時から0時までぶっ続けで放送するから楽しみにしててね!」

 

コメント

《9時間ww》

《初コラボが9時間てww》

《ユナ様大丈夫かな…?w》

 

「心配する気持ちも分かるけどユナちゃんも同意の上だし、色んな人も呼ぶから大丈夫だよ!」

 

コメント

《それでも9時間はえぐいてwww》

《放送事故ないといいけど》

《放送事故上等なんだよなぁ》

 

「ゲストには結構な大物も呼んでるからね〜えへへ…楽しみだなあ…」

 

コメント

《大物…ユナ様大丈夫かな》

《ユナ様人見知りだから…》

《大人数だと観葉植物だから…》

 

「ユナちゃんは私がサポートするから大丈夫だよ!」

 

コメント

《大丈夫…?》

《サポート…うっ…頭が…》

《思い出してはならん》

 

「皆んな酷くなーい?私これでも結構サポート得意なんだよ?」

 

コメント

《う、うん…》

《ある意味そうだね…》

《サポートして良かった場面はありましたか…?》

 

「もういいもん!ユナちゃんに電話する!」

 

コメント

《それはナイス》

《アポ無し…あっ…》

《切り抜き班頼むわ》

 

 

「もしもしユナちゃん!今大丈夫かな?」

「はい。大丈夫ですよ。どうかされましたか?」

 

コメント

《好き》

《結婚したい》

《これ放送してるの知らないやつだw》

 

「ユナちゃん今度一緒にご飯食べようよ」

「え〝」

 

コメント

《この反応は…》

《発動してますねぇ…》

《というかオフの声可愛すぎだろ》

《それな》

 

「嫌…かな?」

「い、いえ、決してそう言うわけでは…その…僕初対面の人と上手く話せなくて…」

 

コメント

《聞きまして皆さん》

《オフでも僕だと…?》

《マジィ…?》

《ユナ様可愛すぎます…》

 

「ならやっぱり一度会って話そ?そうすれば放送の時もきっと緩和されてると思うし」

「そう…ですよね…」

 

コメント

《ユナ様チョロくて可愛い》

《ユナ様流れに弱すぎるのもいい》

《ユナ様は完全にネコなんよ》

 

「あっ!ちょっ……」

「ユナちゃん?」

 

コメント

《うん?》

《トラブルか?》

《どうしたんだろ》

 

「レイさん。ユナのこと渡しませんから」

「…おやおや…これはリナさんじゃないですか」

 

コメント

《えっ…?》

《…これって…》

《気づくのがはえーよ》

 

「私ユナの恋人なの忘れないでくださいね」

「まだ恋人なんだし、奪えるじゃん」

 

コメント

《あっ…あっ…》

《我々には刺激が強すぎるかもしれん》

《いいぞ〜これ》

 

 

その後。レイとリナの話し合いは二時間にも及んだのだった。

 

 

 


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