第10話 合宿1日目
合宿当日、俺は4人のことをいつもの場所まで迎えに行った。ドラムとシンセサイザー、アンプ以外は自分で持ってくるため、ギターやベースはトランクに入れていた。
5人乗りの車で、前に2人、後ろに3人の2列構成。助手席に座るのはなんとなく予想はできていたが。一歌だろう。
「よっ、みんな」
「おはよう、柊くん」
「じゃあ、荷物はトランクに入れてくれ」
そう言うと、一歌たちはトランクに荷物を入れた。
「いっちゃん、一緒に座ろ」
「うん。いいよ」
一歌は後ろになったか。予想と違うな。
「じゃあ、私も後ろにしよっかな」
穂波、きっと志歩のことを思ったな。きっとそうだ。そうじゃないとしたら、俺が穂波に嫌われてる?
いや、考えたくない。ポジティブに考えるんだ。
もしかしたら本当に志歩が俺の隣がいいと思っているのを予想して言ったのかもしれない。
あとはただ単に咲希たちの隣が良かった。
いや、後者だと俺や志歩が嫌われてるみたいになる。
うっ、考えたくない……
「柊くん、助手席座るよ」
「あ、おう」
考え事をしていただけあって、慌てて返事をした。穂波、嫌ってないよな?
そんなことを思っていても仕方ない。俺は車を走らせた。
「いっちゃん、しりとりしよーっ」
「じゃあ、『り』からね。りんご」
「じゃあ、ごま」
後ろではしりとりをして盛り上がっている。それを見るからに、ただ単に咲希たちの隣が良かっただけになる。
ああ、運転に集中できない。今は運転に集中だ。
高速道路に入り、速度を上げた。志歩はずっと前を見ていた。暇そうだ。
「志歩、暇なのか」
「……」
志歩からの返事がない。え、もしかして志歩からも嫌われた?
「志歩?」
「なに」
あ、反応した。
「あ、いや。暇なんかなーって」
「うん」
返事が少ない。やっぱり嫌われてる?
ログハウスに着くと、俺たちは荷物を下ろし、中に入った。
「すごいね、咲希ちゃん」
「うん!アニメの世界みたい」
志歩は一歌たちと4人で行動中。やっぱり俺からは距離をとっている。
今日はすぐに就職時間外がきた。みんなで布団を敷いたのだが、俺の隣はまさかの志歩。少し気まずい。
「じゃあ、寝るぞー」
俺は電気を消して、布団の中に入った。志歩も寝ていそうだったし、ひとまず今日はこのまま寝れそうだ。
と思っていたが、声を掛けられた。
「柊くん」
「ん?」
「起こしちゃった?」
「いや、大丈夫」
志歩が俺の近くに寄って言った。
「今日はごめん、冷たい態度とっちゃって」
「大丈夫だよ」
「私、柊くんが好き」
突然の告白だった。
「ツンデレか」
「……」
顔が紅くなっている。かわいいところもあるじゃないか。
「志歩、おいで」
俺は同じ布団に志歩を入れた。
「好きだよ。だから、今日はこれで寝ないか」
「……うん」
俺は志歩を抱き寄せたまま寝た。自分より細く小さい身体。抱いていると少し気持ちいい。
翌朝、俺の腕の中で志歩が寝ていた。俺を抱き寄せて。
「離れないで……」
志歩の寝言だ。
「……分かった」
思わず答えてしまった。
「柊くん、志歩と仲良くなったね」
「あぁ。良かったよ」
一歌は俺の後ろから言った。
「私も好きなんだけどね」
「知ってる」
一歌は俺の隣に正座した。志歩は全く起きる気配がなく、心配になってくるほどだ。
「志歩って朝弱いのか?」
「咲希の方が弱いと思うけど……」
そう話していると、志歩が俺のことを強く抱き寄せた。そのあとすぐ、志歩は目を覚ました。
「おはよ、志歩」
「おはよう、志歩」
「ん……」
志歩はしばらく静止していたが、状況が把握できたのか、顔を紅くして俺から離れた。
「えっ、あっ」
「寝てるうちに抱きついてきたもんな」
「好きなんでしょ、志歩」
2人からからかわれるようにされて、志歩はうずくまった。
「悪いな。ほら、みんなで朝ご飯食べよう」
「……うん」
志歩は俺の手を握って歩き始めた。
(結局手は繋ぐんだな)