「上手くいかないーっ!」
咲希の声で練習が始まった気がする。
「練習だな」
「うぅ……」
「がんばろ?咲希ちゃん」
もう少しなんだけどなぁ。なんでできないかな。
「咲希、体勢変えてみたらどうだ」
「どういう風に?」
「重心を真ん中に移す」
そして練習を再開する。さっきまでできていなかったところもできて、次に進んでいった。
2時間くらい経っただろうか。そろそろ疲れてきたのもあって、俺はみんなに呼びかけた。
「休憩するぞー」
「うん!いっちゃん、外行ってみよ!」
「うん。志歩と穂波も行こ」
「うん、志歩ちゃん、行ってみよ?」
「みんなが行くんだったら……」
4人は外に飛び出していった。俺は中からみんなの様子を見ていた。こうしていると、本当の先生みたいに思えてくる。
「元気だなぁ……」
俺は呟いた。外から一歌と穂波が俺を呼んでいるのが見え、俺も外に出ていった。
「どうした」
「柊くんも一緒に遊ばないかなーって」
穂波が言った。
「みんなで鬼ごっこしようよ!」
「子どもっぽくない?」
苦笑いして志歩が言った。
「いいのっ」
「ま、咲希がいいんだったらいいけど」
「私もいいよ」
「私も。柊くんは?」
「俺もいいよ。あ、じゃあ鬼になった人はこれつけて」
俺は会社の空き時間に作ったバンドを配った。
「赤のやつが穂波、青が一歌、黄色が咲希で、黄緑が志歩ね」
「すっごーい!星がある!」
「ホントだ」
1週間くらいかけて5人分作った。それぞれの色で薄く星をかいた。ゴムでできていて、そう簡単に塗装も消えないようになっている。あとは、会社らしく中にマイクロGPSが入っている。
「鬼じゃないときにはポケットに入れといて」
「じゃあ、最初私鬼ねっ!」
咲希は早速バンドを手首に付けた。
「10、9、8」
俺たちは一斉に逃げ始める。
「柊くん、どこか隠れやすいところない?」
穂波が聞いてきた。
「ここを降りたところにある洞窟じゃないかな。狭いけど」
「とりあえずそこ行ってみよう」
俺と穂波は洞窟に向けて走った。
洞窟は2人入れればいいレベル。俺は穂波とその中に入った。
「狭いね、ここ」
穂波と俺が密着している。柔らかい何かが当たっている。
「そうだな……」
胸だ。やけに大きい。本当に高校生か?
「なんか、こうしてるの初めてだね」
「そうだな。穂波とはこうやってしないもんな」
会話が上手くいかない。
「あっ……」
「……気にしないでくれ」
穂波も胸に気付いたようだった。咲希、早く見つけてくれ。
「柊くん……恥ずかしいよ……」
「ごめん……」
俺たちが顔を紅くしていると、物音が聞こえた。咲希が来たんだろう。
「みーつけた──」
咲希は口を開けたまま立ちすくんでいた。
「咲希ちゃん、引っ張ってくれる?」
「あ、うん」
咲希は穂波の手を引っ張る。胸が俺につっかえていたが、ぷるんと反動をつけて穂波が抜けた。
「ふぅ……」
俺も洞窟から抜け出した。
「柊くん……ごめんね」
「あ、いや、大丈夫……」
穂波、胸大きすぎるだろ……
鬼ごっこが終わり、穂波と俺の距離がなぜか近くなったが、練習が再開された。
「鬼ごっこで逃げてるときに、開けてるところあったんだけど」
一歌が言いだした。
「星がよく見えそうだったよ」
「そこ行こう!今夜」
咲希が手を挙げて言った。
「そうしようか」
9月だと流星群はないか……
「しし座流星群っていつだっけ?」
『11月』
俺と志歩が同時に言った。俺と志歩は見合って、2人で笑った。
「じゃあ、そのためにも練習しようか。みんな調子良さそうだし」
「うん。このままいこう」
俺たち5人は再び練習を再開させた。
気がつくともう20時過ぎだった。外はもう真っ暗で、星を見るには丁度いいだろう。
「みんな、一歌が言ってたところに行こう」
「あっ、私が案内する」
一歌は俺たちの前を歩いていく。そうすると、志歩が少し不安になるか。1番後ろで1人だと。
「志歩、行くよ」
「っ!」
志歩は驚いた表情で俺を見た。
「志歩は仲間だから。ね、みんな」
「うん!志歩ちゃん、行こ!」
「みんな……」
志歩はそう言ってから笑った。
「ふふっ、分かった。行く」
志歩は俺たちのすぐ横に来た。
「みんな、ついてきてる?」
「ついて行ってるよ」
穂波が言った。一歌の後を4人で歩いていく。
一歌が俺たちの方を振り向くと、一歌は俺たちに言った。
「ここがその場所だよ」
空を見ると、満点の星空が広がっていた。どこを見ても星が広がっていて、綺麗。この一言に限る。
「みんなで仰向けになって見ようよ!」
咲希が仰向けになって言った。
「いいね」
穂波が続いて仰向けになる。
「俺たちもそうしよう」
俺がそう言うと、一歌と志歩が俺と一緒に仰向けになった。
「綺麗だね……」
「あぁ……」
これが夜の星なんだな。
スターナイト。これが本当のスターナイトなんだろう。
「11月だったらね」
「なんで?」
「しし座流星群だろ」
咲希がきょとんとした顔からハッとした顔に変わった。俺と志歩はそれが面白くて笑ってしまう。
「もう!なんで2人して笑うの?」
「ごめん、咲希。顔が変わったのが面白くて」
志歩が笑いながら説明した。咲希が口をとがらせると、一歌と穂波も笑い始め、それにつられて咲希が笑って、最終的にはみんなが笑ってしまった。
「あっ、流れ星!」
「えっ、どこ」
みんなが探し始める。
「ほら!」
咲希がそう言うと、確かに流れ星が流れていた。
「ホントだ……」
「俺たちを応援してるみたいだな」
「うん……」
流れ星は30秒に1回ほどの頻度で流れていた。数が多かったが、みんな飽きずに、ずっと見ていた。