俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

15 / 61
第15話 柊の過去

 

 翌日の朝、みんな少し遅めに起きた。明日もう帰ることになっているため、俺たちは使わない物を車の中に積んでいた。

 

「ドラムセットどうする?」

「明日龍夜を呼んでるから、龍夜がトラックで運んでくれる」

「アンプは?」

「トラックに乗せてく」

「ギターとベースは私たちだけど、シンセは?」

「トラックかな?」

 

俺は質問攻めにされていた。俺は返答が終わると、みんなと休憩した。

 

「そういえばさ、柊くんの思ってること聞いてなくない?」

「え?」

「確かに、柊くんもことあんまり聞いてないかも」

 

そうか。話したのは一歌だけだったっけな。

 

「みんなにも話した方がいいか」

「うん。できれば」

「いいよ。じゃあ、始めようか……」

 

本当は少し辛い気持ちになるんだがな……

 

【回想】

 

 高校の時、バンドを結成してから数ヶ月、初ライブを行った。観客は学校のほとんど全校生徒。入場無料で、体育館でやった。確か、入場者数は250人くらいだったと思う。

 

「いやぁ、バンド楽しいな」

「そうだな。またライブやろうぜ」

「今度はもっと来るといいな!」

「400人くらい来るんじゃね?」

 

ステージ裏で話していた。4人はも仲が良く、かなり話す。

それから、俺たちがステージ裏から出ると、ある1人の女子が立っていた。

結果から話すと、将来的に俺の彼女になる人だ。その時彼女はすぐに走っていってしまったが、俺たちは気にもとめずに次のライブを目指した。

 

 初ライブから1ヶ月くらいして、第2回のライブがやれた。今度は野外ライブみたいな感じで、周辺住民に許可を得て校庭でやった。

ライブを観に来てくれた人は約500人。初ライブの2倍だ。

 

「今回も良かったな」

「あ、そうだ!リピーター増やせるようにサイン会やろうよ!」

 

海斗が提案した。みんなが賛成して、サイン会をライブの翌日に実施することにした。

 

 サイン会当日。昼の放送でサイン会を実施することを校内に放送した。1年A組で行っていたが、俺のところには誰も来なかった。

 

「なんで俺だけ……」

「気にすんなって。ファンはいるだろうよ」

 

龍夜が励ましてくれた。俺は龍夜に「そうだよな……」と言って廊下に出て行った。

 

「あ、サイン会って終わっちゃった?」

 

出てすぐ、あの時の女の子に出くわした。

 

「あぁ。終わっちゃったな」

「今サインってできる?」

 

女の子はサインの色紙を出した。

 

「あ、うん。いいよ」

 

俺はペンでサインをした。女の子はサイン色紙を抱いて飛び跳ねた。

 

「大事にするね!」

「あぁ。ありがとう」

 

女の子は戻っていった。そこに、俺が言った。考えるより先に。

 

「来週の土曜、リハーサル来ない?」

「え?リハーサル?」

「日曜にライブやるからそのリハーサルなんだ」

 

その子は「うんっ!」と言ってスキップしていった。

 

 ライブが終わって、片付けも済んで俺が1人でいるところに、女の子が来た。

 

「好きです!」

 

告白だ。

了承した。嬉しかった。単純に。

 

 付き合い始めて2年、3年生になった俺と彼女はデートで外出していた。横断歩道。安全に信号までついていて、俺と彼女は青に変わってから渡り始めた。

 

「柊くん、早くっ♡」

「待てって」

 

俺と彼女は相性のいいカップルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

       この5秒後までは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5秒後、俺の前にあったのは倒れた彼女。頭から大量に血を流していた。なにがあった。最初は状況を捉えられなかった。

やがて、分かってくる。彼女が亡くなったことに。

ただ立ちすくむだけで、何もできなかった。

救急車の高い音。俺にはただ夏の蒸し暑い風がぶつかってくる。

 

 俺は通常通り学校に行った。どこか隅の方で彼女のことは思っていたが、バンドに専念していた。

 

 【現在】

 

 「という感じなんだけど」

「私にだけは言ってたんだよね」

 

俺は頷いた。

 

「まぁ、今は一歌が大好きだからな」

「私たちは?」

 

咲希が俺に言った。

 

「勿論君たちもだよ」

「わーいっ」

 

みんなは笑ってくれる。だから俺も楽しめるんだろう。

当時の笑うことができなかった俺は、どうしてるだろう。今、この瞬間が、俺の楽しい時の1つだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。