第17話 計画
俺は魁に呼ばれて、大学時代俺たちがSTAR NIGHTで使っていたビルの一室に集まった。
「おはよ。みんなもういたのか」
「あぁ。それじゃ、魁。話ってなんだ」
魁は少し間を開けて言った。
「バンドを再開したい」
俺たちは少し考えた。だが、すぐに答えは出た。
「再開しよう!また前みたいにさ」
「俺も賛成だ。柊もいいよな」
「あぁ。もちろん」
俺たちはこうして約7年ぶりにバンド活動を再開した。
決定してすぐ、俺たちはライブについて考え始めた。まぁ、これもすぐに決定したけど。
「Leo/needと合同ライブか」
「いいな。早速話しに行こうか」
龍夜はすぐにLeo/needを練習場所に招集した。
「俺らも行こうか」
「ん。練習場所でな」
俺たちは個人で車に乗って練習場所に向かった。
合同ライブなんて初めてだな……Leo/needと合同ライブやれるのは楽しそうだな。
練習場所に着くと、俺たちより先にLeo/needが着いていた。みんなステージの段差に座って俺たちを待っていた。
「話しって?」
「あぁ。合同ライブの件でね」
一歌たちは驚いたような表情をする。
「合同ライブって、柊くんたちと?」
「あぁ。もちろん」
一歌たちはもう何も聞かなかったが、合同ライブのことについて話し始めた。
「いつぐらいなの」
「来月かな」
一歌たちは素早く練習を始めた。ライブのためだろう。
俺はSTAR NIGHTで集まって合同ライブを決めた。
「ワンマンライブになるか」
「別にどっかのライブハウス貸し切ったっていいが」
そうなると利益の話になるか。
「あ、学校の近くにあったライブハウスってどのくらいだっけ」
「あそこだったらざっと10万くらいかな。あとはスタッフとかも関係するから15万とかかも」
チケット1枚1000円だとすると、1500人来てやっと±0円か。
「ワンマンだったら?」
「まず場所から探さないといけない」
そうか……
「ライブハウス貸し切ろうぜ」
魁が提案した。
「1500人だぞ?」
「それがどうした。高校の時思い出してみろ。定員130人で1日何回ライブした。5回だぞ?しかもそれで座席全部埋まった。これだけで650人は来てる。それに、Leo/needも有名だしな」
言われてみればそうだ。俺たちとLeo/needを合わせれば1500人なんて結構簡単にいくかもしれない。
「やってみるか」
「あぁ。やってやろう」
1500人を目標に、俺たちはライブの準備を始めていった。
最初は演奏する曲について。時間から曲数、プログラム……かなり決める量がある。
「一歌、おいで」
俺は一歌を手招きした。一歌は歩いてこっちに来る。
「ん?」
「ほれほれー」
俺は一歌の顎を猫にするようにわしゃわしゃする。
「な、なに……?」
「じゃあ、本題に移ろうか」
俺はわしゃわしゃするのをやめる。
「一歌と俺でライブのプログラムを決めたい。取りあえず最初はセトリからだけど」
「え、いいけど」
「ありがとな~」
一歌は俺がハグする前に避けるが、そのあと一歌の方からハグした。
「柊くん……」
かわいい……
「取りあえず進めよっか。今日の練習終わったらついてきて」
「うん。分かった」
俺たちはみんなのところに戻った。
練習が終わって、俺の家に一歌を連れてきた。端から見たら誘拐みたいに見えるが、誘拐じゃない。間違いない。
「それじゃ、話し合い始めるよ」
「うん」
「曲数って何曲くらいがいい?」
「私たちは4曲くらいだったら連続で」
一歌と俺は2人で2時間ほど話し合った。結構内容が濃く、決まったのは各バンドの曲数だけ。まだライブ全体の時間、演奏する曲、楽器配置、ライブ日時、チケットの値段……様々な決めることがある。
「じゃあ、そろそろ終わりにしようか」
「うん。また明日やる?」
「そうしようか」
時間はもう21時を回っていた。一歌は真っ暗な廊下を歩いていく。
「あー、ちょっと、危ない」
俺は一歌についていった。廊下は電球の取り替えで、今は電気がつかない。
「大丈夫だよ。じゃ、また明日ね」
一歌が玄関で自分の靴を履こうとする。
「そうか?じゃあ、また明日な」
俺が一歌に言うと、一歌は少しフラついた。そして、靴のかかとを踏んで後ろに倒れる。
「あっ!」
「一歌!」
俺は咄嗟に一歌の後ろに行って支えた。思ったよりも力が加わり、俺は一歌を後ろから抱く形になった。
「あ、ありがとう……」
「お、おう……」
一歌はまた履こうとする。まだフラつきそうだったため、俺は一歌に肩を貸した。
「……あれ……」
「……」
一歌は履けなさそうにしていた。
「……家まで送るよ」
「うぅ……お願いします……」
一歌は俺のアシストで靴を履いた。俺はバイクのヘルメットを2つ持って外に出た。
この付近は街灯が少なく、お世辞にも明るいとは言えない。こんな時間に1人で少女を出歩かせるのはどうしても気が気でない。
「一歌、髪崩れるかもしれないけど、被ってくれる?」
「うん。分かった」
一歌はヘルメットを被った。俺はバイクに乗り、一歌を後ろに乗せた。一歌はまだ数回しか乗っていないからなのか、強く抱き寄せる。
「一歌……」
「こうしてたいから。ダメ?」
一歌は俺の背中に頬を当てて言った。そんなことされたら断りようがない。
「いいよ。そうしてて」
俺は一歌の家までバイクを走らせた。
交差点で止まったとき、一歌は俺に話しかけた。
「柊くん、明日、19時くらいにきていい?」
「あぁ。いいよ」
一歌はそんな質問をした。
「一歌?」
「少し悲しくなってきちゃった」
一歌は続けて言った。
「合宿のとき、みんなと楽しそうにしてて、少し寂しかった。志歩ってこんな感じだったのかなって」
「一歌……」
俺は青信号になって、バイクを走らせることしかできなかった。そうか、一歌はこんなことを思ってたのか……
一歌の家に着くと、俺は一歌をバイクから降ろした。
「ありがとう、柊くん」
「あぁ」
そう話していると、一歌のお母さんが出てきた。
「何時だと思ってるの?」
一歌は悲しそうに俯いた。ここは少しでも一歌にかかる罪を減らさないと。
「すみません。僕が一歌を家に入れてたんです。話し合いがあって。なので、遅くなってしまったのは僕のせいなんです。すみませんでした」
「あー、いや、そんな……」
「どうか、一歌は怒らないであげてください。非は僕にあるので」
お母さんは「あー、はい」と言って中に入っていった。
「一歌」
「ん?」
俺は交差点で止まったときに言っていたことに答えた。
「一歌が1番だよ」
俺は恥ずかしくなって、そう言ってすぐにバイクに乗って帰った。
翌日も、仕事が終わった後に話し合いが始まった。19時から始まる。
「ライブの時間ってどのくらいがいいかな……1時間?」
「でも2つのバンドだしな……」
一歌と俺はこれだけで30分くらい悩んでいた。俺はあぐらをかき、一歌は俺の足の上にいる。
「2時間かなぁ……」
「そんなもんかな。それで計画してみようか」
「うん。曲決めてから細かい調整しよっか」
俺と一歌の話し合いが終わった。一歌は俺の上から立ち上がり、荷物を持って玄関に行く。
「帰るか」
「うん」
「送るからさ、車の前で待ってて」
俺は車の鍵を取った。一歌は俺の視界にはいるところにいた。
「行く?」
「行く」
俺は一歌と一緒に外に出ていった。
家に着くと、俺は一歌を降ろした。
「じゃ、また土曜ね」
「あぁ。じゃあな」
俺は車を走らせた。