俺は練習場所に行って、今までで決まったことを報告した。
「時間は2時間程度とって、曲数はそれに合わせて」
「柊くんが場所を取ってくれたから、ワンマンライブに変更。値段は1人1000円で」
俺は値段配分の表をみんなに配った。全部で2枚の表紙を含めた3ページ。
「2ページを開いて。まず、ステージ貸切で10万円、フェンス等の利用料で4万円、臨時交通機関確保で20万円、CM料で15万円、ポスター掲示で3万円、その他は各自で見てもらう物として、その他合計25万円。総額77万円」
一歌が電卓で計算して、何人来ればいいかを算出した。
「770人来れば均衡状態、それ以下だと赤字、それ以上だと黒字」
770人はまぁいけると思う。結構広いから収容人数は3500人はいける。今回は観客同士の距離を保つため、収容人数を3400人で設定した。
「じゃあ、曲を決めようか。あと、最後にアンケート結果に基づいたコラボ演奏もあるから、曲は弾けるようにね」
『はい!』
全員が返事をして、今日は練習に移った。
もう全てが決まった。STAR NIGHTは6曲用意、Leo/needは5曲用意した。俺はSTAR NIGHTと一緒に練習した。6曲のうち、全てが4~5分で構成されている。
「あうぅ……」
「なんだ、海斗」
海斗が唸った。
「咲希ちゃんに会いたいんだよぉ……」
「あ、俺もほなちゃんに会いたい……」
「あぁ、俺も志歩に……」
「一歌……」
練習がままならない。みんなLeo/needのメンバーが好きすぎて、いないといけないらしい。
「呼ぶか」
「あぁ」
魁はLeo/need全員に連絡をした。魁は少し話すと、すぐにこっちを向いた。
「来るって?」
「2分以内に」
早いなぁ……
「俺たちは練習してようか」
俺たちは少し練習をした。
言っていたとおり、2分以内に一歌たちは来た。部屋に入るなりみんな自分のパートのところに駆け寄った。
「一歌、会いたかった」
「私もっ」
結局、バンドごとで練習するはずがみんな集まって練習になった。
俺たちは3時間程練習したあと、みんなで休んだ。どっちも全曲練習したため、指や腕が疲れ果てていた。
「柊くん、疲れた……」
「焼きそばパン食べるか?」
「うん……」
一歌は焼きそばパンを食べる。俺も一緒に食べていた。
「あと30分休もうか」
一歌は焼きそばパンを咥えたまま俺の隣に来た。一方、俺と一歌以外もみんな横になったりしてくつろいでいた。
俺たちの休憩が終わると、楽器を持ち始める。手の力も入らない人が多く、手を何回も柔軟していた。
「あ、私たちの前回のライブ、反応どうかな」
「あーっ!気になる!」
一歌と咲希が言った。志歩と穂波も寄っていって、みんな一歌の携帯を見る。
「俺たちは……な」
「あぁ」
活動休止した理由なんて、公にしてるのは建前だ。言ってしまえば、「猫を被っていた」。
「今回はどうなるか、だよな」
龍夜が俺たちの方を向いて暗そうに言った。
「大丈夫、きっとうまくいく」
海斗が励ます。ただ、海斗だって分かっていた。
またそうなるかもしれない。活動休止までなるかもしれない。
全員が知っている。このバンドの、全員が知っている。ただ、それでも今回はライブをやるんだ。
ライブ前夜。
俺は自宅でギターの手入れをしていた。
(明日か……)
また、コメントで言われるのだろうか。
〈別にそんな上手くなくね?〉
〈こんなんでバンド組んでんの?〉
〈バンド業界舐めすぎ 笑 〉
〈バンド業界舐めんな〉
〈他のバンドの方がいいや〉
〈聞いてても苦しい〉
〈というか吐き気〉
活動休止前最後のライブで書かれたコメントの一部だ。
「……っ」
またこうなるのか、あるいはもうこんなことにはならないのか……
(まだ、バンドを続けたい……)
そう思っていると、TwitterのSTAR NIGHT公式アカウントにDMが来た。
〈ついに明日ですよね!結成当初からのファンです!絶対行きます。応援してますね!〉
励ましのコメントだ。
なんだろう、少し鳥肌が立つ。いつ以来だろう、こんな励ましのコメントを貰ったのは。
〈ありがとうございます!明日のライブ、大成功させますので、楽しみにしていてくださいね Guitar担当月島柊〉
他のメンバーからも返信が来る。
〈ありがとう!励ましのコメント嬉しい!楽しみにしててね! keyboard担当犀山海斗〉
〈励ましのコメントありがとうございます。4人で全力でやるので、楽しみにしていてくださいね bass担当幸山魁〉
〈明日のライブ楽しみにしててくださいね!全力で演奏します! drum担当春先龍夜〉
そして、DMを送ってくれた人からも返信が来る。
〈みなさんからコメントありがとうございます!楽しみにしてますね!〉
明日が、俺たちの復帰ライブになる。
どんなことになるかは分からないが、このような観客も中にはいる。
明日来る観客のために、俺たちは…演奏するだけだ。