第21話 スキー出発
12月25日。
俺たちSTAR NIGHT4人は知り合いのスキー関係こものを作っている工場に向かった。
「光矢さん」
赤崎光矢さん。俺たちよりも6つほど年上だが、昔から仲がよかった。
「お、龍也くんたちじゃないか。どうしたんだい、また要望か」
「察しがいいっすね」
龍夜が言った。
「28日までに、8人分のスキー板って作れます?」
海人が言う。無理なのは承知の上だが、せめて4人分でも……
「そう言うと思ったよ。実はな、もう君らの分は作ってあるんだ。27日に送ろうかと思っていたんだが」
さすが、光矢さん。
「んで、スキーウェアは」
「え?いや、レンタルですけど」
「8人分か?そんな無駄金使うなよ。もうスキーウェアは8人分作ってあるんだ。えっと、君ら4人と星空みたいな子たち4人だよな?」
なんで知ってるんだ?教えた覚えはないが……
「はい。合ってます」
魁が言った。
「は?魁、もう言ってたのか!?」
「あぁ。もう2週間くらい前に」
「スキー板は27日にはできるからな。スキーウェアはもう持って帰ってしまいなさい。27日に来るか?」
「じゃあ、そうします」
光矢さんはハンガーに掛けてあったスキーウェア8着を俺たちに渡した。
「おぉ……」
「すごいな……」
「魁くんが言ったとおり、首元にカラーセロハンが挟まってるから」
よく見ると、赤、黄色、黄緑、青のカラーセロハンが貼ってあった。Leo/needのメンバーカラーだ。
「君らのスキーウェアは楽でいいね。身長、体型みんな一緒だから」
「あはは。じゃあ、スキー板4枚持って帰っちゃいますよ」
「じゃあ、頼むよ」
光矢さんはスキー板4枚持ってきた。
「じゃ、また27日な」
「はい。ありがとうございます」
俺たちは車にスキーウェア、スキー板を乗せて工場をあとにした。
出発は28日。ガーラのスキー場だ。
ずっと一歌たちに会えないまま27日になった。一昨日と同じように光矢さんのところに行った。明日が出発だ。
「おぉ、来たか。ちゃんとできてるぞ」
「ありがとうございます」
俺たちはそれぞれパートの人のスキー板を持った。
「すごいな……キラキラしてる」
「星屑か……」
俺たちはスキー板を車に乗せ、STAR NIGHTの家に向かった。
帰っている途中、みんなで話し合った。どこで合流するか、時間だ。時間の関係上、新幹線で行くことになる。
「とりあえず、どこから新幹線に乗る」
「大宮か東京だな」
それぞれ、魁が戸塚、海斗が学芸大学、俺が中野、龍夜が三鷹に住んでいる。Leo/needも渋谷だし、東京と大宮どっちからでも乗れる。
「魁が東京で合流、Leo/needと俺と龍夜が渋谷で合流すればどうだ」
「俺が恵比寿まで日比谷線ってこと?」
海斗が言った。
「そうなるな」
「じゃあ、東京から新幹線でいいな」
「待って、あの東京駅で合流できるか?」
確かに、少し難しいかもしれない。
「確かにな……」
「じゃあ、Leo/needと柊、龍夜が渋谷で合流、海斗が横浜まで来て、俺と全員が横浜で合流。これでどうだ」
それだったら、東海道線ホームは1つだけだし、東京駅ほど広くない。
「いいじゃないか。時間を調べればいけそうだ」
「じゃあ咲希たちに教えとくよ」
海斗はスマホでLeo/need全員に送った。
「んで、レンタルは何が必要だ」
「靴かな?」
ストックはスキー板とセットになってるし、ゴーグルは買ったし、手袋もみんなで買ったからそんなもんだろう。
「楽しみだな、柊」
「柊ってスノボ残ってるんじゃないの?」
海斗が俺に聞く。
「あるけど、持ってくか?」
「結構長くやってないし、それは柊に任せるよ」
スノボなんて久しぶりだもんなぁ。
「あ、みんなからOK貰ったよ」
「じゃあ、当日まで待つだけだな」
12月27日に残りの板を取りに行って、12月28日、早朝から出発した。
時間の都合上、龍夜、俺、Leo/needは横浜ではなく品川で合流になった。また、海斗は恵比寿から山手線で品川に向かうため、品川からみんな同じ電車になった。
龍夜と俺は4:40発快速東京行きで新宿まで行き、5:03発の山手線内回りで品川まで。渋谷でLeo/needが合流する。
海斗は学芸大学5:12発和光市行きで中目黒、5:22発南栗橋行きで恵比寿、5:28発山手線内回りで品川。
品川からは全員で5:44発に乗る。
「おはよう、龍夜」
電車の中で合流した。
「おはよう。今日は早いな」
まだ外も薄暗いし、確かに早い。
「こうでもしないと合流できないから」
俺は自分のスキー板と一歌のスキー板をドア横に立てた。次が降りる駅だからというのもある。
新宿に着くと、14番線から山手線内回りに乗車。渋谷から一歌たちが乗ってくるはずだ。
渋谷に着いてすぐ、Leo/needの4人が乗ってきた。
「おはよう、りゅうくん」
「おはよう、柊くん」
志歩が俺の横に来た。
「あ、そうそう。君たちに少し遅れたクリスマスプレゼントがあってね」
そう言ったのを俺が聞くと、俺は一歌と志歩のスキー板とストックを差し出した。
「スキー板とストック。今日使うから、プレゼント」
「えっ、いいの?」
「これからも使うかもしれないし」
みんなはスキー板を押さえて、笑顔になっていた。よかった、気に入ってもらえて。
品川から全員が集まり、大宮には6:25に着いた。7:09発ガーラ湯沢行き臨時に乗車するため、俺たちは新幹線改札に入り、待合室で待った。
「今日って何号車だっけ?」
「11号車1番ABCD、2番ABCD」
Leo/needは4人で固まって暖まっていた。
確かに、今日はかなり寒い。東京でも最高気温14℃と、寒い日だ。
「スキー、教えれるのか」
「大丈夫だって。以外といけると思うし」
怪我さえしなければいいだけだ。あとは楽しくやろう。
そして、待合室にチャイムが鳴った。
《17番線に、6:57発、はやぶさ1号新函館北斗行きとこまち1号秋田行きが17両編成でまいります。この電車は──》
6:57発が到着するらしい。俺たちが乗る7:09発まで12分だ。
「そろそろホーム行くか?」
「そうだな。みんな、行くよ」
Leo/needが固まってついてきた。STARNIGHT4人にLeo/need4人がついてきて、カルガモ親子みたいだった。
「さむーっ」
「思ったより寒いかも……」
咲希と一歌が身を震わせて言った。新幹線ホームは屋根と壁に覆われている、シェルターのような構造にはなっているが、それでも寒い。
「あと10分くらいだから。それまで待ってよう」
そのあと、18番線に7:01発ガーラ湯沢行きが出て行ったが、それより先に7:09発ガーラ湯沢行きが到着する。
7:08、時刻通りやって来た。俺たちが乗る11号車はグリーン車で、2人掛けシートが2組列んでいる。そこに座った。
「あったかーい」
「どのくらいで着くの」
志歩が聞いた。魁がすかさず答える。
「50分くらい」
一歌はそれを聞いてから、スキー板とストックを荷物棚に乗せ、俺の隣に座った。
「楽しみだね、柊くん」
「あぁ。楽しみだな」
一歌は外を眺める。外にすっかり夢中で、他のことは気にしていなかった。
「柊」
俺の右隣から龍夜が話しかけた。
「ん?どうした」
「ほなちゃん、もう寝ちゃったよ」
穂波を見ると、龍夜の肩に頭を乗せて、かわいい寝息をたてながら寝ていた。
「ホントだ」
「一歌は外に夢中だな」
「かわいいけど」
龍夜は笑って穂波の方を向いた。
「外どう?」
「速い……目に追えなくて疲れてきた」
一歌は背もたれにもたれ掛かって言った。
「まだあるからさ」
「柊くんと一緒だから何時間でもいいけど」
「一歌~~」
俺は一歌を抱きしめた。
「ちょっ、苦しいって……」
「あ、ごめん」
「けど、ありがと」
一歌は微笑んだ。
新幹線はスピードを上げていき、最初の熊谷を通過した。