俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第23話 平和の反対

 

 ホテルに着いた俺たちは泊まる部屋を決めた。

3階の部屋を4部屋取っていて、301、302、303、304の4部屋。今回は比較的空いていて、隣の部屋などは誰もいない。

 

「んじゃ、301がいい人」

「あ、じゃあ俺たちでいいかな」

 

魁と志歩が301になった。

そのあと、302を龍夜穂波ペア、303を海斗咲希ペア、そして304を柊一歌ペアが使うことになった。

304号室に入ったあと、ベットを見つけた。

 

「ベットどっち使う?」

 

2つあったため、右と左どっちを使うか聞いた。

 

「1つだけ使う」

「ん?同じ布団で寝るってことか」

「そう。寒いし」

 

確かに、豪雪地帯ということもあってかなり雪が積もっている。それもあって、寒い。部屋の気温は9℃。これでも窓を閉め切り、ドアも閉めている。ストーブは寝ているときに危険なためつけていない。

 

「寒いな……」

「じゃあ布団に入る?」

「そうしたい」

 

俺は一歌と一緒に布団の中に入った。

 

「あったけー……」

「あったかい……」

 

俺は布団から出ずにいたかった。一歌も布団から出ることは考えていなかった。

 

「待って、歯磨いてきたい」

「あ、俺も」

 

俺と一歌は歯を磨きに布団から出た。なんか、夫婦みたいだな。

 

「柊くん、もっと近づいて?」

「あぁ」

 

俺は一歌のすぐ横に寄って歯を磨いた。少し動いたら当たってしまうほどの距離だ。

歯を磨き終わると、俺と一歌はさっきの布団に戻った。一歌は俺に背中を向け、俺が後ろからくっついている形になった。

 

「一歌」 「柊くん」

 

俺が一歌を呼ぶのと、一歌が俺を呼ぶのが同時になった。一歌は俺を見てかわいい顔で微笑んだ。俺もかっこいいかは分からないが、笑顔で返した。

 

「どうした、一歌」

「そっちこそ。どうしたの?」

 

2人とも答えられない。一歌がこっちを向いたままくっついてほしいんだが……

 

「一歌からいいよ」

「じゃあ……」

 

一歌はこっちを向いたまま近づいてきて言った。

 

「この向きでくっついてたい」

「奇遇だな。俺もだよ」

 

一歌は細い手を俺の背中にやり、さっきよりも近づいてきた。いや、もう「近づいている」ではなく「くっついている」だ。

 

「一歌……そんな簡単に男を抱いちゃダメだって」

「さすがに気持ち悪い人だったらやらないよ。でも、柊くんは悪い人じゃないでしょ?」

「そうは限らないんじゃない?」

 

俺は少しいたずらっ子のような目で言った。

 

「だってかっこいいし……信用できるよ」

 

俺は少し照れてる一歌にドキッとした。かわいい……さすがに襲わない。かわいい子、守りたい。

 

「いちかぁ」

 

俺は一歌のころをハグした。

 

「ふふっ、柊くん」

 

俺は一歌と一緒に、くっついて布団の中にいた。

一歌は遠慮せずに、それどころか俺が少し離れようとするだけで強く抱きしめるほど。

 

「ちょっと飲み物買ってくる……」

 

疲れている俺は一歌にそう言った。

 

「待って、一緒に行く」

「え?いいよ。寒いし」

「手繋いでればあったかいよ?」

 

一歌は上目遣いで俺に言った。そんな言い方されちゃあおいていけないじゃないか。

 

「じゃあ行こう、一歌」

「うん!」

 

俺と一歌はベットから出て自販機に飲み物を買いに行った。

行く途中龍夜と会ったため、俺は龍夜、一歌と一緒に買いに行った。

 

「龍夜くんはいつからドラム始めたの?」

「高校でバンド組んでから本格的に始めたよ。ドラム自体は中学の部活でやってた」

「中学の部活ってなんだったの?」

「吹奏楽部。パーカッションだったからさ」

 

龍夜と一歌はそんな話で盛り上がっていた。

 

「柊くんは興味あったんだっけ、ギターに」

「あぁ。親の反抗もあったけど」

「どうやって2人は上手くなったの?」

 

一歌にそう聞かれて、俺と龍夜は目を合わせた。

 

「なんだろうな?」

「俺かよ。なんだろうな」

 

結局、過程を覚えていない。自然に上手くなったわけではないが、気付いたら上手くなっていた。

 

「疲れたら練習やめてたよな」

 

龍夜が言った。

 

「なんか気楽だったよな」

「そうなんだ。1日10時間とか決めてなかったの?」

 

10時間は普通に長いと思うけど。

 

「決めてなかった。大変じゃん?」

「そうだけど……」

「あんまり練習しても楽しくないからさ」

 

俺は一歌の頭をポンポンとして言った。

 

「さ、何買う」

「もも水がいい」

「俺もー」

 

龍夜が言った。お前にも買わなきゃいけねぇのか。

 

「お前は自分で買えよ……」

「しょうがねぇな」

 

俺はもも水を2つ買い、一歌に1つ渡した。

 

「ありがとう、柊くん」

「あぁ。いつでも頼っていいからな」

「うん!」

 

一歌は俺をじっと見て言った。

 

「どうした?俺に何かついてるか」

「ううん、何もついてない」

「じゃあどうしてそんなに見てるんだ」

「なんとなく」

 

一歌はその後もしばらく見続けた。何なんだろう?

 

 俺は翌日、近くの公園に路上ライブをしに行った。

路上ライブは反応がなく、不思議だった。

 

「ありがとうございました」

 

俺がそう言うと、観客はおもむろに立ち上がり、俺の近くに寄った。

 

「えっと……どうしましたか──」

 

ゴンッ

 

俺はその場に倒れ込んだ。意識が朦朧とする中、これだけは聞こえた。

 

「こんな酷い演奏、聴かせるんじゃない」

 

 

【星乃一歌視点】

 

 柊くんのあとをみんなでつけていくと、路上ライブするための公園に着いた。私たちは物陰に隠れて柊くんを見ていた。

 

「終わったみたいだな」

「うん」

 

観客拍手をすることなく立ち上がった。

 

「拍手しないのか?」

「いい演奏だったんだけど……」

 

次の瞬間、柊くんを殴る人が数人いて、柊くんはその場に倒れ込んだ。

 

「柊くん!」

「柊!」

 

私は柊くんのところに走っていった。STARNIGHTの3人が柊くんを殴打した人たちを取り押さえた。Leo/need4人で柊くんの救護。

柊くんは首元に殴られたあざと、同じく首元に切り傷があった。切り傷からは血が止まることなく流れていて、恐らく切っただけではなく、刺されるなどされている。

 

「柊くん!」

「柊くん」

 

私は第一優先として、首で脈拍をとった。

脈拍は正常。動いている。ただ、呼吸はしていなくて、さらにはびくともしない。

 

「柊くん……」

「一歌!AED持って来い!」

「うん!」

 

魁に言われて、近くのAEDを探した。公園のトイレにあるかな……

行ってみると、AEDの看板があった。私は矢印通りに進んだ。

しかし、そこにあったのはガムテープでガッチリ止められたAED。貼られていた紙に「月島は裏切り者」と書かれていた。

 

(月島……って、柊くんだよね。柊くんが裏切り者?どうして……?)

 

私はトイレから出て叫んだ。

 

「魁!AEDが!」

 

すると、魁はすぐにこっちに走ってきた。

 

「AEDがどうした」

「ガムテープで固定されてて、あと」

 

魁はそれだけ聞くと走ってAEDに向かった。

 

「なんだよ、これ……」

 

魁もガムテープで止められているAEDを見て驚いた。

 

「裏切り者?柊が裏切り者なんて、どういうことだ」

「それも分からないし、ガムテープで止めたってことは、計画してたってことでしょ?」

 

前から計画しているなんて、そんなに恨みがあったんだろうか。

 

「これ撮っておこうか。救急車呼んで」

「うん」

 

私は救急車を呼び、柊くんのところに向かった。

 

「柊くん……」

 

STARNIGHTの2人はやって来た警察に状況を伝えていた。

 

「柊くん、起きてよぉ……」

 

私は柊くんに触れた。いつもの柊くんじゃない。

 

 

 柊くんが意識を失ってから数時間が経ち、外は暗くなった。最初は龍夜に「早く帰った方がいいよ」と言われたが、柊くんの傍にいたいと言ったらすぐに承諾してくれた。

 

「柊くん、起きて?」

 

私はずっと柊くんの傍にいた。心拍数は正常値に戻ったため、あとは目が覚めればいいだけ。

すると、柊くんから「スー」と息の音が聞こえた。

 

「柊くん!」

「……この声、一歌だな」

 

柊くんはゆっくり私の方を見た。柊くんは苦しそうな声だ。

 

「柊くん!」

「一歌……いたのか……」

 

柊くんは手を伸ばした。私はその手をいつもより強く握る。

 

「強いよ、一歌……」

「でも、嬉しいんだもん」

 

私は柊くんから手を話した。柊くんは自分の手を私の目に当てた。

 

「泣くなって。似合わないよ」

 

柊くんは涙を拭いてくれた。あ、泣いてたんだ……

 

「一歌に会えて嬉しい。病院の人から聞いたんだけど、救急車呼んだの一歌なんだって?黒いロングヘアの人が呼んでくれたって言ってたよ」

「うん……え、一回起きてたの?」

「さっきまで昼寝してた」

 

私が心配してた意味って……

 

「もーっ!」

 

私は柊くんのお腹をたたいた。

 

「あはは、ポカポカするなって」

 

私は柊くんのお腹の上に顔をのっけて止まった。そして、埋まったままいった。

 

「じゃあさっさと起きてよぉ」

「ごめん。でも、まだ痛いけどね」

 

柊くんは微笑んで言った。

 

「他のみんなは?」

「ホテルで待ってるって」

「そっか。じゃあ、早く帰ってあげようか」

 

柊くんは笑った。今までより少し苦しそうに。

 

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