ホテルに着いた俺たちは泊まる部屋を決めた。
3階の部屋を4部屋取っていて、301、302、303、304の4部屋。今回は比較的空いていて、隣の部屋などは誰もいない。
「んじゃ、301がいい人」
「あ、じゃあ俺たちでいいかな」
魁と志歩が301になった。
そのあと、302を龍夜穂波ペア、303を海斗咲希ペア、そして304を柊一歌ペアが使うことになった。
304号室に入ったあと、ベットを見つけた。
「ベットどっち使う?」
2つあったため、右と左どっちを使うか聞いた。
「1つだけ使う」
「ん?同じ布団で寝るってことか」
「そう。寒いし」
確かに、豪雪地帯ということもあってかなり雪が積もっている。それもあって、寒い。部屋の気温は9℃。これでも窓を閉め切り、ドアも閉めている。ストーブは寝ているときに危険なためつけていない。
「寒いな……」
「じゃあ布団に入る?」
「そうしたい」
俺は一歌と一緒に布団の中に入った。
「あったけー……」
「あったかい……」
俺は布団から出ずにいたかった。一歌も布団から出ることは考えていなかった。
「待って、歯磨いてきたい」
「あ、俺も」
俺と一歌は歯を磨きに布団から出た。なんか、夫婦みたいだな。
「柊くん、もっと近づいて?」
「あぁ」
俺は一歌のすぐ横に寄って歯を磨いた。少し動いたら当たってしまうほどの距離だ。
歯を磨き終わると、俺と一歌はさっきの布団に戻った。一歌は俺に背中を向け、俺が後ろからくっついている形になった。
「一歌」 「柊くん」
俺が一歌を呼ぶのと、一歌が俺を呼ぶのが同時になった。一歌は俺を見てかわいい顔で微笑んだ。俺もかっこいいかは分からないが、笑顔で返した。
「どうした、一歌」
「そっちこそ。どうしたの?」
2人とも答えられない。一歌がこっちを向いたままくっついてほしいんだが……
「一歌からいいよ」
「じゃあ……」
一歌はこっちを向いたまま近づいてきて言った。
「この向きでくっついてたい」
「奇遇だな。俺もだよ」
一歌は細い手を俺の背中にやり、さっきよりも近づいてきた。いや、もう「近づいている」ではなく「くっついている」だ。
「一歌……そんな簡単に男を抱いちゃダメだって」
「さすがに気持ち悪い人だったらやらないよ。でも、柊くんは悪い人じゃないでしょ?」
「そうは限らないんじゃない?」
俺は少しいたずらっ子のような目で言った。
「だってかっこいいし……信用できるよ」
俺は少し照れてる一歌にドキッとした。かわいい……さすがに襲わない。かわいい子、守りたい。
「いちかぁ」
俺は一歌のころをハグした。
「ふふっ、柊くん」
俺は一歌と一緒に、くっついて布団の中にいた。
一歌は遠慮せずに、それどころか俺が少し離れようとするだけで強く抱きしめるほど。
「ちょっと飲み物買ってくる……」
疲れている俺は一歌にそう言った。
「待って、一緒に行く」
「え?いいよ。寒いし」
「手繋いでればあったかいよ?」
一歌は上目遣いで俺に言った。そんな言い方されちゃあおいていけないじゃないか。
「じゃあ行こう、一歌」
「うん!」
俺と一歌はベットから出て自販機に飲み物を買いに行った。
行く途中龍夜と会ったため、俺は龍夜、一歌と一緒に買いに行った。
「龍夜くんはいつからドラム始めたの?」
「高校でバンド組んでから本格的に始めたよ。ドラム自体は中学の部活でやってた」
「中学の部活ってなんだったの?」
「吹奏楽部。パーカッションだったからさ」
龍夜と一歌はそんな話で盛り上がっていた。
「柊くんは興味あったんだっけ、ギターに」
「あぁ。親の反抗もあったけど」
「どうやって2人は上手くなったの?」
一歌にそう聞かれて、俺と龍夜は目を合わせた。
「なんだろうな?」
「俺かよ。なんだろうな」
結局、過程を覚えていない。自然に上手くなったわけではないが、気付いたら上手くなっていた。
「疲れたら練習やめてたよな」
龍夜が言った。
「なんか気楽だったよな」
「そうなんだ。1日10時間とか決めてなかったの?」
10時間は普通に長いと思うけど。
「決めてなかった。大変じゃん?」
「そうだけど……」
「あんまり練習しても楽しくないからさ」
俺は一歌の頭をポンポンとして言った。
「さ、何買う」
「もも水がいい」
「俺もー」
龍夜が言った。お前にも買わなきゃいけねぇのか。
「お前は自分で買えよ……」
「しょうがねぇな」
俺はもも水を2つ買い、一歌に1つ渡した。
「ありがとう、柊くん」
「あぁ。いつでも頼っていいからな」
「うん!」
一歌は俺をじっと見て言った。
「どうした?俺に何かついてるか」
「ううん、何もついてない」
「じゃあどうしてそんなに見てるんだ」
「なんとなく」
一歌はその後もしばらく見続けた。何なんだろう?
俺は翌日、近くの公園に路上ライブをしに行った。
路上ライブは反応がなく、不思議だった。
「ありがとうございました」
俺がそう言うと、観客はおもむろに立ち上がり、俺の近くに寄った。
「えっと……どうしましたか──」
ゴンッ
俺はその場に倒れ込んだ。意識が朦朧とする中、これだけは聞こえた。
「こんな酷い演奏、聴かせるんじゃない」
【星乃一歌視点】
柊くんのあとをみんなでつけていくと、路上ライブするための公園に着いた。私たちは物陰に隠れて柊くんを見ていた。
「終わったみたいだな」
「うん」
観客拍手をすることなく立ち上がった。
「拍手しないのか?」
「いい演奏だったんだけど……」
次の瞬間、柊くんを殴る人が数人いて、柊くんはその場に倒れ込んだ。
「柊くん!」
「柊!」
私は柊くんのところに走っていった。STARNIGHTの3人が柊くんを殴打した人たちを取り押さえた。Leo/need4人で柊くんの救護。
柊くんは首元に殴られたあざと、同じく首元に切り傷があった。切り傷からは血が止まることなく流れていて、恐らく切っただけではなく、刺されるなどされている。
「柊くん!」
「柊くん」
私は第一優先として、首で脈拍をとった。
脈拍は正常。動いている。ただ、呼吸はしていなくて、さらにはびくともしない。
「柊くん……」
「一歌!AED持って来い!」
「うん!」
魁に言われて、近くのAEDを探した。公園のトイレにあるかな……
行ってみると、AEDの看板があった。私は矢印通りに進んだ。
しかし、そこにあったのはガムテープでガッチリ止められたAED。貼られていた紙に「月島は裏切り者」と書かれていた。
(月島……って、柊くんだよね。柊くんが裏切り者?どうして……?)
私はトイレから出て叫んだ。
「魁!AEDが!」
すると、魁はすぐにこっちに走ってきた。
「AEDがどうした」
「ガムテープで固定されてて、あと」
魁はそれだけ聞くと走ってAEDに向かった。
「なんだよ、これ……」
魁もガムテープで止められているAEDを見て驚いた。
「裏切り者?柊が裏切り者なんて、どういうことだ」
「それも分からないし、ガムテープで止めたってことは、計画してたってことでしょ?」
前から計画しているなんて、そんなに恨みがあったんだろうか。
「これ撮っておこうか。救急車呼んで」
「うん」
私は救急車を呼び、柊くんのところに向かった。
「柊くん……」
STARNIGHTの2人はやって来た警察に状況を伝えていた。
「柊くん、起きてよぉ……」
私は柊くんに触れた。いつもの柊くんじゃない。
柊くんが意識を失ってから数時間が経ち、外は暗くなった。最初は龍夜に「早く帰った方がいいよ」と言われたが、柊くんの傍にいたいと言ったらすぐに承諾してくれた。
「柊くん、起きて?」
私はずっと柊くんの傍にいた。心拍数は正常値に戻ったため、あとは目が覚めればいいだけ。
すると、柊くんから「スー」と息の音が聞こえた。
「柊くん!」
「……この声、一歌だな」
柊くんはゆっくり私の方を見た。柊くんは苦しそうな声だ。
「柊くん!」
「一歌……いたのか……」
柊くんは手を伸ばした。私はその手をいつもより強く握る。
「強いよ、一歌……」
「でも、嬉しいんだもん」
私は柊くんから手を話した。柊くんは自分の手を私の目に当てた。
「泣くなって。似合わないよ」
柊くんは涙を拭いてくれた。あ、泣いてたんだ……
「一歌に会えて嬉しい。病院の人から聞いたんだけど、救急車呼んだの一歌なんだって?黒いロングヘアの人が呼んでくれたって言ってたよ」
「うん……え、一回起きてたの?」
「さっきまで昼寝してた」
私が心配してた意味って……
「もーっ!」
私は柊くんのお腹をたたいた。
「あはは、ポカポカするなって」
私は柊くんのお腹の上に顔をのっけて止まった。そして、埋まったままいった。
「じゃあさっさと起きてよぉ」
「ごめん。でも、まだ痛いけどね」
柊くんは微笑んで言った。
「他のみんなは?」
「ホテルで待ってるって」
「そっか。じゃあ、早く帰ってあげようか」
柊くんは笑った。今までより少し苦しそうに。