12月31日23:40、俺たちはホテルから出て近くの空き地に向かった。雪が高く積もり、俺たちはその上に上った。
「あと20分くらいかな?」
一歌が言った。23時46分17秒。あと13分ちょっとだ。
「あと13分ちょっとだね」
「うーっ、さむーい」
咲希が海斗に抱きついた。確かに、寒い。上着は着ていたが、Leo/needはこっちの気温が分かっていなかったのと慣れていなかったため、関東と大して変わらない服装だった。俺たちは厚めのコートだけど。
「一歌、寒くないか」
「んー、ちょっと寒いかも。手とか」
一歌は小悪魔のような目で俺を見つめた。手を出していて、多分握ってくれると思っている。
「分かった」
俺は一歌の手を握った。一歌は俺にくっついて年越しを待った。
23時58分45秒。あと1分ちょっと。一歌は俺の腕時計をずっと見ていた。
「なぁ、年越しの瞬間全員でジャンプしようぜ」
龍夜が提案した。
「あぁ、いいぞ」
「いいよ!」
みんなでジャンプすることが決まった。
23時59分50秒、俺の声でカウントダウンが始まった。
「10、9、8」
一歌は俺の手を握り、みんなもパートごとに手をつないだ。
「3、2、1!」
1月1日0時0分0秒、新年を迎えた。
『ハッピーニューイヤー!』
1月1日15時40分
俺たちは咲良に帰ることを言った。
「咲良、なんかあったら連絡してくれよ」
今日来てすぐ、俺は咲良と連絡先を交換した。
「うん。またね、柊くん」
俺は手を振って、改札の前に行った。15:57発たにがわ412号で渋谷へ帰る。15分前の15:42から改札は開始している。
「柊くん、帰りはどういう感じ?」
「あ、そうだ。座席バラバラなんだ」
俺は一歌に聞かれたのを瞬時に返した。
「よく分かったな、どういう感じかだけで」
「気があったんだよ。な、一歌」
「うん」
俺は指定した座席を読み上げる。
「7号車2番ABC、17番DE、9号車10番ABC」
「じゃあ席はじゃんけんで決めよう。STARNIGHTの勝った順とLeo/needの勝った順でいいだろう」
俺たちはじゃんけんを始めた。
俺は3番目。多分3人席だろう。
「Leo/needで1番に勝った人~」
海斗が言った。
「はーいっ!」
咲希が手を挙げた。
「じゃあ7号車の17番で」
「うん!それでいいよ!」
海斗と咲希が17番DE。あとは6人を半分に分けるだけだ。
「じゃあグーとパーで分かれよう」
俺はパー。あとパーを出したのは穂波、志歩の2人。
ペアは
俺、穂波、志歩
魁、一歌、龍夜
海斗、咲希
になった。
俺は両方を女子に囲まれてたんだけど、穂波がずっとくっついていて、志歩はそれに嫉妬していた。
「柊くん、ちょっと眠い」
「嘘つけ。俺にくっついてるだけだろ」
「だって、こういうときじゃないとくっつけないから……」
左側から穂波が言った。右側の志歩からの視線がすごい。
「あのな、志歩」
「な、なに」
志歩は一瞬にして視線を逸らした。
「お前、視線感じるって」
「そんなことないでしょ」
「志歩ちゃん、柊くんのこと取ろうとしてるんだね」
「ち、違うって」
素直にならないなぁ。いや、そう言うと自惚れてるみたいになるか。
「15:57発たにがわ412号東京行き発車いたします。次は越後湯沢に停まります」
発車のアナウンスが入った。俺たちは高崎まで乗車し、高崎からは湘南新宿ライン。渋谷のSTARNIGHTの事務所で泊まる。
「柊くん、雪、すごいよ」
線路脇の雪は途轍もない高さだった。窓から見える景色は全てが白。一面の銀世界だ。
「おぉ、すごいな」
「もう帰るんだけどね」
志歩はふふっと笑って言った。2人とも雪を名残惜しく思っているようだ。
越後湯沢を出ると、すぐにトンネルの中へ。上越国境だ。抜けると上毛高原に停車し、その次が高崎だ。
「柊くん、魁から」
志歩はLINEを見せた。魁からのLINEだ。なぜ志歩に。
俺は魁とのLINEを2人だけのLINEでやった。
柊〈なんで志歩の方に〉16:02
魁〈ミスった〉16:02
魁〈セナツムギって知ってるか〉16:03
柊〈なんかの植物か?〉16:03
魁〈人の名前〉16:03
柊〈なんか聞いたことはある〉16:04
魁〈なんか連絡来たんだけど。セナツムギから〉16:05
柊〈分かった。ちょっと調べてみる〉16:05
セナツムギ……知らない名前だ。
上越国境のトンネルは電波が通らない。しばらく待ってから調べ始めた。
上毛高原を出発し、俺はセナツムギの連絡先を調べていった。俺が知ってるんだったら、連絡先もあるはずだ。
「瀬那紬希……あ」
俺は瀬那を見つけた。電話番号の中に瀬那がいた。
「どうかしたの?」
穂波が聞く。関係ないことだし、いいだろう。
「なんでもないよ。次高崎だから降りる準備しておけ」
俺は穂波と志歩に降りる支度をするように言った。
瀬那って、どんなやつだったかな。何せ10年くらい前のことだ。覚えてることも少ない。
16:30、高崎に到着。他の5人も降り、合流してから在来線ホームに向かった。
次は17:12発快速平塚行き。40分ほど時間があり、俺は瀬那に電話した。
《やっほ》
「あぁ、瀬那。久しぶり」
《久しぶり。魁くんから聞いたんでしょ?》
「そう。そんで、なんか用か?」
《柊くん元気かなって》
そんなことかよ……
「あぁ、元気だよ」
《そっか。よかった》
瀬那はそれからしばらくして言った。
《あの時はありがとね》
「ん?あ、あの事件か」
瀬那がストーカー被害に遭っていたときのことだ。
《そうそう》
「そんなのいいよ。お前だって困ってたんだし」
《そう?折角会おうかなって思ってたのに》
「是非会いたいです」
俺は即答だった。
《よし、じゃあ明後日中野駅でねー》
「北口?」
《うん!》
「分かった」
電話が切れた。瀬那って、ロングヘアの似合う子だったな。茶色のロングヘアがかわいかった。
「終わったか」
「あぁ。瀬那ってあいつのことか」
俺は魁に言った。瀬那は魁の方が仲良かったっけ。
17:04、特別快速高崎行きの折返しとして入線。俺たちは5号車前寄りの8人席に座った。1つの個室を貸し切ってるみたいになって、話せる。
「じゃあパートごとね」
一歌が窓側、俺が通路側で座った。座席を回転させて、俺と一歌は進行方向に向いている感じだった。
「一歌?」
「なに……」
一歌は不貞腐れたみたいに外を見た。まだ発車してないのに。
「ヤキモチ?」
志歩が言った。
「うっ……」
図星か。
「志歩とか穂波に対して?」
「他にも、咲良さんとか瀬那さんとか……」
俺が他の女の人と話してたのが気になったのか。
「かわいいなぁ、一歌」
俺は一歌のことをハグした。一歌は戸惑っていたが、俺は一歌のことをハグしたまま離さなかった。
「柊くん、私のだもん……」
一歌が小声でそう言ったのが聞こえた。俺はハグをやめ、一歌の方を向いた。
「一歌は俺のだよ」
同じように言った。
一歌は笑顔になって顔を俺の肩に乗せた。
「一歌、かわいい」
「柊くん、女たらし?」
「違うわ!」
志歩が俺のことをからかう。全く、誰に似たんだか……あ、魁か。
「実際高校の時も女友達多かったよな」
龍夜が言った。
「なんか4股とか噂あったじゃん」
「そんな噂知らないんだけど!?」
なんだその噂。そんなの知らないんだが。
「うぅ……」
「ち、違うから、一歌……」
一歌は不貞腐れた。なんか大変なことになりそうだ。