俺はしばらくの間、Leo/needから離れることになった。まぁ、と言っても杏の手伝いなんだが。
「いらっしゃい」
俺がカフェに着くと、謙さんが俺を迎えてくれた。
「お久しぶりです、謙さん」
「あぁ。久しぶりだな。今日はどうした」
「杏ちゃんに呼ばれてたんですよ」
俺は謙さんの前に座った。杏ちゃんが来るまでどれくらいかかるかな。
「杏に会うのは久しぶりだろう?まぁ、変わってないがな」
変わってないって……しばらく会ってないからなぁ……
「あっ、柊くん来てたんだ」
後ろから女性の声が聞こえた。後ろを振り返ると、杏ちゃんが立っていた。
「久しぶりー、柊くん」
「杏ちゃん。大きくなったね」
俺が高校の頃に少し世話をしていた。
「柊くんも!」
杏ちゃんは俺の隣に座った。杏ちゃんと会うのも久しぶりだし、なんか無邪気なのは変わってない。
「そうだ、どうして呼んだんだ?」
「あー、私たちの歌を見て欲しくてさ?」
そういえば今はストリート系やってるとか言ってたっけな。確かに歌唱力は大事か。
「そういうことか。なら大丈夫だ」
「ホント?じゃあよろしくね」
杏ちゃんは俺の手を握った。
「そうだ!私の仲間紹介するね」
そう言って杏ちゃんは後ろにいる3人を紹介し始めた。
「まずはこっちのがさつな人」
「おい、がさつってなんだよ」
「この人が彰人ね。それで、こっちが冬弥!」
「青柳冬弥だ」
男子も2人いるのか。
「そして!私のパートナー、こはね!」
ん、小動物みたいだな。
「はじめまして!小豆沢こはねです」
うん。ハムスターかな?いや、言っちゃ悪いけどさ。
「よろしくね。じゃあ、早速君たちの歌を聴きたいんだけど」
「うん!行こっ!」
杏ちゃんは俺の手を引いて走る。無邪気な感じ、やっぱり変わってないな。
杏ちゃんは近くの公園に。あとからみんなもついてきたが、こんなところで練習やるのか。
「じゃあ、いくよっ」
杏ちゃんは着いてすぐ歌を始めた。
歌は十分だった。ただ、所々修正すべき点もある。
「ありがとう。えっと、杏ちゃん。歌唱力には問題は無い」
「ホント?じゃあ!」
「表現力の問題だ。表現力がみんなバラバラすぎる。彰人くんと冬弥くんはバッチリだ。振り付けも日頃から意識してるんだろう」
それは見ているだけで分かった。明らかに杏ちゃんとこはねちゃんの方が動きに違和感がある。
「杏ちゃんとこはねちゃんは動きが固い。1つ1つの動きが目立ちすぎてる」
杏ちゃんは俺を見つめたまま止まった。
「振り付けの練習を重点的にやった方がいいんじゃないか。多分歌が変にきこえるのは振り付けのせいだ」
俺がそう言うと、杏ちゃんは俺にこう言った。
「じゃあ、柊くんが教えてよ」
杏ちゃんは俺をじっと見た。
「いいけど、大変だぞ」
「それでもいい!上達するんだったら」
こはねちゃんも一緒になって言った。
「じゃあおいで。彰人くんたちはどうする?来るか?」
「はい。こはねたちが行くんだったら」
彰人が言った。これは疲れそうだな……
全員来てしまった。
今は近くのカラオケに来ている。部屋が大きく、全員入っても窮屈に感じることはなかったが、彰人と冬弥は隣の部屋へ。2人で練習がしたかったらしい。
「じゃあ、始めようか。なんか女子2人と俺だけって気まずいけど」
「大丈夫じゃん!だって柊くん、高校のときモテてたんでしょ?」
「その噂どこまで広がってんの?」
STARNIGHTにも言われた。一体どこまで広がってんだ。
「まぁいい。ほら、早く始めるぞ」
俺は踊りやすい曲を選曲した。多分知ってるだろうし。
「じゃあ、やってごらん?アドリブだ」
杏ちゃんとこはねちゃんは曲が流れ始めてすぐに踊り始めた。かわいく踊っているように見えるが、実際この曲はバンドだし、しかもSTARNIGHTの曲。かわいい曲調ではない。
「うん。やっぱりかわいく見える。多分ダンスのメリハリがダメなんだろうね」
俺はリモコンを操作しながら言った。
「取りあえず、1つ1つの動きをつなげないで。全て別々で」
俺がそう言うと、こはねちゃんはダンスの練習をし始めた。本来は直接触って覚えさせた方がいいんだろうけど、それやるとセクハラなるから。
「どう?」
「意識してる感じは出た。ただ、癖なんだろうね。動きが1つ1つ別のようになってる」
「じゃあ、アシストしてくれない?私たちの腕動かしてさ」
さっき考えてたことが破綻した。けど、相手がそう言ってるんだし大丈夫なんかな?
「分かったよ」
俺は杏ちゃんの後ろに行って腕を動かした。
「なるべく動きを止めるんだ。こうやって」
杏ちゃんは俺の動きに合わせて動かす。俺が手を離すと、感覚を掴んだのかできるようになった。
「そうそう、そんな感じ」
「やった!こはね、こうだってさ」
杏ちゃんはこはねちゃんに踊り方を教えた。
「今日はありがと、柊くん」
「あぁ。また明日ね」
「うん!じゃあね!」
俺は杏ちゃんに見送られて改札に入った。杏ちゃんはまるで永遠の別れのように見送っていた。
「ただいま、埼京線、湘南新宿ライン、山手線は池袋駅人身事故の影響で、全区間で運転を見合わせております。ご利用のお客様は──」
なんだ、結局すぐには帰れないのか。定期だし、振替乗車使うか。
俺は吉祥寺まで井の頭線、吉祥寺から中央線で帰ることにした。
19:47、中野に到着し、俺は家に帰るとすぐにベットに突っ込んだ。明日も行くんだ。なるべく休んでおこう。