俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第29話 柊の教え

 俺はしばらくの間、Leo/needから離れることになった。まぁ、と言っても杏の手伝いなんだが。

 

「いらっしゃい」

 

俺がカフェに着くと、謙さんが俺を迎えてくれた。

 

「お久しぶりです、謙さん」

「あぁ。久しぶりだな。今日はどうした」

「杏ちゃんに呼ばれてたんですよ」

 

俺は謙さんの前に座った。杏ちゃんが来るまでどれくらいかかるかな。

 

「杏に会うのは久しぶりだろう?まぁ、変わってないがな」

 

変わってないって……しばらく会ってないからなぁ……

 

「あっ、柊くん来てたんだ」

 

後ろから女性の声が聞こえた。後ろを振り返ると、杏ちゃんが立っていた。

 

「久しぶりー、柊くん」

「杏ちゃん。大きくなったね」

 

俺が高校の頃に少し世話をしていた。

 

「柊くんも!」

 

杏ちゃんは俺の隣に座った。杏ちゃんと会うのも久しぶりだし、なんか無邪気なのは変わってない。

 

「そうだ、どうして呼んだんだ?」

「あー、私たちの歌を見て欲しくてさ?」

 

そういえば今はストリート系やってるとか言ってたっけな。確かに歌唱力は大事か。

 

「そういうことか。なら大丈夫だ」

「ホント?じゃあよろしくね」

 

杏ちゃんは俺の手を握った。

 

「そうだ!私の仲間紹介するね」

 

そう言って杏ちゃんは後ろにいる3人を紹介し始めた。

 

「まずはこっちのがさつな人」

「おい、がさつってなんだよ」

「この人が彰人ね。それで、こっちが冬弥!」

「青柳冬弥だ」

 

男子も2人いるのか。

 

「そして!私のパートナー、こはね!」

 

ん、小動物みたいだな。

 

「はじめまして!小豆沢こはねです」

 

うん。ハムスターかな?いや、言っちゃ悪いけどさ。

 

「よろしくね。じゃあ、早速君たちの歌を聴きたいんだけど」

「うん!行こっ!」

 

杏ちゃんは俺の手を引いて走る。無邪気な感じ、やっぱり変わってないな。

杏ちゃんは近くの公園に。あとからみんなもついてきたが、こんなところで練習やるのか。

 

「じゃあ、いくよっ」

 

杏ちゃんは着いてすぐ歌を始めた。

 

 歌は十分だった。ただ、所々修正すべき点もある。

 

「ありがとう。えっと、杏ちゃん。歌唱力には問題は無い」

「ホント?じゃあ!」

「表現力の問題だ。表現力がみんなバラバラすぎる。彰人くんと冬弥くんはバッチリだ。振り付けも日頃から意識してるんだろう」

 

それは見ているだけで分かった。明らかに杏ちゃんとこはねちゃんの方が動きに違和感がある。

 

「杏ちゃんとこはねちゃんは動きが固い。1つ1つの動きが目立ちすぎてる」

 

杏ちゃんは俺を見つめたまま止まった。

 

「振り付けの練習を重点的にやった方がいいんじゃないか。多分歌が変にきこえるのは振り付けのせいだ」

 

俺がそう言うと、杏ちゃんは俺にこう言った。

 

「じゃあ、柊くんが教えてよ」

 

杏ちゃんは俺をじっと見た。

 

「いいけど、大変だぞ」

「それでもいい!上達するんだったら」

 

こはねちゃんも一緒になって言った。

 

「じゃあおいで。彰人くんたちはどうする?来るか?」

「はい。こはねたちが行くんだったら」

 

彰人が言った。これは疲れそうだな……

 

 全員来てしまった。

今は近くのカラオケに来ている。部屋が大きく、全員入っても窮屈に感じることはなかったが、彰人と冬弥は隣の部屋へ。2人で練習がしたかったらしい。

 

「じゃあ、始めようか。なんか女子2人と俺だけって気まずいけど」

「大丈夫じゃん!だって柊くん、高校のときモテてたんでしょ?」

「その噂どこまで広がってんの?」

 

STARNIGHTにも言われた。一体どこまで広がってんだ。

 

「まぁいい。ほら、早く始めるぞ」

 

俺は踊りやすい曲を選曲した。多分知ってるだろうし。

 

「じゃあ、やってごらん?アドリブだ」

 

杏ちゃんとこはねちゃんは曲が流れ始めてすぐに踊り始めた。かわいく踊っているように見えるが、実際この曲はバンドだし、しかもSTARNIGHTの曲。かわいい曲調ではない。

 

「うん。やっぱりかわいく見える。多分ダンスのメリハリがダメなんだろうね」

 

俺はリモコンを操作しながら言った。

 

「取りあえず、1つ1つの動きをつなげないで。全て別々で」

 

俺がそう言うと、こはねちゃんはダンスの練習をし始めた。本来は直接触って覚えさせた方がいいんだろうけど、それやるとセクハラなるから。

 

「どう?」

「意識してる感じは出た。ただ、癖なんだろうね。動きが1つ1つ別のようになってる」

「じゃあ、アシストしてくれない?私たちの腕動かしてさ」

 

さっき考えてたことが破綻した。けど、相手がそう言ってるんだし大丈夫なんかな?

 

「分かったよ」

 

俺は杏ちゃんの後ろに行って腕を動かした。

 

「なるべく動きを止めるんだ。こうやって」

 

杏ちゃんは俺の動きに合わせて動かす。俺が手を離すと、感覚を掴んだのかできるようになった。

 

「そうそう、そんな感じ」

「やった!こはね、こうだってさ」

 

杏ちゃんはこはねちゃんに踊り方を教えた。

 

 

 「今日はありがと、柊くん」

「あぁ。また明日ね」

「うん!じゃあね!」

 

俺は杏ちゃんに見送られて改札に入った。杏ちゃんはまるで永遠の別れのように見送っていた。

 

「ただいま、埼京線、湘南新宿ライン、山手線は池袋駅人身事故の影響で、全区間で運転を見合わせております。ご利用のお客様は──」

 

なんだ、結局すぐには帰れないのか。定期だし、振替乗車使うか。

俺は吉祥寺まで井の頭線、吉祥寺から中央線で帰ることにした。

19:47、中野に到着し、俺は家に帰るとすぐにベットに突っ込んだ。明日も行くんだ。なるべく休んでおこう。

 

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