俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第32話 帰省 1日目

 

 盛岡を出発し、しばらくが経った。

反対方面の電車の待ち合わせで停車中、一歌が起きた。

一歌は仙台を出てからしばらく寝ていた。結局睡魔には勝てなかったんだろう。

 

「ん……」

「おはよ」

「おはよう……」

 

そこまで長くは止まらないと思うし、もうすぐだろう。

 

「雪降ってるの?」

「あぁ。東北の、しかも山奥だからな」

 

岩手と秋田の県境らへんにあるが、結構雪が降る。標高が比較的高いこともあるが。

 

「……動かないね」

「だな」

 

もう5分は停まってるか。

ホームはないため、外にも出られない。出れたとしても雪で出たくないけど。

 

 それから10分、まだ停まっていた。

どうやら反対方面の電車が雪の規定量を超えたため運転を見合わせているらしい。

こまち49号もやっと出発した。15分遅れだ。

 

「ん、柊くん、誰と連絡してるの?」

「あぁ、唯菜。あの従妹だよ」

 

俺は従妹の唯菜と連絡を取っていた。唯菜と会うのは何年だろう。俺が最後に帰ったのが6年前だったし、多分7年くらい前かな。

 

「……」

「ヤキモチ焼いてる?」

「そ、そんなんじゃないもん……」

「全く、かわいいんだから」

 

俺は一歌のことをハグして撫でた。

 

「むぅ……」

 

 

 10:18、15分遅れて到着した。

秋田駅にも雪が降っていて、降りた瞬間に凍えるような寒さだった。

 

「うっ、さむ……」

 

一歌も俺に飛びついた。かなり寒い。

 

「あ、柊くんあったかい……」

「一歌も……」

 

俺たちは秋田駅のホームで抱き合った。お互い今の状態に気づき、すっと離れた。

 

「……行こっか」

「……うん」

 

俺と一歌は手をつないで階段を上がっていった。

階段を上り、後ろに向かうと改札がある。改札の向こう側には帰省してくる人を待つ人が大勢いた。

そんな中で、俺は唯菜を見つけた。

 

「唯菜。久しぶり」

「久しぶり。そっちが一歌ちゃん?」

「あぁ」

「なぎちゃん待ってるから行こっ」

 

唯菜は俺の手を引く。一歌は俺の後ろをトコトコ歩いてくる。

 

「柊くん、もう6年くらい帰ってきてないんだって?」

「あぁ。大学とか仕事とかあって」

「なぎちゃんは大学あっても来てるけど」

 

大丈夫か、あいつ。

 

「大学って大変なの?」

「人によるが。なぎは大変じゃないんかな」

「さぁ。って、一歌ちゃんは?トイレ?」

 

一歌の存在に気付いてないのか?まぁ初対面だったらしょうがないが。

 

「後ろついてきてるだろ。トコトコと」

「柊くんには空気がついてきてるの?」

「え?」

 

俺は後ろを振り向いた。後ろには一歌がいなかった。周囲を見渡しても、一歌はいない。

 

「一歌!?」

「柊くん!?」

 

俺は手に持っていた荷物を捨て、改札前の待合室に入った。唯菜のことなんて気にしなかった。

 

「……っ」

 

俺は待合室から出た。待合室にいなかったのだ。

そう考えると、やっぱり……

俺は駅を走り抜ける。トピコを横目に、西口へ抜けた。

 

「一歌……」

 

俺は人目につかない場所までくまなく探した。

それでも一歌はいない。一歌はどこに行ったんだろうか。

俺がそんなことを考えていると、男2人組が俺にぶつかった。

 

「チッ」

 

男のうち1人が舌打ちした。したいのは俺の方なんだが。

 

「一歌……どこだよ……」

 

俺は階段脇のくらい場所に入った。

そこに入った瞬間、俺は身体を包まれた。

 

「柊くん……」

 

一歌だった。一歌の髪はボサボサになり、いつもとは全く違う。頬と手の甲には引っ掻かれた跡のような切り傷があり、何かされたような感じがする。見ているだけで痛々しい。

 

「一歌……」

 

一歌は左手の指をずっと隠していた。何かあるんだろうか。

 

「一歌、左手見せてくれる?」

 

一歌は黙ったまま左手を見せた。

 

「……」

「これ、さっきの男2人にされたのか」

 

一歌は頷いた。そうか、きっと指輪目当てだったんだろう。取られてなくてよかった。

 

「一歌は無事だったんだね」

「柊くん……」

 

一歌は泣き始めた。きっと痛かったんだろう。

 

「辛かったよな。もう大丈夫だよ」

 

一歌は泣いたまま俺を強く抱きしめた。

 

 一歌が落ち着いてきたあと、俺は東口に戻った。一歌はまだ黙っていたが、それほど痛かったんだろう。

 

「もう、柊くん。いきなり走り出してさ」

 

唯菜がエレベーターの前で待っていた。

 

「って、一歌ちゃんどうしたの!」

「男2人に絡まれたらしい」

 

唯菜は一歌のところに駆け寄って言った。

 

「家に帰ったら応急処置するから、ちょっと我慢してね」

「はい……」

 

一歌は小さい声で言った。

 

「なぎちゃんに駅前まで来てって言ってあるから」

「お、頼もしいな」

 

俺はエレベーターから地上に降りた。

下りてロータリーの方に向くと、目の前になぎが立っていた。

 

「おかえり、お兄ちゃん」

「ただいま。ちょっと急いでくれるかな」

「うん。あ、一歌ちゃんのことは聞いてるよ。一歌ちゃん、後ろ乗っていいからね」

 

俺はトランクに荷物を置き、一歌を後ろの席に寝かせた。俺の膝枕で寝かせていた。

 

「柊くん、東京ってどう?」

「まぁ、うるさいよ。交通量多いし」

「私みたいに関東郊外に住んだらいいのに」

 

なぎは神奈川の伊勢原に住んでいる。結構自然も多いところらしく、俺とは違う。

唯菜は都会っ子で、生まれたときから下北沢。ただ都会は好きじゃないらしいけど。

 

「アクセスがなぁ」

「それは都心の方がいいけどね」

「けどこっちもいいよね~」

 

唯菜が言った。

一歌は俺のことを下から見ていた。俺は傷に触れないように一歌を撫でた。

 

「一歌、痛い?」

「大丈夫。ありがとう」

 

一歌は両手を開いて挙げた。

 

「ぎゅってして?」

「怪我してんだろ?いいのかよ」

「いいよ。もうあんまり痛くないから」

 

俺は一歌を起こして抱いた。膝の上にのっけると、一歌は嬉しそうにこっちを向いた。

 

「ふふっ」

「あーっ、お兄ちゃん、またイチャついてる~」

「おい、なんだよまたって」

「だって、お兄ちゃん高校生のときモテてたんでしょ?」

 

その話はどこまでもついてくるなぁ。

 

「まぁ、そうなのかな?」

「へぇ、柊くんモテてたんだ~」

「確かに告白は3回くらいあったけど、俺は振ってるぞ?」

 

2人は「なーんだ」と口を揃えて言った。全く、一体誰だこの噂を流し始めたのは。

 

 それから30分ほど経って、ようやく家に着いた。俺は一歌と一緒に降りたが、すごい雪で歩くのも一苦労。

 

「一歌、俺の母親がいるから、母親に処置してもらえ」

「あっ、私がやる!私保健委員だし」

 

それって関係あるのか?

 

「まぁ、じゃあ任せたよ」

「任せでけれ!(任せてよ!)」

 

唯菜が家の中に入っていった。俺はなぎと一緒に除雪を始めた。

 

「あっ、手伝ってくれるの?」

「早く終わらせようぜ」

 

俺はスノーダンプで車庫前の雪を除雪し始めた。恐らく10cmくらい積もっているだろうか。

 

「あっ」

「おいおい、何雪に足とられてんだよ」

 

俺はなぎのところに酔って身体を支えた。

 

「ゆっくり足取れ」

「うん。っしょ」

 

なぎの足が抜けると、俺の方に倒れてきた。俺が支えようとして前に体重をかけると、2人同時に前に倒れた。

 

「あっと……大丈夫か?」

「うん。えっと、離れてくれるかな……」

「え、あ、ごめん」

 

俺はなぎを押し倒してしまっていたため、すぐに立ち上がった。

 

「もうちょっと、がんばろ」

「あぁ」

 

俺となぎは再び除雪を始めた。

 

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