俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第33話 帰省 2日目

 

 夜になって、雪は再び強くなってきた。

気温は氷点下まで下がり、今は秋田市で-5℃らしい。

 

「柊、ストーブ焚いでけれ(柊、ストーブ焚いといて)」

「分かった。あ、薪ってどこにある?」

「窓の近くさ置いてあるはずだども(窓の近くに置いてあるはずだけど)」

 

俺は母さんに頼まれて薪ストーブを焚く。それを聞きつけたなぎと唯菜が一歌を連れてこっちにやって来た。7年前もこんな感じだったかな。

 

「柊くん、はやくはやく」

「ちょっと待てって」

 

俺はストーブの中に薪を入れ、チャッカマンで火をつける。

 

「おー!」

 

唯菜がストーブの前に手を近づける。

 

「暖まるまで少しまっとけよ」

「はーい」

「お兄ちゃんはどこ行くの?」

「倉庫さ薪取りに行ってくる(倉庫に薪取りに行ってくる)」

 

俺は玄関から外に出て薪を取りに行った。2階にあったはずだけど……

 

「おっ、あったあった」

「おっ、柊くんじゃないか。久しぶりだね」

 

唯菜のお父さんだ。

 

「久しぶり。7年くらい会ってなかったかな」

 

結構仲は良いから敬語は外して話す。

 

「それにしても、倉庫に何しに来てたのさ」

「いやぁ、スノーダンプがここにあるって言われたから」

「スノーダンプだったら車庫だよ。今日俺たちが使って車庫に置いたから」

「そうか。ありがとう」

 

唯菜のお父さんは倉庫を降りていった。俺も薪を5本持って家の中に戻った。

外はやはり寒く、凍えそうだ。やっぱり薄い長袖で室内にいるからだろうか。

ちなみに、東北の家は冬にストーブを焚いている時は半袖が普通。まだ焚いたばかりだから寒いしで長袖だけど。

 

「一歌?寒いだろ」

「柊くんも寒いかなって」

 

一歌は玄関で出迎えてくれていた。

昔っぽい家で、玄関は横に開けるタイプのドア。入ると広く、さらに同じ幅の廊下がある。右側が居間、左が小さい冷蔵庫とゲーム部屋だ。

もちろん廊下は寒い。フローリングだし、ストーブもない。

 

「柊くん、寒いでしょ」

 

一歌は廊下に上がった俺をすぐにハグした。薪があるのに。

 

「一歌の身体あったか……」

「あーっ!」

 

そんな声が聞こえると、唯菜となぎが出てきて、俺を3人でハグした。暑苦しくない……あったか……

 

「あったかいな……」

「ストーブ効いてるよ。はやくはやく!」

 

俺は唯菜に連れられて居間に入った。部屋全体があったかい。寝れそう。

 

「あったかい……」

「お兄ちゃん、ここで寝ないでよ?」

「寝ないさ。上に寝室あるんだし」

 

俺はテーブルの前に座った。

テーブルは低く、床に直接座る形だ。居間と外が1枚の扉で繋がっていて、ベランダもない。その分寒いんだが。

障子が閉まっていて、外は見えない。

 

「柊くん、ギターって……」

「あぁ。明日届くよ。明日は除雪になりそうだけど」

 

俺は一歌を撫でて言った。

22時過ぎ、俺は歯を磨き、2階に上がった。結構急な階段で、上がると右側に1部屋、左に1部屋、振り返ったところに廊下があって2部屋ある。その奥側が防音室だ。

寝室は防音室の隣。

 

「ここだよ。俺たちの部屋は」

「敷き布団なんだね」

「あぁ。嫌か?」

「ううん。平気」

 

一歌はすぐに布団の中に入った。寒いのかな。

俺もすぐに一歌と同じ布団に入った。そのまま暖かくて眠り、翌朝になった。

 

 翌日早朝5:40。

秋田の朝は早い。もう全員出て除雪開始だ。

 

「おめぇが道路の雪寄せしといてけれ(君が道路の雪寄せしといて)」

「んだども、雪寄せる車さどこあるんだ(だけど、雪寄せの車どこあるの)」

「車庫の中さ入ってら。はだげの前さこげから、そごからな(車庫の中に入ってる。畑の前すごいから、そこからね)」

 

秋田弁のオンパレード。俺には伝わるから車庫の中から車を出してきて、一歌を乗せた。

 

「この車、どこで売ってるの?」

「トラクター改造した。改造したのは俺だ」

「え?」

 

トラクターを買ってきて、近くの町工場で鉄を曲げてもらって、それをトラクターに取り付ける。強度は十分ある。

 

「改造した本人が運転しないとな。私有地だけだったら一歌でもいいんだよ?」

「いや、大丈夫……」

 

俺はトラクター改を車庫から出し、少し離れたところにある畑の前まで走らせた。一歌は俺の膝の上に座っている。

畑の前に着くと、俺は方向転換して、鉄製のスノーダンプを前にする。

このスノーダンプカーについて少し説明。

トラクターだった下に温水タンクを搭載し、ボタンを押すと鉄製のスノーダンプの下から温水が噴射される。高圧になるように設計されていて、雪を早く溶かせる。

さらに、トラクターを改造したため、タイヤは柔らかいところに強い。雪なんて軽々走れる。

スノーダンプは左を向くように斜めに設置されていて、雪を押すと左側に寄せる。しかも温水で溶かしながら進むため、固い雪でも大丈夫。

ついでに動作の仕組みもガソリンから電気モーターに変更。電車を参考にして、かなり出力の高いモーターを積む。電気についてはガソリンで発電し、それを蓄電池に貯め、それを使う。環境にやさしい。

 

「よし、いくか」

 

俺はスノーダンプカーを走らせる。まだ積もったばかりの雪なため、温水は出さない。

進んでいくに連れて雪はどんどん左側へ。左側は水路になっていて、乗っていない俺の両親、唯菜の両親、なぎ、唯菜の6人がスノーダンプやスコップを使って砕き、水に流していく。

 

「柊くん、これ作ったの、すごい……」

「まだ雪掻き専用の車、あるぞ。つっても、軽トラをほんの少し改造したやつだけど」

 

ただ運搬用に作っただけ。今使ってる軽トラそれだし。

軽トラの方はただ骨組みを強化して重さに耐えられるようにして、タイヤを頑丈な物に交換したくらい。

 

「これってどこら辺まで行くの?」

「隣の家の前までかな、大体」

 

俺はゆっくり進めていく。一歌も身を乗り出して雪を寄せているのを見ている。夢中になっててかわいい。

 

 除雪が終わると、俺は居間に戻ってストーブの前に座った。

 

『あったかーい』

 

俺と一歌が同時に言った。

すると、玄関に大きい荷物を2つ持った人が向かっているのに気付いた。俺と一歌はなんとなく察し、玄関に向かった。

 

「すいませーん、お届け物でーす」

「はい」

 

俺がはんこを持って行き、紙にはんこを押した。

一歌が荷物2つを持ち、それを居間に運ぶ。

 

「ギター!」

「あぁ。丁度今届く予定だったからな」

 

他の6人が雪掻きをやっている最中、俺たちはギターを出した。

 

「ちゃんと傷なしに届いたな」

「帰りは持ってくんだっけ」

「あぁ。人もいないだろうしな」

 

一歌は立ち上がって言った。

 

「練習、しようよ」

 

一歌と俺は2階の防音室に向かった。

 

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