俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第34話 帰省 2日目

 

 「もう少しだな。そこは別の運指のほうがいいし──」

 

俺は一歌と練習をしていた。一歌は少し汗をかき、俺もなるべく上手くなるように指示した。

 

「この運指でいいかな」

「あぁ。次のコードにいけるような感じだったらいい」

 

一歌は楽譜を見て、もう一回練習し始めた。

 

「そこ、弾く弦が1つズレてる。2弦じゃないか?」

「けど、ここって3弦じゃないの?」

 

俺は楽譜を見る。確かに2弦なはずだが……

 

「それ、1列下見てるよ。そこはEmで2弦」

「あっ、じゃあ、運指もこう?」

「そうそう。じゃあ、いけそうだね」

 

一歌はゆっくり弾き始めた。

もう練習開始から3時間。かなり練習している。

 

「今日はどこまでやる」

「Dまでは終わらせたい」

 

あと15小節か。

 

「じゃあ、さっさと終わらせよう。時間もあるし」

 

俺はDまで練習を進めていった。

 

 ようやく練習が終わり、俺たちは防音室から出た。廊下は寒く、防音室とは違かった。閉め切ってたから暖かかったんだろう。

 

「あ、お兄ちゃん」

 

なぎが階段の下から呼んだ。

 

「何してんだ、なぎ」

「んー?ちょっと和室行ってた。電波繋がらないんだもん」

「だったら裏行けばいいだろ。裏の方が繋がるぞ」

「私は和室くらいの電波の強さでいいの」

 

なぎは「ふふん」と自信を持ったように言った。何に自信を持ったんだ?

 

「あ、ゆっち、薪変えた?」

「変えたよー。あったかいよ」

 

ゆっち。唯菜のあだ名だ。というか、なぎもあだ名だ。凪紗って名前なんだけど、俺がただ単になぎって呼んでる。理由なんてない。

 

「一歌、先に──」

 

一歌は俺の横を通り抜け、ストーブの前に手をかざした。

 

「はや」

「あったかー……」

 

唯菜が一歌の隣でにこにこして見ている。あぁ、ほんわかしてるなぁ。

 

「ちょっと連絡してこようかな。唯菜、なぎ。一歌を頼んだ」

「まかせて」

 

俺は外に出て、少し歩いた。雪は若干積もっていたが、歩けるくらいだ。

少し家から離れないと電波が繋がらない。俺は電波が繋がるところまで来ると、魁、海斗、龍夜の3人とビデオ通話を繋いだ。一瞬で入ってきて、そこには志歩、咲希、穂波もいた。

 

「久しぶり。みんな帰省中?」

龍夜《俺たちだけ違う。旅行中だ》

 

龍夜が言った。龍夜だけは旅行か。

 

「みんな、どこ行ってるんだ」

魁《俺は静岡の実家。涼しいぞ》

 

魁だ。

 

「こっちは寒いけどな」

咲希《どこ行ってるの?》

 

咲希が聞く。そうか、みんな知らないか。

 

「秋田だよ。雪は降ってないけど、積もってるね」

咲希《へぇ、秋田かぁ。美人とかたくさんいるでしょ!》

「さぁな。意識して見たこと無いから」

 

秋田美人ってホントにいるのかな。

 

龍夜《そう言うけどよ、お前妹さんすげぇかわいいじゃん》

 

龍夜が言う。そんなかな。いや、そうかもしれない。

 

「そう、なのかな」

龍夜《そうだって。会ったことあるの俺しかいねぇけどさ》

 

龍夜は1回だけ俺の実家に来たことがある。まだ祖父母も生きていた頃に。

 

海斗《一歌とどっちがかわいいんだ?》

龍夜《おい、それってどっちに対しても傷つくじゃないか》

穂波《一歌ちゃんもかわいいよね》

志歩《けど、一歌いないよね》

 

あ、気付いたか。流石志歩。

 

「あぁ。寒いからな」

志歩《柊くんだけ外いるの?》

「外じゃないと通話できないんだよ」

 

中でもいけるかもしれないけど。

 

龍夜《あれ、前行ったときは中でもできたよな?》

「そうだっけ?じゃあちょっとしてみるよ」

 

俺は歩いて家に戻る。

 

咲希《志歩ちゃん、静岡どう?》

志歩《うん。けっこう静かで、気持ちいいよ》

穂波《へぇ、静岡ってそういう感じなんだ》

魁《結構田舎の方だからな。新幹線の駅から遠いし》

「なんだ、俺を置いて」

龍夜《静岡の話に夢中だったな》

 

俺が話してないとこうなるのか。けど、聞いてるのも楽しいな。

 

「富士山は見えるのか」

魁《見えない。そんな近くないし、あと別の山で見えないな》

海斗《静岡でも見えないんだな》

龍夜《こっから富士山見えてるよ》

咲希《どこにいるの?》

穂波《スカイツリー。りゅうくんと2人でいるんだ》

「スカイツリーからって富士山見えんだ」

龍夜《見えるぞ。ぼんやりとだが》

「さすがに龍夜以外は見えないもんな」

 

俺は家の中に入り、今に入る。一歌がストーブの横で唯菜と話していた。

 

「おっ、終わった?」

「いや、一歌に会いたいって声があってね」

 

そう言うと、一歌はむくっと起き上がり、俺の左後ろから顔を出した。

 

「聞こえてるか?」

魁《おう。家の中に入ったのか》

 

意外と聞こえるもんだな。

 

「一歌もいるぞ」

咲希《一歌ちゃん!》

「咲希。どこいるの?」

咲希《群馬の水上ってとこ。海斗と一緒に帰省してるんだ!》

 

海斗たちも帰省か。

 

龍夜《あれ、凪紗いないのか》

「なぎ、お呼びがかかってるぞ」

「ほえ?」

 

なぎが俺の右側から顔を出す。

 

「あ、龍夜さん!」

龍夜《久しぶり。大きくなったなぁ。大学生?》

「はい。大学4年です」

龍夜《そうか。卒業も近いんだ》

「あんまりナンパっぽくするなよ」

龍夜《ははは、すまん》

 

みんなも画面越しに笑っていた。

 

「じゃあ、そろそろ終えるか」

魁《あぁ。じゃ、またな》

 

俺はビデオ通話を切った。

 

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