帰省もあと1日になった。
こっちにいる間、そこまで何かやったわけじゃないが、久しぶりの帰省はやはり楽しかった。
「柊くん、お隣さんだよ。風那だってさ」
「風那?分かった」
俺は玄関に行った。
風那って、こっちに住んでたんだ。
「はーい」
「あ、こんにちは」
風那。
俺より2つ年下の元隣人。
こっちにいたときはよく遊びに来ていたが、結構前に会わなくなった。
「元気か?」
「うん。あ、帰省してるんだよね」
風那はレジ袋の中から何かを取り出す。
「お土産。首飾り」
黒を基調とした勾玉のような物がついている首飾りだった。
「いいのか?」
「もちろん。私とお揃いだよ」
風那は緑色の同じ形をした首飾りを出した。ただ緑という訳ではなく、キラキラしている。何か波のような模様も入っているし、デザインは気に入った。
「ちょっと休んでけ。寒いだろ」
「けど歩いて10分くらいだから」
「いいって。唯菜たちと話してけって」
風那は少し悩んだが、頷いて上がった。
「あっ、風那ちゃん。おいで!」
唯菜がストーブの前に呼ぶ。
「風那ちゃん、久しぶり」
「うん。久しぶり」
風那は唯菜と話していた。すると、一歌が俺の横に来て言った。
「柊くん、風那さんってあんな話し方なの?」
「やっぱり違和感あるよな。昔は違ったんだ」
俺は風那に聞こえないように和室に移動した。廊下を歩き、少し歩いて和室につく。
「それで、話し方……」
「あぁ。最後に話したのは多分13~14年くらい前なんだけど、その時は誰より明るかったんだ」
「柊くんって、こっちに住んでたことあるの?」
「小学3年生までね。もう19年前だ」
風那のことを、俺は1つずつ順を追って説明していった。
「風那は幼い頃に両親を亡くしてね。確か2歳の頃だったかな。それから祖父母に育てて貰ってた」
「ご両親を……」
一歌は悲しそうな顔をした。
「その祖父母と俺は結構仲がよくてね。小さい頃はよく遊びに行ってた」
俺は一歌が落ち着いてから、次の話をした。
「けど、その祖父母も風那が14歳の頃に亡くなった」
「今って、風那さん何歳なの?」
「26だよ。俺の2つ下」
今から12年前になるか。
「祖父母が亡くなってから1ヶ月程度は俺の母親が行ってたんだけど、それからは変わりの義母が来た。親戚だったかな」
これから先の話をするのはすこし気が引けるが、しておこう。
「その義母が酷くてね。受験の時期だったのもあるんだろうけど、完璧主義で、上手くいかないとすぐに暴力だった」
「……今は……?」
「なんか義母の方が高校に入ってから元の家に戻ったって聞いたけどね。詳しくは分からない」
一歌は何かをひらめいたように言った。
「じゃあさ、今いる可能性も……」
確かに。把握してないんだから、今いる可能性もある。そう考えると、まさか……
俺は今に急いで戻った。悪いことが起きそうで。
「唯菜!風那は!」
「え?さっき邪魔しちゃ悪いって帰ったよ?」
「どっち行った」
「右」
やっぱり。風那の家は左なはずだ。右に行くはずがない。
「ありがとう」
俺は家から飛び出た。
近くの崖になっている場所に着いた。風那は崖の先端に立ち、拳を握りしめていた。
次の瞬間、風那は1歩前に出た。あと少し前に出たら、ホントに落ちてしまう。
俺は風那の手を取り、俺の方に引っ張った。
「えっ」
「死のうとするなよ」
「だって……叔母さんが……」
やっぱり。一歌の予想通りだった。
「……金はあるのか」
「え?あ、うん」
「ついてこい。家で財布と荷物まとめてこい」
俺は風那を帰り道に寄せた。死のうとするからだ。
俺が家に着くと、一歌が玄関で待っていた。ただ、いつものとは違うだろう。
「大丈夫だった?風那さん」
「あぁ。このあともう一回こっち来るから」
俺がそう言うと、後ろからスーツケースと大きめのリュックを持った風那が来た。
「あ、風那」
「来たけど……何するの?」
「明日出発するから。ここにいろ」
「え……」
「あの、風那さん。一緒にいましょ?」
「うん……」
風那と一歌は2人で2階に上がっていった。
なぎと唯菜に事情を話すと、2人とも2階に上がっていった。多分励ましに行ったんだろう。
俺は下であの4人が来るのを待つと同時に、叔母さんが来ないか見ていた。