翌日、また学校に行くと、A組からみのりが出てきた。俺はみのりに気付き、その場に止まった。
「おはよう、みのり」
「おはようっ!」
みのりは歩こうとする俺の手を掴んだ。
「昨日はありがとう」
「あぁ、いいよ」
みのりは手を離した。お礼したかっただけなんだろう。
俺はまた1年C組に向かった。休みの時間はほとんどC組にいた。
「おはよう、一歌」
「おはよう。明日だね」
おそらくレッスンのことだろう。場所はもう決まってるし、問題ない。
「そうだな」
俺は一歌の隣に行って、一緒に話した。
そして、ついにレッスンの日になった。俺が待ち合わせ場所につく頃には、もうみんな着いていた。
「遅かったかな」
「大丈夫だよ。行こ」
一歌は俺の真後ろをついてくる。俺はレッスンの場所に歩いて向かった。
「柊くん、手繋ご」
言ってきたのは一歌……ではなく、志歩だった。
「え?」
「なに」
「あぁ……手、繋ぐか」
志歩がこんなことをしてくるのが以外で、少し戸惑ってしまった。
「柊くん、私とも」
「しょうがないな」
俺は一歌とも手を繋いだ。
レッスンの場所は、会社の空き部屋。防音も効いていて、丁度良かった。
「よし。俺は甘く練習はしないよ。厳しく、ね」
「うん」
俺は全員の音を出させた。
「みんないい音だね。じゃあ最初から通そうか」
「MEIKOのパートは」
今からやるのは「流星のパルス」という曲。MEIKOが歌う箇所が数回ある。
「じゃあ、一緒にやろうか。一歌、ボーカルに専念して」
「分かった」
「志歩は、ベースをギターに寄せて。キーボードは音量調節、ドラムは拍に合わせて。じゃあ、いくよ」
俺はギターを持ち、一緒に練習を始めた。
4時間ほどやっていただろうか。朝から始めた練習は、気付いたら昼間になっていた。
昼食もまだだし、とりあえず昼食でも採ろうか。
「そろそろ昼ご飯食べようか」
「どこに行くの?」
「そうだな……会社の食堂でいいかな」
「私はいいよ」
穂波は笑顔で言った。
「私もいいよ!ね、いっちゃん」
「うん。私もいいよ」
「みんながいいんだったら……」
「決まりだな」
俺は会社の食堂に向かった。結構レパートリーがあって、いい食堂だ。
もちろん、俺が社長だからか、食堂にいた社員たちは急に姿勢を良くした。一歌たちはそれに少し引いていたが、俺が話題を逸らしたことで、どうにか平常に保てた。
「一歌、何食べる──」
「焼きそばパン」
「おう、早いな……」
「じゃあ私はアップルパイ」
各自好きな物を頼んでいく。
「私もいっちゃんと同じの!」
「柊くん何にするの」
「俺?味噌ラーメンとかかな」
「じゃあ私も」
志歩は俺が頼んだ物にそろえた。俺が決めたみたいでいやなんだが。
「柊くんって、なんか免許持ってるの?」
「なんだ、急に」
穂波が聞いてきた。
「なんかそういう顔してたからさ」
「えっと、全部言うか?」
「うん」
「うん」と答えてしまったこと、後悔するだろうな。
「数学教員免許、危険物取扱者免状、第一種電気工事士、認定電気工事従事者、電気取扱者、普通二輪免許、大型二輪免許、中型免許……このくらいか?」
「うわぁ、ものすごいもってるじゃん」
志歩が少し引いてしまった。いや、引かないでくれ。頼むから。
「じゃあ、バイク持ってるってこと?」
一歌が言った。すると咲希が
「え、バイクの免許なんて言ってたっけ?」
と言った。言ったわ。最後の方に言ったわ。多分覚えてるの一歌くらいだけど。
「バイクの免許は持ってるぞ。2人乗りも一般道だったらできる。高速はあと1年足りないから」
「決まりあるの?」
志歩が聞いた。
「一般道での2人乗りは普通二輪免許か大型二輪免許をとってから1年、高速道路は免許取得から3年必要だ。俺はまだ一昨年取ったばっかりだから」
すると、志歩が目を輝かせて俺を見た。一歌は目を輝かせるどころか、テーブルに身をのりだしていた。
「……じゃあ、いつか連れてくよ。ツーリング」
「やった!」
一歌は声を上げ、志歩は笑った。