「ね、電車で行かない?」
俺が富士駅の前を通ろうとしたとき、彩花が言った。
「まぁ、いいけど」
「じゃあそうしよ」
彩花は車を止めるとすぐに車から降りた。そんなに電車が好きだった訳でもないはずだが……
取りあえず降りた俺たちは、彩花に連れてかれるままホームに行った。次は14:34発島田行き。
「彩花、急にどうしたんだ?」
「なんか、電車旅してみたかった」
「なんかゆっくりしたかったってこと?」
志歩がそう聞くと、彩花は頷いた。
「まぁいいけどさ。ほら、来たぞ」
俺たちは電車に乗った。
イオン清水に着くと、彩花や志歩の行きたいところについていった。服を買いに行ったり、少し買い物したり。
今は志歩の新しい服を探しているところだった。普段着で、軽めな感じがいいらしい。多分志歩の性格上、かわいいのは好きじゃないだろう。
「志歩、こんなのどうだ」
俺は志歩を呼んで、俺が選んだ服を見せた。
「ロゴ派手じゃない……?」
「そうか。じゃあ彩花のとこ行ってな。あいつだったらいいの持ってくる」
志歩は彩花のところに行った。俺にはファッションセンスはないし、彩花の方が圧倒的にファッションセンスはある。
「志歩、ねぇ」
あんまり分からないからなぁ。やっぱり柊みたく長い時間いた方がいいのだろうか。
結局、服は見つからず、俺たちは昼食のためにフードコートに行った。全員ラーメンで、志歩も幸せそうだった。
「志歩、おいしいか」
「うん」
志歩は静かに答えた。静かに食べたいんだろう。
「あと少しだからなぁ、こっちにいられるの」
「え、そうなの?」
彩花が言った。志歩は黙々と麺をすする。
「あと今日入れて2日だからな」
「そうなんだ」
俺たちはラーメンをさっさと食った。
家に着いたあと、俺と志歩は2人で部屋にいた。夜になっても同じ部屋にいたが、少し気まずい空気。なんでだろう。
「志歩、なんかあったか?」
「ううん。魁こそ、何かあった?」
「なにもない。じゃあ、寝るよ」
俺は電気を消した。同じ布団に入るのもあって、流石に両方とも無愛想にはしない。
「ん……」
志歩が俺の胸に顔を埋めた。
「志歩?」
「寒い……」
起きてたのかよ。寝ぼけてんだったら別だけど。
「あったかくしろよ」
「じゃあ……」
志歩は俺のことを抱きまくらにして眠った。
「まったく……」
翌朝、帰る準備をし始めた。1週間くらいしかいられなかったが、彩花も嬉しそうだったし、なんか満足だ。
「志歩、荷物まとめとけよ」
「ん。しばらく練習もしてないし」
志歩はスーツケースに着替えをまとめ、2階に行った。
「着替えの準備するから、入らないでよ」
「分かった」
俺はリビングに行った。って、着替えだったらもうまとめたんじゃないのか?
「あと志歩が入れてない物……あ、フェニーくん」
フェニーくん、そういえば入れてないよな?ってことは……
「フェニーくん取りに行ったな」
そう思っていると、志歩が戻ってきた。フェニーくん1つを両手で持って降りてきた。
「ふふ、かわいい」
「志歩、彩花に帰るって言ったか」
「っ!!!」
志歩はフェニーくんを後ろに隠す。あ、そんなに見られたくなかったんだな。
「い、言ってくる!」
「いってらっしゃい」
志歩はフェニーくんをすぐにリュックの中に入れて彩花の部屋に行った。
しばらくして、彩花と一緒に戻ってきた。明日帰るんだし、まだ帰るって言うのは早かったか。
「明日帰るの?」
「あぁ。俺の仕事もあるからな」
彩花はリビングに行って志歩と話していた。すっかり仲良くなったようで、志歩も楽しそうだ。
(よかった。志歩楽しそうで)