実家からは結構すぐに帰った。まぁ顔見せたかっただけだし。
「桜花、ありがとな」
「えぇ。気をつけて帰ってよ?」
「そんな過保護になることないだろ。大丈夫だって」
藤花も見送りに来ていた。ずっと咲希と何か話してたけど。
見送りの言葉が終わると、俺と咲希は車に乗り、手を振った。
「じゃあな、また来年かな」
「うん。またね」
俺は車を走らせた。咲希は後ろで手を振っているようだった。バックミラーから少し見えた。
「咲希、藤花と何話してたんだ?」
「海斗のこと」
俺のことを話すって、なんかあったかな。
「なんて?」
「ちょっとバカなところもあるけどよろしくねって」
「余計なお世話だ」
藤花に言われたくなかったなぁ。俺よりもバカなとこあるだろ。
咲希は笑って席の間から顔を出した。
「けどさ、海斗はかっこいいよ。キーボード上手いし」
「ありがとな。咲希はキーボードどうなんだ、上手いと思うけど」
「もうちょっとかな」
結構上を追求する。それがLeo/needだと思っている。プロを目指してるだけあるんだろうか。
「戻ったら何したい」
「とりあえず練習かな。誰か帰ってるんだっけ」
先に魁と龍夜が帰ってたかな。
「魁と龍夜はいると思う」
「じゃあ志歩ちゃんたち誘ってセカイに行こっかなー」
1人じゃ寂しいんだろうな。まぁ、見れば分かる。咲希は結構寂しがり屋っぽいし。
渋谷の事務所に着くと、事務所の中に龍夜と魁がいた。志歩と穂波は居ないんだな。
「お、帰ったか」
「どうだった、水上は」
「楽しかったぞ。寒かったけど」
咲希は荷物を置いて俺の隣に座った。
「志歩ちゃんたちは?」
「ほなちゃんはなんかバイトとか言ってた」
「志歩は隣の防音室。考え事だってさ」
考え事、か。志歩だと結構重そうなんだよなぁ。
そう思っていると、防音室から志歩が出てきた。手の甲を少し切っていて、血が滲んでいる。
「志歩、どうしたの?」
「……クラスメイトから、ちょっと……」
「志歩ちゃん、それって中等部のときと同じ?」
咲希がそう聞くと、志歩は頷いた。
「志歩、そのやり取りって残ってるか?」
「あ、うん……」
「龍夜、ここから発信元って辿れるか」
「まぁ、できないことはない。僅かなラグとかから」
魁がUSBで繋げ、龍夜はノートPCで発信元を調べ始める。
「志歩、あとは俺たちに任せろ。海斗、志歩のフリしてやりとり続けてくれ」
「任せろ」
俺は志歩のスマホを借りてやりとりを始めた。口調は多分大人しい方か。刺激しないようにしないと。
〈ねぇ、聞いてる?〉15:02
〈ごめん。聞いてる〉15:18
俺は返信した。すぐに既読が付いた。
〈じゃあ、分かるよね。あんたがしてること〉15:19
少し遠回しに内容を言わせた方がいいか。
〈どのこと?〉15:20
これで聞きたいことを1つずつ聞いてくるはずだ。
〈あんたがさ、みのりたちと仲良くするの、やめてって〉15:22
みのり、か。多分知り合いかな。
〈クラスメイトだから〉15:24
〈そういうの、ムカつく〉15:25
相手がそう言うと、龍夜が俺を呼んだ。龍夜は少し笑っている。
「発信元特定完了。近いね」
地図上に表示されたのはここから200mくらいのところにある店。友達と一緒に居るだろう。
「魁、現地調査」
「はいよ」
魁はすぐに出て行った。志歩は咲希と話して少しずつ落ち着いてきた。咲希、いいぞ。
「結構理不尽な怒りだ。自分勝手みたいな」
龍夜も見てるし、分かってるはずだ。
「少し様子見ようか」
俺は龍夜に言われて、やり取りを続けた。
〈そんなこといわれても〉15:29
〈なに、私が悪いって言うの?〉15:32
おう、少し熱くさせすぎたか。
〈私にも非はあると思う。でも、仲良くした方がいいから〉15:34
〈あんた仲良い人たちいるじゃん。星乃さんたちだっけ。あんた嫌われ者なんだから、それでいいじゃない〉15:37
〈っていうか、その人たちにも嫌われてるかw〉15:38
許せない。なんだこの言い方は。
「うるせぇな、こいつ。もうやるか」
龍夜は魁に連絡を飛ばした。内容は「捕まえろ」だった。
数分後、さっきまで俺がやりとりしていたところに連絡が来た。
〈捕まえたぞ〉15:45
〈サンキュ〉15:47
俺は志歩にスマホを返した。もうこれで大丈夫。
「志歩、お前にはたくさんの味方がいる。STARNIGHT、Leo/needとかな。なんかあったらいつでも言ってね」
志歩は俯いたまま頷いた。