バーベキューが始まると、すぐに龍夜は焼きそばを作り始めた。鉄板でへらを使って本格的だ。
「龍夜、焼きそばも作れるんだ」
一歌が言った。まぁ、一歌と龍夜はそんなに会わないからな。
「作れるぞー。もう少しだからな」
俺は一歌の前に紙皿を出した。焼きそばだったし。もしかしたら焼きそばパン目当てかな。
「柊くん、コッペパンある?」
「あるよ。ちょっと待ってて」
俺は反対側からコッペパンが入っているタッパを取り出した。一歌の前に出すと、一歌はコッペパンを取り出して切り始めた。
「やっぱり焼きそばパンか」
「美味しいよ?」
一歌はコッペパンを俺に渡す。俺も食えってことか。
「美味しいよな、焼きそばパン」
俺は紙皿にコッペパンを乗せる。
「お前ら準備早すぎるだろ……ちょっと待て」
龍夜は紙皿の空いているところに焼きそばを乗っけた。一歌は焼きそばをそっとコッペパンの切り込みに入れていく。
「いただきまーす」
俺は紙コップにオレンジジュースを入れて一歌の前に置いた。一歌は焼きそばパンを美味しそうに食べている。幸せそうでよかった。
「一歌、急いで食うと詰まるぞ」
「ふぐっ?」
咥えたままこっちを見る。1つ食べ終わると、一歌はこっちを見た。
「柊くんも食べよ?」
「あぁ。ただ一歌が幸せそうだったから」
「だって、美味しいもん」
一歌はオレンジジュースを飲み、俺は焼きそばパンを食べた。他のみんなは肉とか野菜とかを焼いて食べていた。
コップを一緒に使うのは一歌も俺も躊躇わなかった。口着けた場所で飲んだりもしてた。
「一歌、あーん」
一歌は口を開けた。俺はその中に肉を入れる。ちゃんと冷ましてからだ。
「もぐっ」
かわいかった。一歌が食べてるときってこんなにかわいかったっけ。
「柊くんも、あーん」
俺が口を開けると、マシュマロを口の中に移した。一歌が咥えてたものだったのもあり、少し恥ずかしかった。口移しだったし。
「おーい、イチャイチャするなよ~」
海斗が言う。イチャイチャしてるのは一歌のほうなんだけどな。
「だめ?」
「ダメって言えないじゃん」
俺と一歌は抱き合った。イチャイチャするなよって言われたそばからしてる。
「ほら、肉焼けたぞ」
「志歩、食べるか」
魁が聞く。志歩は頷いて魁が紙皿に乗せる。
「いっぱい食えよ~」
「一歌も焼きそばパン以外も食べろよ?」
「分かった」
一歌は肉を鉄板の上にのっける。焼きそば以外に食べようとしたのは肉だったか。
バーベキューが終わると、8人で雑談する時間になった。珍しい組み合わせでの演奏もあり、8人で話す時間が必要だった。
「志歩って歌得意?」
「そんなかな。一歌ほどじゃないし」
一歌はやっぱり歌得意なんだな。聴いているだけでそう思えてくる。
「私も歌は得意じゃないよ」
「穂波も得意じゃないんだ。上手いイメージあった」
海斗が言う。穂波は確かに上手いイメージがあった。見かけによらないな。
「じゃあ教えてあげないとな」
「龍夜も歌はできるもんな」
「ある程度は、な」
STARNIGHTは以前にみんなでカラオケに行って歌を練習していた。それのあって歌が上手い人は多い。
「じゃあみんな練習行こうか」
「教えてね、柊くん」
4人ずつのさっきのグループに分かれた。
俺と咲希が意外と話していたり、志歩と龍夜が思ったよりも仲が良かったりと、意外な一面もあった。歌を教えていたのは俺だったが。
志歩は「まだ足りないから」と言って、俺と一歌と一緒に部屋で練習した。防音室とまではいかないが、密室であはある。
「じゃあ、早速練習始めるけど」
「うん。よろしく」
歌の練習と言ったって何をすればいいのだろうか。結局数をこなすしかないと言われればそこまでだが、やるからにはちゃんとやりたい。
「何かの曲歌ってみる?」
一歌が提案した。いいかもしれない。
「そうしようか。志歩、何か歌えるか?」
志歩はスマホで調べる。レパートリーが少ないのかな。
「一歌が勧めてくれた曲だけど……」
ミクの曲だった。やっぱり一歌っぽい。一歌は顔を少し紅くした。
「それでいいから歌ってみよ」
俺は志歩の歌声を聴いた。
志歩の声は低音が目立つ。高音も綺麗だけど、やはり低音が印象に残る。
「低音綺麗だね」
「うん。低音重視してみたら?」
志歩は頷いた。これで納得してきたらしい。
あとはそのあと5曲ほど練習し、休憩に入った。
志歩は歌い終わると疲れ果てたようにソファに座った。