俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第52話 終えて

 

 合宿を終え、俺たちは各自帰路についた。が、魁はこの後の仕事のためまっすぐ自宅へ。それもあって俺は一歌と志歩が一緒に乗っていた。

 

「志歩、柊くんと帰れてよかったね?」

 

一歌が冷やかすように言った。

 

「やめてよ、一歌。恥ずかしいから……」

 

志歩は恥ずかしそう。後ろでなんて会話が繰り広げられてるんだ。

 

「志歩、いいんだよ?」

 

俺は志歩に言ってみる。

 

「だ、だから……もう」

 

諦めたようだ。

俺は龍夜の車についていく。行く場所は魁以外はみんな同じだからだ。

 

 サービスエリアで休憩をする。魁はもう休憩なしで先に帰った。それ以外の7人で小休憩。

 

「なんか小腹空いたな」

「あそこにたこ焼きあるよ!」

 

咲希が指を指す。色んなものを売っている店があり、俺たちはそこに向かった。他には焼きそばや焼き鳥、ラーメンもあった。

 

「みんな何にする?」

「私焼きそばにしようかな」

 

一歌が言う。

 

「私はたこ焼きかな」

「じゃあ私もほなちゃんと同じの!」

 

俺は志歩の横に行って聞く。

 

「志歩は?」

「味噌ラーメンかな」

 

俺は受付に行って全員分注文した。

外にあるテーブルでみんなで食べた。まだ時間はあったし、ゆっくりみんなで話ながら食べていた。

 

「明日ってみんな仕事?」

「俺は休みだよ」

「俺も」

「俺は休み取った」

 

海斗だけは少し違うが、みんな休みだった。

 

「じゃあ魁以外はみんな休みなんだ」

「まぁな。ただ、君らのご両親が心配するからな」

 

それもあって早く帰ることにした。俺はこのあと別の場所に行く用事があるし。

石山海里という俺の幼馴染みで、今はシンガーソングライター。愛知に住んでるとか言ってたから行ってみようと思った。

 

 渋谷の事務所に着くと、一歌たちを降ろし、解散した。俺はそのあと中野の家に帰り、留守番を頼んでいた風那と交代した。

 

「ありがとな、風那」

「ずっとネカフェだったからね。ちゃんと寝れたよ」

 

部屋は俺がいたときより綺麗になっている。やはり日本人の性だろうか。元の状態より綺麗にして返す。これがふさわしいくらい綺麗だ。

 

「じゃあ、私はもう戻るね」

「いや、また留守番を頼みたい。明日から海里のところに行くから」

 

風那は喜んだ。寝心地いいんだろうな、ネカフェよりかは。

 

「今日は俺と一緒に寝て、明日から2日間留守番頼むよ」

「任せて!」

 

風那はキッチンに行って夕食を作り始めた。食材も俺がいたときの食材を使ってくれている。消費期限切れで捨てるより全然ありがたい。

 

 その日の夜、風那とは違う部屋で寝た。というより、床で寝た。明日は朝が早いからだ。

翌朝3時半、俺は置き手紙を書いた。

 

 もう4時くらいに出たよ。

また2日間留守番頼んだ。ごめんね、大変だよな

愛知のお土産買ってきてやるから許してくれ

あと、冷蔵庫のものなるべく使ってほしい。遠慮しなくていいから。

じゃあ、また3日後。2泊3日だから。

 

俺は家を出て、朝早い中野駅に向かった。

外は蒸し暑く、暗い。1番嫌な気候で、ジメジメしていて暗く、汗ばむ。

ルートは、STARNIGHT3人で行くのもあって共通。新宿まで総武線で、新宿から山手線で品川、京浜東北線と横浜戦を乗り継いで新横浜、新横浜6:00発ひかり533号広島行きで名古屋へ。魁は仕事で無理だったが、俺たち3人は行けた。龍夜と海斗はただの付き添いだが。

 

「お前に知り合いなんていたんだなー」

 

海斗が俺にからかうように言った。

 

「知り合いの1人や2人くらいいるわ」

「人との関係拒絶してるような奴がな」

 

龍夜ものってきた。こいつら、言わせておけば……

 

「お前らだっていないだろ、知り合い」

「俺はいるぞ。実家に帰れば姉妹が待ってる」

「俺も穂波が居るし……」

 

2人ともいない感じだな。だってどっちも身内じゃないか。

ひかり533号は最速の「のぞみ」ではないものの、朝早いからか名古屋には先に着いてくれる。海里の家は犬山の方なため、集合は名鉄名古屋。JR名古屋からしばらく歩く。

 

 名鉄名古屋で海里と合流し、俺たちは一同喫茶店へ。海里からしたら知らない人が2人いるが、以外とフレンドリー。

 

「へぇ、君たちは柊のバンドメンバーなんだ」

 

クールでおとなしい声をしているのが海里。結構クールで昔からモテてる。

 

「海里さんはシンガーソングライターでしたっけ」

 

龍夜は敬語で話しかける。

 

「そうだよ。あ、敬語は外してもらって構わないから」

 

優しい口調で、女を虜にしてきたんだろうか。

 

「柊は相変わらずモテてるかい?」

「モテてるね。ガールズバンドの子とはカップルみたいだもんな?」

「まぁな。海里もモテてるのか」

 

海里は両手を横にして言った。

 

「そうだね。ただ、告白が多くて困ってるよ」

「贅沢な悩みだこと」

 

俺が言うと、海里は「そうかい?」と笑いながら言った。

 

「ん、柊。ケータイ鳴ってるぞ」

「あ、ホントだ」

 

俺はケータイを取り出す。志歩からのメッセージで、「志歩から写真が送信されました」と表示されていた。俺は3人に席を外すことを伝える。

 

「ごめん、ちょっと連絡してくる」

「あぁ。いってらっしゃい」

 

俺は志歩から送られてきた写真を見た。写真をタップして大きくする。写真をちゃんと見てなかったが、志歩の顔はあったような。

志歩からの写真を見ると、そこには上半身の服を脱いで、ブラジャー姿でいる志歩が写っていた。俺はあたりを見渡して、誰もいないことを確認してから返信した。

 

柊〈志歩、なんだこの写真は〉8:01

志歩〈ベースの弾き方を聞きたいなって思って〉8:02

 

気付いてないのか?写真送り間違えてるが。

 

柊〈送る写真間違えてないか?〉8:02

 

俺が志歩に聞くと、すぐに写真は消えてTAB譜の画像と志歩が弾いている様子の画像が送られてきた。

 

志歩〈どうすればいいかな〉8:04

柊〈さっきのは?〉8:04

志歩〈一歌と咲希に下着のこと聞いたときの写真〉8:07

 

少し慌てたな。返信が遅かった。

 

柊〈それでベースのことだけど、多分それ左手の位置もう少し下じゃないかな〉8:08

志歩〈ありがとう〉8:09

 

志歩の下着、初めて見たな……

俺は3人がいる席に戻った。3人は仲良く話していた。

 

「おっ、戻ったか」

「柊のバンドSTARNIGHTっていうんだってね。いい名前だね」

 

海里が言う。

 

「ありがと」

 

海里は書類を机の上に出して言った。

 

「これなんだけどさ」

 

書類には「石山海里と演奏したいバンド募集」と書かれていた。

 

「演奏したいバンドか。この辺にいないのか」

「結構ガチなところが多くてね」

 

そうか。ガチすぎて参加できるわけがないって感じか。なんかかわいそう。

 

「俺たちも検討してみるよ。海里も知名度はあるし」

「ありがとう。助かるよ」

 

STARNIGHT全員で立ち上がり、喫茶店をあとにした。

 

「じゃあな、海里」

「また明日、犬山駅でいいかな」

「もちろん。明日の9時な」

 

俺たちは喫茶店から出てホテルに向かった。

 

 

 

 【幸山魁視点】

 

 仕事なんて、そんなの嘘だった。

柊が知り合いのところに行くのを俺は知っていた。どうせ柊は一歌がいないと本気出さないんだろうと思い、俺は先に戸塚に帰って「青春18きっぷ」を買っていた。まぁ、在来線しか使えない切符だが、5回分入っている。

今回は俺とLeo/needの5人で1回使って終わりだが、帰りも買えば別にどうってことない。

 

「お待たせ、魁」

 

志歩が1番最初に来て、そのあとすぐみんなが集まった。早朝から出発してもよかったが、朝起きるのもいやだろうし、朝は8時頃の出発にした。

 

「柊くん何してるんだろうね」

「どうせ一歌がいないから本領発揮してないな」

 

みんなも早く会いたそう。いや、穂波や咲希からしたら龍夜と海斗に会いたいだけか。

 

「そうだ、志歩。柊に怪しまれないように連絡してくれよ」

「分かった」

 

志歩は連絡を送ってくれる。もう湘南新宿ラインのホームにいるため、余裕はないけど。

しばらくすると、志歩が顔を真っ赤にした。え、連絡するだけでそんなになるか?

渋谷からは8:05発の湘南新宿ライン東海道線直通、快速小田原行きに乗った。休日ダイヤで、人はほとんど観光客らしき人だけ。

志歩は乗ったあとも少し連絡していた。終わると深呼吸して俺にもたれ掛かった。

 

「柊くん今頃何してるんだろう」

「もう知り合いと会ってると思う。新幹線は朝早いので行ったし」

「……送る画像間違ってた……」

「え?」

 

一歌と咲希がニヤリと笑う。穂波はキョトンとしていた。

 

「前の下着の写真?」

「……」

 

図星だったんだろう。そんな写真撮ってたのか。

 

 大崎に8:12、横浜8:30、大船8:49、小田原には9:27に到着。そのあとすぐにやってくる9:31発東海道線普通熱海行きで熱海へ。

 

「魁、柊くんと合流するのどこにする?」

「あ、確かに」

 

そんなこと考えてなかった。

 

「私連絡しようか?」

 

一歌が言う。

 

「じゃあそうしてくれるかな」

 

一歌は連絡してくれる。一歌がやったら違和感もないだろう。

 

 熱海には9:54。そのあとすぐに10:00発東海道本線普通静岡行きに乗り換える。座るために静岡までではなく、途中の興津までにする。

 

「柊なんだって?」

「柊くんまだ見てない……忙しいのかな」

 

心配そうにする。

 

「大丈夫だよ。柊なんだし」

 

電車は10:58に興津に到着。11:03発東海道本線普通浜松行きに乗り換える。

12:34、浜松に到着。お昼くらいのため、俺たちは昼食にした。

駅から出て、そばを啜る。一歌は咲希と一緒に食べていて、穂波は2人のお母さんみたい。

 

「ほなちゃん、これ長くない?」

「ほんとだね。一歌ちゃんのそれも長そうだよ」

 

3人で話しているのを見ると、俺と志歩は笑ってしまう。

 

「元気だな」

「うん。まぁ、咲希らしいかな」

 

結局それで済んでしまう。仲が良い証拠だ。

 

 昼休憩をはさみ、13:39、東海道本線普通豊橋行きで豊橋へ。豊橋に14:14に着くと、14:20発東海道本線新快速大垣行きで名古屋へ。柊が待ってるはずなんだけどな。

 

「一歌、なんて送ったんだ?」

「15:15にJR名古屋駅を出発する東海道本線にSTARNIGHTのポスター貼ってあるよって」

 

それで柊が来るかな。

 

「柊くん、それで来るの?」

 

志歩が聞く。心読んだのか?

 

「柊くんだったら来るよ。きっと」

 

一歌と柊の気持ち、みたいな感じなんだろうか。

15:12、新快速大垣行きは名古屋に到着。柊は1番後ろのドア前にいた。

 

「柊くんいたよ」

「ふふっ、一歌ちゃん、嬉しそうだね」

 

穂波の言うとおりだ。今までと全然違う。

電車から降りると、一歌は走って柊のところへ。柊は一歌を受け止めてくるっと一回転。勢いがすごかったのか。

 

「あれ、みんないるんだ」

 

龍夜と海斗も来た。穂波と咲希が磁石のように引きつけられる。

 

「海斗!」

「なんだ、来てたんだね」

 

15:15、来た電車が出発する。

 

「なんで来たんだ、君ら」

「どうせ一歌がいないと本領発揮できないだろ?」

 

一歌は柊にピッタリくっついている。柊は無意識に撫でてるけど。

 

「それもそうだな。じゃあみんな、ホテル行こうか」

 

8人でホテルに向かうため、俺は引き続き東海道本線を西に向かう。

15:30発快速米原行きで岐阜へ向かう。岐阜がホテルの最寄りらしい。

 

 15:48、岐阜に到着。俺と志歩は飛び入りだったためホテルが岐阜で取れず、岐阜の近くである笠松という駅まで行き、近くのホテルで泊まる。

 

「じゃあな、また明日、犬山で合流でいいか?」

「いいよ。時間だけ教えてくれれば」

「朝9時。頼むよ」

 

俺は柊たちと分かれて名鉄岐阜駅へ。

笠松駅はミュースカイ以外は止まる駅で、名鉄岐阜からもいける電車が多い。

 

「一歌たちと一緒の方がよかったか?」

「いや、魁と一緒だったらいい」

 

志歩は冷静に言う。嬉しいな、そう言ってもらえると。

16:02発特急中部国際空港行きで笠松へ。

笠松には16:06。ホテルまで10分ほど歩き、俺は志歩と同じ部屋のため、部屋に荷物を置くと志歩の用意を手伝った。

 

「やっぱりあの2人は一緒じゃないとね」

「そうだよ。あいつらは一緒がいい」

 

俺は志歩の隣に座った。

 

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