一歌が路上ライブに行った。
俺はそれを見送ると、近くを散歩し始めた。近くで路上ライブをやっているところがあり、たまには行ってみようと思ったからだ。
「お、やってる」
俺が聴いていると、となりに聞きなじみのある声が聞こえた。
「へぇ、柊くんも聴くんだ」
「あぁ」
それにしてもこの人の演奏、すごく心が引き込まれる。今まで考えていたことを全て忘れ、全てこの曲に意識がもってかれていた。
「ありがとうございました」
演奏が終わってしまった。すると、その人は志歩に寄っていった。
「ありがとう、聴きに来てくれて」
「うん。いい演奏だった」
恐らく俺は邪魔になるだろう、と思い、その場から離れようとした。
「待って」
演奏していた人に呼び止められた。
「俺か……?」
「日野森さんと話してたから」
知り合いだったりしたか。
「あぁ、志歩のバンドの指導、みたいな感じ」
「じゃあ、仲良いってこと?」
そう考えたことは無かったな。ただ、一緒に練習してて楽しいからな。
「そういうことだ」
「そっか。私も、仲良いんだよ」
「そうか。話してあげてくれ」
俺はその子に言った。
「柊くん、どうしたの」
「ん?あぁ、この子と話してたんだよ」
「日野森さん、よかったね。仲良い人が増えて」
志歩は不思議そうな顔をして、首を傾げた。
「じゃあ、俺はもう行くから。じゃ」
「また聴きにきてね」
「もちろん来るさ」
俺は家に帰った。あの子、志歩と仲がいいのか。
家に帰ってしばらくすると、一歌が戻ってきた。もう一歌の家と化しているが。
「おかえり」
「ただいま」
一歌はクールな返しをした。
「疲れたから、いい?」
「ん?あぁ、いいよ」
俺は一歌を膝の上に乗せた。見た目とは裏腹に、結構2人のときは甘えてくる。そういうところが可愛いのだが。
「一歌、髪サラサラしてるな」
「そう?」
「いいじゃん」
「ありがとう」
一歌のことを撫でながら言った。一歌って、ホントにかわいい。
しばらくしてから、俺は一歌と練習を始めた。かれこれもう4時間は俺と一緒にいることになる。
「柊くんってさ、路上ライブやったことある?」
「あるよ。2回だけ」
高校生のときだけ。バンドを辞めてから、どうしても諦めずにいたから路上ライブをやった。
「じゃあ経験は結構あるの?」
「まぁね」
「だからそんなに上手いんだ」
そう言われると照れてくるが。
「だって、柊くんギターのこと何でも知ってそう」
「そんなことないよ。一歌も上手いしさ」
お互いに褒めるだけのものになってしまった。
「じゃあ、始めるか」
「うん」
俺はギターをもってきて、一歌と練習を始めた。
「よし。やろう」
「うん」
俺たちは練習を始めた。結構長くなると思うが、それはそれでいい。
3時間ほど続けたが、もう暗くなり始めていたため、俺は一歌を帰らせた。一歌が帰ってしまうのは残念だが、暗くなってからだと危ないから。
「じゃあな。また明日、会社で」
「うん。またね」
一歌は手を振って出ていった。
俺1人になった。一歌が居てくれることで、結構楽しいんだよなぁ。今のままだと全く楽しくない。一人暮らしだし、料理もなんもできない。
「穂波が居たらなー」
料理もできて、みんなに優しくしてくれる。声も相まって、まるでお母さんのようだ。
「……寝よ……」
俺はその場で寝てしまった。