俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第58話 ちゃんとした旅行

 

 「柊くん、ここなんだけど」

「あぁ、少し遅くなってるかもしれない。気持ち早めでいいと思うな」

 

「りゅうくん、ちょっと速いかな」

「ううん、そんなことないと思うけどね。まぁ、そう思うんだったら遅くしてもいいかな」

 

「ねぇ、ここって引っ張りすぎ?」

「ベースなんだから引っ張らないとだろ。別に引っ張りすぎてもいない」

 

「ここちょっとアレンジ加えたいんだけど、どうしたらいいかな」

「なら、ここを少し変えればいいんじゃないかな。そうすればもっと曲のイメージが着きやすくなると思うよ」

 

久しぶりの長めの練習時間。俺たちはLeo/needから聞かれたことにそれぞれ答えていた。

 

「ねぇねぇ!なんかみんなで旅行行きたくない?」

 

咲希が唐突に言う。そんな話も何も無かったろ。

 

「随分急だね」

「だって!合宿はやったけど旅行って行ってなくない?」

 

咲希と龍夜がそう言っていると、海斗が咲希の後ろから言った。

 

「スキー行ったろ。冬に」

「あれは私たちがついていったから、今度はみんなで楽しく!ね!」

 

スキーが楽しくないみたいな感じに聞こえなくもないが。

咲希は必死で俺たちに旅行をせがむ。

 

「咲希、魁たちも仕事あるんだから」

「えーっ、行けないかぁ……」

 

Leo/needの悲しい顔を見なければならないのは心に来る。苦しくなってくる。

 

「……10月の三連休全部空けとけ。秋田行くぞ」

「きりたんぽ!」

「お前は食べ物しか頭の中にないのか」

 

咲希と海斗はいつも通りの感じか。これでいいんだけど。

 

「じゃあ、先に言っておく。集合は東京駅、朝6時な」

「うん!」

 

旅行に行きたいのはみんなもなんだろうか。なんか咲希だけな気がする

 

「ホテルとかは?」

「俺の実家使うけど、どうかしたか」

「持ち物とかは?」

 

一歌と穂波が立て続けに聞いてくる。楽しみにしていそうだ。

 

「洗濯してもらえるから、2日分の着替えとあとは汚れてもいい服は用意しておいてくれ」

「何で汚れてもいい服?」

 

志歩が聞いてくる。

 

「多分手伝いがあるから。畑作業とか」

「ま、とりあえず用意しておこう。当日、みんな楽しみだろ」

 

龍夜が聞くと、みんなほぼ同時に頷いた。なんだ、少し嬉しさを隠していただけか。

 

「ほら、とにかく練習するぞ。秋田に行くまでに少しはしておかないと」

 

魁の言葉でみんなは練習を始めた。

 

 

 

 

 

 三連休初日、朝5時半に集合した。海斗と魁が始発で出ても東京着が5:47のため、仕方なくその2人はホームで合流することになった。

5時半、2人を除いた全員が着き、先にホームに向かった。10月7日、今日は三連休初日なのもあり、新幹線も臨時便が出ている。普段は秋田行き始発は6:32発だが、今日は6:00発が始発。

 

「ごめんね、先に向かわせちゃって」

 

海斗がやって来た。その後ろから魁が荷物をひいてやって来る。

 

「っ!」

 

志歩が魁に反応する。何かあったかな。

 

「ん、あぁ、着てきたぞ」

 

魁が志歩に言う。ということは、やっぱり何かしてたんだな。

 

「志歩ちゃん、何してたの?」

「べ、別に穂波には──」

「昨日2人で服を買いに行ったんだ。急に呼び出されて」

 

志歩は顔を必死に隠す。顔が真っ赤なのはバレているが。

 

「いいじゃないか。志歩が選んだのか」

「あぁ。これだったら似合うって言ったからな」

 

さらに志歩は目をそらす。

 

「別に恥ずかしがることじゃないと思うが」

「うっ……」

 

もうやめてやれ、魁。志歩はもう限界だ。

 

「ほら、もう乗るぞ」

 

俺たちは臨時こまち49号秋田行きに乗る。

普段のこまちの場合は盛岡と、盛岡から先までの始発で、仙台までは東京6:04発やまびこ51号が先に着く。そのため、仙台までの始発ではないのだが、臨時49号は東京駅から出る新幹線の始発。どの駅へも東京駅からは始発になる。

ちなみに、飛行機の場合は7:00発JAL161便で行くと早く着き、秋田空港に8:10に到着する。だが、実家からは秋田駅の方が行きやすく、飛行機だと3万円以上かかるのに対し、新幹線は2万円かからず移動できる。8人でも飛行機は24万超、新幹線は16万未満と、8万円以上安くなる。新幹線の方がいいだろう。

 

「秋田駅って何時着?」

「10:03。4時間くらいだね」

 

東京からの最速は秋田行き最終のこまち45号。20:16発、23:53着の3時間37分。俺たちの49号よりも約30分速い。停車駅も2駅多いのもあり、俺たちの49号は遅くなっている。

 

「じゃあ少し寝れるね」

「秋田近づいたら起こすから大丈夫だよ」

「じゃあ、ちょっと寝るね……」

 

一歌は俺の肩に頭を乗せて目を瞑った。

 

「柊、顔がニヤけてるぞ」

「えっ!?そ、そんなことないだろ」

「いや、すごい笑ってた」

 

龍夜に言われて俺はようやく気付く。そんなに俺ニヤけてたのか。

 

「けど、一歌が肩で寝てくれてるから」

「あぁ、幸せだな」

 

ホント幸せだ。もうこれ以上何も望まない。

 

「朝早かったもんな」

「あぁ。俺と龍夜は1本だからそんな早くなかったもんな」

 

4時半に起きても間に合うくらいの電車だ。

 

「ゆっくり寝かせてあげようか」

「あぁ。疲れてるだろうし」

 

一歌をそっと寝かせ、俺はそこから動かずに黙っていた。

 

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