俺の迷い込んだ世界が…… Season2   作:月島柊

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第59話 バンド旅行1日目

 

 俺たちは秋田駅に着くと、すぐに改札から出て旅行先をみんなで話し合った。秋田駅まで来ても行ける場所は多くないが、少なくとも楽しめる程度ではある。

 

「それで、どこに行くんだ」

「行きたい場所があればそこに」

 

秋田駅周辺に行きたいところなんてあるのか、という感じだが。そもそも秋田駅周辺なんて全く来たことがない。全部山の中だったし。

 

「あ、ここ行ってみたいかも。ポートタワーってとこ?」

 

一歌が言った。ポートタワーか。だが、ポートタワーって秋田駅から距離あった気がするけどな。

 

「柊、知ってるか」

「知ってるけど、確か秋田駅から遠いぞ?」

 

一歌が道を調べると、驚愕の数字が出てきた。

 

「1時間50分だって……」

「2時間近いのか……なら、他に──」

 

魁が言いかけた。だが、秋田駅から歩いて2時間ってことは、おそらく……

 

「土崎だな」

「土崎?どこだそれ」

 

土崎は秋田駅から2駅先の駅だ。秋田港に近く、当然ポートタワーも近くなる。

 

「土崎からだったら1時間かからないだろ」

 

俺がそう言うと、一歌がすぐに調べてくれた。調べてみると、俺の予想通りだった。

 

「25分くらい」

「流石秋田の人だね」

 

穂波が言う。このくらい地図を見れば分かった気がするが、もしかして全員方向音痴か?いや、違うはずだろう。特にLeo/needは。

 

このあとの普通電車は10:38発の男鹿行き。男鹿線に向かうが、追分までは奥羽本線各駅に停車する。

 

「ただ30分歩きか」

「遠いには遠いね」

 

龍夜と海斗が言う。それもそうだ。まだ2キロ弱あるのだから、全然遠い。

 

「まぁ1時間以上短縮できただけいいじゃん」

「徒歩時間ゼロにしたいよね」

 

1時間以上短縮できたのは確かに良かった。咲希の言うとおりだ。ただ、その後の声。最近聞いた覚えのない声だ。

 

「あれ、柊の妹さんじゃないか」

「どうも、龍夜さん」

 

何でここになぎがいるんだ。どう考えてもおかしいだろうに。

 

「なんでここに」

「なんかポートタワー行くって言ってたからついてきたの。あ、ちょっと待って貰えれば秋田駅から車取ってくるけど」

 

20分くらいかかるんだったかな。それくらいだったら待ってやるか。戻るのを含めても1時間はかからないだろう。

 

「お願いできるか」

「オッケー。土崎の駅で待ってて」

 

なぎは泉外旭川駅で降りた。12分後に秋田行きがやって来る。

 

「車使えるんだ」

「良かったな。というか、なぎと会うのは龍夜と一歌以外初めてか」

「あぁ。かわいいじゃん。ね」

 

海斗が共感を得る。なぎってかわいいのか。いつも一緒にいたからか感じなかった。

 

「妹さん、彼氏とかいるのか」

「知らん。ってか、もらおうとするな」

 

危うく海斗に取られるところだった。

 

「それで、土崎着いたら待ってればいいのか」

「あぁ。1時間かからないだろうし」

 

12分後に電車が来て、10分かからずに戻り、車で20分。1時間はかからないだろう。

 

 

 土崎に着き、俺たちは駅前でなぎが来るまで待った。なぎがどれだけ早く来るかは分からないが、10月とは言えども秋田は寒い。今も14℃程度で、暖かくはない。

 

「やっぱり東京より寒いな」

 

龍夜が言う。だが、龍夜は言えるような格好ではなかった。

 

「何言ってんだよ。半袖着てさ」

 

龍夜は下は長ズボンだが、上は半袖。14℃で半袖でいて、終いには寒いなんて。

 

「東京は20℃超えてたから大丈夫だと思ったんだよ。全く大丈夫じゃないが」

「私言ったんだよ?寒いって」

 

穂波が言ってたのに着てこなかったのかよ。

 

「持ってきてるのか?上着は」

「いや……」

 

こいつ、死んだな。今の時期から秋田は寒くなっていくってのに。

 

「頑張れ、龍夜」

 

魁が少しからかうように言う。

 

「氷にはならないようにね」

 

海斗も笑って言う。笑うしかないだろう、こんなの。

 

「うぐ……次は持ってくるからな……」

 

龍夜は風の通りにくいところに移動した。穂波もそれについていった。

 

 

 

 40分ほど待つと、なぎが車で俺たちを迎えに来た。

 

「何人いるんだっけ?」

「8。無理だろ」

「ふふーん、じゃあじゃんけんして。お兄ちゃんも一緒にねっ」

 

やな予感がする。

 

「勝った4人が私の車ね。負けた4人はこのあと30分後くらいに来るゆっちの車」

「待て。唯菜来てるのか」

「出席足りてるらしいよ。ほら、じゃんけんしてっ」

 

ということは負けたらまた寒い中で30分待機ってことだ。

 

「やるか……」

 

俺たちは8人でじゃんけんをした。

 

勝ったのは一歌、志歩、龍夜、そして魁。

 

「なんだ、龍夜勝ったのか」

「面白くないな」

「なんだと!」

 

冗談交じりで言った。30分待機だったら面白かったんだが。まぁ、30分待機になったのが俺なんだが。

 

「じゃあ温かいとこ行こっか」

 

勝った4人が乗ると、なぎはすぐに車を出した。さて、30分待機だ。

 

「さぁ、30分待つか」

「龍夜は行っちゃったからね~」

 

海斗は未だに龍夜をいじる。面白かったが。

 

「というか、その唯菜ちゃんって誰?」

「あぁ、従妹なんだけどな。大学生なんだよ」

「だから来てて驚いてたんだ」

 

あいつ、よく出席足りてるな。

 

 30分後、唯菜が車で俺たちを迎えに来た。

 

「ねぇ、ちょっといい?」

「ん、なんだ」

 

俺が唯菜の横に行くと、咲希と穂波、海斗をそっちのけで俺にぎゅーっと抱き付いた。

 

「何してんだよ、唯菜」

「エネルギー補給。よし、できたからいいよ。乗って!」

 

こいつ、エネルギー補給で人に抱き付くって一体何なんだ……俺だけにしてくれよ……?

 

「どこに行くんだっけ」

「ポートタワー。一歌がもう言ってくれてると思うから向かってくれ」

「はいはーい」

 

唯菜は車を走らせた。ポートタワーまでは数分で着く。

 

「唯菜さん、柊くんと従妹なんですか?」

「ん。そだよ」

「なんか大学生らしいな」

「前こっちに帰ってきてから毎日行ってたから。出席は足りてるの」

 

前来たときって、そんな前でもないだろ。

 

「足りてるんだったらいい」

「ふふーん、でしょー?」

 

そんなことを話していると、すぐにポートタワーに着いた。言ったとおりそこまで遠くなかった。

 

「あ、あれなぎの車だ」

「もう来てたか」

 

俺たちが着くと、なぎたちも俺たちと合流した。ポートタワーの根元あたりで俺たち10人は固まり、頂上へ上る。

 

「ここって結構高い?」

 

咲希が俺に聞いてくる。

 

「まぁ県内だと高い方かな」

「今日晴れてるからねー。遠くまで見えるよ」

 

ポートタワーの頂上まではエレベーターで上がる。10人全員が乗れるくらいの大きさで、頂上まで早く上がれる。

 

「一歌、怖くないか」

「うん、まだ平気」

 

絶叫マシンが苦手な一歌からしたら今回のエレベーターが意外と怖いと思ったのだが、これくらいだったら大丈夫か。

 

頂上へ着くと、ガラス張りの壁の近くに咲希が駆け寄った。みんな高所恐怖症は克服して、ゆっくりではあるが壁の近くまで寄った。

 

「高いね、やっぱり」

「高くなかったらタワーじゃないだろ」

 

魁が咲希にツッコミを入れる。

 

「一歌ちゃん、怖くない?」

「うん。大丈夫だよ」

「一歌、大丈夫なんだ」

「いっちゃん克服したんだね」

 

4人は外を見ながらそんなことを話していた。

 

「私も来たの久しぶりかも」

「そうだね。久しぶりかも」

 

なぎと唯菜も久しぶりだったらしい。

 

 

 

 ポートタワーから降りた俺たちは、昼食のために駐車場まで戻った。次の車はさっき乗っていない方の車に乗った。

 

「なぎ、チャイナタウン行けるか」

「あ、そこ行く?いいよ」

 

俺はなぎに昼食を食べる場所を提案した。秋田に来て食べてみたいものだとチャイナタウンのアレだろう。

 

「チャイナタウンって何?」

 

咲希が聞いてきた。そうか、チャイナタウンって言ってもわからないか。

 

「行けばわかるけど、すごいよ」

「ちゃんぽんなんだけどね、見ると驚くよ」

 

なぎが運転しながら言った。

 

「へぇ、なんかおもしろそうだな」

「うん!ね、ほなちゃん」

「うん」

 

なぎは少しうれしそうにした。

 

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