手違い夢主の彼女たち   作:空下眼子

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少年院編の前にどうしても必要な回。


『宿痾』 その3

 

 昼休み真っただ中で誰もいないグラウンド。随分と早くに来てしまった。

 今回、初めての体育に五条先生が指導してくれるというので私と悠仁くんのテンションが高いのも理由の一つだが、単純に生徒が少なすぎるのだ。

 

『悠仁くん』

『なに』

『朱紅赤の術式を食べたろう、あれを取り出してみてくれ』

 

 さきほどは一年生みんなで食堂のお昼ご飯を食べた後、伏黒くんは二年生に用事があるらしく別行動になったし、野薔薇ちゃん、いや、ウッカリ声に出してしまうと今後それで通し切らないといけない空気になりかねんので、先生以外は全員『くん』づけで呼んでいこう。釘崎くんと……朱紅赤は呼び捨ての方がそれっぽくて良いか。

 二人は高専に顔を出すことのある家柄差別男尊女卑セクハラカスおじさんなどの警戒人物トークに盛り上がっており、二人からの、特に朱紅赤からの好感度の問題でぼっちになってしまった悠仁くんはやることもなくて今に至る。

 

『やりかた分からんけど』

『私に話しかける時、内側に向けている感覚の矛先をあちこちに回し向けて探せ』

『いや、それが分かんねーんだって』

 

 それにしても、朱紅赤が人間の女の子として生活ができているのが不思議だ。中身は絶対にご本家様であるのに、それなりに順応してなんとかやってる。可愛くて推せる。いや、恐らく女の子であろう裏梅と信頼関係がある的な描写をTwitterで見たのは間違いないし、実力があれば生まれは関係ないみたいな価値観は元からお持ちだったのかもしれない。ていうか宿儺自身が死ぬほど迫害されてたと思うし、力こそパワー派にもなるか。納得。解決。

 

『ならば今どうやって話しているのだ』

『勘……?』

『分かった、二秒代われ』

『先生にぶっ殺されん?』

『呪印が出ないようにはする』

 

 一応、サッと見渡してその辺りに先生方がいないことを確かめ、ナクススキャンで悠仁くんの身体を探るだけ探って速攻で引っ込む。

 

『……あった?』

『両腕にある。取り出すには、こう……手を前に持って来て』

「持って来て?」

『手汗をかくイメージで』

「てあせを」

 

 何言ってんだこいつ、みたいな顔をしながらも悠仁くんは素直にやってみてくれる。

 良い生徒だ。素直に言うことを聞いてくれるのはありがたい。

 

『腹から何かを送れ』

「何かってなんだよ」

『祈り……?』

「ナクスも俺と大差ねーじゃん!」

『まだ悠仁くんには呪力と言っても良く分からんだろ』

「まぁそりゃそーだけど」

『どうせ初めてなのだから感覚でいけ』

「ん~~……」

 

 それからボンヤリ五分ほど掌を眺めていると、悠仁くんの掌に波立つような気配があった。

 

「……なんかある? 気がしてきた。あったかい」

『おそらくそれだ』

 

 悠仁くん、難しい理屈には置いて行かれる節があるけど集中力はとんでもないから、スイッチさえ入れば原作にない技術の習得も早い筈。たぶん。

 

「違ったら?」

『何があっても私が治してやるから取り敢えず当たって砕けてみろ』

「あつ……くねぇな。お風呂のお湯くらい。でもこっからどうやって出すん?」

『頑張れ』

「ウソだろ」

『頑張って手汗をかくイメージでひりだせ』

「そんな出産みたいな」

『こういうのは一回やれさえすればなんとかなる』

 

 それから彼は長らく唸って跳ねて座り込んで手を眺めた。

 別に今日できなくても良いのだが、やはり、できるまでやるみたいな集中力の高さと諦めの悪さで念じ続ける。こういうタイプ、教えがいあって好き。

 

 予鈴が鳴って少しして、視界の端から釘崎くんと朱紅赤がグラウンドに出てきたのが見え……、エッ!? 朱紅赤、髪の毛リボンで結ってるんやが!?

 

「スゲー! 炎、手で持て、あっ──」

 

 丁度私の気が逸れたタイミングで悠仁くんの掌が発火、次の瞬間、まさに「あっ」と言う間にコントロールを失ったエネルギーが、パン、とかいう音を立てて両腕を爆発させた。それはもう風船が割れるかの如き儚さである。当然、肘から先の血肉と骨を撒き散らした本人はショックと痛みでその場にぶっ倒れた。え、ごめん。

 

「虎杖!?」

 

 流石に驚いたのか釘崎くんが駆け寄って来たので、彼女がたどり着く前に大急ぎで両腕を完治。

 肉体に意識があった方が必要以上にシリアスな心配をさせないと思い、悠仁くんの代わりに私が表へ出て、何事もなかったかのように起き上がる。

 

「いやぁ〜、びっくりしたな」

「びっくりしたのはこっちだっつーの! アンタ人の体なんだと思ってんのよ!」

「借アパート」

「賃貸ぶっ壊すな!!」

「だから綺麗に治しただろ」

「このっ……、ああ言えばこう言う……! 家主気絶してるわよ。それはどーするつもり?」

「そのうち起きる」

「起きたらアンタのこと二度と信用すんなって言っとく」

「なんとでも言え」

「……虎杖の肉片掃除しなきゃだから、私、先生に伝えてくるわ。朱紅赤、この馬鹿頼む」

「ああ」

 

 釘崎くんは道端のゲロを見る様な目で私を一瞥した後、職員室へ歩いて行った。

 

「…………馬鹿か?」

「そうかもしれん」

 

 朱紅赤もかなりの虚無顔を私に向けているが、単なる私の監督ガバで深刻な空気になってしまうよりは五億倍マシだと思うので安いものである。

 そう。私は計画性がないだけで頭脳派なのだ。みんな信じてくれないが、ちゃんと場の空気とか好感度とかを考えて対処できる頭脳派なのだ。

 

「その顔」

「顔?」

 

 顔、と言われて思わず頬を撫でたものの、顔の凹凸、呪力の流れ。どうやっても悠仁くんの顔である筈だ。むしろ私としてのパーツなどひとつとしてない。表情に呪霊らしさ、邪悪さがないと言いたいのか?

 

「いや、良い」

 

 朱紅赤は何がどうとは言わず、一人で納得したのか腕を構える。

 おっと、この構えは。

 

「開」

 

 躊躇なく術式を撃ち込まれた。

 私はそれを呪力の防壁で受け流す。エネルギーは防壁の表面を滑って何にぶつかることもなく空中で霧散。単純なつるりとした形の盾ではなく、円形にカーブし、攻撃のエネルギーを分散させるための溝がついているのだ。

 

 訝しむように私の盾を眺めた朱紅赤だが、今のは勿論術式ではない。試行錯誤して『こうすればこうなる』を身体で暗記したコマンドだ。

 数学の問題を解くのも、料理の味付けも、ゲームのコマンド入力も、初めてやるには論理的にたくさん悩みながらやるものだが、何度も繰り返せばそのうち深く考えずとも出来るようになる。なんたって呪術は『術』だ。求めたい解が求められる最短の術(すべ)を、気が遠くなるほど研究した。

 

 そう、誰が何と言おうとナクスちゃんは頭脳派なので!

 

「随分と『俺の』とは性質が異なるようだ」

 

 とはいえ実戦経験は皆無。

 戦い慣れているニンゲンから見れば死ぬほどぎこちない使い方だろうとは思う。

 

 現に今も、朱紅赤から振るわれる攻撃に対してそれがどのくらいの脅威で、どのように避ければ効率が良いのかも見当がつかないので、『かわす』というより『当たらない場所へ移動する』やり方になっている。

 現実の格闘技の知識からすればミリ単位でかわすのが理想なのだと思うが、呪力がある以上、触れなければオールOKとは言い切れないし、元の『私』は思い出すまでもなく非戦闘員である。戦場に出ないようにするのが正しい戦い方だ。単純に『殴られそうになる』状況がイヤだ。

 

「ふん、何もかも忘れたというのは本当らしいな?」

「八割九割はナクしてしまった」

 

 彼女は術式を誤魔化しているのか、斬撃にも炎を纏わせている。

 可視化されているので対処しやすくてありがたいが、当たればお洋服まで燃えてしまう、いやん、えっち。とか言ったらブチのギーレェウルトラスーパーデラックスになるだろうから黙っておく。伊勢海老の悲劇は繰り返さない。

 

 

 というか、ちょっと言わせて欲しいが、『呪術』って『呪い(まじない)の術(すべ)』の筈なのに直接戦ってたらおかしくない? 呪い(まじない)っていうのは本来、超常のものから力を借りて現実をどうこうする術なのに、一個人の体内で生成したエネルギーで手から炎出したり、ビームとか撃つの? なに?

 まあ、この世界はその『超常のもの』の大半が呪霊。人類と人外との間に敬意とか存在しねぇ修羅の国だから仕方がない。いや、ワンチャン修羅の国の方が敬意とかあるかもしれない。この世界の呪術は『呪い(まじない)』でなくて『呪い(のろい)』で正解なのだ。霊の大半は魂でなく、恨みつらみの塊。相手へ向けるのは漏れなく殺意。……霊的治安が終わっている。

 

 オラこんな国いやだぁ~、こんな国、いやだぁ~。

 バグらせるだぁ~。バグらせたなら理(ことわり)変えて~、呪い(まじない)流行らせるだぁ~~。

 

 

 ……何言ってんだ自分?

 くだらない嫌気を振り払うように、力任せのひよっこボンバーをぶっ放す。

 朱紅赤は軽やかにステップを踏んで、それを余裕でかわした。すると何が起こるかというと、校舎の壁に大穴が空く。

 

「あっ」

「ケヒッ」

 

 ハメられた!

 

「ナクス〜! 今の見てたよ〜!」

 

 しかも最悪なタイミングで五条先生が来てしまった。始業のチャイムが絶望の合図。

 釘崎くんも金づちを片手に、完全に殺す気で来ている。

 

 くそやば。

 引っ込もう。

 

「ん?」

 

 しかし、見えない壁に拒まれているように生得領域へ戻れない。

 

「ゆ、悠仁くん?」

『……オマエは忘れてたかもしんないけど、表に出る出ないの決定権、俺にあるから』

 

 いつの間に起きていたのか。

 少し低めの声で、抑揚がないのに音量は大きい。これはつまり、悠仁くんはかなり怒っているし、そうこうしているうちにも五条先生は身体の半分以上が脚という抜群のプロポーションを活かして凄まじい歩行速度で距離を詰めて来ている。

 

「最強が来てるから! ヤバイぶっ殺されるマジで頼む代わってくれ!!」

『ちょっと、ハンセーして』

「すいませんでした! いや本当にすまん別に陥れたとかそういうわけではないのだ!! そも、私が悪いことをするならこんな無計画にはしないし、壁を壊したのもワザとではないッ!!!」

 

 五条先生の歩みに、わずかに跳ねるような調子が見えた。

 これはもう絶対にあと数歩で拳だか蹴りだかが飛んでくる。 

 

 

「クソが、もう赤ちゃんになるしかないなッ!

『ごめんなんて?』

 

 

 千八百の肉片とまでは言わないが、先ほど腕が弾け飛んだ要領で余分な血肉をキャストオフ。

 怪我を治すように身長八十センチのマシュマロボディに調整、華麗にトランスフォームを成し遂げる。

 

「ばぶ……」

『マジで赤ちゃんになんないでくれん!? 俺の身体どうなっちゃったの!?』

 

 血染めのお洋服はご愛敬。まだ悠仁くんの肉体以外の物質創造技術は未開拓なもので、今後に期待してくれ。

 どうだ、流石の五条悟もこの姿なら殴る蹴るの暴行はできまい。たぶん。

 

「……ナクス、バカだけど天才じゃん、ORじゃなくてANDじゃん」

「ハァ~~? ムチャクチャね……」

 

 先生は目隠しを押し上げながらしゃがんで覗き込んだ後、無下限を張らずに親指の腹で私の血まみれの顔を優しく拭う。

 釘崎くんも、殴るべき対象が赤ちゃんになってしまったためか、ポーチに金づちを納めてくれた。よし、勝った!

 

「しぇんしぇ?」

 

 先生が意外と幼児に対する扱いがやさしかったので、前に悠仁くんに言われた『可愛く』を意識して首を傾げてみる。未発達な赤ちゃんハンド状態なせいで指を組みにくかったがそこも可愛いポイントだ。可愛がってくれ。

 

「それ、何歳くらい?」

「いっしゃいと、しゅこし」

「アラかわい~。けど、まさか中身まで『いっしゃいとしゅこし』じゃないよね?」

「あちゃいまえやよ」

「どっち?」

「ききとぇないか? なっていないぞ」

「あっそ、じゃあ可愛がっちゃお~~!」

 

 私の返事を聞くや否や、先生は躊躇なく脇に腕を差し込み、ひょいと私を抱きかかえた。

 マ、マジで慣れている……? なんで……? 朱紅赤の面倒、ちゃんと見てたのか……? でも計算的に、赤ちゃんて程の幼児じゃなかったと思うが……。

 朱紅赤の方を見れば、駆け付けた伏黒くんと並んで呆然とこちらを見ている。赤ちゃんになるのに必死だったので二人が何か会話をしたのかも把握していないが、「マジで馬鹿じゃん」みたいな顔をしていることだけは確か。否定はしない。

 

「んぅ。しぇんしぇ、かわいがゆのはいいが、しょんなにちゅちゅくな」

「本物じゃ泣かれちゃってできないんだから、存分にちゅちゅかせてよ」

 

 しかし五条悟は五条悟。

 頬に人差し指が刺さる。爪は整っているが戦う人間の手なので普通に硬くて少し痛い。父性母性ではなく軽めのキュートアグレッションだったか。

 

「先生、ソレ、噛まない?」

「しちゅれいな」

 

 釘崎くんは指差して距離を取った。

 え? こんなに可愛い赤ちゃんなのに……?

 

「因みにこれってこのまま悠仁出てこれる?」

「ゆーじくんが、しょのきなら」

『やだ』

「やだ、って」

「え~~、ただの好奇心じゃなくて、僕にもちゃんと考えがあるから出て来て欲しいな~~」

『ほんとかよ……』

「……私、アッチ行って勝手に始めてるから。先生も満足したら来てよね」

「はぁ~い」

 

 いつまで経っても授業が始まる気配がないので、釘崎くんは見切りをつけて伏黒くんと朱紅赤の方へ歩いて行く。

 先生は完全に授業を放棄しながら幾つか悠仁くんと言葉を交わし、最終的に丸め込まれた悠仁くんがようやく私と変わってくれた。

 

「……ね~、しぇんしぇ……。たのし……?」

「くふっ、ふふっ……! 悠仁の方が拗ねてるのサイコーに面白いな」

「あのしゃ~~、おれ、マジでどーなっちゃってんのぉ~~……?」

「別に体作り直されただけで、いやまぁそれも結構なことだけど、他は大丈夫そうだよ。主導権は悠仁にあるんなら、なんとか言うこと聞かせてみたら?」

「そうおもって、しぇんしぇにぶつけようとしたけっかが、こりぇなんだけど……」

「アハハ、たしかに」

 

 ふふん、私の『なんとかする』能力を甘く見るなよ。

 死んでも何とかなっているくらいだぞ。

 

「それで悠仁、骨格とか頭、もしかして脳もちょっと削れてると思うんだけど、思考力の低下とか自覚ある?」

「のう!?」

「そりゃそうでしょ。頭囲、つまり頭の大きさが、十センチくらいかな? 縮んでるし」

「おれのからりゃ……」

『既に悠仁くんは魂と身体が切り離されているも同然なわけだから支障ないはずだが』

「んぇ~~? しこうりょく、て、いわりぇても……、わかりゃん、なんかもんだいだして」

「14+17は?」

「……さんじゅいち」

「18×3は?」

「え、まって……。にじゅし……で、さん……ごじゅうよん」

「普段からそんな感じ?」

「ン゙ッ! そう、でしゅ……」

「いいね~~! オッケー大丈夫そう!」

「なにが?」

「ウフフ、こっちの話~。もしかしたら悠仁とナクスにお願いすることがあるかもしれないけどその時は宜しくね」

「なにが!? じんせぇのなかで、あかちゃんになってよってことありゅ!?」

「いやいや、今のところは赤ちゃんが必要な予定はないからダイジョーブ!」

 

 自信ありげにピースされてもなんのこっちゃだが、先生の中で何らかの計画が進んでいることだけは分かる。

 この世界、戦力的には原作以上だし、夏油先生も元気に先生やってるようだし、シリアスなことではなくてくだらない悪戯のような話だと思いたい。

 

「ナクシュ」

『今考えても何も分からん。その時になったら考えれば良いと思う』

「ばか! いきあたりばっちゃり!!」

「ナクス、僕もう満足したから悠仁のこと戻してあげてよ」

『今すぐ戻しても良いが、下を穿かないと悠仁くんのアレがコンニチハするぞ』

「しぇんしぇ、おりょして。パンチュとか、はくかりゃ」

「……この血みどろのやつ?」

「……やっぱ、おれのへやまで、ちゅれてって……」

 

 先生は散らばった悠仁くんの肉片と制服を蒼で集めて赫で消し飛ばす。お掃除完了。

 悠仁くんは先生にだっこされたまま男子寮へ向かう。

 

「まっさか一週間ももたずにあんなビリビリのグチャグチャにするとは僕も思わなかったな~~。悠仁の制服、十着くらい注文しとこっか」

「あい、おなしゃす……」

 

 元に戻った後、軽くシャワーを浴びて血を落とし、制服がなくなってしまったので、初期装備のパーカーに着替えて再びグラウンドへ出る。

 その間、特に私に何も言ってこないが悠仁くん的にかなりおかんむりだと思うのでなんとか謝りたい気持ちはある。しかし具体的に何にそこまでおかんむりなのか良く分かっていないので下手なことが言えない。傷つけたくて傷つけたわけではないし、治したしな……。具体的にどこがダメだっただろうか。駄目だ、ニンゲンの気持ち、一生分からん。呪霊か。呪霊だったわ。

 

 五条先生は自分で時間を潰しておいて時間が勿体ないと言い出し、男子寮を出てから悠仁くんごと瞬間移動で三人に合流。

 

「じゃあ仕切り直していこうか!」

「……ウス」

「虎杖……」

「大変そうね」

「俺としては一周回って気持ちの整理がついてきたので構わん。オマエは一生その阿呆と二人で仲良くしていろ」

「見捨てんといて!」

 

 釘崎くんと伏黒くんからはかなり同情の目が向けられ、朱紅赤に至っては私を見て何かと吹っ切れてきたようだった。

 良いことだ。馬鹿に付ける薬はないが、馬鹿はシリアスの特効薬だとボーボボにも書いてある。生きている間は生きていくしかないのだから、きみは私を服用してもっと楽しくお気楽に生きてくれ。

 

「寄るな、阿呆がうつる」

 

 あ、そのリボン見覚えがあると思ったら宿儺衣装の帯と同じ柄なのか。可愛い。

 

 

 




悠「……まぁ、「治してやる」って言ったじゃんて言い分は分かるんよ。でも腕が丸ごとぶっ飛んだりとか、そういうの、もうちっと深刻なトーンで先に言ってくんない?」
ナ「すまん。ショックがデカかったか。謝る。ただ、これからもそういうことはかなりあると思う」
悠「やだ」
ナ「正直、私を抜きにしても手足が取れたり目の前で人が死んだりすると思う」
悠「呪術界、なに?」
ナ「異常者の集まり」
悠「自己紹介?」
ナ「言うようになったな! 今の切れ味良かったぞ!」
悠「やっぱ自己紹介じゃん! 嬉しそうにすんな!!」

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