手違い夢主の彼女たち   作:空下眼子

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ひたすら映画観るって展開で実写デビルマンを観ずして何を観るというのか。
※因みに今ならアマプラで低画質版が300円で見れます。


『映画鑑賞』 その1

 

----釘崎視点----

 

 追いかけれども追いかけれども可愛げなく逃げ続ける重油カモメ着火マン(ふしぐろ)

 最終的に鵺まで出して空飛び始めやがったから、一旦諦めて作戦を考える。式神破壊したら復活しないってのが仲間内でやり合う時に逆にネックなのよね。私の戦法だと傷つけない搦手って難しいし、アイツも絶対それ分かってて式神使ってるし。やっぱり伏黒、夏油先生の生徒だわ。

 

「ただいま~。なんで野薔薇そんな疲れてんの?」

「五条先生!」

 

 スタバの新作片手に担任が帰って来た。

 色々とこんな時に暢気すぎるけど、今はそれより伏黒だから一旦突っ込まない。

 

「あそこの重油カモメ着火マンが生徒にゲロ味の塊食わせて喜ぶ変態の毒牙にかかる私のこと見捨てたの!! なのに捕まってシバかれてやろうっていう男気も誠意もないマジのクソ野郎だからずっと追いかけまわしてたのよっ!!」

「う~ん、見事な罵詈雑言の詰め合わせセット。重油カモメ着火マンってなに?」

「重油塗れのカモメに火を点けて喜んだりしてそうって意味」

「重油カモメ着火マン、そろそろ捕まってあげて~!」

「それ広めようとすんのやめろ!!」

「じゃあこっち来なさいよ!!」

「…………」

「そんなだから重油カモメ着火マンなのよアンタは!!」

 

 伏黒は相変わらず遠巻きにこっちを見てるだけ。

 ダメね、モテないわ。

 

 でも朱紅赤的にはああいう可愛げのない男が好みなのかしら……、いや違うわね、朱紅赤は一級だから、伏黒が全力で来ても圧勝する。たぶん、伏黒は自分より強い人間に囲まれて育ってきたから手加減ってモンを知らないんだわ。それはそれとして性格が悪いのもあると思うから絶対シバくけど。

 

「ていうか先生、朱紅赤は? 任務一緒じゃなかったの?」

「校舎までは一緒だったけど、今は傑にDVDのお届け物中」

「DVD? そんな単純なおつかい、良く引き受けてくれたわね」

「いや、あれは同じ地獄を視聴済みの仲間を増やしに行っただけ」

「地獄を視聴済み……?」

「実写デビルマン」

「デビルマン?」

「え!? まさか伝説のアレを知らない!? ジェネギャ!?!??」

 

 デビルマンの漫画だかアニメだかの存在くらいは知ってるけど、実写映画がどうってことまでは知らない。

 

「伝説?」

「そう! 十億円かけて生まれた歴史に残るクソ映画! 興行収入はなんと五.二億円ッ!!」

「そんなウキウキでクソ映画紹介する人初めて見たわ」

「だって僕としては観た側の人間同士で永遠に話のネタにできるし、ヘタに内容がない映画より全然面白いと思うんだけど、中々同意が得られなくってさぁ! 初めて見た日から時間が経つほど好きになってくる味わい深い作品だよ!!」

 

 先生はそう力説するものの、そっと重油カモメ着火マンに視線を送ると黙って首を横に振られた。

 相当ヤバそうね。

 

 

 

 

 

 

----悠仁視点----

 

 最近、やたら重傷ばっかり負ってる気がする。

 

 腕が爆発したり心臓取られたり魂が圧死しかけたり、心臓貫かれたり首の骨へし折られたり心臓貫かれたり。

 割合的にはナクスが原因の怪我とナクスの怪我で十割だけど、ナクスがいなかったらそれはそれで自衛手段もなくなるから、いてもらわんと困る。世知辛い。

 

「普段のナクスってどんな感じ?」

 

 夏油先生は特訓場に飛び散った俺の血肉を呪霊に片付けさせながら、何事もなかったかのように話しかけてきた。どういうメンタルしてんだ。

 人間性のサービス、なんとかして再開してくんねぇかな……。

 

「いつ見ても楽しそう」

「それはそうだろうけど、具体的に」

「ん~、最近は、生得領域に物を引っ張り込む練習をずっとやってる。絶対漫画取り込んでまとめ読みすんだって」

「……そういう小っちゃい動機で全力でやれるから天才なんだろうね……」

『は? 漫画、読みたいだろうが。そんなことを言うヤツは永遠に漫画を読むな』

「先生、ナクスから全然小っちゃくないって抗議来てるよ」

「ごめんて」

 

 畳の上に適当に放り出されたマリオネットって感じの体勢でクチャクチャになったまま起き上がらないナクス。

 もちろん威厳とか一ミリもない。裾がはだけて膝が見えてる。

 

「あと、よく折り紙してたり、ペーパークラフトみたいなの作ったりしてる」

「暇だな~。何作ってるんだ?」

「ドラゴンとか薔薇とか、校舎とか俺の部屋の立体模型とか」

「思ったより凄い凝ってる」

「静かだなって思って見ると黙々と作業してんだよね」

「完全に暇だな」

 

 兎に角いっつも暇してて、娯楽に飢えてる感じはある。

 用事があって声かけると大抵嬉しそうに返事するからちょっと可愛い。

 

「他には、寝る時とか畳の上でうつぶせになったりして、そんで顔に畳の跡つけてる」

「……かわいいね」

「……弟とかいたらこんな感じかなって思う」

「今は何してる?」

「夏油先生にいじめられたから、グレてちゃぶ台退かして寝転がってるよ」

「ナクスの生得領域、ちゃぶ台があるんだ」

「うん、それっぽい景色の中に、後付け感ある床の間みたいなのがポンて建ってんの」

「へぇ、領域なのにちぐはぐなのか」

「ナクス、別に好きで呪いの王やってるって感じしないから、あっちの床の間みたいな方がナクス本来の場所なのかなって」

 

 俺が死にかけた時、ナクスが言う『死』を見つけるのに自分で領域破壊してたし、なんかボロくて脆いし、やっぱあの領域は『ナクスの心の中』じゃないと思う。

 

「……ふ~~ん、面白いね?」

 

 夏油先生は顎に手を当てて目を細めて意味深に優しく笑った。逆に怖い。

 

『先生、私を人間扱いするとは言ったが、人間だとは思っていないだろ』

「夏油先生、ナクス取らんといてね。今更抜き取られたら、そのあと一般社会に放逐してくれたとしても今後の俺の人生ヤバそうだから……」

「エッ賢い、意外だ」

「怖い怖い怖い! マジで取らんでよ!?」

 

 マジで取れたら取りたそうな発言。思わずちょっと距離を取る。

 元々二メートルくらい離れてたけど、五メートルくらい離れたところに改めて座る。冗談抜きで生存戦略固めてかないと先生にモルモットにされたりしそう。

 

「フフフ、虎杖くん、そういうこと考えられるんだ。ナクスの助言かな?」

「そぉ、だけどぉ……!」

「実際、私がきみくらいの時より社会の汚さを分かってる。立場的にもそのくらい警戒してるくらいが丁度いいよ」

「呪術界、なんでこんな地獄なん?」

「人類が愚かだから」

「主語デッッカ!!」

『思考が完全に闇落ちしているそれだが』

 

 話が通じそうな優しい表情で人類を滅ぼす側のセリフを吐く先生。

 

 壊れてしまった。名残り。亡者。自分でそう言った割りに外面は元気。

 この人、ナクスの三十倍くらい得体の知れなさがあって近寄りがたい。適当でも遅刻されても五条先生の方が良い。

 

 夏油先生との心の距離を噛み締めてると、入り口のドアが二回ノックされる。

 

「おい、土産だ」

 

 そこから朱紅赤が入ってきた。

 腕にビニール袋を引っかけて、ぬいぐるみを手に持ってる。訓練の道具……?

 

「朱紅赤おかえり~、ツカモトⅢも持って来てくれたんだ。悟は?」

「グラウンドで鬼事に夢中な二人の様子を見に行った」

「ああ、私が仕掛けたヤツだよ」

「なるほど、実力を伸ばすには仲間内で揉めるのが一番効率が良いからな」

 

 なんか地獄みたいな会話してる。

 先生達、仲良さそうだったけど学生時代は仲悪かったりしたんかな。喧嘩するたびに周りのモノ破壊しまくってそう。

 

「で、オマエにはこれだ」

 

 朱紅赤はちょっと嫌そうな顔で袋の中のモノを取り出して掲げる。DVD。

 

「DEVILMAN……?」

「実写デビルマン、虎杖くんは聞いたことないかい?」

「あー、なんか、聞いたことある気はする」

 

 有名らしいけど実際観たことはない。

 中学の友達が、兄貴がDVD持ってたけど全然意味わかんなかった、みたいな話をしてたかもしれない、くらいの記憶しかない。

 

「観ろ」

「実写デビルマンを?」

「この話の流れで他の何を観る気だ」

 

 パッケージを手渡された。

 朱紅赤、やたら実写デビルマン推してくるな。意外だ。B級映画とか趣味なのか?

 

「可能であれば一人で素面で挑んで欲しいところだが、中のモノと分離できんのが惜しいな」

「めちゃくちゃ推すじゃん」

「これを観ずしてクソ映画だのなんだのを語るな、オマエだけ助かるのは許さん」

「オススメじゃなくて道連れかよ!」

 

 パッケージは綺麗でちゃんとしてそうに見えるけど、そんなに酷いのかコレ。

 

「それと、三代目ツカモトだ」

 

 もう一つ押し付けられたのは、ボクシンググローブをしたキモカワ系のクマのぬいぐるみ。

 

「……なにこォぼッ!?」

「ケヒヒッ、常に一定の呪力を流さんとそうなる」

「先に言ってくんない!?」

 

 学長の呪骸か!

 パンチを手で塞ぎながらなんとか調整して落ち着かせる。顎が痛い。

 

「明らかな呪骸を何の警戒もなく受け取る方が悪い」

「スパルタ……」

「虎杖くんには映画を観ながらその呪骸に一定の呪力を流し続ける訓練をやってもらう。呪力は負の感情を元に生成されるけど、呪術師なら感情に左右されずに一定の呪力を生成する技術は必須だ。泣いても笑っても怒っても、自分の意思で呪力の出力を調整できないと、大事な場面でこそ大きなミスに繋がるからね」

「腕が爆発したり?」

「そうそう! その件のおかげかな。呪力の出力もできてるし、コントロールの重要性も身に染みて良く分かってるみたいだから、今日から早速やってみようか」

 

 ナクスを見ると無言のまま着物の袖で顔を隠した。

 

『アレは百パーオマエのせいだから反省して』

 

 移動し始める二人について行こうとしたところで、はたと気づいてツカモトが起きそうになった。

 ビニール袋の中にはもう他に何も入ってないように見える。なんなら朱紅赤は袋を三角に織り込んで、いわゆるオニギリ状態にしてポケットにしまった。

 

「……え? 待って、実写デビルマン以外のDVDは……?」

「部屋にあるよ、流石にね。それは安心して」

「だよね!? いやビビった!!」

 

 

 

 ***

 

 

 

「虎杖くんには当分ここで生活してもらう」

「おおー、寮より広い!」

 

 1K30平米はある。

 

「こっちは初めから数人で泊まれる作りにしてあるからね。東京校のメンバーは特訓場を使う名目で普通に虎杖くんに会いに来れるし、外出はNGだけどお泊まり会くらいの夏の思い出は作れるよ」

「至れり尽くせりじゃん! 良いの!?」

「最初は特訓場だけだったんだけど、悟が秘密基地欲しいとか言い出してなんやかんやで自分らで増築したんだ」

「増築!! この部屋造ったん!?」

「でも大人は忙しくてね、折角だからキミらで存分に使ってくれ」

 

 ちょっと見ただけでもトイレと風呂らしい扉が別で付いてるし、デカいソファ、デカい机、デカいテレビ、DVDプレイヤー。本棚に漫画とDVDとボードゲーム。エアコンも付いててかなり充実してる。造ったって。マジか。

 

「業者入れたら外にバレるし、石壁用の石をちょっとゴニョゴニョして調達して着色したり、校内の電気水道の配線配管勝手に伸ばしたり、家具持ち込んだり、大変だったけど良い思い出さ」

「DASH村? いや今さりげなく犯罪行為なかった?」

「大丈夫、今は学長も黙認してる」

「今は」

「オマエら、あの頃激務の合間に他にもっとやることがあっただろうに」

 

 朱紅赤がDVDプレイヤーのコードをテレビに繋ぐ。

 いつも高飛車なお嬢様みたいな感じだけど、意外とこういうのも手慣れてるらしい。まぁ、実際はお嬢様じゃないしそれもそっか。

 

「そうは言っても、朱紅赤だって悟が作業現場に持ち込んだ激甘麦茶サーバーに夢中でよく顔出してただろ」

「食堂常備の砂糖の入っとらん麦茶はただの虚無だ」

「お茶だよ」

 

 夏油先生は本棚からDVDを取り出して机に積み上げてく。

 手伝う隙も無く二人が準備してくれるのをツカモトを持ってぼんやり見てると、何故かプレイヤーにはデビルマンじゃなくてドラえもんが吸い込まれていった。

 

「デビルマンは?」

「初回でアレはどうせ訓練にならん、明日にしろ」

「そんなに……」

「確かに内容はあるが、内容があればよいというものではないからな」

「どゆこと?」

「観れば分かる」

 

 朱紅赤はリモコンが動くことを確認すると、それを投げて寄こした。

 

「絶対に観ろ。絶対にだ。明日の夜、感想を聞かせてもらう」

「えー、まぁ、観るけど、因みにどんくらいキツい?」

「懲役二時間を覚悟しておけ」

「懲役を!? あッぶ!」

 

 あまりの衝撃にツカモトが起きかけて慌てて眠らせた。

 映画観るのに懲役って単位出てくることある?

 

「でも、そんなキツいならなんで観たん?」

「死ね」

「会話のデッドボール!!」

「いやぁ、悟がえらく気に入っちゃっててねぇ。私も二周観てるし。……三周目はもう一生いらないと思ってるけど」

 

 夏油先生の手が俺の肩に軽く置かれる。

 

「虎杖くんも早く、『観た側の人間』になろうか?」

「お、おう、ハイ……、頑張りますぅ……」

 

 強く握り締められたりとかもないのに圧が半端ない。

 絶対に道連れになって貰いたいという意志がゴリゴリに伝わってくる。

 

 その後、二人は俺に地獄の事前情報を吹き込むだけ吹き込んだあと、ほこほこの満足顔で帰ってった。

 めちゃくちゃに性格が悪い。

 

『でも、だんだん分かって来たけど、朱紅赤、さては可愛いとこあんね……?』

『んふふ、悠仁くんも分かってきたか』

『ナクスそれどこ目線?』

 

 もちろん性格が悪いのは疑いようもないけど、用件だけ伝えたらすぐ帰るのかと思ってたら準備してくれたし、なんか、振る舞いの育ちが良い。それから、甘い物好きで、いつも五条先生と同じのを飲んでるのも可愛い。

 夏油先生も、どう頑張って見ても良い人じゃないけど甲斐甲斐しくはある。かといって、悪い人じゃないとも言えない、信じちゃいけない人だけど世話焼きな感じ。ビミョーな関係だ。

 

「ナクス、俺、生き残れるかなぁ」

『全力は尽くす。ただまぁ、最悪死んでしまっても私と仲良く死者ライフを楽しめばいい』

「死んでたらライフって言わなくね?」

『そうかも知れん』

 

 体内に元気な死者が住んでるとちょっと安心する。

 取り合えず今はドラえもんを観ることにした。

 

 ……そういえば、なんで実写デビルマンだけ外のどっかに取り行ったんだ?

 あの袋、明らかにお菓子屋さんとかのだったし、ケースにカバーも付いてないから、買ってきた感じじゃない。

 

 えーと、朱紅赤は高専に住んでるんだから、五条先生の私物ってことか……?

 

「えゥ゙ッ!? ……おぉ゙……っ! ヅカモト……! 鳩尾はやばいって……!!」

『悠仁くん内臓大丈夫か』

「きっついけどそこまではだいじょぶそう」

 

 

 




悪の帝王みたいなキャラがちゃんとした保護者の元で良い子に育つ展開、控えめに言って性癖ですね。
フカフカに大事に育てられて欲しい。転生とかしてなくて原型まるのままフカフカに大事にされても良い。かわいい。

でも趣味嗜好は悪属性のまま変わらないでいて欲しい。
L4Kとかオフロとかでキル取りまくって高笑いしたり、パラノイアで最悪のタイミングで裏切って一人勝ちしてキャッキャしてて欲しい。かわいい。輝いてる。最高。

 
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