展開の都合上短めです。
どうしてそんなことするんですか?
そう思って頂ければ幸いです。因みに私の趣味だからです。
和やかな昼の公園の東屋。
一つ目、タコ、木、全身継ぎ接ぎ。
どう好意的に解釈してもコスプレ集団、悪く解釈して化け物の集まりが居座っているのに、目の前を通り過ぎる人間達は誰一人こちらを見ない。幼い子供も無反応。
だって誰も俺たちのことが見えていないから。
でもここに座ろうとする人間もいない。
特級呪霊が四体も集まってるから無意識に圧を感じて避けるみたいだ。
「その女指、一本使った割りに反応がない。どう言い訳をするつもりだ?」
「寧ろ逆だよ漏瑚。回収されてるのに反応がないってことは、これが何だか分かってるヤツが持って行ったってことだ。呪術師が持ち帰ったなら高専もその上も黙ってるハズがない。つまり、宿儺は『これ』を知っていて、コッソリ回収して知らないふりをしている」
俺の手の中にあるのは青白い女の指。
呪力はないのに、呪霊の手で持っていても酷く冷たくて重苦しい。
「……なるほど? とにかく実験は終わったのだから話して貰おう、真人。それは誰の指だ?」
「いやこれは誰かの体の一部って言うより、アカシックレコード、宇宙の本棚と呼ぶべきかな」
「アカシック?」
「
「ぶふぅー……?」
「うーん、これは『大地』や『森』や『海』が知らなくても仕方ない話か。説明してあげるよ」
三人から良く見えるよう、木製のテーブルの上に指を置く。
「宇宙の本棚。それはこの世の全て、過去現在未来の宇宙の全てが記録されている情報源。と、言われている概念。でも実際にこの世でそれに触れた人間は公的な記録には残されていない。宇宙の本棚に触れた人間、いや、自称知的生命体達は皆、情報量や世界の真実に耐え切れず精神崩壊する。っていうのが、この概念について論じられる物語のお決まりになってる。実際に存在していて、それに触れられたとしても誰かに報告できる状態じゃなくなるんだ」
すっかり血の気の失せているこれは、一般人が遠目に見ても人体の一部とは分からないだろう。
「もちろん俺もこれ、最初はなんだか分からなかったんだけどさ。宿儺が受肉して『共振』があったろ。アレでちょっとだけ覗けたんだよね」
「何が見えた」
「YouTube」
「は?」
「いわゆるMAD? いろんな漫画とかアニメとか切り貼りして作るファン動画さ」
「……その人間のお遊びがなんだ?」
「通じて良かった。じゃあその人間のお遊び劇場の登場人物として、どう見ても自分が出てきたら?」
三者三様。
漏瑚はじっとりと目を細め、花御は緩く首を傾げ、陀艮は話を聞いていたのかも微妙でおっかなびっくり指を突いている。まぁ一人に通じていれば後々仲間内で情報共有するだろうから構わず話を続ける。
「話が変わってくるだろ? 俺は宿儺が馬鹿になっちゃった理由はこれにあると思ってる。俺までああなりたくないから取り込んだりはできないけど」
「あれは……まあ……たしかにな……」
「俺はね〜、宿儺がたこ焼きにお餅とカレーとチーズ乗せて焼いたやつ作ってる動画が好きかな。馬鹿動画として呪術界のネットミーム化したの最高だけど、オーブンの前でべったり貼りついて見守ってる姿見て、宿儺おじいちゃんボケちゃったのかと思った。いやある意味ボケちゃってはいるけど」
「やめろ、思い出させるな」
「最後に千切った味海苔かけるところに拘りを感じたよね」
あれを見せた時のこの世の終わりみたいな漏瑚の顔は面白かった。
写真に取れないのが残念なくらいだ。
「……それで、朱紅赤についてはどう説明する」
「たぶんあっちも宿儺。記憶は微妙なところだけど、俺の目で見て、朱紅赤の魂はどうやっても見た目通りの女の子じゃない」
「呪物から人格だけが分離するなどあり得るのか?」
「あり得てるんだから仕方ないだろ? それに、彼、いや、彼女? 宿儺は異形とはいえ呪詛師、人間だった。呪霊とは成り立ちの異なる呪いだ。魂と呪いを引き剥がすことが無理だとは言い切れない。……特に、宇宙の本棚から好きに情報が引き出せればやれるだろうね」
魂の形が見えるというのは面白い能力だ。
術式の都合でそう捉えているだけなのか、魂なんてものが本当に実在しているのかはまだ不明だけど、相手がどんな変装の達人でもポーカーフェイスを装っていても簡単に見抜けるのは嬉しい。
「おかしなガキだ……、最近生まれた割に随分と知識が豊富だな」
「え、変かな? 漏瑚だって、今どこの山が活火山だとか、火成岩の種類が何だとかどこで取れるだとか、調べなくても知ってるものと思ってたけど。『人』の呪霊は『人』について詳しいものじゃない?」
「……」
「あれ?」
「まあよいわ」
信じていない顔。
でも別に構わない。ここまで『仲良く』して一番肝心なことに気づかないなら呪霊も人間も同じ。姿形と呪力、振る舞いさえ合っていれば相手を誤認する。
非術師の目からは、呪霊に食われる人間は透明なものに覆われて消えた様に見える。伏黒甚爾は、呪力の全くない体に呪霊を飲み込むことでその呪力を覆い隠して持ち歩いた。なら、呪霊の体内に入ってそこから呪霊を操れるのなら、完璧に呪霊のふりができると考えられた。
呪霊でも内臓を持っている個体は多いし、ヒトガタの呪霊ならほぼ間違いなく脳がある。
それに、心臓や脳などの重要な器官を破壊されるのは呪霊でも結構な深手なワケで。
だから相手が呪霊だろうと、司令塔たる『脳』さえ取り換えてしまえば、その身体は『私』のものだ。
「
「花御!! 貴様は喋るでない!! 何を言ってるか分からんのに内容は頭に流れてきて気色悪いのだ!!!!」
「アハハ! そうかも! 良いね花御。宇宙を恐れる気持ちから生まれた宇宙の本棚。相打ちで宿儺は壊れたし、宇宙も今は『これ』だって? 良い線いってるんじゃない? ヤバ、宇宙の呪霊か。イマドキって感じするね!」
宇宙の本棚。
計画実行の間際になって新しい本命ができてしまった。
やはりこの女指、なんとかして安全に中身を覗けないものか。計画の邪魔だからって朱紅赤の研究所を潰させたのは早計だったかもしれない。でも実際邪魔だった。宿儺が人間の制御下に置かれるなんてのは絶対避けなきゃいけないし、今は結果として一番面白くなりそうな進みになっているし、良しとしておこう。
「で、まぁ、本題なんだけど。肝心の両面宿儺があんな感じになっちゃったからさ、獄門彊一つじゃ何かと足りないだろ? だから俺の育ててる呪詛師を連れてくよ」
「呪霊の癖に人間なんぞ育てとるのか、何のためだ?」
「今、今。こういうときに戦力として役に立つじゃん。勝ち確定の状態に持って行きたいなら手段に拘らず使っときなって。特級相当だっているしさ、これまた特級呪霊付きのとっておき!」
「人間なんぞにいい様にされとるヤツが特級だと? 大体、呪詛師が勝ったところでそれでは意味が、──」
「違う違う、安心してよ。二人はね、相思相愛なんだ」
「ああ?」
「死さえ二人を分かてないラブラブカップル。術師の方も死ねば間違いなく呪霊化する。しかも、自分の力を認識すらできずにショボショボに落ち込んでたところを俺が見つけて手塩にかけて育てたから、俺のことを絶対的に信頼してくれてる『良い子』達だ」
「生まれてすぐ子育てとは……」
「あっはっは! 縷々連綿と続いてきた人類の営み、地獄の子育て! 得意だよ俺は! ……とはいえ、彼はある程度育ってたし、大したことはしてないさ」
これまでに色々やってみた結論として、欲しい人材の条件がニッチな場合は探すより作った方が早い。
俺の寿命が実質無限だからそう思うのかもしれないけど。
「
「花御!!!!」
「まぁまぁ漏瑚、落ち着いて。いい質問だよ。朱紅赤が宿儺じゃなかったら指はどうすんのって話だろ?」
「妥協点でそのまま朱紅赤に取り込ませる他ないだろう。記憶は兎も角、性格も呪いとして悪くはない。ナクスとか名乗っている阿呆よりはマシだ」
「まぁねぇ。俺もできれば『宿儺』が見たいけど、でも、彼女が人間の味方をするようなら意味がない」
「んぐ……ッ」
女指を改めてテーブルから拾い上げて、それをゆっくりとそれぞれに差し向ける。
「……ねぇ、漏瑚、花御、陀艮。もし、王が失脚したんなら、女王が政権を握っても良いよね?」
「えぇい! いちいち回りくどいわッ!! 言いたいことがあるなら早く言え!!」
「特級過呪怨霊、祈本里香。朱紅赤が呪術師側だった場合、宿儺の指は彼女に取り込んでもらう」
「できるのか、そんなことが……!!」
「俺の無為転変なら里香をベースとして馴染む様に調整が可能だ。なにせ呪術師に俺を特定されない為に態々飛行機で外国まで行って試しまくったからね。術式の腕に自信はある」
普通は『器』でなければ宿儺の指は馴染まない。
その辺の適当な呪霊に指を取り込ませても、両面宿儺の指を核として呪霊の存在ごと再構成されたり、指単位で別の身体で出てきてしまったりするし、何よりどう見てもエネルギー効率が悪い。ニ十本与えたところで宿儺に匹敵する呪霊にはなれない。だから『器』が必要だった。
でも今はそんなことのために奔走する必要なんてない。
素材さえあればお好みの術師も呪霊も作り放題。
ちょっと前までは星漿体が、六眼が、呪霊操術が……!
なんて思ってたけど、無為転変さえあれば大抵のことはどうにかなる。なんなら星漿体護衛任務、別に失敗させる必要はなかったかもしれない。触れられれば勝ちだし。
「
「? うん、飛行機」
「乗ったのか……?」
「え? うん」
彼らから反応がないとは思ったけど、そんなことか。
その場に留まりたがる呪霊の性質。でも『人間の呪霊』ならそんなの知ったこっちゃない。必要なら宇宙まで行ったって良い。
「みんなもしかして移動徒歩なの? 乗り物使えば? 俺達タダだよ?」
「ぶ」
「お、陀艮は興味ある? 海路も良かったよ。海の呪霊が船に乗っちゃいけないキマリなんてないし、今度一緒に乗ってみる?」
「ぶふぅ」
二体は日本的な要素が殆どなのに比べて、陀艮は『ダゴン』だからか、外国に行くのに抵抗はあまりなさそうだ。
六眼と呪霊操術が丁度全盛期なのと、陀艮のこのバブバブ具合からして、出来ればあと四、五十年くらい待ってくれた方が戦力的には確実なんだけどなぁ……。
でも漏瑚と花御はもう待てないみたいだし、呪術師側で宿儺の指の回収が本腰入れて始まったし、宿儺の状態とか女指とか、その辺ほっとく方がリスキーだ。延期はできない。
「二人も手段を択ばす自由にやろうよ『人間』ならさ。俺は別に面白ければそれで良いっていうか。だからこそ、呪霊と人間の立場を逆転させたい、戦争がしたいだなんて、乗らない手はないと思ったワケだし」
嘘は吐いていない。
呪霊の癖に『人間になりたい』だなんて隣の芝が青い思考回路。既に実質人間みたいなものだ。存在がギャグとして面白い。
まぁ、それ以上のことは特に期待してないし、『私』には他にやりたいことがあって、アンタらの野望がその計画に都合が良いから手伝ってもらうつもりなんだ、とも言ってないってだけで。
ゆたりか呪詛師ルート。
愛する女が死んでるくらいで止まるんじゃねぇぞ…。
真人のデザインと羂索ママの術式については原作読んでて絶対こうなるための真人だと思ったが全くそんなことはなかったので自家発電するぜ!
最悪と最悪がかけ合わさり、もっと最悪になる、つまり最高!!
なにひとつ『真人』じゃない状態の真人、可愛いですね……。今日から『偽人』だよきみは……、可愛いね……。
因みに羂索が頭の中でも真人やってるのは、人前じゃナチュラルに頭の中切り替えて過ごしてきただろうなと思ってそうしてます。