手違い夢主の彼女たち   作:空下眼子

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年末まで堪えようとしたけど今年中に原作が終わるとしたらソードマスターヤマト並みの展開じゃないと終わらないし、やっぱ我慢できないので投稿します。

実デビのことボロカス書いてるものの、五条先生と同じく絆が深まるという意味で好きだし、ネトフリとGYAOとアマプラの計3周走ったので許して。
アマプラに至っては本当に実写デビルマンを観るためだけに追加で300円払ったので許して。

今回観てる映画もこれを書くために2周目走ったので許して。
1周目の後につまりどういうことだったのかを調べて、展開が分かってる状態で見た2周目は心穏やかにそれなりに映像を楽しめました(ダイレクトマーケティング)。


『映画鑑賞』 その3

 

 ここまでのあらすじ:

  お夕飯前に実写デビルマンを倒した!

  片付けの後、2001年宇宙の旅の視聴を開始した!

 

 だが、それが大きな間違いだった。

 

『ナクス……これ、さ……』

『何も言うな』

『…………いや無理、なんか話して』

 

 ハッキリ言って限りなく虚無である。

 

 真っ黒で何の変化もない画面から不穏な音楽が映像が流れること三分。

 漸く朝日が昇って来て進展かと思えば、お次は荒野のお猿がすこ~しずつ進化していくだけの映像が十五分ほど続いていた。

 

 これを集中して観ろというのはキツい。

 

『この調子で宇宙に行くまで二時間かかるのか?』

『やだぁあ~~!』

『遂に悠仁くんが赤ちゃんになってしまった……』

『あっ待って宇宙のシーン来た!!!!』

 

 場面は唐突に荒野から宇宙空間へ。

 しかし現実は無情にも、そこから更に衛星基地だかスペースコロニーだかの綺麗な映像と綺麗な音楽だけで五分が経過。

 

『実デビよりキツいかもしんない……』

『今のところ一切ストーリーが見えんからな……』

『やっとBGM切れた、なんか展開ある? 喋った!!』

『セリフ一つでここまで感動させられるとは』

『SFだ……長かった……』

 

 しかし! 数分の会話パートの後、再び映画は綺麗な映像と綺麗な音楽だけの時間に戻る!!

 

『……絵面も音楽も、たしかに文句なしに綺麗なんよ』

『そうだな』

『でも癒し動画って集中して見続けるもんじゃなくない? ながら作業とか寝るときに流してほっとくもんじゃない……?』

『うん、私も一人だったら間違いなく観るのをやめていた』

『ツカモトに呪力を流すっていう『やること』があるのが逆に救い』

『作られた時代的にも芸術点が高いのは認めるが、映画にエンターテイメントが欲しい層にとってはひたすらに苦行だな』

 

 ティロンッ

 

『おっ』

 

 僅か一秒ほどのメッセージ通知音、それが止むか否かという速度でケータイを拾って確認する悠仁くん。

 ツカモトの鼻提灯が割れるも落ち着いて呪力を再注入。

 

 だいぶこなれてきている。やはり実写デビルマンを乗り越えた男はひと味違う。

 

『伏黒から! 二人とこっち来るって!!』

『朱紅赤もか。遂に実デビを通して分かり合う時が来たようだな』

『今それ以上のヤツ観始めちゃってるけども』

『まぁたぶんこれも視聴済みだろ』

 

 そんなこんなで視聴開始から約四十五分。

 未だストーリーは見えてこず、二人して死んだ目で画面を眺めていると唐突に部屋のドアが開いた。赤い目が覗いて、誰も部屋に入らず閉じる。

 朱紅赤がまさか『そっ閉じ』を習得しているとは。やりよる。

 

「……何故そんなものを観ている」

 

 五秒ほど後に改めて入って来てくれた。

 朱紅赤は蟻にたかられたセミの死骸を見るような目を画面に向けている。

 

「評価調べないで片っ端から観てった結果」

「遊んでいる後ろで流しておくものだぞそれは」

「虎杖、取り合えずこれ冷蔵庫に入れんの手伝いなさい。どこに何入ってるか分かんなくなるでしょ」

 

 三人が持って来てくれたのは山盛りの食材だ。十キロのお米と、スーパーのビニール袋が三つ。

 釘崎くんが掲げた袋からはお野菜やらお肉が透けて見え、ネギまで飛び出している。ネギが似合わない女。可愛い。

 

「マジ? 合法的中止!!」

 

 悠仁くんがゴキゲンで一時停止ボタンを押した。

 私達には致命的に合わないというだけで決して作品の出来が悪い訳ではないと思うのだが、合わないので仕方がない。

 

 ツカモトにはその辺でシャドーボクシングをしておいてもらい、早速キッチンで中身を広げて振り分けていく。

 

 肩肉切り落とし、牛カルビ、鶏胸、冷凍のからあげ、ハム、卵、シーチキン、レトルトカレー、キャベツ、ニンジン、タマネギ、ピーマン、etc。取り合えずベタに買いまくった感じで、調味料と飲み物もそれなり。

 

「この量、もしかして三人とも入り浸る気?」

「当然でしょ、アンタこんな良い部屋一人で使うつもり?」

「夏油先生が絶対そうなるから量買っとけって」

 

 飲料は主に紙パックとペットボトル。特に学校の自動販売機では買えない種類なのが凄く嬉しい。そして何よりカフェイン。アッ、粉珈琲がある! インスタント!! ブランドに拘りなし。カフェイン、LOVE。見つけてしまったからには是非とも欲しい。漫画も良いがやっぱり珈琲も必須。絶対に取り込んで領域で直にキメる。

 

「このでっかい画面でゲームしたら楽しそうよね」

「折角ならスプラが良い、白ッパーで蜂の巣にしてやる」

「プラべで朱紅赤対三人」

「構わん」

 

 ……は?

 ちょっと待て。朱紅赤、スプラトゥーン既プレイどころか好きなのか?

 呪いの王、キルを取り合うゲームが得意。それはそう。でも平和すぎて和まざるを得ない。一人でリスキルして対戦相手の脳を破壊し尽くすのが容易く想像できる。可愛さが致死量で私の脳も破壊されている。

 

『ナクスさぁ、朱紅赤のことかなりお気に入りだろ』

 

 推しに狂うオタクの笑顔を見られてしまった。

 悠仁くん、なんでこのタイミングで私のこと見てんだ。大人しく朱紅赤を見ていてくれ。

 

『可愛いからな。幸せでいてくれると嬉しい』

『……乗り換える?』

『なんだ不安になったのか? 安心しろ、私はこう見えて約束事には煩い。悠仁くんの生存戦略を途中で放り出すつもりは毛頭ない』

『マジでこう見えてだからなぁ……』

『聞いてきておいて失礼過ぎんか?』

 

 いくつかを冷蔵室に残して直近食べないものは片っ端から処理して冷凍、ビニール袋はおにぎり状にして冷蔵庫の上に。

 仕分け終わった後、朱紅赤が改めて悠仁くんに向き直る。

 

「で、アレの感想は」

「……あーーーーー」

 

 悠仁くんの声帯から発せられし、実写デビルマンを観た者にしか伝わらないセリフ。

 悲しいかな、「あーーーーー」はマジでセリフである。

 

 それを受けた朱紅赤が右手を、伏黒くんが左手を差し出す。

 

 固い握手。

 

 ここに実写デビルマン視聴済み同士の絆が結ばれた。

 恐らくこの世で指折り三つに入るであろうレベルの難解な絆である。

 一方、ひとり未視聴の釘崎くんはUMAと対面したみたいな顔をしていた。

 

「今ので何を分かち合ったのよ」

「ほんとに「あーーーーー」がいっちゃんヤバいんだって!!」

「いや切れた指押し付けてくっついた方が意味不明だったろ」

「ネットで検索しても原作者の感想が見つからない辺りに『本物』だと思わされる」

「怖い怖い!! 一瞬で急に仲良くなったわね!?」

「「「釘崎も「  N  O  」

 

 息の合った漫才。

 仲が良くて何よりだが、友情の方向性が心配になる。

 

「ほらやっぱり実デビを観た者同士にしか築けない絆があるってワケ」

「先生!」

「つまり実デビは良い映画。Q.E.D. 」

 

 いつの間に部屋に入って来たのか。当然の様に会話に混ざってくるGLG五条悟。

 イベントまで数日は空くつもりでいたが、もしかして今日が漏瑚戦か。

 

「それはちょっと無理あると思う」

「悠仁、ここは快く、その通りでした! って言うとこだよ」

 

 五条先生の主張も虚しく、伏黒くんと朱紅赤も黙って首を横に振るだけだった。

 私としても実デビは決して嫌いではないが一週間以内に二周しようと言われたらその場で赤ちゃんになる自信がある。

 

「ん~、悠仁だけ連れてくつもりだったけど、折角だからみんなで課外授業行こっか」

「俺、外出ちゃダメなんじゃなかった?」

「まぁ人いない場所だし、いても今頃死んでると思うから大丈夫大丈夫」

「それ大丈夫って言わんくない?」

「諦めろ虎杖、こういう人だ」

 

 

 

 

   * * *

 

 

 

 

 一年全員での課外授業。

 

「皮肉だよね、全てを与えられると何もできず緩やかに死ぬなんて」

『……は? つまりどゆこと? ナクス解説して』

『情報過多による強制宇宙猫領域、相手は死ぬ。だが今回の相手は特級呪霊なので死にはしない』

『分かったけど急に安っぽくなった』

 

 今日この場で初めて五条先生から領域の説明を受けたことで悠仁くんから先生への信頼度が下がったが、それ以外の展開は概ね順調だ。

 私は他人の印象を下げてまで自分を上げようとかは全く思っていないのだが、普通に先生の自業自得なので私が悠仁くんを攻略した後にでも存分に悔いてくれ。

 

「で。まぁ脳が焼き切れてるのを僕がボコボコにしても良いんだけど、朱紅赤、やってみる?」

「……あ? ……ケヒッ、ケヒヒヒッ! クハッ、そうこなくてはなぁ?」

 

 振って貰えると思っていなかったらしく、話半分にぼんやりしていた朱紅赤は一瞬きょとんとした後、口の端をニンマリと吊り上げた。

 

 笑い方が邪悪過ぎる。五億点満点。

 少年少女の性癖、その調子で破壊し尽くしていけ。

 

「じゃ、ヨロシク。僕コイツ起きる前に帳下ろしとくね」

「ん」

 

 先生に投げ捨てられて水面に叩きつけられた漏瑚に続いて、無下限バリアから外れた朱紅赤が浅瀬に降り立つ。

 

「回復するまで待ってやる」

 

 うわ出た!! 舐めプ!!

 どうしてこの手のキャラはそう現実の戦闘で舐めプしたがるのか。舐めプして良いのはバーチャルだけだと古事記にも書いておくので教育省は教科書を訂正してくれ。

 

「ちょっと! 相手特級でしょ!? タイマン張らせて大丈夫なの!?」

「平気さ」

 

 釘崎くんの抗議に対する、五条先生のなんてことなさそうな返事と同時。

 どう、という低い音を上げ、朱紅赤の真下から白と黒の混じった煙の柱が聳える。マグマと水の接触による軽い水蒸気爆発が朱紅赤を包んだ。

 

 悠仁くんと釘崎くんが軽く悲鳴を上げたが、一瞬遅れて噴き出たマグマが散って煙が晴れると、朱紅赤は一糸纏わず傷ひとつない姿でそこにいた。一糸、纏わず。

 

「ほぉ、威力はある方か」

 

 片眉を上げた舐め腐った表情。なだらかな首、肩。柔そうな腕。胸はその手の性癖の人が描くレベルの巨乳でこそないが、片手では持て余しそうなたわわ。そして意外と括れはありつつも、これまた意外にも柔らかそうなシックスパック不在のお腹。特に腰周りから膝にかけては重量感たっぷり。

 

 彼女のまろやかモッチリダイナマイツボディラインがこれでもかと見えてしまっているが、大事なところは変身中の魔法少女の様に身体を覆う謎の光で見えない。

 

 漏瑚の攻撃の残火だとか比喩だとかではなく、朱紅赤自身が眩く燃えている。

 淡い桃色の髪が蜃気楼の様に揺らめいて神秘的だ。

 

「あ、しまった。まぁよい」

 

 衣服が消滅したことに後から気づいたようだ。全裸だが、よいのか。

 無知とは別の恥じらわない属性。ここまで来ると朱紅赤一人でどれ程の性癖を抱えていくのか楽しみになってきた。

 

「キャーー! 朱紅赤のえっち!! 僕捕まっちゃうから早めに服着て!!」

「黙っていろ戯け」

「貴様ァ! 若い娘が恥を知れ恥を!!」

「オマエもいちいち喧しい。身なりを気にして死ねばそれこそ恥だろうが」

 

 八割九割がおふざけだろう五条先生はともかく、漏瑚の感性がまとも過ぎる。名誉人間。お前はもう今日から人間を名乗って良い。『その手の力』を扱うならもっと毎日楽しく狂っていないとプチっと死ぬぞ。いや、マジで死ぬんだった。

 展開的に私が殺さなければ死なない可能性もあるが、漏瑚は人類に対して有害なので殺せたら殺す。だから残りの生を悔いのない様に生きろ。

 

「恵、悠仁」

 

 五条先生が二人の肩を軽く叩く。

 

「僕の後ろに居て良いよ」

 

 何故か二人は無言で頷くと、先生の後ろに移動し、そこから少し前屈みに戦場を覗く姿勢になった。

 あっ(察し)。

 

「なん……、」

 

 釘崎くんも察したようだ。

 男の子には己の意志ではどうにもできないことがあるからな、仕方ないな。

 

「……まぁ、見逃してやるわ」

 

 本人が恥じらっていない上、今回はvs特級の『見学』である。貴重な経験値。見るなとも言えない。釘崎くんは微妙な顔をしながらも無罪判決をくれた。

 

 で、早速性癖ブレイクしたみたいだが悠仁くん大丈夫か?

 

『悠仁くん』

『全力で『無』になるから話しかけんといて』

『うん、石の様に黙ろう』

 

 駄目かもしれん。

 綺麗でえっちな人外フォルムは男子高校生には刺激が強い。見えてなかろうが『全裸』の破壊力は耐え切れなかった様だ。

 

 ……というか、朱紅赤、身体鍛えていないのか。いやそれは考えにくいし、マッスルの上にお肉が乗っている状態、シンプルに現代メシが美味すぎて食べ過ぎている可能性が高いな。可愛いので良いと思います。

 

「さて」

 

 朱紅赤が矢を構える。

 

「火力を上げて行こうか」

 

 改めて観察すると、朱紅赤の炎は温度が高いとされる青ではない。

 どちらかというと黄色がかった白を軸に青や赤色が散っている。

 

 炎? 熱?

 そこまで深い知識がないので分からないが、白ベースの熱の塊を扱うということは分類的には『光』とかの術式だろうか。

 ……両面宿儺なのに? 鬼『神』だから? 玉折の産土神がどうのが伏線だった可能性もある。

 

「……受けて立、ッ!?」

 

 漏瑚は手に火球を構えようとしたが、朱紅赤は向こうの準備が終わる前に矢を放った。あれ!? たしかに正面からの火力勝負とは一言も言っていないけれども!

 しかもそれは散弾の様にバラけて飛び散って、威力は低め(当社比)で着弾地点で強めに発光している。帳の中なのに目が眩むほど明るい。

 

「そら、弾けるぞ」

 

 呆気にとられた漏瑚の掌の中の火球を、朱紅赤の右拳が勢いよく穿とうとする。

 が、スカした。基礎スペックとして漏瑚の方が速い。

 

 にもかかわらず、景色が白く飛んだ。朱紅赤の熱量が上がったらしい。

 辛うじて彼女の足元が煮立っていることが分かるが、光と湯煙で何も見えない。熱気も凄まじい。いつからここは温泉地になったのか。

 

「なぁ先生、なんかこれ、下手したら呪霊の領域よりアツくね?」

「まぁ朱紅赤、太陽だから」

「なんて?」

「『陽降苛輪(ようこうかりん)』。今は結果として朱紅赤が燃えてるけど、指定した座標に太陽を『降ろす』術式でね。火力マックスにされたらこの辺一帯隕石が落ちて来たみたいにぶっ飛ぶよ」

「アレで手加減してんの!?」

 

 知らん、なにそれ。

 

 つまり宿儺は斬撃の伏魔御厨子と炎熱のヨウコウカリン、術式二重持ちだった?

 それとも『朱紅赤』の術式か? 性質も呪い(まじない)に近いし、マッドサイエンティストの手違いがなければアレが私の術式に? 馬鹿な……、私にあんなアタッカー術式ねじ込まれても絶対に腐らせる自信しかない。一周して今の状態がベスト。

 

「手加減ていうか、あんまりアゲると人型が保てなくなって朱紅赤ごと爆発しちゃうの」

「やっべぇ術式じゃん」

「そーかな? 僕とか恵のもやろうと思えば即自滅するし、自爆ボタン付きの術式は別に珍しくないよ」

「呪術、こわ!」

「体内に呪いの王飼育してる男がなんか言ってるわね」

「まさかこうなるとは俺も思ってなかったから……」

「タッパーでハエトリグモ飼ってるテンションで特級呪物の面倒見てるヤツが何か言ってるな」

「ナクスが残念な感じなのは俺のせいじゃねぇから!」

「お前らさっきからバチクソに失礼だぞ」

「呪いの王がバチクソ言うなし」

「言論の自由を主張いたしますわ」

 

 そうこう言ってる間にも、朱紅赤は炎の蟲で爆破されたり怪獣映画や巨大ヒーローもの宜しく熱線をぶち込まれたりしている。しかもそれらを受けても位置座標的な意味で軽く吹っ飛ぶだけだったり貫通している様に見えて平然としているので、正に通常兵器の効かないゴジラの様だ。

 

 硬いというか、恐らくダメージ条件が噛み合っていない。

 もらいび持ちのポケモンに幾らほのおタイプの技をぶつけても意味がないのと同じである。

 

「  極 ノ 番 ・『隕』 !!!!!!!!  」

 

 おいちょい待てい。

 

「先生アレ一帯がぶっ飛ぶヤツだろ止めんのか」

「まぁ見てなって」

 

 ブチギレ極まれりの漏瑚に対し、朱紅赤は私にも引けを取らない喜びに満ちた輝く瞳で空を見ていた。

 大丈夫そうである。

 

「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

 

 朱紅赤は印を結び帳の中に小さめの帳を下ろすも、範囲に何も含めず空中で閉じた。

 そこに先生の帳を通り抜けて隕石が落ちて来る。

 

「 陽 降 苛 輪(ようこうかりん) 『黑』 」

 

 漏瑚の『隕』は朱紅赤の帳より少し大きく見えたが、帳に綺麗に吸い込まれて消滅した。

 

「な゙っ……、……あ゙……!?」

「ケヒヒ、やはり素直に落ちてくるだけの(つぶて)には術式の開示など狡い真似は不要だったな」

 

 ひとつもわからん。

 何が起きたのか。

 

 太陽の術式を帳の中で使ったように思える。

 つまり、太陽の重力で引き寄せて熱で溶かしながら相手の術式を飲み込ませたのか。

 少し理解できた気がする。やはり私は天才だった。

 

 呆然自失で隙だらけの漏瑚は朱紅赤に首を掴まれて、そのまま溶かし切られ(・・・)た。いわゆる『熱切断』だ。

 

「甘い」

 

 漏瑚の胴体がうつ伏せに倒れかかり、軽く蹴り飛ばされて消失する。

 

 朱紅赤、小指一本でこれならもう他の指は要らないまであるのでは?

 両面宿儺として復活しなくても十分特級。属性特盛最強夢主力が五十三万ありますわよ。

 

「砂糖よりも甘いなァ?」

 

 夏油先生のこともそうだが、何とかして朱紅赤としての昔話が聞きたい。

 真面目な顔をして私から内緒話を持ち掛ければいける気がするので期を伺ってなんとかしよう。

 

「確かにオマエならば基礎能力(スペック)だけで大概の相手には勝てるだろう。だからこそ同格や格上、上位互換との経験に乏しい。地球のマグマが熱で太陽に勝てるハズがないのに矜持(プライド)が定石を捨てることを許さず、手札をぶつけることしか考えられていない」

「朱紅赤お疲れヘイパース」

 

 バスケットボールみたいなテンションで先生に投げ渡される頭部だけの漏瑚。

 

「祓うな五条、ソレはこれまで火力で押し通せてきてしまったせいでワンパターン戦法なだけだ。まだ消すには惜しい」

「僕も傑のお土産に持って帰りたいけどね、盗聴器とかGPSの術が付いてるかもだし、せめてここで情報搾り取らないと」

「夏油の腹の裡に何か仕込んだところで逆探知されて終わる気もするがな」

 

 これが主人公サイドの会話か?

 悪の組織の幹部とかでなく?

 

「さぁて、誰に言われてきた? 主犯がこんな鉄砲玉みたいなマネしないだろ?」

 

 漏瑚が地べたに転がされ、五条先生の下ろした帳が晴れて月が見えてきた。

 

 そこに無数の花束が着弾。

 領域でもないのに『場』がお花畑に塗り替えられる。

 

 花御だ。

 さては人数が多いので出力上げて来たな。

 尤も、私に対しては相性が悪く、効果はあって無い様なものだが。

 

『悠仁くん、主導権ヘイパス』

『パス!』

 

 折角なのでこの場で花御も捕まえる。

 まぁ渋谷編がないと私の野望達成もだいぶ遠退くものの、脳しかない奴の脳が破壊されるところが見たい気持ちも大きいのでそちらを優先する。原作の展開は脳味噌がなんとかしてくれることでしょう。知らんけど。

 

 疾風の様に駆け抜けんとする花御。

 私は五条先生再起動までの時間が稼げれば良い。悟られないよう引き付けて、十分に射程内へ入った時点で腕を振り上げたが、振り上げた私の腕は綺麗な曲線を描いて夜のお空へ飛んで行った。

 

「は? おァ゙ッ!?」

 

 二撃三撃、業物が描く銀の軌跡。

 かわし切れず深めに斬られる。

 斬られた傍から治していくので大事には至らないが、もはや悠仁くんの服がおじゃんになったのが何度目かも分からない。

 

 相手は花御が目的を達成してすぐに離脱したが、その直前、朱紅赤の炎に照らされた、幸薄そうな隈のある垂れ目と視線がかち合った。

 あ、どうも、お早い登場ですね。

 

 

  ど   う   し   て  。

 

 

蜉ゥ縺九j縺セ縺励◆(助かりました)!」

 

 五条先生の再起動直前。仕上げと言わんばかりに、交流会で見る筈の大型樹木が出現して物理的に壁を作って分断され、凶悪なパックンフラワーみたいな子機達がポップコーンの様に上に(・・)弾けた。

 樹木の壁は先生が大穴を開け、種子の雨は朱紅赤が焼き祓ったが、次の瞬間には三人ともこつ然と消えている。

 

「アララ、こうも鮮やかに撒かれるとはね。徒党を組んでる上に戦略慣れしてるときた」

 

 釘崎くんと伏黒くんがまだお花畑から帰って来れていない様子だったので、これ幸いにと頬を突いてみたら手を叩き落とされた。元気そうで良かった。満足したので悠仁くんに身体を返す。

 

「にしても今の、人間だったね? それも随分と呪力が多い。センスもある。朱紅赤と同じタイプかな」

「また新しい両面宿儺の器だとか抜かすんじゃなかろうな」

「それは見ても分かんないけど、いけちゃう可能性はゼロじゃない」

「キショ、無限に自然発生するな、研究所の奴らも草葉の陰で泣いているぞ」

 

 いや露骨に乙骨くんでしたやん(激ウマギャグ)。

 五条先生、彼と面識ありませんの? マ?

 乙骨くんを呪霊側に取られてんのはだいぶやべぇですわよ。

 

「ところで五条、今夜は夜蛾と何か約束事があったんじゃないのか」

「あっ、たかも」

 

 朱紅赤の放った一言で辺りが静寂に包まれる。

 

 五条先生の思考が「遅れても良いよね」ではなく「失念しておりました」なのは物凄く人間的成長が見られるのだが、本来の有様を知るのは私だけなので誰も彼を評価してあげることはない。現実は非情である。

 

「みんな集合! 取り合えず高専(おうち)帰るよ!! いやその前に朱紅赤はこれ着て!!」

「……」

 

 五条先生は自分の上着を脱いで朱紅赤に差し出す。

 朱紅赤は露骨に嫌な顔をした。

 

「嫌そうな顔しないの、スッポンポンより良いでしょ!」

 

 そして爆誕する彼シャツ朱紅赤。

 裸に上着一枚。背徳的だ。

 

「……あの、恥ずかしくねーの?」

 

 もうさっきからサービスシーンが多すぎて『無』になるのに失敗した悠仁くんが露骨に意識してしまっている。態度に出ている。

 身長と尻がデカイ女。神秘的で火力の高い術式を使う。性格は悪いが可愛いところもある。食べるのが好き。これは人生狂わされそうになるのも仕方がない。

 

「隠しただろうが」

「そりゃまぁ、見えてはないけど、気持ち的に」

「TPOの概念は理解しているし、品定めの視線はハエに集られるような不快さがあるが、荒事で衣服が消し飛ぶのをいちいち気にしてどうなる」

 

 そうは言っても、後ろで伏黒くんが顎に梅干しを作って何か言いたげにしているぞ。

 

「こらこら、余裕あったんだし呪力で水着ゾーンぐらい守ろうね」

「はー、ウザ。リソースの無駄だ。毎回裸になっているワケでもなしにそう騒ぐな」

「毎回裸になってたら傑と三者面談だよ。ハイ回収、みんなぎゅっと集合、飛ぶからちゃんと掴まって」

 

 ……常識が、ある……!

 五条悟に……! 常識が……!!!

 

 その代償として夏油先生の性格が歪んでいるのは如何と思うが、五条悟に原作よりも常識が備わっているのは眩しいくらいの功績だ。

 

「あっ待って先生、さっき飛んでった俺の腕回収しないとヤバくね?」

「悠仁、順調に感覚狂ってきたね」

 

 先生は悠仁くんの腕を回収した後、速攻で一年ズを帰して夜蛾先生の元へ消えた。

 

 




陽降苛輪(ようこうかりん):
ぼくのかんがえたゆめしゅちゃんのじゅつしき。
勿論呪力は消費しますが本人が燃料になって燃えている感じではないので、燃えた分痩せるとかはないです。 な い で す 。
因みに『黑』は無下限の『蒼』と太陽の黒点から着想得てます。

さ「じゃじゃーん、お土産の悠仁の腕で~す」
し「そのうち吹っ飛ばしたパーツだけで虎杖悠仁がもう一体出来上がりそうだな」
す「ディアゴスティーニ?」
 
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