ロボコが朱紅赤に張り合ってくる妄想で二時間ぐらい過ごした。
パワーは足りてる自信があるから、後は発光すれば並ぶとか言い出す回。
寧ろ膝は勝ててませんかとか言う回。
でもきみの可愛さはナクス寄りだと思うよ。
----悠仁視点----
「朱紅赤、ほんとは特級だったんだな」
「まぁバレれば即日死刑だからな」
「二級でも暗殺者が仕掛けられる世界だしな」
「二人共マジで健やかに生きて」
「アンタもよ」
高専に帰ってきて各自解散。
伏黒と釘崎と、もちろん五条先生の上着一枚の朱紅赤も帰ってった。
てことは、あとはナクスだけだ。
『ナクス……』
『うん』
『あの……』
『うん』
『ヒジョ~~~~~~に言いにくいんだけどさ』
『今夜ひとりでえっちなことがしたいから、しばらく行方不明になって欲しいという話か? 別に構わんぞ?』
『ナクス、急に大人の余裕見せてくるじゃん』
特級スゲーとか色々思わなかったワケじゃないけど、それどころじゃない。
このままじゃ寝れない自信しかない。
『大人だからな』
『赤ちゃんだと思ってた』
『赤ちゃんになるのは都合が悪い時だけだ』
『堂々と言い切った!』
そんで次の日の朝。
『昨夜は捗ったか?』
『ハカドリマシタ』
『はかどりゆうじ……!?』
『ねぇちょっとそーゆーのやめてくんない!?』
『すまん、舞い降りて来たひらめきを伝えずにいられなかった』
『もぉ~!』
とか言いながら支度をして朝飯を用意してると、腕に目が出てきた。
インスタントコーヒーに釘付け。
『ナクス、コーヒー気になる?』
『瓶ごと欲しい』
『どうやって?』
『早急に領域へ物を取り込む技術を完成させてみせる、絶対にだ。決意は固い。だが今日のところは飲ませて欲しい』
『食後のコーヒーとかなら良いけど』
朝飯を片付けた後、マグカップにコーヒーを淹れてナクスに代わる。
ナクスはうきうきな様子でミルクと砂糖を入れて、それを持ってソファに座って、ひとくち。
「……ぅお……うま……、粉珈琲、文明の味……! ……?」
カップを両手で持ってうっとり見つめた後、不思議そうに首を傾げた。
「効かない……」
『効かない? あー、そういえば俺、モンエナとか飲んでもキマるとか分かんないタイプだからな』
『つまり、飲み放題……ということか……!??』
『は?』
『こ……、珈琲を……!? 浴びるように!?!??』
『ナクスどうした?』
『ありがとう、お前は最高の器だ。愛してるぜ珈琲』
超お気に入りじゃん。
誕生日にプリキュア衣装貰った女児くらい良い笑顔。
『そんな好き? 平安にコーヒーなかっただろ』
『んー、なかっただろうなぁ』
『なんにも覚えてねぇな……』
『まぁな。覚えていないので否定もできん』
知らない、分からない、覚えてない。
でも、別にそれを思い出したそうな感じは全然ない。
幸せそうにコーヒーをちびちび味わってる。
『そっか、コーヒー美味い?』
『んまい』
自分のことが分からない状況が全く深刻じゃないのって、やっぱ人間じゃないからかなって思う。
『アサイチ何観る?』
『実写ドラゴンボール』
『昨日の今日で攻めてくじゃん』
ドラゴンボール、なんでこうなっちゃったワケ?
脚本家が謝罪。へー、めちゃくちゃ正直に謝ってんね!
高専にDVDが置いてあるのもどうかと思うけど、これも五条先生が買ってきたっぽいな。
『実デビより面白かったか?』
『映画のストーリーは理解できたし、まとまってたんじゃない?』
『面白かったか?』
『ん~、正直言うと、原作読んだ? 以外のインパクトが物足りないかも……』
『アレはそういう問題ではなかったからな』
そんな感じで映画を観続けて、更に次の日の朝。
『 分 か っ た !!!!! 』
「うるっっっさ! 朝っぱらからなに!?」
『大勝利ですのよ! やはりわたくし、天才でしたわ〜!!!』
寝起きとは思えん声量。
起床二言目にはお嬢様になって、見ればどこからともなく取り出した扇子で自分を仰ぎ始めるナクス。
こいつマジで毎日元気だな。
『悠仁くん、取り敢えずその辺の物、丸めたティッシュで良いので掌に乗せてくれ』
「全然要領得ないんだけど……」
時計を見ると朝七時。
目覚ましが鳴るちょっと前。うーん、ギリ許す。
『いや間違いなく勝ったな。全てを理解した。絶対にいけるという確信がある』
「何が?」
『まぁ見ていろ』
とりあえず、寝起きでぼんやりしたまま言われた様にティッシュを一枚、手の上で丸めて指を開く。
ズズ。
と、手のひらにティッシュが沈んで消えた。
「俺の体ーーーーッ!!!!!」
『大丈夫だティッシュはここにある』
「それでも俺の体ーーッ!! どーなっちゃってんのこれ!?」
『んふふ』
ナクスは嬉しそうにティッシュをポンポン投げてはキャッチしている。
二十四時間一緒にいるから分かる。これは成し遂げた自分の天才ぶりを自分が一番喜んでる顔だ。自己肯定感が青天井。今日もナクスの空は快晴で眩しい。
『私が領域から体表に出て来れるのだから、体表から領域に入って来れなければ話が矛盾すると解釈できた』
「天才じゃん! バカじゃん!!」
『どっちかにしろ』
「バカ!! ビビったわ!!! もぉ!!! ヒトの体どうにかするなら事前に説明しろって!!!!」
『ん……、サプライズ的なつもりだったのだが』
「ウワ、そのハエトリグモみたいなツヤツヤの瞳で申し訳なさそうな顔せんといて、眩し……!」
ナクスの顔、ちょーっとしおらしくするだけで死ぬ程落ち込んで見えるのズルいな。いやでも、本来俺と同じ顔のハズ……。俺にもこれと同等の可愛さのポテンシャルが……?
許しそうになるけどここでGO出したらどこまでされるか分かんなくてヤバい。賃貸アパートを宇宙戦艦にリフォームするなら家主に確認くらいしてくれ。
『そんな無碍に断んねぇから、マジで確認取って』
『分かった、次からは相談しよう』
どうやらコイツ、マジで性格は人畜無害だけど、価値観が男子小学生レベルなせいで何がそんなにダメなのかを分かってない。
専用の体持ってたら猫とか蝶々追いかけて迷子になりそう。そのまま野生化して帰ってこなそう。そう思うと一生中にいといて欲しい。
『……悠仁くん、朝ご飯作ったら食べるか?』
ご機嫌取りの距離感が家族。
領域からこっちを伺い見てくる様子がタッパーの中のハエトリグモ。
『何作ってくれんの』
『ベーコンに溶き卵と刻みネギと醤油をかけて焼いたものと、レンチンで錬成可能な味噌汁の作り置き』
『食う』
その流れで体を貸して、最後にコーヒーの瓶を持って行かれたりもしたけど、危なげなく料理して出来上がったものがこちら。
宣言通りの和風ベーコンエッグ、わかめとネギと板麩のゴマ入り味噌汁。
ご飯にはふわふわのとろろ昆布をほぐしたのとちりめんじゃこと醤油もかかってる。
普通に美味そう。
当たり前なんだけど『手料理の香り』がする。
『……ナクス、俺が指食う前に現代のチュートリアル済ませてない?』
『知らん、たぶんYouTubeとかだろ』
『YouTubeすげー、いただきまーす』
いつどうやって見たんだよってツッコミはしないことにした。
……うん、うまい。
『今日の一発目何観る?』
『景気よくゾンビかサメが観たい』
『そのラインナップの形容詞が『景気よく』なのが如何にもナクスって感じ』
『この辺の映画は制作の気が狂っているほど良い』
洗い物を片付けた後、タイトルに『ゾンビ』って入ってるのを適当に選んだら、脚の悪いおじいちゃんと足の遅いゾンビのデッドヒートが始まった。その後なんやかんやで無双してハッピーエンド。
『和やかな光景だった』
『この展開で死なんでしょっていう安心感は否定せんけど』
そのまま映画観ながら昼飯も食ってお昼過ぎ。
心優しい死刑囚の不思議な力で主人公のちんこの病気が治る。
「 悠 仁 元 気 ぃ !? 」
「うるっさ、隣にいる人間に配慮できんのか」
そこまで観たところで部屋のドアが勢いよく開いて五条先生と朱紅赤が入って来た。
めちゃくちゃに既視感。
寝起きにもこのテンション味わった気がする。
「うんまぁ元気。先生昨日来なかったけど、忙しかった?」
「まーね、メンドイ案件持ち込まれて泣いてたよ」
「適当なことを言うな、泣いていたのは伊地知だろうが。二十八にもなって遅刻でゲンコツは喰らうわ、どこに出しても恥ずかしい男だなオマエは」
「先生……」
「気を取り直して今日はお姉ちゃんからの特別授業でーす!」
「おね……?」
「DNA鑑定したんだ。朱紅赤と悠仁、正真正銘、同じご両親から生まれた姉弟だったよ」
「マジで姉ちゃんなの!?」
姉ちゃん。
朱紅赤が。
「はー、うざ。斯様な愚弟を持った覚えはない」
「い、良いよ、俺も無理に姉弟せんでも大丈夫だから!」
「二人とも折角見つかった家族なのに?」
「オ゙ェ、要らんわ。百億歩譲って中のクソガキを始末してから出直せ」
……裸で怪獣みたいな戦いぶりをしていた光景が脳裏をよぎる。
こう、モチモチで……触れたら比喩じゃなくて火傷しそうな白い肌……。
それから、ナクスのクッキングバカのたこ焼きドリアを一人で半分くらい食べちゃったりとか、リボンで髪の毛縛ってたり、ネイルのこと釘崎と話してたり、あ、それ、自分で塗ってるんだ、みたいな……。
『無』になりたい!!
ヤバい! 今日も捗りそう! もうちょい早く言って欲しかったなぁ!
近親相姦じゃん!! 事実は何もないけど手遅れじゃん!!
「悠仁?」
「ハイ!! 生まれ変わったら虫になりたいです!!」
「どういう進路宣言?」
「あれ? でもDNAって姉とか弟とか分かったっけ?」
「いや、単純に恵と一緒に学校行かせたかっただけで、ホントなら朱紅赤はもう一年上の扱いでも良かったんだよ」
「……年上なのね……」
『属性を盛り過ぎてどんぶりから零れそうだな』
ナクスの感想はどこ目線なんだよ。
「そ。まぁ僕その辺で内職してるから悠仁は修行部屋で朱紅赤とドンパチやってきて」
「えっ先生は?」
「しばらくしたら顔出すけど、お札のストック作んないとでさ」
「……だんだん分かって来たけど、先生、案外戦わない感じだよね?」
「いや別にサボってないよ!? コレも立派な呪術師としての仕事だよ!? 五条悟が手書きしたお札!! スッゴイ貴重だから!!」
「そうじゃなくて、最強って言うくらいだから毎日任務漬けなのかと思ってた」
「あー、そりゃまぁ重めのが定期湧きする場所は傑が派遣した呪霊チームがリスキルしてるし、僕は割と『今来て今!』みたいなのの担当が多いかな」
「だから突然自習になんのか」
「……オマエはあらかじめその辺の説明をしておけ、説明を……」
「エヘ!」
グーにした両手を顎に沿えてみても愛嬌で誤魔化しきれない悲しい大人を放置して、朱紅赤は冷蔵庫からソルティライチを取り出した。
「アクエリとポカリ」
「アクエリで」
アクエリを投げて寄こされる。
「無視されると先生さみしいんだけど」
「俺と朱紅赤より先生とナクスのが似てない?」
「ごめん悔い改めて真面目にやるよ、死なない程度に行っといで」
『何故拒否られたのか』
住んでる方の部屋を出てすぐに五条先生と別れて修行部屋に向かう。
朱紅赤と二人っきり、一方的に気まずい。
「虎杖」
「ん?」
「俺に懸想するのは勝手だが、死んでも『ナイ』とだけ覚えておけ」
『因みに『けそう』とは恋することだぞ』
「まって」
なんでもないテンションのナクスからありがたい解説。
思わず膝から崩れ落ちた。
「ウソ……やだ……そんな……!」
「ケヒヒ、分かりやす過ぎていっそ憐れだな」
「なんのアクションもしてない段階でこんなことある!? 感情の整理が追い付かねぇって!!」
「情緒不安定で結構、中の阿呆がもう治せんと音を上げるまで破壊し尽くしてやる」
「呪力! 呪力コントロールが!!」
崩れ落ちた首根っこを掴まれてそのまま連れ去られる。
ちからつよ。
「オマエは殺してしまう心配がない、相手をするのを楽しみにしていた」
「先生助けて!! 俺の姉ちゃんが俺
「死なんと分かり切っている以上、アレは確実にほったらかしだぞ」
「お手柔らかに! なにとぞ手心を!!」
「安心しろ、手足が捥げても内臓が潰れても笑っていられる様にしてやる!」
「それは心が壊れちゃってない!?」
爺ちゃんの最期の話、ちゃんと聞いてたらもしかして朱紅赤のこと聞けてたかな。
でももし知ってたとしても、姉がいるとか、いたとか、そのくらいしか知らなかったかも。
まぁ、どっちにしろ流石に人体を破壊するのが趣味の姉がいるとは言ってくれないか……。
「あっ、待って早速やめ゙っ……!」
部屋に入るなり壁に叩きつけられて、そこに蹴り、というか朱紅赤自身が跳んでくる。
身を捻ってかわした箇所にひびが入った。
た す け て 。
「かっ開始の合図もなしに!!」
「殺し合いにそんなものはない、修行部屋まで待ってやっただけ温情だ」
「え」
朱紅赤が右手を銃の形にしたと思ったら、右の視界が白く飛んで、黒くなった。
「い゙……っ!! あ゙、ぁ……!?」
「ケヒッ、良い声で鳴く! だがすぐに治るクセにそんなことでは意味がない、手足を落とされながらそのまま突っ込んでくるくらいの気概を見せろ!」
手で抑え込むと、顔の皮膚が溶けてるのが分かる。
そこからすぐに炭酸が鼻に抜けたみたいにキツめにじゅわじゅわ弾ける感覚がして、視力が戻って来た。痛い。それもかなり。
これは……ちょっと、ヤバいかもしんない。
『俺、五条先生が来るまで生きてるかなぁ!?』
『死ぬことはない』
『生きてるかなぁ!!?』
『……アドバイスとして、自分の身体は『自分』ではなく『自分の所有物』だと思え……』
『そこは嘘でもウンって言っといて!!』
『ウン!』
ナクスの空返事を聞いたのを最後に、暴力の化身が襲ってきて、何がどうなってるのかすら分からなくなった。
* その頃の地上 *
「禪院真希先輩、下水を煮詰めたドブのカラメルみたいな実家を潰す為に当主を目指してる」
「その通りだけど人に言われると腹立つな」
「俺マジで禪院には何回か殺されかけてるんで早く滅ぼして欲しいんですけど」
「狗巻棘先輩、呪言師で、それが作用しないように語彙がおにぎりの具しかない」
「しゃけ」
「パンダ先輩、見ての通りパンダだ」
「宜しく」
「伏黒恵、知っての通り重油塗れのカモメに火を点けて喜びそうな男よ」
「そのネタいつまで引っ張んだよ!」
「ま、それは確かに私も良く知ってっから」
「んなことしませんよ! 貸してた呪具早く返してください」
ヒ ロ イ ン は 悪 け れ ば 悪 い 程 か わ い い 。
実写ドラゴンボールもこれを書くために観たので許(以下略)。
※ゾンビのやつはロンドンゾンビ紀行、病気が治ったやつはグリーンマイルです。