みんなでキャッキャしてるくだりは羂索くんちゃんの脳破壊の前振りの一部になるかなぁと思いながら書いています。
----悠仁視点----
──神とは、相対して今そこにいないものである。
──正気とは、認識の共有からやってくる。
──生とは、記憶と思考の両立からなる。
……えーっと、何してたんだっけ。
──汝、何を求む。
──汝、何を捧ぐ。
巨大なダンゴムシの背中、いや、長い、ヘビ……、脚がある……。
ムカデ、じゃないな、ムカデにしちゃ脚が長すぎるし、六本しかない。
なんだコレ、なんの虫? 呪霊?
──
──契りを。
──約束を。
頭は……、なくて、切り落とされたみたいに平坦なところに、黒い布がかかってる。
それがゆっくりこっちに向けられて。
──おや、イキの良い魂でしたので、別のお客様と間違えてしまいました。
──失礼。
目が開く。
『悠仁くん! 良かった生きていたか!!』
視界に飛び込んできたのは床。
目だけで少し上を見ると、腕に脚、耳とか顎とか目とか。
あと心臓やら肋骨やらを単体で引っこ抜かれたのもあるし、焼け焦げた何かが適当に散らばってる。
……もちろん、全部俺の。
「ディアゴスティーニ在庫余りまくってるじゃん。いや流石に脳とかは足りないか」
蒼という名のDIESONに俺の肉体のパーツが吸い込まれてって、倫理のない独り言を呟く五条先生の掌の中で消滅した。
あー、状況分かってきた。
先生が来る前に失神したワケね。
「悠仁生きてる?」
「殺してはおらん」
「……お元気ですか~?」
「…………」
「生き返って悠仁!」
先生がペットボトルにストローを刺してくれた。
アクエリ……オマエ、生きてたのか……とっくに中身ぶちまけてダメになったと思ってた……。
裸で床に転がったままアクエリアスを啜る。ちょっとぬるいけど心身共に干からびまくってたからメチャクチャ染みる。
「……おれのからだ、たりてる……?」
「足りてる足りてる! 五体満足だよ!! なんにも着てないから良く見える!!」
服が切り刻まれて燃え尽きて、全裸になって二秒くらいは気にしたけど、朱紅赤の破壊神ぶりがヤバ過ぎて自分の格好なんてすぐにどうでもよくなった。
「しおしおのとこ悪いけど、何とか頑張って起き上がって」
「…………」
「朱紅赤ちょっとやり過ぎたんじゃない?」
「先ほどの地獄絵図を見て『ちょっと』とかほざいてるヤツに何を言われてもな」
「やり過ぎの自覚あるんなら尚更その前に手加減してやってよ」
「はー、メンド……」
ソルティライチ片手に、かったるそうにしながら血塗れの朱紅赤が寄ってきた。
なんかホイミ的なのをかけてくれるのかと思ったら、しゃがみ込んで俺の耳元に顔を寄せる。
「 がんばれ がんばれ♡ 」
「ヤメテェッ!! 俺を狂わせないでっ!!!!! 実の姉なのにっ!!!!!!」
「ケヒッ」
甘い声に思わず飛び上がって耳を塞いでしゃがんだ。
百年の恋も冷めるレベルでバラバラ死体にされても悠仁の悠仁が正直で困る。
コイツ、意外と自分の『良さ』に自覚がある! 性格が悪い……!
「これで問題あるまい」
「きゃ! 朱紅赤ってば小悪魔!」
「ウソだろ? このノリでさっきのこと済まされちゃう感じ?」
血でバリバリの髪の毛をこれまた血でバリバリの手で弄ってる姿は『小悪魔』じゃなくて『悪魔』だと思う。
「そんなこと言われても、僕らの世代も割と仲間内で人体実験したり怪獣になったりしてるからねぇ。日常だよ日常」
「ここ、呪いを勉強する学校だよな?」
「そうだよ?」
今ちょっと、悪の秘密結社が出てくる様な作品でしか聞かない表現が出たけど?
まだ内臓足りてない気がしてきた。胸と腹を触って確かめる。分からん。ナクスさん、これ大丈夫? 平気? ホントに? 死なないからって適当に詰め物してない?
「それより元気出たんならちゃんと掃除しよっか。その後シャワー浴びて支度して僕と体術ね」
「鬼!!」
「も~、ほんと二人ともすぐ服ダメにしちゃうんだから」
「まるで人が脱ぎたがりみたいな言いがかりをやめろ、術式がバリアのオマエと一緒に考えるな」
「俺だって好きでスッポンポンなんじゃないんだけど!!」
とはいえこのペースで着るものがなくなり続けたら、死んだことになってる俺の服をどうやって補充したら良いのかっていう不安はだいぶある。
* * *
夜になって、伏黒と釘崎も映画部屋に呼ばれた。
「はいコレ、悠仁はツカモトⅢ、恵と野薔薇はⅡ、朱紅赤はⅠね」
先生から黒い熊のぬいぐるみを配られる。お馴染みツカモト。
番号が若返るごとにサイズが上がって、キモカワイイからナチュラルカワイイになっていく。
手触りが良さそうなふわふわのクマちゃんを両手で抱えてモフモフ楽しむ朱紅赤。
……誰か俺に『無』になるスイッチくれん?
『朱紅赤がでっかいクマちゃん抱えてんの、破壊力ヤバイ』
『分かる』
『分かられた』
ナクス、なんでそんな朱紅赤好きなんだ。
それ用に創られた器だからウケが良いとか? 朱紅赤の性格がカスタマイズされたものとかそんなことある? 技術的なこと全然分からんけど、アレを手動で設定とか相当しんどくない?
ナクスも尻と身長がデカい子が好きだったりする?
「Ⅰだけ普通に可愛いわね」
「Ⅰはクタクタのテディベアを呪骸として復活させたヤツだから。朱紅赤のお気に入りだったやつ」
「塩と砂糖に気を付けろよ五条」
「不意打ちで角砂糖 角塩にすり替えるのは勘弁して」
お気に入り。
尚更かわいい……!
でもなるほど、五条先生相手にはそうやって仕返しすれば良いのか。
ナクスにもそういう手使えんかな。泣きそうなチワワみたいな悲しい顔で良心に訴えかけてきそう。やめよ。
「これってつまり私らも虎杖と同じことするの? 基礎をしっかりとかそういう話?」
「いや、基礎だけど、どっちかっていうと悠仁の修行のギアをみんなに合わせて上げる感じ。映画観るだけだったのをもう一段階難しくすんの」
「俺聞いてないよ先生」
「今言ったからね。でもデビルマン観て一気にコントロール良くなったでしょ」
「……まぁ。ナクスの解説なかったら心折れてたと思うくらいだし」
「は?」
朱紅赤が信じられないものを見る目を向けて来た。
伏黒と釘崎は明後日の方向を向いた。
「あっ、朱紅赤的に解説付きNGだった? 俺の孤独な
「観てもいない筈の映画の解説をするな、もはや何の王だ」
「あー、ナクスね。俺も大体のことは『ナクスだから』でもう良いかなって思ってる」
「イマドキのコンテンツくらい抑えておかねば人類と会話も成り立たんからな」
「趣味が偏り過ぎて人類側が置いて行かれているだろうが」
「導いてやろうと思って」
「やはりこのクソバカ殺して良いか?」
ナクス、朱紅赤に話しかける度に好感度下がってる気がする。
「えっと、たぶんこれ、ナクス的には普通に喋ってるだけで煽ってるワケじゃないと思うんよ。ナチュラルにふざけるから朱紅赤みたいなタイプと会話になんないだけで」
「ならもっと普通に喋れ」
「退屈で餓死するので無理だが」
「殺して良いか?」
「やめて、俺ごとやらんといて!」
フォローしようとしたけどダメだった。自由過ぎる。我儘っ子ちゃんか。
「昼間に散々切り刻んだんだろ」
「……」
伏黒が朱紅赤をレッカーしてくれた。
絶対ちょっとでも抵抗しようとしたら一ミリも動かないハズなのに、朱紅赤は素直に連れていかれてクマちゃんを抱えたままソファに座らせられる。
『なぁ、もしかしてだけど』
『いや、もしかしなくてもだろ』
『先生ェ……。じゃあ、朱紅赤のこと、なんであんな風に紹介したん……?』
『適当だからだろ』
おかしい、特級教師二人の信頼度が下方向に競って来てる。
間違いなく最強だしスゴイ人達だけど、スゴイんだけど、全面的に信じてたらヤバイことになる。
「うーん、みんな順調に切れ味の良い絆が育って来てるね」
「コレを『絆』って呼ぶ教師、どうなのよ」
「成長の足引っ張り合うのはダメだけど、『俺が俺が』って前に出ようとするのは歓迎。僕としては恵はもちろん、悠仁も野薔薇も昨日のアイツくらい祓えるようになって貰いたいし」
「また初耳! 良いけどさぁ!!」
ナクスとはちょっと違うけど、やっぱり五条先生も『本人に悪気はないけど完全に信じたらダメな人』だ……!
「や、……やってやろうじゃない……!」
「ヘイヘイ野薔薇ビビってるぅ!」
「ビビッてねーし!!」
「というわけで皆にはスマブラをして貰います」
「勝ったわ」
「それはど~かな? あと桃鉄とスプラのプラベもやろうか」
「先生、俺たちのなけなしの友情崩壊しませんか」
「いやキミらもうING系で友情崩壊しながら仲良くしてるでしょ」
「そうね。覚悟しなさい重油カモメ着火マン」
「定着させようとすんじゃねぇ!!」
「ナニソレ」
釘崎の口から俺の知らない呼称が出てきた。
「重油塗れのカモメに火を点けて喜びそうって意味」
「ふ、伏黒、オマエ……!」
「100%釘崎の妄想だから気にすんな」
「20%くらい事実でしょ」
「切れ味!! 二人なんでそこまでギャリギャリになってんの!?」
「伏黒に可愛げがないからよ」
「あ?」
「切れ味!!!!」
「んじゃあとヨロシク~!」
「先生!? ちょっとくらい『先生』してって!??」
五条先生が全てをぶん投げて居なくなってから三十分後。
ようやく試合開始になって更に十分後。
みんなスマブラめっちゃ強いってことが分かった。
特に朱紅赤から俺への殺意が高すぎる。全然勝てん。
「姉ちゃん手心頂戴……」
「そこになければない」
「姉ちゃ……???」
「ね……???」
「まぁた説明していないのかあの戯け!!」
「あっヤバ呪力足りなくなる! こんな時に爆弾落とすんじゃないわよ!!」
一試合三十分。
ツカモトはタイムアップと同時に呪力切れになるくらいのキツめの設定。
格上との実戦を想定した、ずっと高出力でいるためのメニュー。余裕があるように見せて相手に圧をかけるブラフにもなる。
「虎杖、オマエ、弟だったのか……」
「DNA鑑定してもらって、今日先生に教えてもらった。一個年上なのも今日知った」
「年上なの!? 私も初めて知ったんだけど!」
「だからどうという話もないがな」
「ヴッ……!」
「い、虎杖……!! メテオ貰ったわ……!!」
「ギャー! 誰か手心持って来てぇ!!」
マジで全然勝てん。
普通の殴り合いなら朱紅赤以外には勝てる自信があるけど、ビックリするくらいボコボコにされてる。意外と伏黒もやり込んでる。
「でもこんな内容でちゃんと修行になってんの、古い漫画の『アレは修行だった……!?』みたいな感じすんね」
「五条先生も強くなることにかけて だけは マジだからな」
「しかも五条自身があのチャランポランぶりだ、退屈な座学は教えるのも好まん」
「あの性格が周りに有益なことあるのね」
もふ。
朱紅赤は何気なくクマちゃんを深めに抱え込んで、その頭に自分の顎を乗せた。
あざと……。まぶし……。
ヤバい、何してても可愛く見え始めてるかも。
マジでヤバい。
『まぁそういう時はキュートなナクスチャンでも眺めて落ち着け』
『スマブラしながら呪力調節しながら生得領域も見るのムリなんだけど』
『朱紅赤を見る余裕はあっただろうが』
一瞬だけ領域を覗くと、ナクスは座布団を三つ並べてその上で横向けになってBlue Heavenとかいう漫画を読んでた。
世の中楽しみ過ぎ。自分の娯楽の為に人類に滅んで欲しくないタイプ。
「明日は俺が作ったステージでやる」
「朱紅赤謹製の地獄、初めてじゃステージとして機能しねぇだろ」
「あのぉー、次回、ハンデ付けて貰って良い?」
「修行にならないでしょ足搔きなさい」
後で昼間にスマブラ練習して良いか聞いとこ。
ナクスにコントローラー渡して領域越しに感知してくれっかな。
でも俺、なんか重要なことを忘れてる気がする。
なんだっけ……、ヤベ、忙しすぎて考える暇なかったから全然思い出せねぇ。
* * *
----夏油視点----
受肉した呪物は器の脳から情報を得る。
「だから虎杖くんに実写デビルマンの解説ができてちゃ可笑しい」
「そーだっけ」
「教員免許返納しろ」
「やだ」
悟、十年前から全く成長してない。
脳に反転術式をかけ続けるとそういう副作用があるのかもしれない。
いや別に朱紅赤はそんなことないな、悟個人の問題だ。
「朱紅赤が何言ってんだコイツ、みたいな反応してたのソレかぁ」
「朱紅赤はもちろん、恵も二級になってから教えたことだし、釘崎さんも家単位で呪術師だから、聞いてる可能性はある。分かってないのはナクスと虎杖くんと、……悟だけかな」
「ワスレテマシタ」
悟は片言になって、スプーンでメロンクリームソーダをぐるぐるかき混ぜた。
何かあれば土地ごと更地にすれば良いからと道のない山奥に建てた別荘のリビングで、でかいテレビに全身蜂蜜塗れの実写真選組局長が映し出されている。
悟、生まれる世界のジャンル間違えてるんじゃないのか。銀さんのパチモンハイスペックテキトー天人としてひと暴れしてても可笑しくないよ。
「でも恵と野薔薇の反応薄かったけど、その辺のことどう思ってんだろ」
「その辺どころじゃないから気にしてないと思う」
「そりゃそーね。ナクス、言動が知識豊かな赤ちゃんだからね」
「うんうん。自分大好き、享楽主義、いい歳こいて赤ちゃん継続中」
「異議あり」
「目の前のことに夢中になってやらかすところも誰かにそっくりだ」
「異議あり!」
「言ってみな」
「仮想怨霊化してたとして! 口調が朱紅赤なのは分かる。で、傑とか九十九さんとか、他の特級成分はどこ行っちゃったワケ?」
ある特定の妖怪や都市伝説などの怪異に対する恐れやイメージが呪霊化したもの。
しかし当然、非術師達は『呪い』や『両面宿儺』をそこまで大きく恐れてはいない。
術師達から零れる呪力だって微々たるもので、呪霊の仕組みも理解している術師が仮想怨霊を生むことは通常ならばあり得ない。
だが『両面宿儺』は違う。
かつて生きていた天災にも等しい術師、その強大な呪いを宿した呪物は実在している。
術師達はその呪物が『呪いの王』で『両面宿儺』だと確信している。
ナクスの意識が『千年前の術師』のものではなく、『現代の呪霊』として再構築されたものであるとするなら、現代の知識が備わっていることに辻褄は合うし、術師達からの畏怖によって己が何者であるかの定義くらいは挟み込まれていても話に無理はない。
更に言うと、現代版『呪いの王』のイメージとして、現代最強と謳われる悟の影響は当然あるものと推測できる。
「んー、私なら頭脳派なところと優しさかな」
「何言ってんの沸点バリ低の脳筋のクセに」
「表出ろ」
「ほらぁ~!!」
「失敬だな、私はいつだって人類の味方だよ」
「大事な局面で三回くらい裏切りそうな顔して良く言う」
「ちょっと北海道行かないか?」
「試される大地を試しに行く感じ? 僕、明日は朝からホテルのレストラン梯子して一日ケーキ食べて過ごすって心に決めてるから遠慮しとくよ。日本沈没とか地球滅亡案件以外絶対働かないし」
……働かない、ね。
悟のコレはいわゆる『テスト全然勉強やってない』と同義だ。
去年、体内に直で呪霊を召喚して腹を食い破ってやってから、無下限で座標指定の概念を弾くのに躍起になってるらしい。やってる側の感覚として体表を通り抜けるフェーズは存在しないから、果たして防げるものか私にも分からないが。
「その休日、誰のおかげで確保できてるんだっけ?」
「傑のおかげです!! いつもありがと!!!! SUPER・BIG・LOVE!!!!!!」
「よろしい」
私と悟がいなかったら呪術師はその内自然消滅すると思う。
なにせ殉職率が高い理由が思ってたのと違った。陰謀もあるが、人員がカツカツ過ぎた。何割かはコンディション不良による
私自身、今やよっぽど『欲しい』のが回ってこない限り、他の用事を置いてまで前線に出ることは少ない。
二級以下の任務なんて呪霊のシフト管理で終わる。三~五体ずつのチームにしているし、人命がかかってなくて勝てなさそうなら帰ってきて良いことにしているから、手駒が減ることもそうそうない。
そうやって私達が現役で数を潰しまくっている間に駆け出し術師達には安定して実力をつけてもらって、十年後くらいには呪術師全体の質も勝手に上がってる見込みだ。後は禪院の超次元マウンティングモンキー共と唾の飛沫くらいしか勢いのない憐れなお年寄りに早めに滅んでもらえれば最低限は許せる。
「え~~~~、性格がほぼ僕参照、みたいなの納得いかないんだけど」
「自分のこと可愛いって信じて疑わなくて、常に『何してんの?』って感じ」
「朱紅赤と九十九さん……」
「頭脳派で優しい」
「だから傑成分にソレは無理あるって」
「 は ? 」
「分かった分かった頭脳派で優しいところが傑成分で良いよもう。……そーいう意思の押し通しぶりがいやなんでもないでぇ~す!」
話しながら高いワインのボトルを開ける。
グラスに注いで香りを十分に楽しんでから口に含んだ。
それでも当然何の味もしないが、アルコール自体は楽しめるし、これは真冬に暖房をガンガンにかけた部屋でアイスを食べるのと似たような贅沢だ。
「でもさぁ、そもそも朱紅赤が自分のこと可愛いって思ってるの、傑ママが愛情たっぷりに育てたからでしょ」
「自暴自棄なクソガキを自己肯定感たっぷりのツヤツヤのお嬢さんに仕上げたことを褒めて欲しいね」
「アレは『お嬢さん』って言うより『お嬢』だよ。ヘイお嬢、如何いたしやすか」
「イチゴミルク」
「かわい~」
始めは嫌そうだったけど、ことあるごとに可愛い可愛い言って育ててたらすっかり『俺は可愛い』が標準になった。
そう、可愛いからね。なにせ朱紅赤のお陰で私はまだ人間をやっていると言っても過言じゃない。恩人というか、親愛というか、自覚のある巨大感情を一言に詰めると『可愛いと思ってる』になる。
「……ねぇ傑、まさかとは思うんだけど、ナクスが偶に『お嬢様』になるのって……」
「そんなもの曲解して吸収するくらいなら他にもっと得るべき情報あっただろ、戦い方とか」
「その辺なんでインストールされてないんだろ」
「宿痾計画?」
「
「それもそうだな、エネルギー源として扱う気だったんなら辻褄合うと思ったけど、指のままじゃ駄目な理由も特に思い浮かばない」
「となると、何かして欲しいことがあった?」
「して欲しいこと、不利な縛りを課す為に意思を奪う。アリじゃないか?」
「得られる情報にフィルタリングかけて仮想怨霊化させたとして、途中からメンテもなしにほったらかされた結果がアレなのはご愁傷様だね。ってことは、計画としては最終的に出来上がったナクスで朱紅赤の人格を上書く予定だったかも」
ワイングラスの脚が折れた。
「おっと」
それをそのまま呪霊に食わせて処分して、ついでに新しいのを持って来させる。
「傑、そのルート潰れたんだから落ち着きなよ。ナクスの性格的に、今はもう取り込んでも上書きは起こんないと思うし、悠仁のと傑の縛りから見ても、まぁ、積極的に人類と敵対する意思はあんまなさそうじゃない?」
存在を弄られ過ぎてもはや呪霊なのかも微妙な感じだけど、あのバカっぷりが演技だったら大事だ。
それでも現状、虎杖くんの人権に配慮している内はどうにもできない。
少なからず朱紅赤に乗り換える気はなさそうだし、様子見かな。
「……でも、ナクスと離れられないストレスはヤバそうだ」
「耐えられなさそう、朱紅赤倒れちゃいそう」
「やっぱり虎杖くんがいて良かったよ」
「人類に友好的なのに全然劇物で笑っちゃうね」
「そうそう、本人に悪意はないけど手に負えないタイプが一番面倒見るの大変なんだよ。ね、悟」
「え? ごめん傑、それどういう意味?」
「アハハ!」
「やっぱ北海道で去年の続きしたくなってきたかも」
「でも悟、銀魂観たかったんじゃなかったっけ? 今面白いところだよ?」
「…………」
立ち上がりかけた悟が座り直す。
テレビの中では愉快な不審者たちが金色に輝くカブトムシを追って全力疾走中だ。
「フッ、全く。二十八にもなって銀魂が優先だなんて……」
「オマエ喧嘩したいのかしたくないのかどっちなんだよ! ていうか銀魂に謝れよ面白いだろ!!」
「ごめんて。そうだね、私も結構好きな方だよ」
それにしても去年の喧嘩は盛り上がったな。
私の前歯がどっか行って、硝子が「インプラントか……」とか言い出したら悟が見たことない焦り方してさ。別に私だって悟の内臓を呪霊で美味しく頂いてるくらいだし、歯の数本くらい植え替えて貰っても全然良かったのに。
尤も、アレは喧嘩というより、上層部にも高専にも見つかっていない両面宿儺の指の所有権をかけての大戦争だったことは、みんなには秘密のままだけど。
※うろジョジョより先に完結させたいと勝手に思ってるジョジョの二次創作があるので、こっちの頻度下がります。死ぬまでにはこっちも完結させるつもり。
うろジョジョ完結まであと2年くらいあると思って余裕ぶっこいてたら次回最終回っぽくて焦る。
で、これ↓は性癖を破壊された虎杖の図。
【挿絵表示】
朱紅赤
-
カワイすぎ
-
呪いの王すぎ
-
それでイイ
-
足太いよ!
-
太いから良いんだろうが!!