感想・ましゅまろThanks...
人外味よりもニンゲン味の方を手探りで書いてるみたいなところがあるので助かります。
朱紅赤がいる過去編の展開をある程度敷いてから原作軸を書いており、原作との言動の差異が詳しく語られないまま話が進んで行く部分があるかと思いますが、大体は仕様なので「そーゆーことね」にできるつもりです。
でも解釈違いとか解像度不足があるかもしれねぇ。言われたけど展開の都合上直せないって場合はそのまま行くぜ。
因みにタイトル付けの都合で短めです。
七月某日。
楽巌寺嘉伸、東堂葵、禪院真依、三輪霞、東京着。
呪術廻戦ファンの間で五億回は擦り倒された質問が繰り出された。
----釘崎視点----
真希さんのおつかいで自販機のところまで来た。
業者に敷地の奥の方まで入らせるのは問題あるってのは分かるけど、地味に距離あるのよね。
「にしてもなんでこの希少な枠におしるこが入ってんのかしら」
「朱紅赤が欲しがったら入った」
「愛されてるわね」
「いちごミルクは五条先生、ウィルキンソンの無糖の炭酸が夏油先生」
「やりたい放題か」
権力振りかざし過ぎ。
いやちょっと待て。
「……伏黒のは?」
「……ウィルキンソンのジンジャーエール」
「私の注文も聞きなさい」
「一人一枠な」
朱紅赤のお嬢様感で霞みがちだけど、コイツもあの二人に育ててもらってんのよね。
そりゃちゃっかりしてるわ。
「そこの二人、一年だな」
声のした方を見ると、パイナップルみたいな髪型のゴリラ。
制服の上着を手に持ってるおかげで辛うじて生徒だって判断できるくらいの老け顔。
「えーっと、誰?」
「知らねぇ」
「たしか伏黒とかいったか、どんな女がタイプだ」
伏黒が突然現れた不審者に絡まれた。
どんなも何も。
一人しかいないでしょ。
「因みに俺は尻と身長のデカい子が好きです!」
クソみたいな宣言をしながら着てるシャツをビリビリに破いた。
仮に好きだったとして、好きなことまではギリ許すとして、白昼堂々初対面の女の前でそれ言っちゃカスなのよ。
「まず誰なんですかアンタ、初対面の人間に一発目で振って良い話題じゃないですよ」
そうよ、一年の間でもまだ触れてない話題なのに、伏黒にはハードルが高いわ。
「京都三年、東堂葵、自己紹介終わり。これでお友達だな」
「友達ではないです」
「早く答えろ男でも良いぞ」
「なるほど、話が通じないタイプですね」
……この際だし朱紅赤に通報しときましょ。
【今、伏黒がトウドウとかいう不審者に好きな女のタイプ聞かれてるわ。自販機のとこ】
よし、既読。
我ながら良い仕事をしたわね。
「性癖にはそいつの全てが反映される、性癖がつまらんヤツはソイツ自身もつまらん。俺はつまらん男が大嫌いだ」
正直に語ったら絶対伏黒の方が強いと思うけど、ムッツリにそれを口にする度胸はないのよ。
「好みとかありませんよ」
こっちはこっちで堂々と嘘を吐くな。
アンタどう見ても朱紅赤と両想いで付き合ってないだけみたいな状態じゃない。
「……その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません」
ふーん、オブラートに包みまくって中身見えなくなってるけど、ものは言いようね。
「良いんじゃない? ここで「俺も尻と身長のある女が好きです」とか言い出すよりは好感持てるわ」
「オマエは黙ってろ、状況ややこしくすんな」
「やっぱりだ、退屈だよ伏黒」
「ッ!!」
「伏黒!!」
伏黒がぶん殴られて地面を転がる。
「ちょっと!! アンタいきなりぶん殴るなんて頭の中までパイナップルなの!?」
「黙れ」
丸腰でおつかい来たのはマズったかしら。
いやなんで高専の敷地内で生徒が襲ってくんのよ、0:100で向こうが悪いわ。
「交流会は血沸き肉躍る、俺の魂の独壇場。最後の交流会が退屈に終わるなんて絶対に認めん。コイツを半殺しにして、今年もまた朱紅赤を出させる。ヤツは呪術師としても女としても最高だ」
「あ?」
マジで生理的に無理かも。
心からの賞賛のつもりで言ってそうなのがまた無理。
「……一応、聞くだけ聞いてあげるけど、尻と身長がデカいから『良い女』ってワケ?」
「勿論!」
よし、殺していいわね。
「やれ、伏黒」
「言われずとも!」
地面すれすれを思いっきり突っ込んでくる鵺と、伏黒の周りを固める蝦蟇。
パイナップル野郎は余裕で鵺をかわしながら蝦蟇も殴り飛ばして伏黒を捕まえた。どうなってんのよ。
でもこれで良い。
鵺が方向転換する瞬間に首を傾げて釘と金槌を落としたのを横目に、朱紅赤に通話をかける。
夏油先生の授業で教わった通り、直の殴り合いで勝てない相手には作戦勝ちを狙う。
「うわっ、ちょっとアイツホントに脳みその代わりに果肉詰まってんじゃないの!?」
助けを呼ぶ丸腰アピールを兼ねてのつもりだったのに、繋がる前に伏黒が一方的にやられて清水寺(通称)の上までぶっ飛ばされた。
眼中にないのは結構だけどそれはそれでムカつく。
LINEに履歴は残せたし急いで金づちと釘を拾って、狙うのは無防備に散らかったシャツの残骸。
本気で心肺停止させちゃ問題になるからこのくらいの繋がりで十分。
「構えで分かった。芻霊呪法だな」
腕は振り下ろせなかった。
「い゙ッ……!」
さっきまで上にいた筈なのに、掴まれた腕をそのまま引っ張られてぶん投げられる。
身体の方は呪力強化でなんとか耐えたけど、おろしたてのジャージが破れた。
「ざけんなっつの、速すぎでしょ……」
「たしかに前線でやり合わなくて良いのは強みだが、見えるところでやるのは避けた方が良いぞ」
「……アドバイスどーも」
最悪。急いでたからポーチは装備してない。
金槌は手放さなかったけど釘はあの変態の足元に転がったまま。もう拾わせてくれないだろうしだいぶキツイ。
「釘崎、ケガは」
「ナシ。スマブラのお陰で咄嗟の最大出力は上がってんのよ」
伏黒が鵺に乗って上から合流してきた。
割と元気そう。伏黒がやられたから私の方に来たんじゃないのは良かったけど、つまり各個撃破を焦らず私の術式や援護を警戒して泳がされてたのね。性格はあんななのに嘘みたいに上手い。
「さっき思い出したが、アイツ一級術師の東堂だ」
「一級! ゆ、許せねぇ~~っ!!!」
女を尻と身長で判断して、男を性癖で判断するこのパイナップルが、一級!!
ぜってぇツブす。良いわよ、一級、なってやろうじゃない。
でも一旦深呼吸、悔しいけど今の実力でこの変態に正面切って勝つのはムズいわね。こういう時にアツくなると夏油先生が笑顔で詰め寄ってくるからいい加減ブレーキ覚えてきたわ。軽率にブチ切れても良いけど冷静に殺れ。押忍。
さっき秒で既読が付いたのを信じて朱紅赤待っとく方が良いかも。
「伏黒よりもこっちの方がまだ面白そうだ。オマエ、どんな男がタイプだ」
「……
「ほう、まぁまぁ平凡だがその力強さは悪くない。だが伏黒がオマエのサポート役になっている現実を見ろ。やはり術師は術式じゃない、性癖だ」
「言われてるわよ伏黒、この際語って聞かせてやりなさい」
「なんでそういう方向に舵切ろうとしてんだ!」
朱紅赤に連絡済だから時間稼ごうとしてんのよ。
始めに私がスマホいじってたの思い出しなさいバカ。
「なんだ性癖の訂正か? 後出しで言われても説得力がないぞ、手短に頼む」
「は? アンタと違って伏黒はオブラートに包める紳士なだけよ」
「コイツら……! もっと具体的に言えば満足かよ!」
伏黒は二秒くらい歯を食いしばって葛藤を見せた後、深めに息を吸った。
「……背が高くて、目つきが鋭くて、……発育が良くて。……自分に、正直なタイプ」
「つまり、俺みたいなヤツってことか……?」
その瞬間、気温が三度くらい下がった。
「布瑠部由良由良」
「伏黒! 待ちなさい、早まんな!」
自爆技の印を組もうとする伏黒を慌てて羽交い絞めにする。
「あいつはここで、ブッ殺す!!!!!!」
「その為にアンタまで死んでどーすんのよ!!」
「フフフ、やはり性癖に正直になると呪力の質も上がる。そう照れるな。俺には心に決めた高身長アイドル、高田ちゃんがいるからその気持ちには答えられんが」
「ガ、ぐぉ……! 絶対ッ殺す……!!!」
「伏黒! 待て伏黒ォ!! 今発動したら私も巻き込まれるから!! こんなクソみたいなことで死にたくないからっ!!」
「冗談だ、つまり朱紅赤のことだろう」
パイナップル頭の不審者の思わぬ追撃に、伏黒が今度はピクリとも動かなくなった。
まぁそうだけど、それ以外ないけど。
「なるほど、だが言い淀み方からして尻と身長よりもあの性格の方が好きか。何を恥じた? 無味乾燥な性癖ではなかった様だがやっぱりつまらん男だな。己の心に嘘を吐くな! 好きなものはもっとハッキリ好きだと言え!」
「アンタは時と場合を弁えなさいよ!! レディの前では口を慎みなさい!!」
コイツ、意外と戦い以外のことにも頭がキレる……!
なんか却ってムカつく……!
「それは絶対にできん相談だ、俺はいついかなる時でも性癖に正直に生きていなければ死ぬ」
「え、ちょっとまさか、そんなアホみたいな縛りに命を?」
「いや、呪術的なことは関係ない。だがこの信念を曲げることは俺の命に関わる」
「つまり?」
「呪術師は任務中でなくても常に死地に立っている。悔いを残さんよう、毎秒最大限自分に正直に生きるのは至極当然のこ──」
気持ちよさそうに喋ってる途中で顔面に靴底がめり込んで綺麗に飛んでった。
「ナイス朱紅赤!!」
「京都に圧をかける仕事をしていて遅くなった」
朱紅赤はスタイリッシュに着地して、立ち上がりながら少し乱れた後ろ髪を手でかきあげる。
超かっけぇ女。最高。百点。
「東堂、交流会はオマエの為の催しじゃない。暴力で事を通したいなら格下ではなくルールを敷いている上に噛みつくことだ。ここで恵を潰しても自分が出場停止になるだけだぞ」
「流石だ、去年よりも良い女になったな朱紅赤! オマエも出ろ!」
「貴様と会話を試みた俺が愚かだった、今すぐ帰れ」
「言われずとも帰るところだ。伏黒も性癖に正直になれば退屈しっぱなしというワケではなさそうだし、何より個握の時間が近い」
「こあく?」
マジで会話が通じてねぇ。悲しいくらいの会話のデッドボール。
私が首を傾げると、東堂はズボンのポケットから紙の束を取り出した。
「高田ちゃんの個別握手会だ!! そういうことだから俺はもう行く。次会う時までに覚悟を決めておくんだなシャイボーイ!」
「アンタのそれもう天与呪縛でしょ……」
「勝ったみたいな雰囲気出してんじゃねぇ!! 初対面の変質者と恋バナしたいヤツなんかいねーんだよ!!」
ようやく伏黒が再起動する。
正直シャイボーイなのは否定できないと私も思うけど。
勝手に襲ってきて勝手に帰りだしたとはいえ、誰も追いかけてまで相手したくないから後は放置して帰らせる。
東堂が見えなくなった辺りで、朱紅赤はスマホをタプタプし始めた。
「さて、修繕費治療費諸々東堂の給与から差し引くよう手を回しておくか……」
「朱紅赤ってあらゆる方向に『戦える』女よね」
「楽しいからな。それに、規律は隣人を愛する為のおまじないではなく、人間の作りだした形のない道具の一つだ。夏油もそう言っている。馬鹿と鋏は使いようと言うだろう」
「あの人マジでなんなの?」
「人類に絶望し過ぎた結果、一周して呪術師をやっている男」
「怖いって!!」
東堂は別に好みじゃない女を軽んじたりする様なタイプではないけど、それを恐らく話すまでもない当然のことだと思ってるからいちいちそういう弁明をしなくて第一印象が死ぬし、それが判明したところで好感度がプラスに傾くかって言われるとそうでもねぇ難儀な男だと思う。
まぁでもオタクのSNSでは常時性癖開示しといてのフォロー、交流は良くあることだから私は結構好き。ところで私、完全合意両想い神隠しがこの世でいちばん性癖なんですけれど……、待ってください、どこへ行くんですか、尋ねたからには最後まで聞いて。シチュではなくタイプ? タイプはですねぇ……、どこへ行くんですか、尋ねたからには最後まで聞いて下さい。問いかけたということに覚悟と責任を持ってください。