----悠仁視点----
その『リョウメンスクナ』とかいう『特級呪物』は、両手で顔を覆って、悲鳴を零しながら仰向けに倒れた。
『……待っ…………いや……本当に…………誰もお前を愛さない…………!』
ざっくり言えば、あの指は魔王が封印されたアイテム……みたいな話だったハズなのに、魔王は俺の目の前で夏休み最終日で宿題が終わらない小学生みてーな絶望を全開にしてて、威厳ゼロ。ヒビの入った牛の頭蓋骨の山の上で器用に左右に転がっている。
『あの……大丈夫?』
『大丈夫じゃない』
案外コイツ、悪いヤツじゃないっぽい。
けど、勝手に自爆して勝手に落ち込まれてるせいで俺には何が何やら全然分からん。
『は、……ハァ……、やばい、控えめに言ってこの世の終わり、開幕と同時に終了。……今なんとかして解決策を整えるから待ってくれぇ……』
顔も体も俺と同じ。ただし、着物を着てて、体中に刺青みたいな模様が入ってて、爪まで黒くて尖っている。
いかにも悪役らしい衣装なのに、こんな態度取られたらどうしたら良いかさっぱりだ。
『……よし、やはり私は天才だった』
『急に前向きだな』
しばらくして、考えがまとまったのか、顔を覆っていた手を除けてノソノソと身体を起こして座る。
『良いか、❛ 今から────は、──だ。だが────────、聞き流してくれても構わん』
『まぁ、とりあえず聞くよ』
『うん、是非とも聞いてくれ』
俺、他に何もできねーし。ここでヤダつっても、たぶんどうにもならんし。
そう思って頷いて見せれば、リョウメンスクナは少しだけ希望の見えた目で話し始めた。
『────で、この話を前提として、この先あの、──では、知識に不足も出るだろう。そこで私からお前に呪術についてそれなりに助言もするし、質問があれば答えられる範囲で答える。────。だからお前は私が、■■■■と、────、──────────を忘れる。❜ この縛り、飲んでくれるか……?』
一通り話終わると、顔の前で両手の黒い指を組んで首を傾げられる。
俺と同じ顔で眉を八の字にして、俺が『うん』と言うのを全身全霊で期待してんのが嫌でも分かる。
『俺の顔でぶりっ子されてもあんま可愛くねーんだけど』
『ん!? いや、特段ぶりっ子のつもりはなかったが……。どうすれば良い、頼む、心から頼む。というかもう話してしまったのでこれでお前が飲んでくれなければもはや羞恥と絶望で爆発四散して死ぬしかない』
『オマエなぁ! それもう脅迫じゃん!!』
『悪いと思っている、完全に私の不注意というか気が緩み過ぎたことが原因だ。……だから、かなり好条件にしたつもりだが、駄目か?』
もはや首を傾げすぎて見上げてきている。圧がスゲェ。
『一応聞くけど、オマエが死んだら俺はどうなんの?』
『伝説のポケモンをドブに捨てるようなマネをするな』
流石にちょっと可哀想な気もしてきたし、一撃で学校ぶっ壊すくらい火力あるから味方になったら心強いよなぁ。
とはいえ、信用して良いのかも微妙だ……。
『うーん……、要するに、ちゃんと俺に味方してくれるってことで良いんだよな?』
『そうだ』
『あの、なんだっけ、縛り?』
『それなら、────。ただし、────ぞ』
『❛ イタズラに一般人を傷つけたり殺したりしないって約束できる? ❜』
『❛ 勿論 ❜』
『❛ じゃあ、良いぜ ❜』
『助かる!』
俺が頷くや否や、スクナは今までの絶望っぷりが嘘みてぇな明るい顔になった。
こいつ、俺より俺の表情筋使うじゃん。
『ではそういうことで契約成立だな!』
『は?』
パン、と柏手を合図に気が遠くなる。
あんまりにも強引な終わりに俺が呆気に取られていると、狭くなる視界の中でスクナは笑顔で俺に手を振っていた。それから、──。
気づけば俺は両手を後ろに固定された状態で、目の前に五条先生が座っていた。
……で、俺は死刑だと。
どいつもこいつもメッチャクチャかよ。