2006年12月20日、都内某所
大江「ふう、まさか俺が有馬記念に出るとはな。アマデウスに会うまで思ってもみなかったな。今まではリーディングの下の方だったのにな」
中島「それを言うなら、なんで俺まで有馬記念に出るんだ? それもカワカミプリンセスに乗って。教えてくれ、大江」
大江「さあ?なんでだろうな?中島」
中島「シラを切るなよ。聞いてるぞ、お前がテキに根回ししたって」
大江「テキ、中島に言うなって約束したじゃねえかよ。中島、これは仕方ねえことだったんだ。カワカミプリンセスに乗れるのは俺かお前しかいねえんだから、カワカミプリンセスが有馬記念に出るためにはお前が乗らないといけないんだから。ほら頑張ればよ」
中島「だからってよ、G1だぞ、有馬記念だぞ。G3に1回出たことがある俺じゃ場違いすぎる」
大江「なあ、中島。知ってると思うが有馬記念には御屋形様、つまり神宮寺の御当主様がお越しになられる。でだ、来年2歳馬になる牝馬の騎手を探してんだわ」
中島「それが?どうせお前だろ」
大江「俺はねえよ、あったとしても2頭居るんだぜ?」
中島「2頭?…………まさか、俺をカワカミプリンセスに乗せたのはそういう事なのか」
大江「そうだ。片方は俺が乗る。もう片方はお前が乗れ」
中島「無茶だ、出来るわけない」
大江「中島、これは試験だ。お前がカワカミプリンセスをどこまで操れるかの。中島、お前はチャンスが欲しかったんだろ?そのチャンスだ。ここで結果を残せばお前は成り上がれるんだ。俺だってキツイんだ。どっからか来年の2歳馬を御屋形様が買ったと聞いて先輩や同期から、ぜひ俺を推薦してくれと何度言われたか」
中島「それは」
大江「その次もだ。中島、お前にだけは話しておく。もし、もしだ。御屋形様がお前を認めたら、もしかしたら再来年、お前はお手馬を2頭くらい持つかもしれん。御屋形様がまた馬を買うつもりらしい」
中島「それは、本当かよ?」
大江「本当だ。一昨日、また買っちまったてぼやいてたし。その後もまた生産牧場行くかとか言ってた。買った馬も見た感じG2は勝てるがG1は無理そうなやつだ。中島乗ってくれんか?」
中島「おいおい。俺は新馬未勝利戦31勝、条件戦11勝、OP9勝。重賞は勝ったことないんだぞ。そんな俺にG2は硬い素質馬に乗れと?」
大江「そうだ。それにG1も硬い奴もいるぞ。2頭居るから片方はお前だ。母父ウイニングチケット父バクシンオーと、母父サクラチヨノオー父トウカイテイオー。どっちがいいか決めておけよ」
中島「おいおい、とんでもない良血じゃないか。それを俺に乗れと」
大江「そうだ」
中島「俺じゃなくても1期上の羽場先輩じゃだめなのか?あの人重賞取ってただろ」
大江「羽場先輩か。戦績は悪くわねえんだが、御屋形様にアレはだめと言われた。なんでも調査したら女癖が酷いらしい。そんなやつを俺の馬に乗せるわけにはいかんらしい」
中島「だ、だがよ」
大江「中島、そろそろお前も腹決めろ。人生の転機は突然来る。お前にとっての転機は今日だ。ここで俺の話に乗って素質馬のお手馬を得るか、それとも降りて何年か待つか、どっちだ!!」
中島「…………そうだよな…大江。俺、乗るよ、カワカミプリンセスに。そして、来年の2歳馬に」
大江「そうか、年明け予定空けとけよ。御屋形様に御挨拶だ。そこで年の予定を決めることになる。出たいレースが有るなら先に決めておくといいぞ」
中島「出たいレースなんてないさ。乗って出れるだけで充分だからな」
大江「そうか、それじゃそろそろ戻るとするか。中島、お前も帰れよ。体調崩して有馬でボロ負けはできんからな」
中島「お前こそ風邪引くなり身体崩すなよ。アマデウスの屋根にお前がいないと始まらんからな」
両雄がそう言いながら別れた同日同時刻、都内神宮寺新聞本社ビル。この日、ここは戦場になった。
永倉大輔編集長「急げ、なんとして明日の朝刊に間に合わせるんだ。もし出せなければ我々全員の首が飛ぶぞ」
記者1「写真、出来上がりました」
記者2「文面確認、完了」
記者3「緊急事態です。陸奥製造所の輪転機故障、使用不能と」
永倉「なんだと、面倒なことに」
記者1「どうします、編集長。書き直す前のものは出来ているはずですが、それで行きますか?」
永倉「駄目だ!我々が会長から得た未公開の情報だ。これを他社に渡すわけにはいかん」
新しく書き直された新聞の4面には神宮寺兼人が新しく買った馬の情報と、来年買う予定の頭数1頭あたりの予算の計上額が事細かに書かれていた。1円でも高く買ってほしい生産牧場と、有力馬を持つ馬主とのつなぎを欲しているフリーの騎手達はこの記事を待ち望んでいた。
永倉「この記事を待ちわびている者は多いのだぞ」
記者2「確かに買う予定頭数はフリーの騎手達が待ち望み、買う頭数と金額は生産牧場の牧場主達が待ち望んでいますからね」
永倉「そうだ。にしても陸奥製造所か、八戸と一戸の軽製造所に要請できないか?」
記者4「確認します」
永倉「急げよ、なんとしても朝刊に間に合わせるんだ」
八戸・一戸両製造所の頑張りもあり、どうにか定刻通り日本中に出荷された。
そして翌日の昼頃新聞社に大江騎手が怒鳴り込んできた。
大江「何やってんだよ!!有馬記念前にこんな記事出さんでくれ。推薦してくれってフリー騎手と、神宮寺の一門だからって来年セリに出す馬持ってる生産牧場の馬主がやってきて調教どころじゃねえんだが」
永倉「まあまあ、大江騎手落ち着いて」
大江「落ち着けるか。これで有馬記念で負けたら、御当主様に顔を合わせることができんぞ」
永倉「そこまで来るのかい?」
大江「そこまでだよ。知ってると思うがディープインパクトはこの1戦で引退だ。アマデウスに勝つために全力で整えるだろ。予想だと凱旋門よりもだ。それに整ってないアマデウスで勝てるはずがないだろ!」
記者4「編集長、お電話が」
永倉「後にしてくれ」
記者4「あの、その、会長からです」
永倉「な、なんだと」
大江「御当主様からだと」
永倉「い、今代わる。電話を」
記者4「は、はい」
永倉「な、永倉です、今代わりました」
神宮寺兼人『すげえ騒ぎになってるな、そっちに大江居ねえか?』
永倉「居ます」
兼人『そうか、代わってくれ』
永倉「た、直ちに、
大江さん、会長が代わるようにと」
大江「御当主様が?わかった受話器を」
永倉「は、はい」
大江「大江です、代わりました」
兼人『大変なことになったな。調教もままならんか』
大江「はい」
兼人『よし、こっちに任せとけ。今日中に訪ねてきた牧場主と騎手のリストを頼む。それとこれから接触してくる連中は、牧場主ならこっちの秘書課に、騎手なら今から送る経歴書に記入して規定住所に送るように伝えてくれ。いいな、お前は有馬記念のことだけ。ディープインパクトに勝つことだけを考えておけ』
大江「わかりました」
兼人『そんじゃあな』
ツーツーツー
永倉「会長はなんと?」
大江「有馬記念のことだけを考えろ、その他の些事はこっちに投げろと」
永倉「なるほど。では我々新聞社からはあなたに伝えることは一つ、戦勝撮影の支度は整っております、この一言のみです」
大江「了解です。必ずや勝ってきます」
そして12月24日、遂に暮れの中山に勇士たちは揃った。無敗の音楽家アマデウス、不可能を可能にした伝説ディープインパクト、無敗の女傑カワカミプリンセス、猛馬ダイワメジャー、不屈の挑戦者メイショウサムソン、迫りくる影ロジック、挑み続けるもの挑戦者ハーツクライ、乱暴な姫スイープトウショウ、その他合わせて14頭の名馬達が集ったのであった。
2007年のアマデウスのレースプランについて
-
予定通り国内中心で海外は凱旋門等一部
-
予定変更高松宮後凱旋門含む海外で大暴れ